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この記事では、新型コロナの拡大によって、日本のREIT(リート)市場がどのような動きをしてきたのか?
そして、これからどうなるのか?について解説していきます。
1、REITとは?
その前に、REITについてカンタンに解説しておきます。
REITとは、「RealEstate Investment Trust」の略称で、不動産投資信託とも呼ばれます。
特徴をまとめると、
- 運営会社が投資家からお金を集めて、オフィスビルやマンション、ショッピングモール、物流倉庫などを購入する
- 購入した物件の家賃収入を配当金として投資家に支払う仕組みのため、高い利回りを求める投資家に人気の金融商品
- 運用者は、投資家からのお金以外に、銀行からもお金を低利で借りることで、より多くの物件を保有し、投資家により多くの配当金を支払うことができる。反面、金利が上昇すると銀行への返済負担が増えて配当金が下がるので、金利上昇局面では弱い
- 日本では、約80のREITが株式市場に上場しており、いつでも売買が可能
といった金融商品となっています。
2、新型コロナの影響は?セクター別の動きを整理
新型コロナウイルスの感染拡大によって、3月ごろに株式市場は大きく下落しました。24,000円台だった日経平均は、一時16,000円台にまで下がりましたが、REIT指数も同様に大きく落ち込みました。
2020年7月31日現在、日経平均(青色の線)は22,000円前後まで戻していますが、REIT(ピンクの線)はそれほど戻していません。
緊急事態宣言以降、飲食店や小売店では、自粛の影響で売り上げが減少したり、そのまま閉店・廃業をするところが増えているため、テナントからの賃料収入が減っていくと見られているからです。
ただし、上のグラフのJリートETFは、東証REIT指数と連動しており、マンションやオフィスビル、物流倉庫、ホテルなど、いろいろな物件が混じっています。
そのため、物件の種類によって、動き方に大きく差が出ています。そこで、株価の値動きが堅調な順番に、各セクターの状況を整理しました。
(1)物流施設
1番堅調な動きをしているのが、物流施設系のリートです。REITの中では唯一、新型コロナ以降の方が株価が上がっているセクターになっています。
物流施設系のREITで代表的な銘柄は、日本プロロジスリート投資法人(銘柄コード:3283)です。
関東で6割、中部と近畿で4割弱、という物件構成となっています。
物流系リートが堅調な理由は、ネット通販の利用が増えているため、物流施設の需要が上がっているからです。
アメリカでもGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)と呼ばれる、IT系の大企業の株価だけが上昇していますが、これも飲食店やリアルの小売店を利用できなくなったため、ネットの利用者が増えていることが追い風となっているのです。
日本でも楽天やYahooなどのネットサービスが堅調ですが、その恩恵を物流系のREITも受けているんですね。
(2)マンション
次に安定しているのが、マンション系のリートです。
株価の推移を見ると、新型コロナで1度は大きく下げたものの、かなり早い段階でほぼ元通りの水準まで戻しています。
住居系のREITで代表的な銘柄が、アドバンス・レジデンス投資法人(銘柄コード:3269)です。
伊藤忠商事系列のREITで、東京23区内の物件が7割以上を占め、「レジディア」ブランドのマンションを多数保有しています。
オフィスビルは、借り手の会社が倒産したり、コスト削減で退去するケースがありますが、住居はよほど大変なことにならない限り、引っ越しをしませんので、投資家も安心して投資をしているのでしょう。
もちろん、これから大企業の倒産やリストラがバタバタと起こってくれば、影響も出てくるでしょうが、今回の新型コロナを受けて、政府も企業に対してバックアップをしています。
そのため、当面の間は安心できる投資対象と見られているようです。
(3)オフィス
なかなか戻りが鈍くなっているのが、オフィス系のリートです。
オフィス系のREITで代表的な銘柄が、日本ビルファンド投資法人(銘柄コード:8951)です。
三井不動産系列のREITで、東京23区内の物件が8割以上を占め、大崎、六本木、西新宿などのオフィスエリアのビルを保有しています。
ここ1年の株価を見ると、ご覧の通り、新型コロナ以降の株価の戻りは鈍いです。
大企業の決算を見ると、かなり赤字の企業も多いですし、さらに政府によるリモートワーク の推奨や、企業によるオフィスの分散の流れもあるため、賃料収入が減少するのではないか?と心配されているのです。
そのため、新型コロナ前であれば3%弱の利回りでしたが、現在は3.63%まで上昇しています。賃料の下落を見越して株価に反映されているのでしょう。
(4)商業施設
さらに回復が鈍いのが商業施設系のリートです。
商業施設系のREITで代表的な銘柄が、日本リテールファンド投資法人(銘柄コード:8953)です。
三菱商事系列のREITで、名古屋の「mozoワンダーシティ」や、「東戸塚オーロラシティ」「イオンモールむさし村山」などのショッピングモールを保有しており、東京含む関東エリアの物件が約半分となっています。
ご覧の通り、株価は新型コロナ以降、半値ぐらいにまで下がった後は、ほとんど戻ることなく横ばいの状況となっています。
4月からの緊急事態宣言で、全国のほとんどの商業施設が休館に追い込まれましたし、今後の第二波の警戒感もあるため、テナントの撤退による分配金の減少が心配されています。
そのため、現在の利回りは7%を超えていますが、あくまでこの利回りは予想であり、引き下げられる可能性が高いと投資家は見ているんですね。
(5)ホテル
そして最も下落したまま、回復の見込みが薄いのがホテル系のリートです。
ホテル系のREITで代表的な銘柄が、ジャパン・ホテルリート投資法人(銘柄コード:8985)です。
シンガポール系のファンド会社が運営するREITで、共立メンテナンス、オリックスなども参加しています。
ヒルトンお台場、ヒルトン東京ベイ、オリエンタルホテル東京ベイなどの都内の有名ホテルだけでなく、北海道や沖縄などの観光地にもホテルを保有しています。
今年は東京オリンピックの開催も控えていたため、外国人観光客の増加を当て込んで、たくさんのホテルの建設が計画されており、数年前から「こんなにホテルが建ったら、ホテルが余るぞ」と心配されていました。
そこに今回の新型コロナが起こり、外国人観光客がゼロになり、緊急事態宣言で国内の移動もパッタリと止まってしまいました。
そのため、一部のホテルでは、4〜5月の売り上げが9割以上減少するところも出ていました。
現在の利回りは約10%と高利回りとなっていますが、他のホテル系のリートでは、0.2%台まで分配金が引き下げられた銘柄もあり、物件の性質や立地によって、かなり格差が出てきそうな状況です。
というわけで、堅調な順番にまとめると、
- 物流施設
- 住居
- オフィス
- 商業施設
- ホテル
となっています。
3、新型コロナでリートはこれからどうなるのか?
ここまで新型コロナによるリートへの影響を見てきましたが、残念ながら、新型コロナの収束にはまだ時間がかかりそうです。
7月末現在で見ても、日本の感染者数はどんどん増える一方ですし、東京都では飲食店に対して営業時間の短縮要請を出してきました。
(参考:朝日新聞「東京都、8月中の営業短縮要請へ 飲食店とカラオケ店」)
その一方で、政府はGOTOキャンペーンを開始しており、「政府は経済を立て直したいけど、自治体は感染を抑えたい」という全く逆の動きをしています。
そのため、国民の間でも「旅行していいの?それとも自粛すべきなの?」と迷っている方も多いと思われます。
実際、国民の間でも、コロナに対する見方はかなり分かれているのではないでしょうか?
- 毎年3,000人以上死んでるインフルエンザに比べると、そこまで怖い怖いという必要はないのでは?(でも、周りの目が怖いから、マスクはするけど)
- いやいや、感染力が強いウイルスだし、感染者数もどんどん増えているから、今に大変なことになりそうだ!
大きく分けると、こんな感じだと思います。
しかし、ウイルスは目に見えませんし、まだまだわからないことも多いため、一部の人は大丈夫だと思っても、やばいと思っている人からの非難の声は出続けるでしょう。
そうすると、お客さんの数が戻ることはないでしょうから、時間が経つほどに、倒産や廃業をする事業者が増えるものと予想されます。
その一方で、小売業者や飲食店が減ると、それを補うサービスが必要になります。
食事についてはウーバーイーツや出前館などのサービスの利用者が増えているようですが、買い物についてはネット通販が今後もさらに増えると予想されます。
そのため、今後リートの購入を検討されている方は、物流施設系の一択ではないかと個人的には思います。
利回りは2%後半〜3%とあまり妙味が少ないと思われるかもしれませんが、不動産は借り手がいてなんぼの商売ですので、「これから経済がどのように動きそうか?」を念頭に投資先を検討すべきではないでしょうか。
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