この記事では、エスコンフィールドHOKKAIDOが北広島市に完成・オープンしたことで、
- 北広島市の人口・不動産価格にどのような影響が出ているのか?
- 北広島市は、これからどのように変わっていくのか?
- 今後の課題
の3点について、解説していきます。
1、北広島市の人口・不動産価格への影響
2018年に日本ハムファイターズが、北広島市に新球場を建設・本拠地を移籍すると発表して以降、それまでほとんど横ばいだった不動産価格は、上昇を開始し始めました。
特にここ2〜3年の上昇率は凄まじく、年率10〜20%の上昇をしています。
では、具体的に、どのあたりが大きく上昇したのでしょうか?
エスコンフィールドの近くにある住宅地の上昇率が高く、5年で+100%を超える地区が多く見られますね。
ですが、ほぼ全域で、高い上昇率となっていました。
これほど上昇率が高いと言うことは、住宅の需要も増えていると言うことでしょう。
では、人口はどうなっているのでしょうか?
(参考:総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」)
意外にも、この5年間で、世帯数は増えているものの、人口は約2,000人減少していました。
ですが、年代別の転入超過数(市外から引っ越してきた人 ー 出て行った人)を見てみると、子育て世帯(0〜14歳、30〜40代)の数が増えており、住宅に対する需要が増えていることがわかります。
新型コロナの影響もあって、高齢者を中心に人口減少が進んでいるのでしょうが、子育て世帯が引っ越してきていることから、住宅需要が強いため、土地価格の上昇にもつながってきたのでしょう。
札幌市への経済の一極集中が、郊外の市町村にも波及
ただし、この上昇は、もともと続いていた札幌市への経済・人口の一極集中によるところが大きいです。
全国どこの地方でもそうなのですが、公共事業が減っていることや少子高齢化が進んでいます。
そのため、大卒者が働けるような職場が、県庁所在地に集中してしまい、経済の一極集中が進んでいるのです。
北海道も例外ではなく、札幌市とその近郊都市に、移住する人が殺到している状況です。実際、札幌市では、この5年間で約4.7万人が引っ越してきています。
このような背景がある中で、近郊都市である北広島市にも、子育て世帯が移住してきており、土地価格が上がりやすくなっているわけです。
実際、このような現象は、お隣の恵庭市でも起きていて、2019年以降に大幅な上昇が始まっています。北広島市とほぼ同じ動きですね。
このような人口の追い風を受けたタイミングで、エスコンフィールドの建設が始まり、周辺の土地価格がさらに上昇してきた、というのが、現在の北広島市の状況なのです。
2、北広島市はこれからどのように変わっていくのか?
2023年3月30日にエスコンフィールドが開業し、9月までの約半年で、303万人の来場者を達成しました。
試合のない日でも、来場者は平日約4,500人、休日約10,500人と、かなりの人気となっています。
(参考:北海道ボールパーク 2023.10.13 「Autumn 2023」)
そのため、北広島市では、この追い風に乗るために、様々な開発計画を企画中です。
(1)北広島駅の西口に複合施設
エスコンフィールドを企画・建設した日本エスコンによって、北広島駅の西口の再開発が進められています。
1~3Fが店舗、4〜5Fがレストランやジム、7〜14Fをホテルとして活用できる複合施設が建つ予定です。
(参考:日本エスコン「駅西口周辺エリア活性化事業 市有地A 個別事業計画」)
現在の北広島市は、車での移動が基本なので、マックスバリューもコープも、駅から歩くには遠い距離にあります。
また、駅の利用者も減少傾向にあるため、駅周辺の店舗も年々減ってきている状況でした。
しかし、エスコンフィールドができたことで、駅の利用者も増えており、再開発によって、駅周辺の活性化を進めようとしているわけです。
上のイメージ図の、真ん中より右にあるのが、今回の複合施設です。
それ以外にも、駅周辺に市の保有地があります。図の真ん中より上に、マンションが建っていますが、ゆくゆくは、駅周辺にマンションも建設する予定なのでしょう。
現在、北広島市には、年間200人程度の0〜14歳が引っ越してきています。
札幌市に仕事を持つ子育て世帯が大半でしょうから、通勤しやすい駅近エリアに、商業施設や保育施設、マンションなどを建てることで、子育てしやすい街づくりを目指しているのでしょう。
マンション建設計画などは、これから市民や議会との話し合いの中で決められていくと思いますが、駅周辺の活性化策として、策定される可能性はありそうです。
(2)エスコンフィールド近くに新駅を開業
2つ目が、新駅の開業計画です。エスコンフィールドから徒歩300〜400mの距離に、新駅の開業を計画しています。
費用が85〜90億円、工期が約5年ということですので、完成は2027〜28年ごろになりますから、当分先ではあります。
ですが、新駅が完成すれば、札幌や千歳からのアクセスが格段に良くなりますので、エスコンフィールドの利用者はさらに増えるでしょう。
3、今後も残る課題
このように、北広島市では、いろいろな開発計画が進行中ではありますが、それでも残りそうな課題がいくつかあります。
①車の渋滞問題
一つ目が、渋滞問題です。
もともと北広島市は、6万人程度の人口規模の街なため、市内を走る大きな道路がそれほどありません。
そんな場所に、約5,000台の駐車場を完備した野球場ができたため、車で観戦に来たお客さんによる交通渋滞が発生しやすくなっているのです。
車で2~3分の距離にあるスーパーマーケットに向かったが結局、渋滞から抜け出して店に到着したのは30分後。
「歩いた方が早いが、荷物が重くてどうしても車が必要。大曲通以外に家に帰る道はないのでどうしようもない」と困惑する。
北海道ボールパークへのアクセス可能な道路
市外から北海道ボールパークに行くには、道道46号線、1080号線、1180号線の3つが主なルートになりますが、道道46号線、1080号線は、北広島市の市内を通るため、渋滞に巻き込まれやすいのです。
特に、1080号線は、北広島駅周辺の住民が利用するスーパー「マックスバリュー」が立地しているため、買い物客の利便性が大きく落ちている状況です。
住民の不満の解消には、1180号線の車線を増やすとか、アクセス可能な道路を増やすなどの、市を含めたもっと大きな対策が必要となるでしょう。
②北広島駅西口の再開発で、お客さんをどう増やすのか?
今後、エスコンフィールドの近くに新駅ができると、観戦に来るお客さんは、新駅を利用することになりますから、北広島駅周辺で買い物をするなどの経済効果は見込めなくなります。
また、エスコンフィールド周辺の商業施設も、今後さらに充実させていく予定とのことなので、ますます観戦客は、北広島駅周辺の利用から遠ざかるでしょう。
そのため、北広島駅西口の再開発は、市内に住む人たちが、お客さんとなるような施策を行う必要があります。
幸いなことに、現在の札幌市は、人口流入が続いており、不動産価格の上昇によって、子育て世帯が北広島市や恵庭市などの近郊に移り住むようになっています。
このチャンスを生かして、子育て世帯の移住をさらに促せるような、駅近のマンション開発や、子育て施設の整備を行うのがいいのかもしれませんね。
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