【ゴルゴ13に学ぶ世界史 #02】1969-70年作品から、①レバノンの混迷②ソ連のモロトフ③ナチス突撃隊SAについて解説 | イエ&ライフ

【ゴルゴ13に学ぶ世界史 #02】1969-70年作品から、①レバノンの混迷②ソ連のモロトフ③ナチス突撃隊SAについて解説

youtube原稿

今回の動画は、「ゴルゴ13に学ぶ世界史、その2。1969-70年作品から、①レバノンの混迷②ソ連のモロトフ③ナチス突撃隊SAについて解説」ということで、やっていきたいと思います。

 

1、はじめに

ちょっと前から始めた、ゴルゴ13を読んでいきながら、話の背景にある世界史を解説していくシリーズの第2回目です。

 

 

前回は文庫版の1~3巻までを取り上げましたが、今回は4~6巻までをやっていきます。

前回の動画では、イスラエルの防衛大臣のダヤンを取り上げましたが、ゴルゴ13の登場人物は、大物になるほど、実在の人物が多いので、それを調べるだけでも、なかなか楽しいなと感じています。

 

それで、今回解説する話も、だいたい1970年前後ですから、今のようにネットもなく、国内外の新聞や英字雑誌など、限られた情報から、よくまあ、こんな設定を考えたものだと感心することが多いです。

そういった視点も入れながら、たまに現代にもつながる世界史の話をしていきたいと思います。

 

(参考:ファミ通.com)

 

それで、この動画を作った時点では終わってたのですが、ゴルゴ13は、たまにkindleでものすごく安く売られてるようですね。

1冊58円で130巻まで読めたようです。7540円で130冊のゴルゴが読めたわけですから、これはちょっと胸熱な展開でしたね。

 

今度、安売りセールをやっていたら、動画かyoutubeのコミュニティ機能で、安売りしてるよと声が消しますので、興味のある方は、それまで待っててください。

それでは、ここからが本題です。

 

2、ゴルゴ13から見える世界の裏側

今回も、文庫版1冊につき、1つの世界史解説をしていきます。

 

(1)レバノンのPLO(パレスチナ解放機構)

まず1つ目は、レバノンのPLO、パレスチナ解放機構についてです。

第19話のタイトルは「ベイルートVIA」で、依頼内容は、レバノンに潜伏しているPLOの強者ゲリラ部隊のスパイダー6の暗殺です。

 

(参考:第19話「ベイルートVIA」)

 

この回は、ゴルゴ13が狙撃されるという珍しいシーンがあるのですが、これも作戦の中に含まれているという、かなり手の込んだ作戦となっています。

どの話を見てもそうなのですが、こんな打たれてピンチみたいな描写があっても、全くハラハラしません。

捕まって拷問を受けても、耐え抜いて生還してしまうので、まるで水戸黄門の介さん、角さんたちの大立ち回りのシーンを見てるような安心感があるのが、ゴルゴ作品の特徴ですね。さすが、プロの殺し屋です。

 

(参考:wiki「大レバノン」)

 

それで、この話の舞台となっているのは、現在イスラエルにガンガン攻撃されているレバノンなのですが、このレバノンという国は、カルロス・ゴーンが逃げたところぐらいのイメージしかないと思うのですが、非常にめんどくさい地域のようです。

こちらの地図で色分けされているエリアが、レバノン国内の宗教や民族ごとの分布です。

 

もともと、オスマントルコが支配して来た地域だったので、多民族国家として共存してきた歴史があるため、このように複雑な分布となっています。

赤色がマロン派と呼ばれる、東方正教会系なんだけど、ローマ教皇を支持してるカトリック教徒で、

青色が、ドルーズ派と呼ばれる、イスラム教から分派したんだけど、世俗化してるため、あまりイスラム教徒と見られたくない人たちのようですね。

 

オスマントルコの後は、フランスが植民地化したのですが、クズのイギリスから悪知恵をもらって、分割統治をして来たようです。

その結果、マロン派とドルーズ派の2つの派閥が、いがみ合うようになり、その後の主導権争いが続いて来たという歴史があります。

 

(参考:wiki「Cairo Agreement(1969)」

 

それで、この話は1969年12月に掲載された作品なのですが、1ヶ月前の11月2日に、カイロ合意が結ばれており、それがそのまま漫画の中に入っていました。

ゴルゴ13は、ビッグコミックに掲載されていて、毎月10日と25日に発売されています。

 

12月は、この作品の後にもう1作品出てますので、おそらく、12月10日発売分で掲載されたと思われます。

印刷や本屋への配送なども考えると、1週間ぐらい前には原稿ができてないと難しいと思うのですが、だとしたら、このカイロ合意から4週間ぐらいで、情報収集やら脚本やらを決めて、作画したことになります。

 

しかも、この作品につきっきりだったわけでなく、11月分として2作品作ってるので、考えてみると、無茶苦茶すごいことやってるように思いましたね。

それで、このカイロ合意がどういうものだったのか?というと、パレスチナ解放機構PLOが、レバノンの南部にあるパレスチナ人の難民キャンプの実効支配が認められた、という合意でした。

 

この合意に先立つ、1967年に第3次中東戦争が起こって、イスラエルがヨルダンやエジプト、シリアなどに大勝利したことで、イスラエル国内にいたパレスチナ人が、周辺国に難民として出ていくようになりました。

これによって、ヨルダンは1970年に内戦が起こるのですが、イスラエルの北どなりに位置するレバノンにも、これらのパレスチナ人が数十万人規模でやって来たため、レバノン政府がこの管理をPLOに、正式に丸投げしたというのが、カイロ合意だったんですね。

 

カイロ合意は1969年ですが、第3次中東戦争は1967年なので、2年ほど前にレバノンに逃げてきたパレスチナ人は結構いたはずです。

そして、その中から、ゲリラ部隊に入って、イスラエルに攻撃を仕掛ける屈強の兵士が生まれていたというのは、当時のニュースでも話題になっていたのかもしれませんし、ネタとしてのリアリティはあったのだろうなと思います。

 

なお、よど号ハイジャック事件などを起こした日本赤軍も、このレバノンのPLOの拠点で軍事作戦の訓練を受けて、テロをやっていたようです。

今回の話は、そんなPLOで活躍していたゲリラ部隊の六人を暗殺するという話でした。

 

(参考:wiki「ヒズボラ」)

 

それで、現在イスラエルが、レバノン南部にいるヒズボラを空爆して、やりたい放題していますが、このヒズボラとPLOは、全く別組織になります。

PLOは、イスラム教スンニ派のパレスチナ人による組織だったのに対して、現在のヒズボラは、レバノン南部に住んでいるシーア派の人たちが、イランからの支援を受けて過激化した組織となっています。

 

1982年にイスラエルによる攻撃によって、レバノンのPLOは敗北し、翌年83年にフランス軍の支援によって、北アフリカに逃げていくのですが、その空白をついて、ヒズボラが同じく83年に結成され、レバノン南部を実効支配していくことになります。

ようやく過激派のPLOがいなくなったと思ったら、今度はヒズボラ?と、ちょっと怪しい感じがしますよね。

 

イスラエルが、散々攻撃を仕掛けて来たため、そこに住んでて犠牲になったシーア派の人たちが、過激化したという話なのかもしれませんが、この辺りの経緯については、今後、詳しく調べてみたいと思っています。

 

(2)ソ連のモロトフの悲劇

2つ目は、ソ連のモロトフについてです。

第24話「査察シースルー」の依頼内容は、スターリンの片腕と言われてきたモロトフが復活し、西側諸国の悪事を国連でバラすのを阻止してほしい、というものでした。

 

(参考:第24話「査察シースルー」)

 

こちらは、コミック版だと4巻、文庫版だと5巻に収録されてまして、1970年3月の作品となっています。

それで、このモロトフという人物は、実在してまして、ヴャチャスラフ・モロトフと言います。スターリンの側近で、スターリンの愛称が「コーバ」というのですが、この「コーバ」呼びができた唯一の人物と言われています。

 

(参考:wiki「ヴャチャスラフ・モロトフ」)

 

この話では、引退していたモロトフが復活して、西側諸国を脅かすために表舞台に出て来たという設定になっているのですが、実際のモロトフは、1961年に共産党を除名され、年金生活に入っていまして、この作品が掲載された70年当時は、全くそんな話は出ていませんでした。

しかし、こちらのタイム誌の表紙を飾ったように、モロトフは西側でもかなり有名な人物でした。タイム誌では、1940年から53年まで、4回も表紙を飾っています。こちらの画像は、53年のものですね。

 

なので、ソ連の大物政治家ということで、有名でしたし、ネタにしやすかったということなのでしょう。

それで、このモロトフについて調べてみると、当時のソ連というのは、本当に大変だなと感じさせられました。

 

(参考:wiki「ヴャチャスラフ・モロトフ」)

 

このモロトフは、1930年代からスターリンの側近として活躍していたのですが、1949年に奥さんのポリーナが、ユダヤ人だという理由で、カザフに流刑になっています。

スターリンがなぜ戦後のこの時期にユダヤ人だからという理由で、国内で弾圧を始めたのか?というと、イスラエルの西側への接近があります。

 

イスラエルは、1948年に独立宣言しましたが、建国当初は首相のベン・グリオンが社会主義者だったことや、キブツという共同体がソ連の集団農場に似てると思っていたこともあって、アメリカに次いで2番目に国家承認をするなど、当初はかなり好意的にみていたのですが、

その後、イスラエルは西側諸国に傾いて行ったことで、ユダヤ人にブチギレて、モロトフの奥さんもとばっちりを受けたというわけです。

 

それ以外にも、スターリンは粛清!粛清!の嵐でしたから、モロトフも何も言えず、あまりにストレスが溜まってしまい、口が開かなくなって、薬も飲めない体になったそうです。

「あと1年スターリンが生きていたいら、無事では済まなかっただろう」

という言葉を残していたほどです。

 

しかし、こんな酷い目にあっていたモロトフですが、スターリンが実際に死んでみると、ただ一人泣いた人として、歴史に残っています。

それで、これでもう安心かと思ったらそんなことはなくて、その後に権力の座についたフルシチョフが、スターリン批判を行い、スターリンシンパであることをやめなかったモロトフは、共産党を除名され、貧しい年金生活へ突入していきました。

 

名誉回復で、多額の年金をもらえるようになったのは、死ぬ2年前の94歳だったというので、ソ連時代の権力者というのは、トップにならない限りは、いつとばっちりがくるかわからない、バトルロイヤルみたいな状況だったみたいですね。

そのように考えると、30年近く続いていながら、経済的にも豊かになってきたプーチンというのは、本当に奇跡のような存在に見えて来ますね。

 

(3)ナチス突撃隊SA(エスアー)

そして3つ目は、ナチス突撃隊SA(エスアー)です。

第30話「魔笛のシュツカ」の依頼内容は、西ドイツの共産党の幹部が、東側諸国に旧ドイツ軍の武器を横流ししようとしているので、その幹部を暗殺してくれ、というものでした。

 

(参考:第30話「魔笛のシュツカ」)

 

コミック版は4巻、文庫版は6巻に収録されていて、1970年6月に掲載されています。

このナチス突撃隊SAは、ナチスの準軍事組織で、ナチス親衛隊SSとは別組織になります。

 

(参考:wiki「突撃隊」)

 

SAが、貧困層を含めた大衆的な部隊だったの対して、SSはエリート集団だったようです。

日本人でイメージしやすいのは、地元の暴走族がそのまま消防団とか、自警団を結成したような感じでしょうか?ナチス政権になった当時は、ドイツ全土に400万人いたと言われています。

 

それで、ナチスというのは、正式名称が国民社会主義ドイツ労働者党というもので、社会主義の政党でしたから、企業経営者よりも労働者を支持基盤に持っていました。

しかし、政権をとって以降は、軍備の拡張を行う必要があったことから、企業経営者側とも関係を深めていきます。

 

当然そうなると、元からいた労働者側のドイツ突撃隊SAは、不満を持ってしまいます。次第に政府に対して、反発するSAの幹部も出てきて、ついには、エリート側のSSと企業、ドイツ国軍などの保守派勢力によって、SAの幹部が粛清されました。

この事件は1934年に起こった「長いナイフの夜」と呼ばれています。

 

それで、この話では、この突撃隊に所属していた殺し屋のシュツカが、ゴルゴ13のライバルとして登場します。

このシュツカは、「長いナイフの夜」の粛清事件で、代表的な幹部だったエルンスト・レームを粛清しに行った人物として描かれています。

 

 

そんな元殺し屋と、ゴルゴ13が、最後はバトルをすることになっていきます。

このシュツカは、この話ではザルツブルクに大きな屋敷を持っていますが、元ナチス党員でも、処分された人はそれほど多くないと言いますから、過去の犯罪を隠して生き延びて来たのでしょう。

私はまだ10巻ぐらいまでしか読んでませんが、隠れナチスという設定は、ここまで何度か出ていますし、結構使いやすいし、リアリティのある設定なのだと思いますね。

 

3、ゴルゴ13の名言集・迷言集・勝敗

 

というわけで、ここまで世界史に絡めて解説して来ましたが、ここからは、ゴルゴ13の名言集、迷言集のご紹介です。

初期作品では、ゴルゴは結構しゃべってるので、ゴルゴの人生観や仕事観が垣間見えて、なかなかに面白いです。

 

(参考:第20話「最後の間諜〜虫(インセクト)〜」

 

文庫版4巻では、この「最後の間諜~虫(インセクト)~の中」の独り言が面白かったですね。抜粋しますと、

「スイス銀行資本を動かせるとなると、その実力はおそらく世界におよんでいるはずだ、、、報復にしろ、死にしろ、、、おれの行く道はひとつしかない、、、」

「あいつがそうだと、おれの、すべての本能も思考も教えてくれてはいるが、、、、それを証拠だてるなにものもない。、、、、

おれの心に初めてともった火のようなものを消すためには、あいつが虫(インセクト)であるという絶対の事実が必要だ、、、おれだけに通用し、なっとくできる事実が、、、」

以上です。

 

ちょっと長いですが、この話は、正体不明の強敵のスパイのインセクトという人物に暗殺されかけたことを受けて、ゴルゴが、インセクトと戦う決心をする場面での独白です。

人物については、ある程度当たりがついているのですが、スパイ同士の戦いにおいて、正体も証拠も残さない相手に対して、そいつが敵だという確信を得るには、自分なりに納得できる事実を見つけるしかないと、言ってますね。

 

仕事でも何でもそうですが、正解のないところをかき分けていくには、結局、自分にとって納得できる事実や証拠を、自分で探して見つけるしかありません。

私もYouTubeで、どんな動画が当たるのか?よくわからない手探りの中で、いろいろな動画を出していますので、このゴルゴの独白はとても共感してしまいましたね。

 

(参考:第24話「査察シースルー」)

 

そして2つ目は、文庫版の5巻の「査察シースルー」の中でのセリフです。

抜粋しますと、

「おれには想像も、推察も仮定もない、、、

 あるのは事実だけだ、、、」

以上です。

 

これも先ほどのセリフと合わせて読むと、非常に重たいセリフに聞こえますね。

先ほどのセリフの中で、ゴルゴは「おれだけに通用し、なっとくできる事実が必要だ」と語っていましたが、ここでいう事実というのも、「自分にとって納得できる事実」のことを指しているのでしょう。

 

悲観も楽観もせず、ひたすら結果を出すために、自分にとって納得できる事実を集めることが重要ということなのかなと思いますね。

 

(参考:第32話「帰って来た標的(ターゲット)」

 

3つ目は、文庫版6巻の「帰って来た標的(ターゲット)」の中でのセリフです。

抜粋しますと、

「ああいう利子には、、、

 好みってものがあるんだ!

 自分の悪趣味を押し付けないことだな。」

以上です。

 

これは、報酬の5万ドルと一緒に、お金を持ってる女性と楽しんでもいいんだぜ!利子がわりだ!と依頼主が、ゴルゴにお勧めした時の断り文句です。

ゴルゴ13では、話に出てくる女性と、大体イチャコラやってるので、こんな断り文句を言うとは、相当に意外でした。

というか、好みとかあるんだ!と思いましたね。

 

 

それで、今回の3冊での女性関係を集計した結果がこちらです。

 

17話から33話で、

①ゴルゴ13と話で絡んだ女性:11人

②そのうち、イチャコラした女性:10人

③①のうち、◯した女性:5人/11人中

④②のうち、◯した女性:4人/10人中

          ↓

やっぱり、本当に血も涙もありませんでしたね。

 

しかも、今回は、出会う女性とは、ほとんどイチャコラやってた割に、俺にだって好みってものがあるんだ!と力説していたところが、なかなか面白かったですね。

と言うわけで、今回は4~6巻までの解説をしました。

1つの動画につき、3冊分の解説を月に2回やったとしても、現在221巻まで出てるので、追いつくまでに3年ぐらいかかりそうですが、行けるとこまで続けていきたいと思います。

この記事を書いた人
ゴトウ

証券会社で12年間勤務。営業と店舗マーケティングに従事後、2018年から当サイト「イエ&ライフ」を運営しています。

不動産価格の動きの理解や今後の予想は、金融マーケットの知識があると理解しやすいため、読者のお役に立てるのではないかと、サイトを運営しています。

また、2024年からYoutubeチャンネルも始めました。
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