今回の動画は、「ゴルゴ13に学ぶ世界史、その4。1971-72年作品から、①デビアスの独占②カティンの森の虐殺③陸軍中野学校、ついて解説」ということで、やっていきたいと思います。
1、はじめに
ゴルゴ13を読んでいきながら、話の背景にある世界史を解説していくシリーズの第4回目です。
今回は文庫版の11~13巻までをやっていきます。

作品の発表された年は、1971~72年ということで、冷戦期の真っ只中だったのですが、この頃の作品を読んで気づくのが、西側と東側が別の見解を出すことで、結論が出ていないことがたくさんあったことに気づかされました。
特に、今回取り上げる「カティンの森の虐殺」については、ソ連犯人説が濃厚だったのですが、当事者のソ連がそれを拒否してドイツ犯人説を唱えてて、決着がついてない状態だったりしています。
現在、wikipediaで調べれば、ソ連がやったと書かれているわけですが、そういった事実一つとっても、決着がつかないものがたくさんあったのが、東西冷戦期だったようですね。
それと、こんな感じで動画を作るために、何度も読み返すようになると、ゴルゴ13のちょっとした態度から、気づくことが増えてきました。

今回気づいたのは、ゴルゴはけっこう情け深いということです。
例えば、ゴルゴは基本的に現金・振り込みによる取引なので、ダイヤのような貴金属類での取引には応じません。
しかし、依頼主の事情を聞いて、その気になることがたまにあります。
13巻の「サハラの逆光」では、没落した貴族の婦人が、一族最後の人間である息子の仇を取ってもらうために、一族の最後の財産であるダイヤモンドを報酬にしたい、このダイヤモンドであなたが敵討をしてくれるからこそ、我が一族が誇り高いままで滅びることができるのだ、という願いを聞き入れて受け取っています。
また、12巻でも依頼中の女性が、痴情のもつれから没落貴族に殺されてしまうのですが、今際の際に依頼をお願いされ、引き受けてもいます。
こんな感じで、相手の気持ちに粋な部分を感じた時には、情け?というか、共感のようなものを示す姿が見られました。
ということで、ここからが本題です。
2、ゴルゴ13から見える世界の裏側

今回も、文庫版1冊につき、1つの世界史解説をしていきます。
(1)ダイヤモンドのデビアス社
まず1つ目は、ダイヤモンドのデビアス社についてです。
コミック版は7巻、文庫版は11巻に収録されていて、1971年11月に掲載されています。

増刊3話のタイトルは「国際ダイヤモンド保安機構」で、依頼内容は、この保安機構からきた殺し屋を返り討ちにすることです。
依頼主は、デビアス社のダイヤモンドの独占体制を潜り抜けて、ダイヤの製造・販売を行っている組織の人間で、これを取り締まるためにデビアス社が殺し屋を送り込んできたのを撃退するという話になっています。

それで、このダイヤモンド企業のデビアスという会社は、英国の多国籍企業で、ダイヤモンドの採掘・販売・取引を専門としていて、1888年に創業し、20世紀の後半まで、世界の原石ダイヤの流通の80~85%を占めていましたが、2000年には63%、2021年には23%にまで低下して、影響力がガタ落ちしている状況にあります。
創業者は、イギリスの実業家のセシル・ローズで、南アフリカのダイヤモンド鉱山を独占し、これ以降、いかにダイヤモンド市場を独占するか?に知恵を絞ってきた会社になります。

しかし、合成ダイヤモンドの技術が進歩し、供給量も増えて、ビジネスモデルが崩壊しつつある状況です。
それで、ダイヤモンドというのは、宝飾品として有名ですが、工業用途での利用の方が大きいです。ダイヤモンドは、世界中で最も硬い物質なため、掘削機械や研磨機など、兵器も含めた産業用途での利用価値が知られていたため、第二次大戦前から人工ダイヤを作る研究が進められていました。
そして、量産化が進んできたのが、1960~70年代で、それまではデビアス社のダイヤモンドが世界の流通で大きな存在感を持っていました。
ソ連もこのカルテルに入っていましたが、1963年に脱退したため、ソ連などの東側諸国向けにダイヤを売りつけるというニーズがあっただろうという設定で、このような話が作られたようです。
そして、これを邪魔するためにデビアス側が殺し屋を雇って、それをゴルゴが始末するという、どっちもどっちの世界が描かれていました。
なので、タイトルに「国際~機構」なんて名前がついているので、公的な組織のような印象を与えますが、全然そんなことはなくて、単なるカルテルであり、圧力団体のことを指しています。
*実在する中央販売機構をモデルとしているようです

それで、デビアス社は、当初からダイヤモンドの価格を高く維持するために、競合を買収したり、カルテルを作って談合したりと、あれこれやってきた会社でもあります。
その一つの策として、キャッチコピーで消費者に訴えかけるという方法が取られてきました。婚約指輪には、給料の1ヶ月分とか2ヶ月分が相場とか、1947年には
「A Diamond is Forever(ダイヤモンドは永遠の輝き)」というキャッチコピーが生み出されて、日本でも2000年ごろまでCMで使われていました。
しかし、こちらのグラフを見てもらうとわかるように、ダイヤモンドの価格はずいぶん下がっているようです。人工ダイヤの流通が増えたことや、人工も天然も見分けがつかないので「別に人工ダイヤで良くね?」となっているようですね。
また、世界的に少子高齢化、未婚化が進んでいるため、宝飾品としてのダイヤモンドへの需要が減っているのかもしれませんね。
(2)カティンの森の虐殺
2つ目は、カティンの森の虐殺です。

第56話「みな殺しの森」の依頼内容は、元ナチスの父親が、上司と検察官に濡れ衣を着せられて、処刑された恨みを晴らすために、濡れ衣を着せたイギリス貴族の検察官を殺害すること。
コミック版は13巻、文庫版は12巻に収録されていて、1972年3月に掲載されています。

「カティンの森の虐殺」とは、1940年4月~5月にかけて、ソ連内部人民委員部(NKVD:一部がKGBへ)が、ポーランドのスモレンスク近郊のカティンの森で、主に将校であるポーランド人の捕虜4,400人を銃殺した事件のことを指します。
ほぼ同時期に、ロシア、ウクライナ、ベラルーシの5カ所以上で同じような事件が起こり、まとめて「カティンの森の虐殺」と言われるようです。

それで、なぜこんなことが起こったのか?というと、この虐殺は、ソ連がポーランドを2度と独立させないために行った事件で、ポーランドのエリート層である将校や警察官、司祭、知識人などが対象となりました。
ポーランドは、1795年にロシア、プロイセン、オーストリアの3カ国に分割され、1918年の第一次世界大戦の終結で、123年ぶりに独立しました。
しかし、ロシアを共産主義の赤軍が掌握し、独立した翌年の1919年に、ポーランドに攻め込んできたのです。
そして、これをポーランドが撃退したことで、反ソ連勢力として警戒され、1939年の独ソによる東西分割を機に、2度と独立できないように、指導者層の体系的な破壊が行われた、というわけです。

それで、このカティンの森の虐殺は、1943年に独ソ戦でナチスがポーランド一帯を占領した際に判明し、イメージ戦略の一環として、ナチスが国際社会に発表したことで明るみになりました。
しかし、第二次大戦でソ連が勝利したことで、「カティンの森の虐殺はナチスがやったんだ!」とソ連が逆の主張し、どっちが本当かわからなくなったのが、1970年代当時の状況でした。
こちらの赤枠で囲んだ部分には「琴の真相は、今持って、永遠の謎である」と書かれていますが、それは当時のソ連が、この虐殺を認めなかったからなんですね。
東西冷戦期というのは、このように勝てば官軍の世界だったので、ソ連が酷いことをやったという事実についても、当のソ連が認めなければ、国連などの国際機関も事実認定できないという状況だったわけです。
しかし、最終的には、ソ連崩壊直前の1991年にゴルバチョフが調査とソ連犯罪説を受け入れ謝罪しました。
それで、2010年にはプーチン大統領がポーランドのトゥスク首相と、カティンの森を訪れて、追悼しています。

その時のスピーチの一部を抜粋しますと、
「これらの犯罪の責任を(現在の)ロシア国民に押し付けることは、まさに同じ種類の嘘と捜査に他ならない。
(中略)
どんなに困難であっても、過去に囚われて生きることは不可能だと認識し、互いに歩み寄るべきだ。」
以上です。
このスピーチ全体のメッセージとしては、裁かれるべきは当事者であって、子孫はそれを教訓に互いに歩み寄る努力をするしかない、ということを語っています。
カティンの森の周辺では、ソ連がポーランド人を虐殺したわけですが、その後、ドイツがソ連に攻めてきて、この辺りでたくさんのロシア人も死んでます。
第二次世界大戦は、ソ連が一番多くの死者を出した戦争でしたからね。
なので、ロシア人の国のロシアと、ポーランド人の国のポーランドが、この件について話すならば、ソ連という、あのキチガイみたいな時代を教訓とすべきではあっても、現在そして未来の両国を考えれば、やれることと言えば、お互いに歩み寄る努力をするしかないというところが、落とし所だということなのでしょう。
日本では、朝日新聞とかいう、慰安婦問題とかをでっち上げて、謝れ!謝れ!と連呼する気狂いの新聞がありますね。
あの新聞は戦争の時は煽ってたくせに、負けたらアメリカに尻尾を振ってと、節操のないクズな存在だと思うのですが、そういうのは、よくないということがよくわかるスピーチだなと感じました。
(3)陸軍中野学校
3つ目は、陸軍中野学校です。
第59話「日本人・東研作」の依頼内容は、東南アジアの武器密輸団のボスの殺害です。ですが、この回は、ゴルゴ13の過去を追いかける内容のもので、その謎を追いかける主人公役は、ジャーナリストのマンディです。

コミック版は、14巻、文庫版は13巻に収録されていて、1972年6月に掲載されています。
それで、陸軍中野学校とは、諜報員を育てるために作られた養成機関で、1938年に防諜研究所として作られ、1940年に改名して陸軍中野学校となり、1945年まに続いています

終戦までに2,500名がこの学校で学んだとされ、太平洋戦争や沖縄戦など、各地で活躍したそうです。
また、どんな人が入学したのか?というと、1945年の入校者は150名いたのですが、最も多かったのが、現在の東大で、次いで拓殖大、東京外大、早稲田、慶應と、かなりの高学歴者だけが入れたようですね。
また、一般市民のフリをする必要もあったため、軍出身者は逆に避けられたようです。
それで、この陸軍中野学校では、多彩な科目が教えられてたといいます。

例えば、軍事学、外国語、武術、細菌学、薬物学、法医学、自動車運転、通信、忍術、気象学、交通学、政治、経済、思想、そして合気道は必修だったそうです。
柔道よりも合気道の方が実践的だったため、中野学校では合気道を必修にしたというので、戦後よりも戦前の方が、合気道に対する評価が高かったようですね。
ちなみに、この話では、「I 機関」でゴルゴ13と疑われる、 「東(あずま)研作」なる人物が、幼少期から多くの技術や知識を学んでいたと紹介されています。
なので、このI 機関のモデルが、陸軍中野学校だったと思われるのですが、
ゴルゴも、それまでのエピソードの中で、外国語、 ライフルの扱い方、女性心理、各国の政治、経済など の知識の豊富さが描かれていたので、物語では、 「ゴルゴ13の正体は、東なのか?」 と読者は思わせられる展開となっています。

また、1960年代は、OO7がヒットするなど、スパイ映画が 盛り上がっていたようで、日本でも陸軍中野学校を 舞台にした映画が、たくさん作られていたようです。
ゴルゴ13も、そのような流れの中から生まれたと 言われており、陸軍中野学校出身者というのは、 当時はけっこうリアリティがあったと思われます。
なお、ゴルゴの顔のモデルは、高倉健らしいのですが、高倉健がゴルゴ13の実写映画でも出演していたのを知って、ちょっと驚きました。
そのため、2001年に発売された読者アンケートでの 上位作品を集めた企画コミックでは、1位にこの 「日本人・東 研作」が選ばれていましたね。

それで陸軍中野学校に話を戻しますが、敗戦後も、そのまま海外で活躍した卒業生はけっこういた模様です。
有名なのは、1974年にフィリピンのルバング島で見つかった小野田さんで、この人も陸軍中野学校の卒業生だったようです。
それ以外にも、インドネシア独立戦争、インドシナ戦争などの、東南アジアの独立戦争に関わっていった人もいたとか、国内でも、GHQに潜入し、内部撹乱を図ったり、対日工作機関のキャノン機関の破壊に成功したという説もあるようです。
私は全く見てませんが、VIVANT というテレビドラマが、自衛隊の別班という裏組織のことを描いているそうですが、この別班の元になったのが、陸軍中野学校だったということで、戦後の日本史の中でも、まだまだ知らないことがたくさんあると思い知らされました。
別班については、今後勉強して、考察してみたいと思っています。
3、ゴルゴ13の名言集・謎言集・そしていつもの勝敗
というわけで、ここまで世界史に絡めて解説して来ましたが、ここからは、ゴルゴ13の名言集、迷言集のご紹介です。

文庫版11巻では、この「潜入ルート”G3”」のセリフというか、やりとりが、ちょっと気が利いてるなと思いましたね。
こちらの画像は、極寒のシベリアで依頼についての説明を受けた後、返事を受ける前に、お酒を勧められたゴルゴが、ウォッカ+トマトジュースのカクテルの「ブラッディ(血まみれ)・マリー」を注文したところの件(くだり)です。
そこで、依頼主が「ブラッディ(血まみれ)の意味は?」と問うたところで、
「やってみよう」とゴルゴが答えています。
依頼に対する答えを「ブラッディ・マリー」を注文することで、”OK”を示したというわけです。
ゴルゴは基本的に、どんな洒落たことを言ってもやっても、無表情なので、何をやっても、外した雰囲気にならないのがずるいと思いましたね。

文庫版12巻では、この「誕生日(バースデイ)に白豚(クラッカー)を殺せ!!」のセリフがなかなかに考えさせられました。
依頼主は黒人の牧師で、黒人を狙う人種差別主義者を始末して欲しいという依頼だったのですが、この報酬に、みんなからの寄付によって集めた5万ドルをお渡ししますと牧師が説明している最中に、ゴルゴは出て行こうとして、このように答えます
「俺は、、、持って回った話はきらいだ、、、
浄財も悪銭も金の本質自体には変わりはない、、、」
以上です。
どんな手段で集めた金でも金は金だと言ってるように聞こえますが、ゴルゴは依頼人の依頼内容や相手の動機などについては、細かく話を求めますし、自分の仕事については完璧を求めるので、金さえくれれば内容はどうでもいい、みたいな人間ではありません。
では、なぜこういう言い方をしたのか?
おそらくですが、みんなの願いがこもった金を渡すという行為そのものが、自分たちの善意とか、こっちの方が正しいとか、そういう価値観を押し付けられるような気がしたからではないでしょうか。
みんなの願いがこもった金を受け取った自分は、正義の側にいるとか、相手よりも道徳的に上だという錯覚は、殺し合いという対等な関係において、油断とか、奢りとか、そういう無用な判断やミスが生じる余地があると考えていたのではないかなと思いましたね。

3つ目は、文庫版12巻の「砂漠(サハラ)の逆光」からです。
貴族の老婦人が、経済的に破綻し、最後の跡取りの息子も死んだことで、家系が断絶する無念を家宝のダイヤで晴らしたいとゴルゴに依頼しているシーンです。冒頭でもちょっと触れたエピソードです。
しかし、ゴルゴは現金しか受け付けない流儀で、最初は断ろうとしますが、老婦人の話を聞いて承諾し、仕事場を教えろと尋ねます。
老婦人は、嬉しくて泣き出すのですが、家宝のダイヤが本物であるということを先にゴルゴに確かめてもらう必要があると思い、
「でも、、ダイヤをたしかめていただかねば!」
と尋ねます。
しかし、ゴルゴはそれを無視して、このように答えます。
「おれの聞いてるのは、、、砦の所在だ!、、、」
つまり、”あなたの言ってることに納得したので、ダイヤが本当だと信用してる。だから仕事の話をしよう!”
というやりとりなのです。
ゴルゴは基本的に誰も信用していないように見えますが、一度相手を認めると、全てを信用するようなことが、たまにあります。
武器職人のデイブに、3日かかると言われた内容のものを3時間でできるはずだと無茶振りした時も、「プロのお前だったら、これぐらいできるはずだ」という全幅の信頼を置いて大金を積んで依頼してましたし、そういう粋な部分を感じさせる回が、増えてきたような印象ですね。

それで、おまちかねの、今回の3冊での女性関係を集計した結果がこちらです。
50話から60話で、
①ゴルゴ13と話で絡んだ女性:10人
②そのうち、イチャコラした女性:4人
③①のうち、◯した女性:3人/10人中
④②のうち、◯した女性:1人/4人中
ということで、今回は思ったよりも被害が少なかったです。
その代わりに、レズビアンの殺し屋と全裸のガチバトルが展開されていたり、先ほどの老婦人との粋な展開があったりと、女性との絡み方についても、イチャコラ以外のバリエーションが増えてきたのかもしれません。
*なお、先ほどの老婦人は、この集計のカウントには入っていません。
ということで、今回は以上です。
現在、文庫版を買い集めるために、古本屋を回っているのですが、4件ぐらい回って、ようやく40巻まで買い集めました。
なので、1ヶ月で2回ペースとすると、今年いっぱいまでは目処がたちましたので、引き続き、やっていきたいと思います。







コメント