オープンから10年。函館蔦屋書店は成功しているのか? | イエ&ライフ

オープンから10年。函館蔦屋書店は成功しているのか?

函館蔦屋書店 コラム

この記事では、函館蔦屋書店がオープンして10年が経とうとしているので、その後はどうなっているのか?について解説します。

 

ちなみに、ちょうど5年ほど前に、このような記事を書きました。

人口を1,000人増やした函館蔦屋書店のすごい仕組み

今回の記事は、それから5年経ったので、あらためてその後の経過をまとめたものです。

 

1、お店が立地するエリアでは、さらに人口が増えていた

函館市は、1984年に記録した32.2万人がピークで、その後はずっと人口減少が進んできました。

この10年で見ると、そのスピードはさらに加速しており、2013〜23年の10年間で、27.5→24.4万人と、1割以上も減っています。

 

函館市の人口推移 2013-23年

(参考:函館市 「函館市の人口(住民基本台帳)」)

 

このような逆風の環境の中、函館蔦屋書店は2013年12月に、JR桔梗駅の近くにある石川町という地区にオープンしました。

今回、オープンした2013年12月〜2023年10月の約10年間の人口変化を地区別に調べてみたところ、石川町では、約1,500人(下の地図の赤いマーク)も増えていることがわかりました。

 

函館市の地区別の人口変化(2013.12〜23.10)

赤色のマーク(+1,000人以上)>オレンジ色(+100〜+499人)>青色(-100〜 -499人)>紫色(-500〜 -999人)

*緑色のマーク:函館蔦屋書店

(参考:函館市 「函館市の人口(住民基本台帳)」)

 

5年前に調べた時には、5年で約1,000人増えていたので、さらにそれから5年間で500人増えたことになります。

また、周辺の桔梗町、昭和町でも200〜300人増えており、函館蔦屋書店の周辺エリアだけ、人口が増えていることがわかります。

 

なお、この期間に、石川町周辺で、新しくオープンした店舗は、ユニクロ(2017年9月)、快活クラブ(2020年6月)ぐらいで、イオンモールなどの集客力の強いショッピングモールのオープンはありませんでした。

 

2、なぜ函館蔦屋書店は、これほど集客力が強いのか?

「石川町の人口増加は、本当に函館蔦屋書店のおかげなのか?」

「本屋ができたぐらいで、そんなに新しく人が住むようになるのだろうか?」

そう疑問に思う人もいるでしょう。

 

函館蔦屋書店を立ち上げた梅谷氏へのインタビュー記事を見てみると、売り上げよりも、まずは「人が集まる場所」として、函館蔦屋書店を運営していたようです。

 

店舗側がイベントを仕込んだり、コミュニティー活動を収益源として見たりはせず、「売り上げより、まず地元の人が集まる場に函館 蔦屋書店を育てることを優先した」

(参考:日経クロストレンド「書店ゼロの街をなくす リアル店舗の雄・蔦屋書店の地域密着戦略」)

 

具体的には、スターバックスや雑貨店なども併設された、居心地のいい広い店内づくりや、人が集まるきっかけとなる多くのイベント開催に力を入れていました。

以前に記事を書いた時に調べたのですが、2018年当時、函館蔦屋書店では、毎月100回以上のイベントが開催されていました。

 

函館蔦屋書店のイベント開催数

(参考:函館蔦屋書店 イベントのお知らせ)

 

今回あらためて調べてみようと思ったのですが、残念ながら過去のイベント情報を調べることができなくなっていたので、その後の検証はできませんでした。

ですが、2023年11月6〜12月6日までの1ヶ月間で、約60のイベントが開催予定となっていました。

新型コロナの影響もあって、イベント回数が減っているのかもしれません。

 

江別蔦屋書店でも、立地エリアの人口は増加

函館蔦屋書店と同じように、郊外に立地していて、広い店内と、多くのイベント開催を行うスタイルの店舗として、江別市の江別蔦屋書店もあります。

こちらは2018年のオープンなので、まだ5年ほどではありますが、オープン前と後との人口を比較してみると、やはり立地エリアの周辺での人口増加が見られました。

 

江別市の地区別の人口変化(2017.10〜22.10)

赤色のマーク(+300人以上)>オレンジ色(+50〜+299人)>青色(-50〜 -299人)>紫色(-300人以下)

*緑色のマーク:函館蔦屋書店(JR江別駅近く)、イオン江別(JR野幌駅近く)

(参考:江別市 江別市統計書)

 

ただし、江別市は、この5年間で人口が増加していることもあり、蔦屋書店の周辺以外でも、増加しているエリアがいくつも見られます。

そのため、蔦屋書店ができたおかげで人口が増えた、というには難しいかもしれません。

 

しかし、蔦屋書店の周辺には、ビッグハウスなどのスーパーはあるものの、それほど賑わっているエリアではなく、駅からも遠いため、あまり便利な場所ではありません。

そのため、蔦屋書店がいい影響を与えている可能性は十分にあると思います。

 

3、店舗運営は赤字で吸収合併

このようにイベントにも力を入れた店舗運営によって、周りに住む人が増えてきた函館蔦屋書店ですが、店舗の運営は赤字だったようで、2021年2月に親会社のCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)に吸収合併されました。

(参考:文化通信「CCC 地域グループ書店などを吸収合併、一部直営店舗整理も検討」)

 

当初の目的である、「人が集まる場所」を作ることはできたものの、そこで継続的な利益を上げることは、まだまだ難しいようですね。

 

というわけで、ここまで函館蔦屋書店のその後を見てきました。

周辺の人口増加に貢献しているとは思いますが、赤字が続いているため、このまま10年、20年と「人が集まる場」として維持するには、まだ課題があるようです。

 

私見ですが、もし周辺の人口を増加させるほどのノウハウが確立できれば、住宅開発・分譲などで黒字化を目指すかもしれませんね。

数年後には、蔦屋タウンができる日が来るかもしれません。

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この記事を書いた人
ゴトウ

証券会社で12年間勤務。営業と店舗マーケティングに従事後、2018年から当サイト「イエ&ライフ」を運営しています。

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