今回の動画は、「追い詰められるイラン政府。次々殺されるイラン高官に、いつまで耐えられるのか?」ということで、やっていきたいと思います。
1、はじめに
イラン政府の最高幹部で、イラン戦争の強硬派だったアリ・ラリジャニ氏が、イスラエルの攻撃で死亡したことが、イラン政府から発表されました。

さらに、民兵組織バジジの司令官のソレイマニ氏や、イラン情報省のトップだったハティブ氏も殺害されたということで、イラン政府の各部門のトップが相次いで死亡するという、かなり異常な事態になっています。
昨年6月のイランへのイスラエルによる奇襲攻撃で、20名以上の政府高官が死亡し、今回の戦争でも、初日にハメネイ氏とその側近が死亡するなど、政府高官を狙い撃ちにし続けている状況が続いています。

これに対して、イラン政府は、重要な役割を複数人で担当する、モザイク体制をとっているため、政府高官が多少死んだところで、現場の責任者が勝手に動けるようになってるから大丈夫だとか、まだまだ、指揮を取れる人間はいるとか、かなり強気のようです。
実際、イランによる湾岸諸国やイスラエルへの攻撃は続いており、専門家の分析を見ても、長期化を予想する人が多い印象ですね。

しかし、そもそも、今回トランプ政権がイランに戦争を仕掛けた理由は、以前の動画で考察したように、
①イラン政府の転覆
②イギリスの中東不安定化を通じた、金融支配体制を壊す
ということだと思います。では、今回のようなアメリカとイスラエルによる高官殺害作戦が、どういった意味を持ってくるのでしょうか?
今回はこの点について、考察していきたいと思います。
それでは、参りましょう
参考書籍
本題に入る前に、今回の動画を作るにあたって、参考にした書籍をご紹介します。
それがこちらの「イランの地下世界」です。

著者は若宮 さとしさんという方で、20代の頃から留学や仕事で、イランに長期滞在をしていた経験のある人です。
内容が内容なだけに、イラン政府にバレるとやばいので、ペンネームで今回の書籍を出したそうです。
この本は、2024年5月に出たものなのですが、YouTubeで検索してみても、誰も取り上げてなさそうですし、書かれている内容がかなり衝撃的なので、参考にさせていただきました。
それでは、ここからが本題です。
2、イランとはどんな国なのか?
まず最初に、イランがどういう国なのか?について、イランの地下世界を参考に解説していきます。

目次を見ただけでも、かなりやばい内容なことがわかりますので、いくつか抜粋してみました。
・スカーフを脱ぎ始めた女性たち
・オンライン授業はスカーフに短パンで
・出世したけりゃチャドルをかぶれ!
・イスラム共和国を支持しているのは誰か
・”イスラムごっこ”地に堕ちた革命の理想
・政教一致を批判する小学生
・マリファナできめて夜のテヘランへ!
・”クラブ”で朝まで踊り明かせ!
・「アメリカに死を!」を嗤う・現実味を帯びてきた王政復古
などなどです。
これだけでも、現在のイランが、どんな国になってしまっているのか?が、なんとなくイメージできると思います。
ですが、この本は、若宮さんが実際に住んでみて、そして、そこで出会った人たちとのエピソードを中心に描かれているので、とても具体的でわかりやすいのですが、一方で、一人の人間が経験した、ごくごく一部のことではないか?と思ってしまいがちです。
そこで、私の方でデータをいろいろ集めてみましたので、これらの話が、イランの一般的な話なのか?ごく一部にしか当てはまらなそうなのか?見ていきましょう。
まずは、イランのインフレ率です。
こちらのグラフは、1960年代から2026年までのデータを年ごとに表したものになります。

(参考:世界銀行、
イラン革命が起こった1979年以降、インフレ率が年率10%未満だった年はほとんどありません。そして、2020年代に入ると、年率40~50%はザラになってきて、直近の2026年は60%を超えてきました。
1年で5割物価が上がるということは、2年で貨幣価値が半分以下になるということです。
60歳で定年になって、退職金を2000万円もらっても、2年後には物価が倍以上になってるので、1000万円分の価値に目減りしているような、そんな状況なのです。
なので、一般庶民の生活はかなり厳しい状況だと想像できますよね。

次は失業率を見ていきましょう。こちらは2009年から2018年までのグラフで、ちょっと古いですが、ずっとこういう状況が続いているといいうことが見てわかります。
平均すると10%前後の失業率ですが、15~24歳の若い世代では、25~30%前後でずっと続いているため、あぶれてしまった若い人は、かなり絶望的な状況にあったと言えます。
最近は少し下がってきていて、イラン国民全体で約7%、若い人で20%ぐらいになってはいるものの、まだまだ高い状況が続いているようですね。
こんな状況が続いていたため、イランでは、大規模な抗議活動が何度も起こっています。

こちらはwikipediaをもとに、代表的な抗議活動をまとめたものですが、2016年以降は、毎年のように起こっていることがわかります。
また、右側の紫色で塗った数字は、これらの抗議活動で死んだ人の数ですが、数千名規模で死んでるものが1981年、2019年、そして今年と、3回もあります。
特に、昨年から今年1月にかけての抗議活動では、最大3万人の犠牲者が出た可能性もあるということなので、現在のイラン国民は、かなり政府に対して怒りを持っているということが想像できますね。
それで、こちらは、1960年代から70年代のイランの写真を集めたものです。

当時は、パフレビー王朝だったので、アメリカの影響力が強く、街並みや服装も60年代ぐらいのアメリカみたいな雰囲気を感じさせますね。
こんな状況から、女性はヒジャブという頭や首を隠すスカーフをつけなければいけなくなったわけですから、イラン革命があった1979年にこんなのつけたくないと女性を中心とした抗議活動が起こったのも納得です。
2022年にも、ヒジャブの付け方で警察にイチャモンをつけられた女性が、逮捕されてそのまま死んでしまったという事件を機に、大規模な抗議活動が起こって、それからは緩くなっているようですが、結構な割合のイラン女性は、もういいよ、というのが本音なのではないでしょうか?
とまあ、こんな感じで、イラン国内の政治や経済への不満はどんどん蓄積されているように思うのですが、政府の周辺にいる人たちは、結構いい暮らしをしていることも、一般国民の反感をかなり買っているようです。

現在のイラン政府は、イスラム革命防衛隊、Islamic Revolutionary Guard Cop、通称IRGCという組織が牛耳っているような感じで、イラン革命でトップに立ったホメイニ師も、この組織の後ろ盾がなければ、ここまで政権を維持できなかったと言われています。
それで、このIRGCは、イランの石油やガス、建設業、海運、自動車など、100以上の企業に出資したりしているため、イラン経済の10~50%ぐらいを支配していると推測されています。
そのため、この利権の輪の中に入れた人たちは、経済的にも美味しい思いができていますが、そうでなければ、年率50%のインフレでどんどん貧乏になっているため、貧富の格差がさらに拡大しており、この点も、抗議活動が激化している理由と言われています。
3、イラン・イラク戦争の茶番
このように、現在のイラン政権は、イスラム革命防衛隊IRGCに、政治も経済も牛耳られている状況なのですが、一体どのようにして、現在のようなことになったのでしょうか?

そもそもですが、1979年のイラン革命は、英米が仕掛けた政府転覆劇でした。
このイラン革命で追い出されたレザー・パフレビー王は、インタビューでこのように語っています。
「当時は知らなかった―もしかしたら知りたくなかったのかもしれない―しかし今となっては、アメリカが私を解任したかったのは明らかだ。国務省の人権擁護団体が望んでいたのはまさにこれだったのだ」
以上です。
また、別のインタビューでは、
「ホメイニのひげを持ち上げると、あごの下に「Made in England」と書かれているのがわかるだろう」
とも語っており、まあ、イギリス、アメリカが仕掛けたのがイラン革命だったということがわかりますね。
その理由は、中東が不安定化することで、英米のグローバリストが利益を得たかったということなのですが、この点については、こちらの動画で詳しく語っています。
それで、今回話したいのは、IRGCについてです。
この組織は、1979年のイラン革命以降にできた組織なのですが、どのようにしてこんなにデカくなったのでしょうか?

それは、1980~88年にかけて行われたイラン・イラク戦争です。
当時のイラクの大統領だったフセインは、ソ連や中国と仲がよくて、アメリカに支援されていたパフレビー政権を敵対視していました。
それが、イラン革命で倒されたので、新しい政府と仲良くしようとしていたのです。
ところが、ホメイニ師は、この誘いを跳ね除けて、イラク国民にフセイン政権の政党であるバアス党をぶっ倒せと呼びかけて、喧嘩を売りました。
フセインは驚いて、そんな挑発はやめてくれ、お互い内政干渉はやらないでおこうやと宥めようとしたのですが、ホメイニはこの提案を拒否して、イラク国民を煽ってきました。
イラクは、スンニ派のバアス党が政権をとっていましたが、国民の75%はシーア派であり、イラン政府と同じ宗派です。なので、イランがこのままイラク国民を煽り散らかせば、イラクでもイスラム革命が起きてしまう可能性があります。
これを恐れたフセインは、まんまとホメイニの挑発に乗ってしまい、1980年にイランに戦争を仕掛けました。これがイラン・イラク戦争が起こった経緯です。
しかし、この当時、イランは革命のゴタゴタで、まだ政権も盤石ではありませんでした。ヒジャブをつけろとか、イスラム教の教えにもっと従えとか、それまでの自由な雰囲気から、一気に厳格化していったので、国内でも抗議活動が沸き起こってもいました。
そんな時期に、なぜこんな挑発を行なったのでしょうか?
その理由は、私が思うに2つあって、
1つは、イラン軍をIRGCが乗っ取るため
そしてもう1つが、戦争モードにすることで、イラン国内での理不尽を国民に納得させるため、だったと思います。

そもそも、イラン革命が起こる前のイランの軍事力は、アメリカの支援もあって、世界5位と言われるほどの強国となっていました。
こちらの画像は、イラン軍が持っていた戦闘機で、アメリカ製のF-14トムキャットや、ノースロップのF5など、結構な軍備を持っていたことがわかります。
なので、イラン革命以降にできた、ポッと出のイラン革命防衛隊が、政府を牛耳ろうとしても、軍が反対して、また政権がひっくり返ってしまう可能性もありました。
そのため、イラクを挑発することで、イランに攻めさせることで、軍隊がイラク軍に集中せざるを得なくしている間に、どさくさに紛れてイラン軍を粛清していったのでしょう。

この点について、詳しくみていくと、1979年のイラン革命後、その年の2~9月の間に、85人の上級将軍を処刑し、他の将校も退職させられています。
さらに、1980年9月までに、なんと1.2万人もの将校が粛清されていました。また、これを受けて、ヒラの軍人も6割辞めてしまったということで、かなりの弱体化が進んだようです。
このように軍の弱体化を進める一方で、 IRGC傘下の民兵組織バシジを組織して、IRGCの勢力を拡大していきました。
また、イラクに攻められたものの、空軍は温存していたようで、先ほどのご紹介した戦闘機はまだ使えていたらしく、空爆によって戦況が好転していき、1982年にはイラクから停戦を求める和平提案がされましたが、ホメイニはこれを拒否して、倒すまで辞めないと訴えました。
1981年から82年のイランは、国民にイスラム教の教えを押し付けるイラン版の文化革命期とも言える時期だったので、そんな時期に停戦したら、戦争中なんだから我慢しろ!とか、そういった難癖をつけての無茶苦茶ができなくなります。
ホメイニが82年の停戦提案を拒否したのは、そのような理由からだったのではないかと思います。

また、このホメイニやIRGCの裏には、アメリカがいたようにも思います。
現在のイラン情報省の前身は、パフレビー王朝時代にあった諜報機関のSAVAKです。
このSAVAKは、CIAやイスラエルの諜報機関のモサドの支援を受けており、王様のいうことを聞かないで暴走しまくっていたようです。海外でのスパイ活動や、王様の資産がいくらあるのかを調べたりと、結構手がつけられない状況でした。
そんなSAVAKは、イラン国民の弾圧もやっていたので、国民からは恨まれていたのですが、イラン革命が起こって、上級将校は処刑されたものの、それ以外の数千名のスタッフは、そのまま政府に残って、いろいろな機関に分割配置され、のちにイラン情報省に統合されていきました。
先ほど、1.2万人もの将校が粛清されたと言いましたが、軍部がろくに抵抗もせずに、これだけの数の粛清ができたのは、おそらくこの秘密警察のようなことをやっていたSAVAKの職員が、裏で動くことができたからでしょう。
そして、そこ裏にはアメリカやイスラエルの支援があったというわけです。
なので、IRGCがイラン国内でここまで力を持つことができたのは、英米イスラエルの思惑通りだったという可能性が高いんですね。

なぜイスラエルが、イラン・イラク戦争時も含めて、革命後のイランを支援していたのか?については、ちょっと謎が残ります。
イラン革命当時のイスラエルは、リクード党という、現在のネタニヤフ首相がいる政党が与党となっていましたが、その直前の1977年ぐらいまでは、イギリスと仲が良かった労働党が長いこと政権をとっていましたので、イスラエルの諜報機関もイギリスに都合の良い動き、つまりイランを育てて中東を不安定化させるという工作を続けていたのかもしれません。
ただ、現在のトランプ政権は反グローバリズム政権なので、これまでの英米のグローバリストが作ってきた構造をぶち壊すためにイラン戦争を仕掛けているのは間違いないので、イスラエルもその流れに乗っているのでしょう。
というわけで、ちょっと長くなってきたので、ここまでの話を一回まとめてみます。

という感じですね。
それで、長期化するだろうということで、原油価格が1バレル90ドルを超えて、いずれ100ドル越え、もしかしたら200ドルも行くんじゃないか?と騒がれていますが、

トランプ政権の貿易製造政策局を率いるピーター・ナバロ氏が、最近ウォール・ストリート・ジャーナルに寄稿したレポートがありまして、それによると、現在のイランがイカれた政権だったせいで、これまで50年近く、原油価格がそのリスクを織り込んで割高な価格で維持されてきたから、政権が潰れれば、価格は戦争前の60ドルよりも、さらに安くなるだろうと分析していました。
これに対して、反論する経済学者もいますが、原油価格が安定すれば、原油の価格操作や海上保険で儲けてきたロンドンの金融支配体制が崩れていきます。
現在、ホルムズ海峡が封鎖されてしまったことで、海上保険も機能不全になりつつあるようですが、長期化しても、短期で終わっても、イギリスの金融機関には打撃となっていきそうな気がしますね。

また、今回の攻撃によって、どこにいても、絶対にやられてしまうことが証明されたようにも思います。
今回、アメリカとの徹底抗戦を主張していたラリジャニ氏や、国内での弾圧係だったソレイマニ氏やハティブ氏など、現在のイランの中枢のポストにいた人たちが、相次いで爆殺されたことで、次に誰が就任しても、必ずやられるし、逃げられないことがわかったのではないでしょうか?
実際、2/28にハメネイ氏などの高官が爆殺されて以降、次の最高指導者に指名された息子のモジタバ・ハメネイ氏は、一度も表に姿を現していないようです。
大怪我をしているといった噂もありますが、姿を現したら、必ずやられると思って隠れているのかもしれません。
そして、トランプ氏は中国訪問を1ヶ月延期させたということなので、中国に仲介役を頼んでの停戦交渉の可能性も遠ざかりました。
おそらく、これからさらに1ヶ月以上、イラン政府高官への爆撃は続きそうですね。

それで、実は抗議活動が激化した1/7の時点で、亡くなったハメネイ氏に対して、一部の高官が引退を進言していましたが、ラリジャニ氏などが反対して、謹慎処分を受けていました。
これは、現在のイラン政府の中でも、徹底抗戦派と降伏したい派とで分裂しているということなのでしょう。そして、降伏したい派は、徹底抗戦派が全員死なないと、降伏できないと思っているのではないでしょうか?
今回、ラリジャニ氏やソレイマニ氏が殺害されたことを受けて、アラグチ外相が死んでも代わりはいくらでもいるから、アメリカはいくら高官を爆殺しても終わらないよといってましたが、
ひねくれた見方をすれば、まだまだいるからもっとやれと言ってるようにも聞こえますし、徹底抗戦派はさっさと次の責任者を表に出せ!そして、アメリカに爆殺されてこい!と言ってるようにも聞こえます。
もし、今回ご紹介した書籍の「イランの地下世界」の状況が本当だったとすると、たとえ、イラン政府のトップが爆殺されて、現地の司令官がそれぞれ独自に動くモデュール組織だから大丈夫だと言われても、周りの住民による支援はあまり期待できないでしょうし、よほど食料や兵器の備蓄がなければ、長期戦も難しくなっていきそうな気がします。
なので、ある程度の目処がつけば、イラン戦争は終結に向かう可能性が高いように思います。
それと、仮に長期化するのであれば、それはトランプ政権の誤算ということではなくて、イギリスの金融支配体制を壊すのに役立つとか、そういった世界の構造を壊すために、わざと長引かせようとするのかなと思いますね。
この辺りの情報については、今後も引き続き追いかけていきたいと思います。







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