東京スター銀行は、リバースモーゲージローンのパイオニア的な存在で、テレビCMや電車の中吊り広告などで積極的に宣伝している効果もあって、すでに1万人以上の方が利用しています。
(参考:ニッキン 「東京スター銀行、リバモ好調、1万人突破」)
このように人気の「充実人生」ですが、どんな人でも使っていいサービスではありません。
そこで、この記事では、
- 充実人生のメリットとリスク
- どんな人が使ってはいけないのか?
について、詳しく解説していきたいと思います。
充実人生の特徴
リバースモーゲージ・ローンとは?
リバースモーゲージ・ローンとは、
「自宅を担保にお金を借りられて、死んだ後に売却して清算」
する仕組みのローンのことです。
その主なメリットは、
- 死ぬまで自宅に住み続けられる
- 高齢でもお金を借りられる
の2点が大きいですね。
デメリットとしては、
- 死ぬまで金利がかかる(場合によっては払い続けなければならない)
- 相続人の了承が必要な場合がある
- 担保の資産価値が借入額よりも下回ると、返済しなければいけない
といった点があります。
これらのデメリットについては、後ほど詳しく解説します。
充実人生の特徴
①契約条件
*2022年1月23日現在
項目 | 条件 |
年齢 | 55〜84才 |
年収 | 120万円以上かどうかで、利用できる契約が変わる |
対象物件 | 戸建て(銀行評価額1,000万円以上)・マンション(銀行評価額2,000万円以上) |
融資極度額 | 300万円〜1億円 |
担保評価額の見直し |
年に1回。 担保評価が借入額を下回った場合には、下回った金額分を返済 |
返済方法(利払いあり型) | 毎月返済 |
返済方法(元本) |
|
金利 |
2.95〜3.95%(2022年1月現在) *変動金利(半年に1度、条件を見直し) |
手数料 |
その他、登記費用・印紙税など実費 |
充実人生のメリット(一部デメリット)
①相続人からの了承が必要ない
充実人生がもっとも優れている点は、「相続人からの了承が必要ない」という点です。
リバースモーゲージローンでは、死後に売却して清算する仕組みなので、普通ならば相続人が相続して売却をしなければいけません。
そのため、事前に相続人の了承を得ておかないと利用できないケースが多いため、他行ではなかなか契約件数が伸びていないのが現状です。
しかし、東京スター銀行では、相続人が売却して清算するのではなく、「代物弁済(自宅を銀行に明け渡してチャラにする方法)」も選べるため、相続人の了承が必要ないのです。
そのため、お子さんがいない独り身の方が利用することもできるので、人気があるんですね。
(質問)私には相続人がいません、どのように契約が終了するのでしょうか?
(回答)法律手続きに則った対応となります。管轄裁判所により選任された相続財産管理人によって、債務が弁済されることになります。
ただし、代物弁済では、自宅を渡してチャラにする契約のため、もし銀行がローン以上のお金で売却できたとしても、残ったお金が相続人に渡ることはありません。
そのため、「相続人に少しでも財産を残してあげたい」ということであれば、ちょっと使いにくいサービスと言えるでしょう。
(質問)自分が死んだら自宅は銀行にとられてしまうのですか?
(回答)担保物件による代物弁済
<中略>
なお、担保不動産をお借入残高より高く売ることができても、その超過分をご相続人の方に返金することはいたしかねます。
②利用できるエリア、物件の対象範囲が広い
リバースモーゲージローンは、借りた人が死んだ後に物件を売却して清算する仕組みのため、清算する時期は数十年後になります。
そのため、金融機関によっては、
- 土地付きの戸建てのみ対象
- マンションは時価評価で5,000万円以上の都内のみ
など、かなり利用基準が厳しくなっています。
その点、東京スター銀行では、支店のあるエリアでは取り扱いされていますし、戸建てで1,000万円以上、マンションで2,000万円以上の銀行評価額であれば良いので、かなり対象範囲が広く、利用しやすいでしょう。
最近では、地銀や信金もリバースモーゲージローンを取り扱っていますが、基本的には相続人の了承が必要なので、充実人生の方が使いやすいはずです。
充実人生の注意点
ここからは、充実人生を使う際に、考えておくべき注意点について解説します。
①利払いなし型は、思っている以上に借りられない
充実人生では、①利息分を毎月返済する「利払いあり型」と、②死亡時に元本と利息を一括で返済する「利払いなし型」、の2種類があります。
年金収入が120万円未満の場合、利払いなし型を選ぶことになるわけですが、銀行の担保評価の約2割しか借りられないので注意が必要です。
5,000万円の評価額でも、1,100万円しか借りられない
死ぬまで住み続けられるとは言え、思っているよりも借りられない可能性があるため、特に年金が少なくて「利払いなし型」しか選べない人は、慎重に検討すべきでしょう。
②「郊外の戸建て」は使ってはいけない
リバースモーゲージのもっとも怖いところは、「数十年先に売却をして清算」という点です。
これは「死ぬまで住み続けられる」というメリットである一方で、「数十年先までの土地価格の変動リスク」でもあるからです。
2008年に日本の人口はピークを打ち、10年過ぎました。
これから人口はもっと減っていくわけですから、土地価格が下落しやすいエリアは、当然増えていきます。
また、アベノミクスが始まった2013年以降は、土地価格が上昇していると言われていますが、通勤に便利な駅に近い一部のエリアだけで、郊外のエリアではほとんどが横ばい、ないしは下落しています。
さらに、東名阪のエリアでは、2022年に生産緑地が解禁になるため、土地価格の下落が予想されています。
生産緑地は、駅近の市街地の中心部にはあまりなく、郊外のエリアに多いので、郊外の宅地と競合する可能性が高いです。
そのため、郊外の宅地を担保にお金を借りると、その後の土地価格の下落によって担保価値が下がり、途中で繰上げ返済を求められる可能性があるのです。
ですから、もし郊外の戸建てを担保に利用したいのであれば、かなり慎重に借りることをオススメします。
③過度な借り入れは危険
充実人生の金利は現在3%前後ですが、今後の金利情勢によっては、かなり上昇してしまう可能性があります。
というのも、現在の低金利は日銀の異次元緩和政策によって実現されているものだからです。
異次元緩和政策については、こちらの記事でかみくだいて解説していますが、ようするに、「日銀がお金を刷って刷って刷りまくって、株や国債を買っている政策」なんです。
なので、ずっと続けるわけにはいなず、2023年に黒田総裁が退任する頃には、異次元緩和も終了する可能性があります。
そうすると、今後は金利が上昇しますので、充実人生で1,000万円借りている人は、
- 金利3%:月2.5万円(現在)
- 金利4%:月3.3万円
- 金利5%:月4.1万円
と負担が大きくなっていく可能性があるのです。
そのため、必要以上に借りて使いすぎるのは、リスクが大きくなるので注意が必要ですね。
結論:どういう人に向いているか?
というわけで、充実人生を利用しても大丈夫な人の条件をまとめると、
- 生きているうちに財産を使い切ってしまいたい人
- 死亡保険金を自分のために使いたい人(相続人が受け取る保険金をそのまま借金の返済に充てれば、自宅を相続させられる)
- 担保とする土地・マンションが、郊外ではない人
と言えるでしょう。
充実人生について、もう少し詳しく知りたい方は、こちらから公式ホームページへと移動できますので、そちらで確認してみてください。
また、このサイトでは、47都道府県の主な市区の土地価格の現状と、将来予想について解説しています。
こちら↓のページから、各市区を探せますので、興味のある方はご覧になってみてください。
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