みずほ銀行が取り扱っているリバースモーゲージ・ローン「プライムエイジ」は、数年前にCM放送もされて、大手都銀の中では力を入れていたサービスでした。
ですが、ここ2、3年はあまり話題にのぼることもなく、東京スター銀行の充実人生だけが目立っている印象です。
そこで、この記事では、
- プライムエイジのメリットとリスク
- どんな人が使ってはいけないのか?
について、詳しく解説していきたいと思います。
プライムエイジの特徴
はじめにリバースモーゲージ・ローンについて少しだけ解説します。
リバースモーゲージ・ローンとは?
リバースモーゲージ・ローンとは、
「自宅を担保にお金を借りられて、死んだ後に売却して清算」
する仕組みのローンのことです。
その主なメリットは、
- 死ぬまで自宅に住み続けられる
- 高齢でもお金を借りられる
の2点が大きいですね。
デメリットとしては、
- 死ぬまで金利がかかる(場合によっては払い続けなければならない)
- 相続人の了承が必要な場合がある
- 担保の資産価値が借入額よりも下回ると、返済しなければいけない
といった点があります。
これらのデメリットについては、後ほど詳しく解説します。
プライムエイジの特徴
契約条件
*2018年12月29日現在
項目 | 条件 |
年齢 | 55才以上 |
年収 |
金融資産を相応に保有し、安定かつ継続した収入の見込める方(年金収入等) |
対象物件 |
・戸建て:土地の評価額が2,000万円以上 ・マンション:①借主が100才になる時点で築45年以下、②占有面積50㎡以上、③評価額が坪250万円以上、総額5,000万円以上 |
契約コース |
・フリー口:使い道自由 ・目的口:介護、リフォームなどの限られた目的のみ |
貸越極度額 |
・目的口:1,000万円〜2億円 *実際の利用可能金額は、この50%以内なので、実質500万円〜1億円 ・フリー口:4,000万円まで |
対象地域 |
東京、神奈川、千葉、埼玉 |
推定相続人の同意 | 推定相続人全員分の承諾書が必要 |
担保評価額の見直し |
年に1回。 担保評価が借入額を下回った場合には、その分を一括または分割で返済 |
返済方法(金利分) | 借入額へ組み入れ(月々の返済不要) |
返済方法(元本) |
のいずれか |
金利 |
|
費用 |
その他、登記費用・印紙税など実費 |
プライムエイジの注意点
①推定相続人からの承諾が必要
リバースモーゲージ・ローンでは、自宅の持ち主(と配偶者)が死んだ後に売却して清算する仕組みのため、売却は相続人が行うことになります。
遺産分割協議では、全員が承諾しないと自宅の名義変更と売却ができませんから、全員分の承諾が必要になるのです。
この点が、リバースモーゲージを利用したい人にとって、かなりのハードルとなっているようですね。
そのため、相続人からの同意の必要のない東京スター銀行の「充実人生」へと流れているのではないでしょうか。
ただし、「相続人からの同意がいる=東京スター銀行よりもサービスが劣っている」というわけではありません。
というのも、東京スター銀行が相続人からの同意を必要としないのは、「代物弁済(自宅を渡してチャラにする)」という契約だからです。
この場合だと、たとえ自宅を売却した金額が借入金よりも多かったとしても、相続人に残りのお金が行かないのです。
ですから、「少しでも残された家族に財産を残したい」という方は、面倒でも相続人全員からの承諾を得ておく価値はあるのです。
②金利が元本組み入れ型なので、長生きのリスクがデカイ
リバースモーゲージローンは、2種類の金利の返済方法があります。
- 金利を毎月支払うタイプ
- 金利を元本に組み入れるタイプ
の2種類で、プライムエイジは「2.金利を元本に組み入れるタイプ」になります。
例えば、1,000万円借りて、その年の金利が3%だった場合には、翌年には1,030万円借りていることになります。
その翌年には、1061万円、、、、、と組み入れた金利にさらに金利が乗って行くため、雪だるま式に借金が増えていくのがこのタイプのローンの特徴です。
現在のリバースモーゲージの金利は3%前後ですが、仮に1,000万円借りて、このまま30年経ったとすると、借入額は2,357万円にまで膨れ上がります。
金利を元本に組み入れるタイプは、長生きするほど借金が膨れ上がる
しかも現在は、日銀が異次元緩和政策を取っているので、これほどの低金利なわけですから、今後はもう少し上がってくる可能性が高いです。
仮に10年後に4%に上がってしまうと、3倍近くにまで膨れ上がってしまいます。
そうなると、健康面で厳しくなって、介護などのサポートが必要になってくるころに、
- 担保割れの部分を数百万円単位での一括返済
- 最悪の場合には、売却して清算
という可能性が出てくるのです。
そのため、みずほ銀行では、借入可能額が担保評価の50%までとなっています。
担保評価の50%までということは、現在の低金利が続いたとして、24年以上経つと担保割れになります。
その上、これから24年間に土地価格が下落すれば、担保割れの分は一括返済が必要になりますので、実際の借入額は、担保評価の30%ぐらいにしないと危ないでしょう。
プライムエイジのリスク
ここからは、プライムエイジを使う際に、考えておくべきリスクについて解説します。
①「郊外の戸建て」は使ってはいけない
リバースモーゲージのもっとも怖いところは、「数十年先に売却をして清算」という点です。
これは「死ぬまで住み続けられる」というメリットである一方で、「数十年先までの土地価格の変動リスク」でもあるからです。
2008年に日本の人口はピークを打ち、10年過ぎました。
これから人口はもっと減っていくわけですから、土地価格が下落しやすいエリアは、当然増えていきます。
また、この5年間で土地価格が上昇していると言われていますが、通勤に便利な駅に近い一部のエリアだけで、郊外のエリアではほとんどが横ばい、ないしは下落しています。
さらに、東名阪のエリアでは、2022年に生産緑地が解禁になるため、土地価格の下落が予想されています。
プライムエイジは、東京、神奈川、千葉、埼玉が利用可能なエリアなので、モロにこの影響を受けるはずです。

生産緑地は、駅近の市街地の中心部にはあまりなく、郊外のエリアに多いので、郊外の宅地と競合する可能性が高いです。
そのため、郊外の宅地を担保にお金を借りると、その後の土地価格の下落によって担保価値が下がり、途中で繰上げ返済を求められる可能性があるのです。
ですから、もし郊外の戸建てを担保に利用したいのであれば、かなり少なめに慎重に借りることをオススメします。
②過度な借り入れは危険
プライムエイジの金利は現在2.975〜3.475%ですが、今後の金利情勢によっては、かなり上昇してしまう可能性があります。
というのも、現在の低金利は日銀の異次元緩和政策によって実現されているものだからです。
異次元緩和政策については、こちらの記事でかみくだいて解説していますが、ようするに、「日銀がお金を刷って刷って刷りまくって、株や国債を買っている政策」なんです。
なので、本当はこれは禁じ手なのです。
そのため、アメリカはとっくの昔にやめてますし、EUも2018年末でやめました。
残るは日本だけなのです。
異次元緩和政策のメリットの1つとして、「円安に誘導できる」点がありますが、これは逆を言えば、他の国が損をしていることになります。
アメリカと中国の貿易関係がゴタゴタしていますが、日本だってこんな状況を続けていては、ブーイングが来るでしょう。
いずれ異次元緩和を辞めざるを得ません。
そう考えると、今後は金利が上昇しますので、プライムエイジで1,000万円借りている人は、
- 金利3%:月2.5万円(現在)
- 金利4%:月3.3万円
- 金利5%:月4.1万円
と負担が大きくなっていく可能性があるのです。
そのため、必要以上に借りて使いすぎるのは、リスクが大きくなるので注意が必要ですね。
もう少し詳しく知りたい方は、こちらから公式ホームページへと移動できますので、そちらで確認してみてください。
また、このサイトでは、47都道府県の主な市区の土地価格の現状と、将来予想について解説しています。
こちら↓のページから、各市区を探せますので、興味のある方はご覧になってみてください。


コメント