この記事では、相続トラブルの実態について解説します。
1、どれぐらいの割合で、相続トラブルに巻き込まれるのか?
日本では、少子高齢化の影響もあって、年々死亡者が増加傾向にあります。
昨年2022年は、156万9,050人の死亡ということで、前年比で約13万人も死亡者が増えていました。
死亡者数が増えれば、相続の件数も増えます。そのため、トラブルになる件数も年々増加傾向にあります。
昨年2022年に、裁判所に持ち込まれた遺産分割に関するトラブルは、16,687件と過去最高を更新しています。
(裁判所 「家庭裁判所における家事事件及び人事訴訟事件の概況及び実情等」)
ただし、この件数は、調停(調停委員という第3者を交えて、話し合いで解決する方法)でも解決せず、審判(裁判官に白黒をつけてもらう)にまで行った件数も含まれています。
そのため、トラブルの件数は、調停件数の12,981件と考えられます。
そうすると、死亡者数156.9万人に対して、調停件数が約1.3万件ということなので、ザックリいうと、125人に1件の割合(約0.8%)で、相続トラブルが起こっているということになります。
これを多いと取るか、少ないと取るかは人それぞれだと思いますが、もう少し詳しく見てみましょう。
2、どんな人が、相続トラブルに巻き込まれているのか?
裁判所に持ち込まれた相続に関するトラブルのうち、解決した件数を見てみると、資産5,000万円以下のケースが、全体の約77%、なんと8割近くも占めていました。
また、これらのケースのうち、弁護士が関与している割合を見てみると、資産1,000万円以下のケースにおいても、8割近くにもなっていました。
相続トラブルが起こると、資産が多かろうが少なかろうが、かなりの大ごとになっていることがわかります。
また、相続のトラブルになった時の当事者の数が、年々減少傾向にあります。
相続人が2人および3人の場合が、それぞれ約3割にまで迫っています。
5人以上の親族を巻き込んだ争いは減り、残された配偶者と子ども同士のような、身近な存在との争いが増えているのです。
(裁判所 「家庭裁判所における家事事件及び人事訴訟事件の概況及び実情等」)
以上のことから、
- 遺産が少額であってもトラブルが起こっているし、弁護士が関与する本格的な形になっている
- 相続人が2〜3人の少人数のトラブルが増えている
ということで、家族内の不仲・関係性の希薄化によって、争いが増えている可能性がありそうです。
3、なぜ相続トラブルが起こるのか?
では、なぜ相続のトラブルが起こるのか?その根本となる原因について考えてみましょう。
①相続財産に占める不動産の割合が高い
1つ目は、遺産の中でも、不動産が占める割合が高いためです。
特に財産が少ない場合、遺産のほとんどが自宅、というケースも珍しくありません。
自宅の名義を共同にしたとしても、住むのは相続人のうち1人だけでしょうし、ほかの相続人は何のメリットもありません。
また、平成のバブル崩壊後の日本は景気が回復することもなく、相続人となる40〜50代は氷河期世代で、非正規雇用の人も多く、経済的に苦しい人の割合も増えています。
平均的な40代〜50代の単身世帯の場合、貯蓄額は50万円程度、という調査もあります。
しかも、単身世帯の3割以上が、貯蓄ゼロだというのです。
(単位:万円)
(参考:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」)
そのため、実家を相続できないのであれば、売却してお金をもらいたい、という人も多いでしょう。
②兄弟姉妹の平等意識
昔なら「実家を継がせるなら長男に」と言えば、なかなか文句も言われにくい状況だったかもしれません。
ですが、今の50〜60代ぐらいであれば、親からの子どもたちの扱いは、ほぼ平等だった人の方が多いのではないでしょうか。
そのような平等意識は、兄弟姉妹同士の相続の場で、トラブルの火種となります。
特に実家が遺産の大半を占める場合、実家を継いだ相続人が、財産の大部分を相続してしまうことになります。
そうすると、平等意識の強い他の相続人が異議を唱えて、トラブルになってしまうわけです。
4、押さえておきたい遺留分
このように、あまり金額が大きくなくても、相続トラブルが起こっているわけですが、では、トラブルに遭わないためには、どうすればいいのでしょうか?
1番重要なのは、相続人(親・兄弟)との関係を良好にしておくことではありますが、金銭面で不安を抱えている相続人も増えている現状なので、お金の面での準備も必要となるでしょう。
そこでポイントとなるのが遺留分です。
遺留分とは,一定の相続人のために,相続に際して,法律上取得することを保障されている相続財産の一定の割合のこと
すべての法定相続人に権利があるわけではなく、死んだ人から見て、配偶者や子ども、そして親が対象になります。つまり、兄弟姉妹は、対象外です。
遺留分は、法定相続分の半分が目安となります。具体的に、どれぐらいの割合なのか?がこちらです↓
相続人が誰になるのかによって、割合が変わってきます。
たとえば、親御さんが亡くなって、相続人が子ども1人だった場合、法定相続分は1(全部)で、遺留分はその半分の1/2になります。
子どもが複数人いる場合には、人数分でさらに分けることになります。
2人兄弟なら、一人当たりの遺留分は1/4、3人兄弟なら1/6ですね。
この遺留分は、法律上で保証されている最低限の割合です。
なので、財産のほとんどが分けることが難しい自宅であれば、遺留分のお金などを分けることで、話し合いを解決する、というのが、現実的な方法でしょう。
たとえば、2人兄弟で、2,000万円の評価がつく自宅しか遺産がないのであれば、遺留分(1/4)の500万円をもう一人の相続人に渡すことで、決着をつける、というイメージですね。
(参考)
なお、実家の相続でそのまま保有するか、売却するかで悩まれているのであれば、こちらのリンクから、各都道府県、市町村の土地価格の現状と、今後の予測をチェックすることができます。
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