なぜ、アメリカで住宅の不法占拠が増えているのか? | イエ&ライフ

なぜ、アメリカで住宅の不法占拠が増えているのか?

アメリカ

アメリカの不法移民問題が、日本でもテレビや新聞などで取り上げられるようになっていますが、その中でも、不動産の不法占拠が増えているそうです。

 

私が知ったきっかけは、TikTokで、アメリカ在住の(不法?)移民の若者が、

「空き家を不法占拠することで、住む場所をゲットできる。これは法律で、決められたもので、友人のアフリカ系アメリカ人は、この方法で7軒も住宅をゲットした」

と、動画をシェアしたという記事を知ったことでした。

 

 

そんなことがあるの?と驚いてしまいますが、詳しく調べてみると、不法占拠に関するニュースが、いろいろと出てきます。

 

例えば、ロサンゼルスの高級住宅地ビバリー・ヒルズに、州が差し押さえた邸宅があるのですが、そこを不法占拠した人たちがいて、夜な夜なパーティを開いていました。

(参考英語記事:CURBED「ビバリーヒルズの不法占拠者」)

 

また、NY市では、「不法占拠された住宅所有者が、不法占拠者が入れないように家の鍵を交換したら、逆に警察に捕まってしまった」という、日本の感覚では理解できないような事件が起きています。

(参考英語記事:「両親から受け継いだ100万ドルの家を「盗んだ」不法占拠者との緊迫した対立の末、うんざりした住宅所有者を逮捕」)

 

このような事態が全米で起こっているため、フロリダ州では、不法占拠者を警察が逮捕できるように法律を改正しました。

(参考英語記事:FOX NEWS「他の州法が住宅所有者を悩ませる中、不法占拠反対派の「専門家」がフロリダ州の禁止を祝う」)

 

また、不法占拠者を追い出すプロがいて、Youtubeチャンネルを運営しています。

Outside The Box with Flash
#squatterhunters Outside the box thinking with Flash Shelton . Anti Squatter Activist Famous for squatting the squatters...

 

というわけで、この記事では、アメリカにおける不法占拠の実態や、なぜそんなことが起こっているのか?そして、なぜ最近盛り上がっているのか?について、考察していきます。

 

1、アメリカには不法占拠に関する法律がある

まず、最初にアメリカの不法占拠に関する法律について、見ていきましょう。

アメリカは、もともとネイティブ・アメリカンが住んでいましたが、白人が入植してからは、どんどん彼らを追いやって、自分たちの土地にしてきました。

 

同時に、白人同士での土地の争いも頻繁に起こりました。そのため、「誰がその土地の権利を主張できるのか?」について、明確なルール作りが必要となったようです。

(参考:wikipedia「Squatting in the United States」)

 

各州ごとの、不法占拠者が権利を主張できる最低年数

アメリカの不法占拠で保有権を主張できる期間

(参考:worldpopulation review.com)

 

上の地図は、アメリカの各州と、不法占拠が認められる期間についての図です。

例えば、一番濃い青は「NJ(ニュージャージー州)」で、30年になります。

30年、その土地に住んでいるという証明ができれば、その不動産の権利を主張できるわけです。

 

逆にもっとも短いのが、左下にある薄い黄緑色の「AZ(アリゾナ州)」の3年です。

アリゾナは、砂漠のような土地が多いため、誰も住みたがらない場所が多いことから、このように短いのでしょう。カリフォルニア州も、わずか5年と短めです。

 

このように、各州において、それぞれ期間が定められているわけですが、都市ごとに決めているところもあります。

 

NY市では、30日の不法占拠で権利を主張できる

例えば、ニューヨーク市では、なんとわずか30日です。

 

(*Google翻訳した英語記事を引用しています)

ニューヨーク市では、不法占拠者にわずか 30 日後に権利が与えられます。

はい、そのとおりです。たった 30 日です。

不動産所有者や少数の小規模地主にとっては、不法占拠者に多額の訴訟費用をかけて立ち退かせてもらうよりも、不法占拠者にお金を払って不動産を立ち退かせるほうが簡単な場合もあります。

(参考:nyrentownsell.com「ニューヨークの不法占拠者の権利には何が含まれているのでしょうか?

 

30日間、空き家を不法占拠すれば、その不動産の権利を主張できるのです。いかにヤバいかがわかりますよね。

そのため、ニューヨークの不動産賃貸オーナー向けのサイトでは、不法占拠者に対する対策として、まめに見回りをするなどの、管理面での注意を促されています。

 

不法占拠者を追い出すには、時間がかかる

では、不動産の所有者は、どのようにして、不法占拠者を追い出すことができるのでしょうか?

アメリカでは、「不法占拠者も人間だ」という人権意識が強いこともあって、簡単に追い出すことはできません。

 

事前に、不法占拠者に「10日以内に出ていくように」と通知をして、それでも応じない場合には、訴訟をする、という流れになります。

「警察に相談すれば、すぐに追い出してくれる」というような簡単なものではなく、1ヶ月単位でかかる、やっかいな対応をしなければいけないのです。

(参考:nyrentownsell.com「ニューヨークの不法占拠者の権利には何が含まれているのでしょうか?

 

2、なぜ、不法占拠が増えているのか?

では、なぜ今、アメリカで不法占拠が増えているのでしょうか?

その理由は、以下の3点が大きいと思われます。

  1. 不法移民が増えている
  2. 家賃が上昇しているため、ホームレスになる人も増えている
  3. 刑事事件ではなく、民事事件として扱われているので、警察の介入が難しい

 

では、詳しくみていきましょう。

 

(1)不法移民が増加している

1つ目の理由が、不法移民の増加です。

不法移民とは、正式な手続きをしないで、アメリカに入国してきた人たちを指します。

 

トランプ元大統領時代は、メキシコとの国境に壁を作って、こっそり入ってくるこのような人たちの入国を防いできました。

ですが、バイデン政権になってからは、この国境の壁を壊して、ビザなどの正規の手続きのない移民の受け入れを増やしたのです。

 

その結果、ニューヨークやシカゴなどの大都市に、これらの移民が殺到して、収容できない状態となっています。

 

 

ニューヨークでは、ルーズベルトホテルなどの名門ホテルをこれらの移民の方の住居として使用したり、廃校や体育館などの、公共施設を宿泊シェルターへと変えています。

それでも、どんどん移民が入ってくるため、住む場所が足りなくなっているのです。

 

冒頭でご紹介した、TikTokで不法占拠の方法をシェアしている青年も、「路上で生活するぐらいなら、空いてる家に入って住めばいいじゃないか」と語っています。

このように、殺到している移民が住むところがないため、空いている住居を不法占拠しているわけです。

 

(2)家賃がどんどん上がるため、ホームレスになる人が増加

2つ目が、ホームレスの増加です。

日本でもそうですが、アメリカでも住宅価格がどんどん上がっているため、家賃のそれに合わせて上昇しています。

 

特に新型コロナ以降は、食品などの物価も併せて大きく上昇しており、消費者物価指数も、一時は年率9%を超えるほどの上昇をしていました。

 

アメリカの主要都市部の家賃指数

(参考:FRED)

 

このように、家賃がどんどん上がってしまったことで、家賃が支払えなくて、ホームレスになる人が急増しています。

ここ10年のホームレス数を見ると、60万人前後で推移していましたが、昨年23年は65万人まで、大きく跳ね上がりました。

 

アメリカのホームレス人口

(参考:米国住宅都市開発省)

 

また、新型コロナ以降は、家賃の上昇だけでなく、危険な薬物が出回ってきたことによって、薬物の過剰摂取による死亡者も急増しています。

特に2020年以降に急増しており、年間10万人以上が薬物の過剰摂取で死亡しています。

 

アメリカの薬物過剰摂取による死亡者数

(参考:米国国立保健統計センター)

 

YouTubeで「drug usa」などで検索すると、ゾンビのような姿のアメリカの若い人の画像が出てきますが、フェンタニルという強い薬物の影響だと言われています。

 

これはなかなか想像しにくいのですが、真面目に働いてきた人たちが、家賃が払えなくなってホームレスになってしまうと、自暴自棄になる人も増えるのでしょう。

それらの人たちの一部が、薬物に走っているわけですが、「ホームレスになって薬で死ぬぐらいなら、空き家を不法占拠して住んだほうがよくね?」と考える人がいてもおかしくはないような気がします。

 

(3)古い法律のため、本当の犯罪者を対象としていない

3つ目が、古い法律のため、本当の犯罪者を対象にしていない、という点です。

wikipediaによると、「不法占拠法(Squatting Laws)」は、19世期の開拓時代の法律であり、誰の土地でもなかったところを「自分の土地だ」と主張する人たち同士の争いを調停するために作られた、という背景があります。

 

つまり、「不法占拠者=犯罪者」ではなく、入植してきた白人を対象としていたわけですね。

そのため、不法占拠は当事者間の問題であり、民事事件になります。

殺人や暴行などであれば、刑事事件として、警察がすぐに介入できますが、あきらかに犯罪目的で不法占拠した人たちに対しても、民事事件なので、警察は強く介入できないようなのです。

 

例えば、先ほどご紹介したように、NY市で不法占拠した住人に対して、持ち主が鍵を交換したことで、逆に持ち主が逮捕されるような事態も起こっています。

(参考英語記事:「両親から受け継いだ100万ドルの家を「盗んだ」不法占拠者との緊迫した対立の末、うんざりした住宅所有者を逮捕」)

 

このように、現在の法律の弱点をついて好き勝手やっているのが、アメリカの不法占拠者の実態なのでしょう。

 

3、今後は減っていくのか?

つい最近、フロリダ州のデサンテス知事が、不法占拠者に対して、警察が逮捕できるようにする法案に署名しました。

これによって、これまで介入できなかった不法占拠に対して、警察が逮捕することが可能になります。

(参考英語記事:FOX NEWS「他の州法が住宅所有者を悩ませる中、不法占拠反対派の「専門家」がフロリダ州の禁止を祝う」)

 

このような内容の法案は、州ごとに作られますから、全米規模で広がっていくのかどうかは今後の動向次第になります。

 

ですが、現在のアメリカでは、不法移民やホームレスがどんどん増え続けています。

もし、何らかの対策を打たなければ、不法占拠をする移民やホームレスの方が今後も増え続けることになります。

 

この件については、今後も引き続き追っていきたいと思います。

長文にお付き合い、ありがとうございました。

 

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