公示地価の注意点。実際の取引価格とどれだけ違うのか? | イエ&ライフ

公示地価の注意点。実際の取引価格とどれだけ違うのか?

土地価格の調べ方

(本ページはプロモーションが含まれています。該当するサービスには、【PR】と表記しております)

 

 

毎年3月の下旬ごろになると、テレビや新聞で公示地価が話題になりますよね。ですが、この公示地価を参考にして、不動産の取引をしても大丈夫なのでしょうか?

 

というのも、日本の土地価格は「一物四価」と呼ばれるように、1つの土地に対して複数の価格がつくからです。

 

具体的には、

  1. 実勢価格(実際に取引される価格)
  2. 公示地価(取引の指標となる価格)
  3. 路線価(公示地価の8割程度:相続税の評価に使われる価格)
  4. 固定資産税評価額(公示地価の7割程度:毎年の固定資産税の支払いの基準となる価格)

の4つがあるのです。

 

そして、ここで考えてみて欲しいのですが、自治体の税収の約半分が固定資産税と言われています。

ということは、固定資産税は公示地価の7割で評価されますので、税収を減らされたくない自治体としては、公示地価を高く維持したいのではないでしょうか?

 

もし、このような事情があって、公示地価と実際の取引価格に大きな差があるならば、あなたがこれから不動産を買おう、または売ろうと思う時に失敗してしまう可能性もありますよね?

そこで、この記事では、実際の取引データを用いて、公示地価とどれだけ違うのか?を検証したいと思います。

 

1、そもそも、公示地価とは?

(1)公示地価の特徴

その前に、公示地価がどのようにして計算されているのか、簡単に解説します。

 

公示地価とは、

  • 毎年1月1日現在を基準に算出される土地取引のための参考価格
  • 全国約26,000地点の価格が公表される
  • 実際に取引された地点の価格が公表されるわけではない
  • 1地点につき、不動産鑑定士2人が鑑定を行い、その後に国土交通省の土地鑑定委員会が、最終的な価格を決定する
  • 不動産鑑定士は、周りの取引事例から、「もし、この場所が “更地” で売買されるとするならば、これぐらいの価格だろう」という価格を算出する

といった特徴があります。

 

公示地価の他に、都道府県が7月1日時点の土地価格を算出する「基準地価」もありますが、基本的には算出方法も使われ方も同じです。

そのため、この2つを合わせて公示地価と呼ばれることもあります。

 

(2)公示地価の欠点

公示地価をウィキペディアで調べると、「公示地価って本当に意味あるの?」といった批判もあります。

 

 

  • 2004年3月23日付毎日新聞「地価公示・何のために誰のために」

「(土地が)値下がりしている時代に(中略)更地には価値がない」「どうやって地方都市の地価が鑑定(評価)されているかは(取材範囲外で)謎だ」

「金融技術を利用した不動産投資が活性化している。地価公示は、(中略)廃止するかの岐路に立たされている」

 

(参考:ウィキペディア 公示地価)

 

その理由は主に3つあります。

 

① 取引のないエリアでは、鉛筆ナメナメで計算するしかない

特に地方では、1年間に取引がほとんどないエリアもたくさんあります。

そのような場合には、「ちょっと遠いけど、あの辺では上がってるから、ここも少しは上がってるはずだよね。」といったノリで出すしかありません。

そのため、特に地方の公示地価は、取引価格の参考にならない可能性があるのです。

 

例えば、新潟県の湯沢町という町があります。

バブルの頃にスキー場の近くのリゾート・マンションを買う人がたくさんいた町です。

現在では、10万円でも売れない、とニュースなどで取り上げられるエリアですが、こちらの鑑定結果を見てみると、以下のような記載があります。

 

 

需給環境は人口減少やリゾート・観光産業の不透明感を 背景とした地元経済の不振等の影響により、需要の低迷が続いている。

取引数が少なく規模によりバラツキが大きいため需要の中心となる価格帯は見出せない状況である。

(参考・平成30年度 鑑定評価書 *PDFファイル)

 

このように、中心となる価格帯がわからない地点でも、前年の公示地価や周囲の取引状況から、なんとか価格をひねり出しているエリアもあるのです。

 

② 全国の宅地の「1600分の1」しかデータがない

日本全国の宅地の数をご存知ですか?

総務省の「平成29年度 固定資産の価格等の概要調書」によると、約8,300万筆あります。

公示地価は基準地価と合わせても5万地点しかありませんので、全国の宅地の1,600分の1しかカバーしていないのです。

 

ですから、あなたの土地の価格を知りたいと思っても、公示地価の地点が1km以上も離れた場所にしかない、ということもあり得ます。

これではなかなか、参考になりませんよね。

 

③ 税収と結びついているので、客観的な価格なのか疑問

そして、冒頭でも解説しました通り、公示地価は相続税評価に使われる「路線価」や、固定資産税の計算に使われる「固定資産税評価額」の参考価格にも使われています。

 

特に最近は、不動産が売れない地域も増えていますので、「売れないのに税金だけ取られる」という方も増えているのです。

本来であれば、そういうエリアの公示地価は大きく下落してもおかしくないと思いますが、毎年2〜3%程度の下落で調整されているところもあるのが現実です。

 

2、実際の取引データと公示地価を比べてみた

(1)土地総合情報システムとは?

このようにいろいろと使いづらい公示地価ですが、不動産の取引情報には必ず「個人情報(住所でわかる)」が含まれるため、ネット上ではほとんど開示されていません。

ですが1つだけ、国土交通省が運営しているサイト「土地総合情報システム」の「不動産取引価格情報検索」を活用すれば、ほんの1部ですが、実際に取引された価格を調べることができます。

 

赤ワクで囲んだ部分をクリックすると、不動産取引各情報検索の画面へ

土地総合情報システム

(土地総合情報システム)

 

なぜ調べられるかというと、不動産の取引をした人に対して、国土交通省が「差し支えない範囲で、取引内容の調査にご協力してもらえませんか?」とアンケートを依頼しているからです。

その回収率は、全国で約15%、東京では10%程度でしかないので、全ての取引をカバーしているわけではありませんが、ある程度参考にはなるでしょう。

 

(2)取引データの調べ方

では、実際に使い方を解説します。

こちらの画面から、調べたいエリアを探してみるだけです。

 

左側の検索条件で選んだ方が、細かい地域の指定ができます

不動産取引価格情報検索

(不動産取引価格情報検索へ移動するならこちら)

 

今回は、赤ワクで囲んだ通り、東京都の中野区の土地取引について調べてみました。

その結果の一部がこちら。

 

中野区の不動産取引データの一覧

 

赤枠の中を見ると、「中野区新井」というエリアで、沼袋駅から徒歩5〜9分の物件3件が、3,100〜3,700万円で取引されていることが確認できますね。

㎡単価で33〜54万円、坪単価に直すと109〜178万円/坪になります。(1坪=3.30579㎡)

 

ただし、33万円/㎡で取引された物件は、不整形地ですし、他の取引に比べて4割ぐらい安い価格なので、53〜54/㎡が相場と考えた方がいいかもしれません。

 

また、画面の上部に「土地取引件数 5,206件」と表示されていますね。そして、その隣の緑色のボタン「取引件数の推移」を押すと、このような画面が出てきます。

 

緑色のボタンを押すと、中野区の土地取引件数の推移が表示される

中野区の土地取引件数の推移

3ヶ月ごとの件数の推移が確認できます。

3ヶ月で600〜700件ですので、月に200件程度の取引があるとわかりますね。ここ2年間は件数も安定しているようです。

 

(3)実際に公示地価と比較してみると?

先ほどは「中野区新井」で「最寄駅が沼袋」の土地価格が33〜54万円/㎡だったことを確認しました。

 

それでは、公示地価ではどうなっているでしょうか?

先ほどの土地総合情報システムの最初の画面の右側をクリックすると、地価公示を調べられる画面へと移ります。

(地価公示の検索画面はこちら)

 

赤ワクの「検索地域指定(地名入力)」を選択すると、詳しい地域を指定できるので探すのがラクです

地価公示の検索画面

 

赤ワクから条件検索画面へ移り、「東京都中野区新井」と入力して検索すると、以下のような結果が出てきました。

 

5件出てきたうち、沼袋駅に近い住宅地の公示地価を発見

中野区新井の公示地価

 

ご覧のように、価格は49.6万円と表示されていました。

先ほどの取引データでは53〜54万円/㎡(不整形地の33万円/㎡の物件は対象外)でしたので、約7〜9%の価格差があった計算になります。

 

(4)エリアによって、公示地価と取引データの価格差が違う

今回の「中野区新井」では、7〜9%ぐらい実際の取引価格の方が高い結果となりましたが、地域によっては、そもそも該当するデータがなかったり、もっと価格差があったりと様々です。

 

そもそも、ここで調べられる取引データは、全体の取引の15%程度しかカバーしていませんので、たまたま高い価格だけが集まっていたり、その逆の場合もあり得るのです。

かといって、スーモやアットホームなどの不動産サイトの売り出し情報を参考にしても、「売主の希望価格」でしかないため、実際の取引データ以上に実態とかけ離れている場合が多いです。

 

そのため、なるべく多くの情報を集めて、「だいたいこれぐらいと言っている人が多いな」という価格帯を見つけることが、失敗しないための方法と言えるでしょう。

 

3、結論

今回、実際に比べてみることで、公示地価を参考に取引価格を決めることの危険性に気づかれたと思います。

しかし一方で、公示地価は、何十年と同じプロセスを経て作られてきた指標です。

 

ですから、

  • 「上げ相場なのか下げ相場なのか?」そのエリアの土地価格の動きを知ること
  • 「他よりも高いのか、低いのか?」そのエリアが、周りから見てどういう評価なのかを比較すること

の2点についてならば、十分に活用できるデータだと思います。

 

このサイトでは、各市町村の土地価格の動きについて記事を作成していますが、その場合には公示地価はとても便利だと感じています。

税収と結びついた価格とはいえ、市場の動きを全く無視すれば、納税者からクレームも来ますので、それなりに反映されているな、というのが実感です。

 

そうは言っても、不動産の取引は数千万円〜数億円単位のものですから、このズレを鵜呑みにすると数百万円単位で損をしてしまうので、取引価格の参考にする場合には、十分に注意が必要でしょう。

 

 

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この記事を書いた人
ゴトウ

証券会社で12年間勤務。営業と店舗マーケティングに従事後、2018年から当サイト「イエ&ライフ」を運営しています。

不動産価格の動きの理解や今後の予想は、金融マーケットの知識があると理解しやすいため、読者のお役に立てるのではないかと、サイトを運営しています。

また、2024年からYoutubeチャンネルも始めました。
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