2024年度の基準地価。二極化がさらに加速している件 | イエ&ライフ

2024年度の基準地価。二極化がさらに加速している件

2024年基準地価のサムネ コラム

この記事では、9月17日に発表された、基準地価について、上昇しているエリアの特徴や、今後の動向について、解説します。

 

基準地価とは、各都道府県が毎年公表している土地価格のことで、7月1日時点のものを9月の20日前後に発表しています。

似たようなものに公示地価がありますが、こちらは1月1日時点のものを3月下旬に発表しているため、半年おきに、土地価格の動きがわかるようになっています。

 

それで、今回の基準地価はどうなっていたかというと、全国で見ると、住宅地は前年比で0.9%のプラス、商業地は2.4%のプラスと、昨年よりも上昇率がさらに上がっていました。

 

基準地価の前年比の変化率

 

全体的に見てみると、今回の土地価格の動きは、「中心部への人気が集中し、そうでないエリアが下落する、という二極化がさらに進んだ」と言えます

具体的に、この二極化について、確認して行きましょう。

 

1、都道府県別の傾向

まず、都道府県別に見てみましょう。

住宅地では、昨年よりも今年の方が、前年比でマイナスになった県の数が増えていました。昨年は27都道府県がマイナスだったのに対して、今年は29都道府県がマイナスとなっています。岩手県と石川県が、マイナスに転じました。

 

基準地価の下落している都道府県の数

 

一方、商業地では、昨年よりも今年の方が、前年比でマイナスになった件の数が減りました。

昨年は23都道府県がマイナスだったのに対して、今年は17都道府県がマイナスだったのです。

 

群馬県、長野県、静岡県、三重県、山口県、大分県が、今年からプラスになった県です。

商業地は、店舗やオフィス、ホテル、マンションなどがあるエリアになりますので、駅周辺や、国道沿いなどの、一部のエリアに分布しています。

 

一方、住宅地は、広範囲に分布しているため、人気エリアとそうでないエリアとで、変化率が相殺されやすくなります。

つまり、住宅地がマイナスになりやすく、商業地がプラスになりやすい状況とは、一部のエリアに人気が集中しやすい状況にあると言えます。

 

2、市町村別(三大都市圏)の傾向

次に、市町村別に見てみましょう。

 

(1)首都圏

まずは、首都圏です。

市区町村別の変化を見る前に、いくつかのデータを押さえておきましょう。

 

①東京都の中古の住宅価格

こちらは、東京都の中古住宅と中古マンションの価格推移です。

 

東京都の中古住宅価格

(参考:東日本不動産流通機構)

 

2019年4月と比較すると、マンションは約4割、戸建ても約2割の上昇となっています。23区の方が住宅需要が高いため、さらに大きく上昇しています。

 

②東京都の転入超過数

また、こちらは、東京都の年代別の転入超過数です。

転入超過数とは、東京都に引っ越してきた人の数から、出て行った人の数を差し引いた数になります。

 

東京都の転入超過数

(参考:総務省 住民基本台帳人口移動報告)

 

プラスであれば、入ってくる人の方が多いことになります。

増えているのは、青色と灰色の部分ですね。

 

青色の部分は15~29歳で、大学生や、新卒社会人などが含まれます。

また、灰色は外国人です。

 

つまり、若い世代や外国人は、東京に移住してきているわけですが、それ以外の世代は、出て行く人の方が多いことがわかります。

 

③東京都の新規着工戸数

次に、こちらが東京都の新規着工戸数です。

青色が戸建てで、ピンクがマンションになります。

 

東京都の新規建設戸数

(参考:建設着工統計)

 

マンションは横ばいとなっていますが、戸建ては、ここ10年で最も低い水準となっています。

 

④円ドル相場と日経平均

そして、最後に、こちらが円ドル相場と日経平均になります。

 

円ドル相場と日経平均株価

(参考:Investing.com)

 

基準地価は、7月1日現在の土地価格ですが、円ドル相場は161円、日経平均は39,600円台と、かなりの高値圏にあった時期に当たります。

 

特に、価格が高い都心部のマンションは、国内外の投資家や富裕層の投資対象となりやすく、株価や為替の影響を受けやすいため、この時期は、かなり強気で買う人がいた時期だと考えられます。

 

これらのことから、東京都の住宅需要は、

  • 若い世代や外国人の移住が多く、賃貸需要が盛り上がりやすい
  • ここ5年で、中古戸建てやマンションの価格が2割~4割上がっている
  • 特に都心部のマンションは、株高、円安だったこともあって、国内外の富裕層による購入意欲が強かった
  • そのため、一部の子育て世帯は、都外へ引っ越すケースが増えている

という傾向にあることがわかります。

 

首都圏の住宅地

以上を踏まえて、今年の基準地価の変化を見てみましょう。

こちらの地図は、首都圏の住宅地の、前年比の変化率を色分けしたものです。

 

東京都の基準地価の変化

(参考:国土交通省 都道府県地価調査)

 

ピンク色の部分が、前年比で+5%以上の市町村です。この部分を中心に、昨年から今年にかけての動きを比較してみましょう。

 

昨年に比べて、今年は、ピンクのエリアがかなり増えていることがわかりますね。

東京23区でみると、練馬区と葛飾区、江戸川区を除いた20区が、5%以上の上昇をしていますし、都外で見ると、湘南エリアの藤沢市や茅ヶ崎市、千葉では成田市や千葉市中央区が、5%以上の上昇となっていました。

 

一方で、埼玉県の北部や、神奈川県の西部などでは、下落しているところも多くみられ、その辺りは下落が続いているため、都内へ通勤できる範囲内において、土地価格の上昇が起こっているようです。

 

首都圏の商業地

次は、商業地を見てみましょう。

 

東京都の商業地の基準地価の変化

(参考:国土交通省 都道府県地価調査)

 

商業地も、住宅地とそれほど傾向は変わりませんね。

ピンク色の部分が昨年よりも、広範囲に広がっています。

 

都心部の商業地は、駅周辺に集中しており、マンションが立っているエリアも多くみられます。

また、渋谷区や台東区、文京区などの中心部では、前年比で10%以上の上昇をしており、昨年からさらに上昇率が上がっています。

 

これほど中心部で上がっているのは、株高、円安によって、国内外の富裕層による購入が活発化していた結果でしょう。

 

(2)関西圏

今度は、関西圏です。

 

①大阪府の中古住宅の価格

こちらは、大阪府の中古住宅と中古マンションの価格推移です。

 

大阪府の中古住宅価格

(参考:東日本不動産流通機構)

 

2019年4月と比較すると、マンションは約5割、戸建ても約3割の上昇となっています。

東京都以上に、住宅価格の上昇率が高くなっていました。

 

②大阪府の転入超過数

また、こちらは、大阪府の年代別の転入超過数です。

 

大阪府の転入超過数

(参考:総務省 住民基本台帳人口移動報告)

 

増えているのは、東京と同じで、若い世代と外国人ですが、外国人の割合の方が高いですね。

また、府外に引っ越す子育て世帯は、それほどいないことがわかります。

 

③大阪府の新規着工戸数

最後に、こちらが大阪府の新規着工戸数です。

 

大阪府の新規建設戸数

(参考:建設着工統計)

 

マンションの需要は増えていますが、戸建ては横ばいに見えますが、一応、ここ10年で最も少ない水準ではあります。

 

関西圏の住宅地

これらを踏まえて、関西圏の基準地価の変化を見てみましょう。

こちらが住宅地になります。

 

関西圏の住宅地の基準地価の変化

(参考:国土交通省 都道府県地価調査)

 

昨年から、今年にかけて、上昇している市町村の範囲は、それほど変わっていません。

大阪市、神戸市、京都市の周辺だけにとどまっています。

 

しかし、ピンク色の部分が増えていることから、この限られたエリアにおいて、さらに上昇率が高まっていることがわかります。

特に、大阪市や京都市のマンションは、観光にも便利なため、海外の投資家にも人気ですし、株高、円安の影響もあって、価格が大きく上昇しています。

 

そのため、これらのエリアの住宅地も5%以上の上昇をしているところが多いのでしょう。

 

関西圏の商業地

そして、こちらが商業地になります。

 

関西圏の商業地の基準地価の変化

(参考:国土交通省 都道府県地価調査)

 

こちらも、ピンク色の部分がかなり広がっていますが、昨年下がっていたエリアは、今年も下落が続いています。

 

(3)中京圏

最後に、中京圏です。

こちらは、愛知県の中古住宅と中古マンションの価格推移です。

 

愛知県の中古住宅価格

(参考:東日本不動産流通機構)

 

2019年4月と比較すると、マンション、戸建て、いずれも約2割の上昇となっています。

 

②愛知県の転入超過数

次に、こちらは、愛知県の年代別の転入超過数です。

 

愛知県の転入超過数

(参考:総務省 住民基本台帳人口移動報告)

 

青い部分の若い世代は、まだ増えてはいるものの、年々増え方が小さくなっており、増加分の9割以上が外国人となっています。

また、県外に出て行く子育て世帯は、そこそこ多いため、住宅需要は、それほど強くないことがわかります。

 

③愛知県の新規着工戸数

最後に、こちらが愛知県の新規着工戸数です。

 

愛知県の新規建設戸数

(参考:建設着工統計)

 

マンションの需要は横ばいですが、戸建ては減り続けており、過去最低水準にあります。

以上のことから、愛知県内の住宅需要は、東京や関西に比べると、それほど大きくないと言えるでしょう。

 

中京圏の住宅地

これらを踏まえて、中京圏の基準地価の変化を見てみましょう。

こちらは住宅地です。

 

中京圏の住宅地の基準地価の変化

(参考:国土交通省 都道府県地価調査)

 

昨年は三河エリアでピンク色が目立っていましたが、今年は、長久手市や日進市などの、もう少し北側に、人気が移っている感じですね。

 

中京圏の商業地

そして、こちらが商業地です。

中京圏の商業地の基準地価の変化

(参考:国土交通省 都道府県地価調査)

 

東海市や名古屋市南区、瑞穂区などが、昨年に比べて、あまり上がっておらず、北側に位置する一宮市が5%以上の上昇となっていました。

このことからも、需要が、少し北側に寄っているのかもしれません。

 

三大都市圏の基準地価の変化の傾向

というわけで、三大都市圏の基準地価の動きをザックリと見てきました。

住宅価格や、人口の動き、そして、株価や為替の動きを踏まえてみてみると、以下のようにまとめられると思います。

 

  • 基準地価の基準日である7月1日は、株価も高く、160円台の円安だったため、国内外の投資家がマンションを強気で購入しやすい時期だった
  • さらに、大都市圏に若い世代や外国人が移住してきているため、賃貸需要は底堅い
  • その一方で、価格上昇の影響から、戸建ての需要は全体的に減少傾向にある。また、郊外に移住する子育て世帯も一定数あり、中心部の戸建て需要は、それほど大きくはない

と言えるでしょう。

 

なお、この動画を作成している9月17日時点では、円ドル相場は139円台をつけており、日経平均も36,000円台と、約1割下落している状況です。

このぐらいであれば、国内外の投資家の手が引っ込むかどうかはわかりませんが、さらなる下落が進むようであれば、マンション市場を中心に影響を受ける可能性は高そうです。

 

その一方で、若い世代や外国人の移住したいという需要は強そうなので、賃貸需要はまだまだ増えていきそうですね。

 

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この記事を書いた人
ゴトウ

証券会社で12年間勤務。営業と店舗マーケティングに従事後、2018年から当サイト「イエ&ライフ」を運営しています。

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