この記事では、神奈川県でこれから資産価値が落ちにくい街について解説します。
1、神奈川県内で、公示地価が上昇している市区町村
まずは、2018〜23年の5年間で、公示地価が上昇した市町村から、ザックリとした地理的な傾向について確認していきましょう。
神奈川県の土地価格の変化(住宅地)
住宅地については、ざっくり東半分が上昇しているような感じですね。特に川崎市や横浜市、相模原市で上昇率が高いです。
その一方で、横須賀市や小田原方面では、下落が続いていました。
神奈川県の土地価格の変化(商業地)
商業地でも傾向は変わっていませんが、全体的に、住宅地よりも上昇率が高い傾向にあります。
横浜市、川崎市、相模原市などの大都市以外だと、茅ケ崎市、海老名市、厚木市あたりの上昇率が高いですね。
2、土地価格が上昇している2つのパターン
かなりの広範囲で土地価格の上昇が見られるわけですが、大きく分けて2つのパターンに分かれます。
(1)駅近のマンションエリア
1つ目が、駅近のマンションエリアです。
さきほど市区町村別に土地価格の上昇エリアを確認してもらいましたが、商業地の方が上昇率が高かったですよね。
商業地とは、「商業地域」「近隣商業地域」に分類される地域のことで、建てられる建築物や高さなどが決まっています。
具体的には、店舗や高層マンションなどですね。
そのため、商業地は、大きめの国道や県道、駅近エリア、商店街などが指定されるわけですが、ここ数年の商業地の上昇の理由は、店舗の売り上げ増加ではなく、マンション価格の上昇です。
例えば、横浜市神奈川区を例にとると、上昇エリアはこのような感じです。
5年間の変化率(2018→2023年)
変化率:赤紫(+50%以上)>ピンク色(+30〜49.9%)>オレンジ色(+10〜29.9%)>緑色(0〜+9.9%)>青色(-0.1〜 -9.9%)>茶色(-10%以下)
横浜駅の周辺が高いですね。
また、それ以外の駅周辺でも、上昇率が高くなっています。横浜市の中心部に近いこともあって、神奈川区には多くのマンションが立ち並んでいます。
そして、このマンションの価格が、現在大きく上昇しているため、周辺の土地価格も上昇しているわけです。
この傾向は、横浜市だけでなく、川崎市、相模原市、藤沢市などの湘南エリアでも共通しています。
中古マンションの価格が、いずれの地域も5年で30%以上の上昇をしています。
そのため、高層マンションが立地するようなエリアでは、土地価格の上昇が続いているのです。
神奈川県のマンション価格が上昇している理由とは?
では、そもそもなぜ、神奈川のマンション価格が上昇しているのか?
大きな理由が3つあります。それは、
- 株価が上がって、都心部のマンション価格が上昇しているため、都心へ通勤可能な駅近マンションも連れ高している
- 建築費の上昇で、新築マンションの値上げが続いている
- 金利の低い変動金利を選ぶ人が増えて、値上げをしても買える人が増えた
の3点です。
2024年1月25日現在、日経平均株価は36,000円台をつけており、平成バブルの最高値である38,900円台まであともう少しのところまで来ています。
そのため、金融資産を多く持っている投資家であれば、強気でマンション購入に動けるので、グレードの高いマンションについては、価格はまだ上がるでしょう。
そうすると、周辺の土地価格も上がりますので、駅近のマンションエリアの土地価格はまだまだ上がる可能性があります。
駅近のマンションのリスクは?
ただし、全くのリスクがないわけではありません。
具体的には、
- 日銀が利上げに動いており、変動金利も今後は上がる可能性がある
- マンションを購入予定の世帯の給料が上がらなければ、買い手が減る
- 中東紛争が拡大して、ホルムズ海峡が封鎖されると、原油の輸入がストップしてしまい、株価暴落、タワマンも節電モードとなり、暴落する可能性がある
といったことが考えられます。
3については、可能性が低いと考えられますが、株価が暴落すれば、マンション価格は下がりますので、この点については注意が必要でしょう。
(2)人口・世帯数が増加しているエリア
2つ目が、人口、特に世帯数が増加しているエリアです。
世帯数が増加しているということは、住宅を必要とする人が増えている、ということですから、不動産価格も上がりやすくなります。
では、神奈川県内で、どの市町村で世帯数が増えているのでしょうか?
ここ5年間で増加しているエリアを地図に表すと、こんな感じになります。
横浜市港北区と藤沢市が最も多く、1万世帯以上も増加しています。
横浜市、川崎市、相模原市などの大都市で増えている以外だと、JR東海道線の沿線の市町村(戸塚区、藤沢市、茅ケ崎市、平塚市)での増加が目立ちますね。
また、小田急線や東急線で都心に行ける大和市、海老名市、厚木市などでも、世帯数が大きく増加しています。
例えば、藤沢市を例にとると、土地価格の上がり方はこんな感じになります。
5年間の変化率(2018→2023年)
変化率:赤紫(+10%以上)>ピンク色(+5〜9.9%)>オレンジ色(0〜 +4.9%)>緑色(-0.1〜 -4.9%)>青色(-5〜 -9.9%)>茶色(-10%以下)
このようなエリアでも、駅近エリアほど上昇率が高い傾向にはありますが、戸建てのエリアでも、そこそこ上昇しています。
新型コロナ以降、リモートワークが広がってきたことで、都心から少し離れたところに移住する人も増えました。
都心の不動産価格は、株価暴落などの大きな混乱がなければ、当分の間は、高止まりする可能性もあります。
また、家賃も上がってきていますので、これらの街に移住する子育て世帯は、今後も増える可能性が高いです。
マンションエリアほど、劇的な上昇は見込めませんが、価格は安定するでしょう。
大型ショッピングセンターの周辺は、人気が高い
また、駅近エリアである必要がないのであれば、イオンなどの大型のショッピングセンターの周辺も、土地価格が安定しやすいです。
神奈川県内では、あまり目立っていませんが、地方都市では、主要駅の中心街が廃れてしまい、郊外の大きい道路に立ち並ぶロードサイド店舗の周辺に人気が集中しています。
例えば、2023年4月にオープンした平塚市の「ジ・アウトレット湘南平塚」の周辺は、駅から離れた、農地の多い郊外エリアですが、この5年間で土地価格が5%程度上がっています。
今後も移住は増えるのか?
このサイトでは、全国の約500の市区町村の土地価格や人口などについて記事にしていますが、地方県では、少子高齢化がかなり深刻で、若い世代は県庁所在地か、首都圏や大阪などの大都市への移住が続いています。
実際、神奈川県の転入超過数(県外から引っ越してきた人 ー 出て行った人)をみると、①学生や就職した若い世代(下のグラフの青い部分)、②外国人(灰色の部分)、が約8割を占めています。
また、外国人の移住も増えており、2022年は過去最高水準となっています。
この傾向は、よほど円安が進まない限りは続くと考えられますので、特に賃貸需要は今よりも盛り上がってくる可能性が高いです。
そのため、買い物や通勤に便利なエリアであれば、今後も移住・世帯数の増加が予想されますので、マンションエリアに限らず、土地価格は安定・上昇していきそうです。
注意すべきは、農地の宅地化
ただし、人口・世帯数が増えても、土地価格が上がりにくいエリアもあります。
それは、農地が多く残っている市町村です。
神奈川県の農地は、2010〜20年の10年間で、約2,900ヘクタール減りました。
30坪の戸建てで約29万戸分の農地が、住宅地や倉庫、商業施設などに変わった計算になります。
さらに、2022年には、横浜市や川崎市、相模原市などに多く残っていた「生産緑地」と呼ばれる農地の、税金の優遇期間が切れました。
さらに10年延長することが可能になっていますが、後継者がいなければ、相続した時点で税金が上がりますから、宅地へと転用されていきます。
農家の高齢化は深刻ですから、今後はこれらの生産緑地も、少しずつ宅地へと変わっていくでしょう。
そのため、あまりに農地が多く残っているエリアでは、次々と新興住宅地が作られることで、古い住宅地の人気が下がる可能性があります。
このような住宅地は、価格が安いので買いやすいですが、長期的な資産価値を考えると、あとあと困ることになります。
そのため、①駅から離れている、②大型商業施設が近くにない、③周りに農地が多く残っている、の3つの条件を満たすようなエリアでの購入は、注意が必要です。
結論
というわけで、まとめると、
- 都心への通勤に便利な駅近マンション:株価が上昇し続ける限り、マンション価格も上がりそう。逆を言えば、株価暴落のリスクが心配な人は、立地が良くても、高すぎると感じるマンションには手を出さない方が無難
- 移住者が多い郊外のエリア(海老名市、大和市、藤沢市、茅ヶ崎市など):駅近物件か、大型の商業施設の周辺であれば、移住者の増加による底上げが期待できる。ただし、農地が多く残っているエリアは、注意が必要
と言えるでしょう。
参考になれば幸いです。
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