この記事では神奈川県の
- 公示地価、基準地価
- 土地価格がこれまで上昇・下落した理由
- 今後どうなるのか?
の3点について解説しています。
(なお、本ページはプロモーションが含まれています。該当するサービスには、【PR】と表記しております)(※1)
1、過去5年間の神奈川県の不動産の動き
神奈川県の土地価格は、この1年間で、住宅地で+1.4%、商業地も+2.9%と、大きく上昇しました。
また、2018→2023年の5年間で見ると、住宅地で+9.5%。商業地で+1.6%でした。
ですが、もちろん地域によって、動きに大きな差があります。
そこで、この5年間の住宅地の変化率を市区町村別に表してみました。
神奈川県の5年間の土地価格の変化率
川崎市、横浜市、相模原市など、5%以上の上昇している市区町村がありますが、三浦半島や県の西部では下落するエリアが多く見られますね。
なぜ、横浜、川崎方面では上昇を続けているのか?
理由は大きく3つあります。
①金利が低下して、高い物件が買えるようになった
そもそも、不動産価格が上昇した最も大きな理由は、金利の低下です。
アベノミクスによる異次元緩和政策が始まった2013年から2020年ごろまでは、固定金利が2%台から0.82%まで、1%以上も下落したのです。
さらに、2022年に入ると、変動金利がさらに下がりました。それまで0.5%前後だった金利が、0.3%台にまで下がったのです。
新型コロナ以降も、都心部や大都市圏を中心に不動産価格は上がり続けていますので、それでも買いたい人が、変動金利を利用するようになり、ついに7割以上が変動金利を選ぶようになっています。
これによって、同じ返済額でも、買える物件の価格が大きく上がりました。
アベノミクスが始まる前の2012年ぐらいまでは、月に約10万円の返済(ふらっと35)で、約3,000万円の物件しか買えませんでした。
ですが、2023年現在、変動金利を選べば、約4,130万円の物件まで買えるようになっているのです。
月10.4万円の返済で、いくらの物件が買えるのか?
今の夫婦は、共働き世帯が多いですから、変動金利で、2人でそれぞれ月10万円を返済すると決めれば、なんと約8,200万円の物件が買えるわけです。
東京23区では、新築マンションが8,000万円を超えていますが、このような事情があるからなんですね。
②建築費が上昇したため、中古住宅の価格も上がった
2つ目が、建築費の上昇です。
新型コロナの感染拡大や、ロシアのウクライナ侵攻によって、世界的にモノ不足が広がった結果、物価上昇が続いています。
日本の建築費も例外ではなく、特に新型コロナ以降は、マンション、戸建てそれぞれ2〜3割も上がっているのです。
建築費も例外ではなく、マンション・戸建てともに建築費が20〜30%も上昇しているのです。
マンションの建築費
木造戸建ての建築費
その結果、新築を買えない人が、中古住宅に流れ、中古マンション・戸建ての価格も上昇しました。
2018年から比べて、中古マンションでは約23%、中古戸建てでも約23%上昇しているのです。
中古住宅の価格が上がると、土地価格も上がります。
というのも、中古住宅の平均築年数は、約20年程度であり、固定資産税評価額で考えると、建物部分の価値は、新築の2割程度しかないからです。
そんな中古住宅が、仮に3,000万円から3,600万円(+20%)になったとして、建物部分の価値が600万円上がったと考える人はまずいません。
周りに土地を持っている人ならば、「以前よりも、もっと高く土地も売れるはずだ」と考えますし、実際に値上がりした価格での取引も行われています。
そのため、昨年の上昇率が高かったのは、建築費の上昇の影響が大きかったと言えます。
③神奈川県では、人口増加も追い風に
建築費が上がったといっても、買い手がつかなければ、土地価格も上がりません、
しかし、神奈川県では、人口・世帯数ともに増加傾向にあります。
2018年からの5年間で、人口は約4.1万人、世帯数は23.2万世帯も増えているのです。
人口よりも世帯数の方が多いのは、子供が県内で一人暮らしを始めたり、県外から引っ越して来た人がいる一方で、高齢者の減少しているからでしょう。
しかし、世帯数が増えていると言うことは、住宅に対する需要が増えているということでもありますので、不動産価格は上がりやすくなっているわけです。
では、具体的に、どこで人口が増えているのか?
この5年間の人口の変化を、市区町村別に調べてみた結果がこちらです。
特徴を整理すると、
- 横浜市、川崎市では、東京に近いエリアほど、人口が増えている
- 磯子区から三浦半島にかけての京急線の沿線では、減少エリアが多い
- 茅ヶ崎市、海老名市、座間市よりも東側では増加しているエリアが多いが、西側では減少している
といったことがわかります。
土地価格が上昇しているエリアと、人口が増えているエリアの傾向は、だいたい似たような形になっていますね。
というわけで、神奈川県の不動産価格は、
- 金利低下と、特に変動金利の利用者が増えたことで、今までよりも高い金額を借りれる人が増えている
- 建築費の上昇によって、新築・中古価格が上昇したものの、人口が増加しているエリアでは、土地価格も上昇しているが、そうでないエリアでは下落している
と言えるでしょう。
3、これからどうなるのか?
神奈川県の土地価格に影響を与えそうなリスクをまとめました。
(1)そろそろ金利が上がりそう
日本では、低金利が長く続いているため、金利の上昇リスクを心配しない人が増えており、7割以上の人が、半年ごとに金利が変わる変動金利を選んでいます。
ですが、本当にこれからも金利は上がらないのでしょうか?
実は、10年〜30年までの長期金利については、すでに上昇し始めています。特にロシアのウクライナ侵攻が始まった2022年ごろから、本格的に上がって来ています。
(参考:財務省)
これによって、変動金利は低いままですが、ふらっと35などの固定金利は上昇を始めています。
なぜ上昇しているのかと言うと、世界的に物価が上昇しているからです。
例えば、アメリカでは、物価が一時、前年比で9%以上も上がったため、政策金利を0.25%→5.25%まで、1年間で5%も引き上げました。
ドイツでも、前年比で11%以上も上がっていたため、こちらも政策金利を0%→3.5%にまで、約1年間で3.5%も引き上げています。
その結果、欧米各国でも、住宅価格が下落をはじめています。
アメリカの先月の中古住宅価格は前の年の同じ月と比べた下落幅(-1.7%)がおよそ11年ぶりの大きさとなり、住宅価格の下落傾向が鮮明になっています。
急速な利上げに伴う住宅ローン金利の高止まりで需要が落ち込んでいることが背景にあります。
欧州連合(EU)域内で、住宅価格が2015年以来初めて四半期ベースで下落に転じた。借り入れコストの上昇(=金利の上昇)が10年近くに及ぶ住宅用不動産ブームに終わりをもたらしている。
EU統計局は4日、22年10〜12月期に住宅価格が前の期と比べ1.5%下落したと発表した。域内27カ国のうち15カ国で下がった。下落幅が最も大きかったのはデンマークとドイツで、それぞれ6.5%、5%低下した。
金利を引き上げたことで、住宅価格が下落しているのです。
ちなみに日本の物価上昇率は、前年比で3.0%の上昇です。
(参考:NHK「2022年度 消費者物価指数 前年度比3.0%上昇 41年ぶり水準」)
そして、日本でも、7月28日に、植田日銀総裁が、政策修正を発表し、事実上の利上げを行いました。
これまでは、10年国債の金利が0.5%以上に上がらないようにコントロールしてきましたが、それを1.0%まで引き上げたのです。
(参考:野村総合研究所 2023.7.28「日銀が長期金利の上昇を容認するYCCの運用柔軟化策を決定(日銀金融政策決定会合)」)
これによって、期間10年以上の固定金利については、今後、徐々に上がっていくことが予想されます。ふらっと35などの、長期固定の住宅ローン金利は上がるでしょう。
変動金利が上がる可能性は?
今回の事実上の利上げは、期間10年以上の長期金利への影響が大きいですが、変動金利への影響は、今のところ、ありません。
ですが、物価上昇が続くようであれば、いずれ短期金利も引き上げざるを得なくなるでしょう。
というのも、そもそも、金利を引き上げている理由は、お金を借りにくくすることで、モノの消費や生産をおさえ、物価上昇を止めるためだからです。
長期金利を引き上げても、物価上昇が止まらないのであれば、短期金利の引き上げも、いずれ視野に入ってくるはずです。
なお、日銀が見込んでいる、今後の物価上昇率は、2024年が年率1.9%で、2025年が年率1.6%です。
(参考:野村総合研究所 2023.7.28「日銀が長期金利の上昇を容認するYCCの運用柔軟化策を決定(日銀金融政策決定会合)」)
もし、今回の利上げでも、現在の年率3%の物価上昇率がおさまらなければ、さらに政策を修正する可能性は高く、その際には、変動金利型の住宅ローンにも、影響が出てくるかもしれません。
1%金利が上がると、不動産価格は15〜20%下がる可能性
ちなみに、金利が1%上がると、住宅ローンの利息は、35年で15〜20%増えます。
例えば、月に約10万円の返済を考えている人であれば、現在なら3,500万円の物件が買えますが、金利が1%上がると、毎月10万円の支払いで、3,000万円の物件しか買えません。
なお、すでに変動金利で組んでいる人については、5年ルールという、当初5年間は、返済額が固定(ただし、増えた利息はあとで支払う)というルールがあるため、すぐに払えなくなって投げ売りが始まるわけではありません。
しかし、新しくローンを組む人は、変動金利でも高い金利になるため、今まで通りの高い価格でローンを組むことが難しくなりますから、価格は下がりやすくなるでしょう。
(2)2022年問題で、都市の農地が宅地になる
2022年問題をご存知でしょうか?
「都市部にある税金を優遇されていた農地(生産緑地)が、優遇期間が切れることで宅地として放出され、土地価格に影響を与える」
という問題です。
(出典:ウィキペディア cory.2005.Seisan Ryokuchi)
では、神奈川県ではどうなっているのか?
市区町村別に色分けしてみました。
神奈川の生産緑地の分布図:都心に近いエリアほど多く残っている傾向
(参考:国土交通省 都市計画区域、市街化区域、地域地区の決定状況)
ご覧のように、横浜市、川崎市、相模原市といった都心に近いエリアを中心に多くの生産緑地が残っていました。
農地の宅地化はこの10年でも進んでおり、横浜市や川崎市などの都心に近い市でさえも、駅から離れた郊外では下落しているエリアも増えていました。
このような動きがこれからさらに加速するのです。
そのため、周辺に大きな農地のある古い住宅地では、今後さらに注意が必要でしょう。
4、神奈川でこれから上がりそうな地域は?
神奈川県内で、これから不動産価格が上昇しそうな場所は、大きく2種類に分けられます。
①横浜市、川崎市の中心部
1つは、横浜市や川崎市の中心部です。
株価が堅調であることが条件とはなりますが、富裕層や海外投資家による購入が続きそうなので、すでに高くはなっているものの、まだ上昇する可能性はあるでしょう。
ただし、23区では、一般世帯には手が届かなくなって、どんどん人が出て行っています。
なので、投資家が引き揚げたら下落する可能性が高いため、注意が必要でしょう。
②湘南エリア、県の中央部の人口増加エリア
もう1つが、子育て世帯が郊外へ流れてきていることを見越して、人気が集まりそうなエリアを狙う方法です。
こちらは、先ほどご紹介した、人口の増加数が参考になるでしょう。
湘南エリアや大和市や相模原市などの県の中央部では、人口流入が続いていながら、土地価格も安いので、この辺りが狙い目かもしれませんね。
結論:売るなら?買うなら?
というわけで、神奈川県の土地価格は、
- ①変動金利の利用者の増加、②建築費の上昇→中古物件の価格上昇、③人口の増加、といった条件を満たしたエリアでは、土地価格の上昇が続いている
- 今後は、農地の宅地化がさらに進むため、郊外の駅から離れたエリアでは、買い手がつきにくくなりそう
- 金利が上昇し始めているため、高額の物件をギリギリでローンを組むのは危ないので、注意が必要
と言えそうです。
買うなら:低金利なのでチャンスだけれど、、、
本来であれば、低金利は家を購入するチャンスな訳ですが、建築費が上がっているため、家を建てるハードルも上がっています。
なので、いい物件を探すことがポイントになってきます。
非公開物件=安い物件
不動産を売る理由はさまざまですが、「周りに知られずに売却したい」という売主は一定の割合でいます。
そのような物件は、ネット上にも出回らず「非公開物件」として、特定の不動産会社が取り扱っている場合があります。
当然、このような物件は少ないお客さんにしか目にとまる機会がないため、相場よりも価格の安い可能性が高いです。
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無料ですので、一度利用してみてはいかがでしょうか?
売るなら:金融市場が安定しているうちに
神奈川県の土地価格は、低金利や建築費の上昇などによる、土地価格への追い風はあったものの、人口の増加しているかどうかで、土地価格の動きが二極化しています。
また、今後も物価上昇が続くのであれば、金利の引き上げが予想されますので、そうなると、高値の物件を購入できる人は減っていきます。
特に、物価上昇はまだまだ続きそうですし、海外の不動産市場は崩れてきていますので、注意が必要です。
不動産会社選びを失敗すると、数百万円単位で損をする理由
この記事では、公示地価をもとに土地価格の動きについて解説してきましたが、実際の取引では、はるかに高い価格、または安い価格で取引される場合があります。
例えば、茅ヶ崎市内に「十間坂(じゅっけんざか)」という、茅ヶ崎駅の西側の住宅地があります。
この十間坂の公示地価と実際の取引価格は、
- 公示地価:65万円/坪
- 実際の取引価格:47〜100万円/坪
と、公示地価の約0.7〜1.5倍で取引されていました。
最高価格は、最低価格の約2倍です。
なぜ、これほど売却価格が変わるのでしょうか?
その理由は、不動産会社によって、持っている取引情報に差があるからです。
不動産取引は、株式市場のように、全ての取引情報を管理しているところがないため、
- 自社でどれだけ取引情報を持っているか
- どれだけ買い手のリストを持っているか?
で、評価額も、売れる金額も変わってくるのです。
持っている取引情報が違うため、評価額・売却額が変わる
*REINSとは、不動産会社間でだけ共有できる物件情報・取引情報のサービスです。ただし、売主の承諾が必要なため、情報の共有率は、全体の取引の約11%程度となっています
(2022年実績:売り物件報告件数17.5万件 ÷ 土地取引件数152.5万件 = 11.4%)
また、不動産会社が持っている取引情報や、買い手のリストは、エリアや物件によって違いますから、いくつかの不動産会社に査定を申し込むことで、
- どれだけの評価額になるのか?
- どこの会社が、自分の不動産を高く売ってくれるのか?
を知ることができます。
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