この記事では、大阪府内でこれから資産価値が落ちにくい街について解説します。
1、大阪府内で、公示地価が上昇している市区町村
まずは、2013〜23年の10年間で、公示地価が上昇した市町村から、ザックリとした地理的な傾向について確認していきましょう。
大阪府の土地価格の変化(住宅地)
住宅地については、大阪市の中心部にある西区や浪速区、中央区などが大きく上昇していました。大阪市以外だと、堺市の中心部や箕面市などが目立ちますね。
なお、白色のエリアも、10%未満ではありますが上昇している市区町村です。
その辺りも含めると、大阪市、堺市、北摂地域あたりまでの範囲内の市区町村が上昇して、それ以外のエリアでは下落、という傾向が見えますね。
大阪府の土地価格の変化(商業地)
商業地の方が、全体的に上昇率が高めとなっていますね。
大阪市〜堺市〜北摂地域のあたりで上昇率が高いのは変わりませんが、それ以外の周辺の街でも、下落しているところはあまりありませんでした。
2、土地価格が上昇している2つのパターン
かなりの広範囲で土地価格の上昇が見られるわけですが、大きく分けて2つのパターンに分かれます。
(1)駅近のマンションエリア
1つ目が、駅近のマンションエリアです。
さきほど市区町村別に土地価格の上昇エリアを確認してもらいましたが、商業地の方が上昇率が高かったですよね。
商業地とは、「商業地域」「近隣商業地域」に分類される地域のことで、建てられる建築物や高さなどが決まっています。
具体的には、店舗や高層マンションなどですね。
そのため、商業地は、大きめの国道や県道、駅近エリア、商店街などが指定されるわけですが、ここ数年の商業地の上昇の理由は、店舗の売り上げ増加ではなく、マンション価格の上昇です。
例えば、大阪市阿倍野区を例にとると、上昇エリアはこのような感じです。
5年間の変化率(2018→2023年)
変化率:赤紫(+50%以上)>ピンク色(+30〜49.9%)>オレンジ色(+10〜29.9%)>緑色(0〜+9.9%)>青色(-0.1〜 -9.9%)>茶色(-10%以下)
大阪上本町駅や玉造駅などの駅周辺ほど、大きく上昇していました。
ただし、玉造駅の近くで5%超の下落をしているところがありますが、こちらは玉造日之出通りのアーケード商店街です。
店舗の売り上げが回復しておらず、マンション・商業施設の再開発もできないため、下落しているようです。
そして、このマンションの価格が、現在大きく上昇しているため、周辺の土地価格も上昇しているわけです。
この傾向は、大阪市だけでなく、堺市や北摂地域、大阪府の南部でも起こっているのです。
中古マンションの価格が、いずれの地域も5年で15〜50%以上の上昇をしています。
特に大阪市の中心部の6区がすさまじいですね。
このように、高層マンションが立地するようなエリアでは、土地価格の上昇が続いているのです。
大阪府のマンション価格が上昇している理由とは?
では、そもそもなぜ、大阪のマンション価格が上昇しているのか?
大きな理由が3つあります。それは、
- 株価が上がって、大阪の中心部のマンション価格が上昇しているため、都心へ通勤可能な駅近マンションも連れ高している
- 建築費の上昇で、新築マンションの値上げが続いている
- 金利の低い変動金利を選ぶ人が増えて、値上げをしても買える人が増えた
の3点です。
2024年1月25日現在、日経平均株価は36,000円台をつけており、平成バブルの最高値である38,900円台まであともう少しのところまで来ています。
そのため、金融資産を多く持っている投資家であれば、強気でマンション購入に動けるので、グレードの高いマンションについては、価格はまだ上がるでしょう。
そうすると、周辺の土地価格も上がりますので、駅近のマンションエリアの土地価格はまだまだ上がる可能性があります。
駅近のマンションのリスクは?
ただし、全くのリスクがないわけではありません。
具体的には、
- 日銀が利上げに動いており、変動金利も今後は上がる可能性がある
- マンションを購入予定の世帯の給料が上がらなければ、買い手が減る
- 中東紛争が拡大して、ホルムズ海峡が封鎖されると、原油の輸入がストップしてしまい、株価暴落、タワマンも節電モードとなり、暴落する可能性がある
といったことが考えられます。
3については、可能性が低いと考えられますが、株価が暴落すれば、マンション価格は下がりますので、この点については注意が必要でしょう。
(2)世帯数が増加しているエリア
2つ目が、世帯数が増加しているエリアです。
世帯数が増加しているということは、住宅を必要とする人が増えている、ということですから、不動産価格も上がりやすくなります。
では、大阪府内で、どの市町村で世帯数が増えているのでしょうか?
2017〜22年の5年間で増加しているエリアを地図に表すと、こんな感じになります。
(参考:総務省 住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数)
かなりの広範囲で、世帯数の増加していますね。
特に大阪市の中心部と、北摂地区、東大阪市など、大阪市への通勤に便利な市区町村での増加が目立ちます。
住宅地の価格は下がっているものの、世帯数が大きく増加している東大阪市の土地価格を見てみると、このような形になっています。
5年間の変化率(2018→2023年)
変化率:赤紫(+10%以上)>ピンク色(+5〜9.9%)>オレンジ色(0〜 +4.9%)>緑色(-0.1〜 -4.9%)>青色(-5〜 -9.9%)>茶色(-10%以下)
河内小阪駅や八戸ノ里駅の周辺で、特に大きく上昇(オレンジ色のマーク)していますね。全体的に、駅から近いエリアほど、上昇傾向にあります。
一方で、駅から離れたエリアや、特に市の東側で、大きく下落していました。
今後も移住は増えるのか?
このサイトでは、全国の約500の市区町村の土地価格や人口などについて記事にしていますが、地方県では、少子高齢化がかなり深刻で、若い世代は県庁所在地か、首都圏や大阪などの大都市への移住が続いています。
実際、大阪府の転入超過数(県外から引っ越してきた人 ー 出て行った人)をみると、①学生や就職した若い世代(下のグラフの青い部分)、②外国人(灰色の部分)、が増加しています。
つまり、増加している住宅需要の大半が、賃貸物件なのです。
この傾向は、よほど円安が進まない限りは続くと考えられますので、特に賃貸需要は今よりも盛り上がってくる可能性が高いです。
そのため、買い物や通勤に便利なエリアであれば、今後も移住・世帯数の増加が予想されますので、マンションエリアに限らず、土地価格は安定・上昇していきそうです。
注意すべきは、農地の宅地化
ただし、人口・世帯数が増えても、土地価格が上がりにくいエリアもあります。
それは、農地が多く残っている市町村です。
大阪府の農地は、2010〜20年の10年間で、約1,600ヘクタール減りました。10年で2割以上も減っているのです。
30坪の戸建てで約16万戸分の農地が、住宅地や倉庫、商業施設などに変わった計算になります。
さらに、2022年には、大阪市や堺市などに多く残っていた「生産緑地」と呼ばれる農地の、税金の優遇期間が切れました。
さらに10年延長することが可能になっていますが、後継者がいなければ、相続した時点で税金が上がりますから、宅地へと転用されていきます。
農家の高齢化は深刻ですから、今後はこれらの生産緑地も、少しずつ宅地へと変わっていくでしょう。
そのため、あまりに農地が多く残っているエリアでは、次々と新興住宅地が作られることで、古い住宅地の人気が下がる可能性があります。
このような住宅地は、価格が安いので買いやすいですが、長期的な資産価値を考えると、あとあと困ることになります。
そのため、①駅から離れている、②大型商業施設が近くにない、③周りに農地が多く残っている、の3つの条件を満たすようなエリアでの購入は、注意が必要です。
結論
というわけで、まとめると、
- 梅田などの中心部への通勤に便利な駅近マンション:株価が上昇し続ける限り、マンション価格も上がりそう。逆を言えば、株価暴落のリスクが心配な人は、立地が良くても、高すぎると感じるマンションには手を出さない方が無難
- 移住者が多い郊外のエリア(北摂地区、堺市、東大阪市など):駅近物件か、大型の商業施設の周辺であれば、移住者の増加による底上げが期待できる。ただし、農地が多く残っているエリアは、注意が必要
と言えるでしょう。
参考になれば幸いです。
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