この記事では、今週(2024年8月5〜9日)のマーケットを振り返りつつ、今後の動きを予想していきます。
なお、この記事は、こちらの動画を文字起こしと、引用元の記事やデータのリンクを貼ったものとなります。
動画の方が見やすければ、こちらをどうぞ。
それでは、ここからが本文です。
このサイトでは、これまで「もしトランプ氏が大統領になったら?」という仮定の元、円ドル相場や米国株、日本株などへの影響について考察してきました。
その上で、とりあえずの方向性としては、
・円ドル相場は、トランプ氏からのドル安圧力によって、120円台ぐらいまで円高になりそう
・米国株は、国内産業の復活を目指して、高関税を行うため、海外で作ってアメリカで売っているグローバル企業の利益率が下がる。そのため、ビッグテック一辺倒の相場は修正される
・日本株は、超円高によって為替利益が減り、ドル建ての日経平均の価格も上がるため、外国人の売りが増え、調整局面に入る
と考えてきました。
全体的に、下がる方向の予想をしています。
今回の記事は、そういうシナリオで今週のマーケットを見た場合に、どう解釈できそうか、について好き勝手に解説していきます。
なお、すでに投資されてるのであれば、「売ろうと思っている人は、こんなことを考えているんだな」ぐらいで、捉えてもらえれば、精神衛生上、いいのではないかと思います。
それでは、本題に参りましょう。
1、トランプ氏の当選可能性は?
まず、そもそも「トランプ氏が大統領に当選したら」という前提のシナリオですので、足元のトランプ氏の支持率や当選確率について、見ていきましょう。
こちらは、270toiwin.comというサイトで、州別にオンライン調査を集計しており、その結果から、大統領選挙の予想をしているサイトになります。
8月8日現在のハリス氏とトランプ氏の得票数は、226対235と、トランプ氏の方がちょっとだけ優勢のようです。
7月13日のトランプ氏の銃撃事件で、トランプ氏が圧勝のようなムードがあったと思います。
ですが、それから1ヶ月近く経っていますし、ハリス氏も副大統領候補にウォルツ氏を任命するなど、着々と大統領選の準備が進んでいるため、トランプ氏のマーケットへの影響力は弱まっているように思います。
では、今週はどのような動きになっていたのか?個別に見ていきましょう。
2、日本株
まずは日本株です。
今週の日本株は、歴史的な1週間になりましたね。
先週金曜日のアメリカの雇用統計を受けて、FRBへの「こんなに景気が悪化しているんだから、さっさと利下げをすべきだ」と言う声と共に、米国債の金利も大きく低下しました。
先週水曜日の7月31日に、日銀が0.25%の利上げを決定していたので、日米の金利差がさらに縮小する、と言う見方から、これまでの円売りドル買いの根拠となってきた金利差シナリオが崩れ、それまでの円売りを精算をする動き、つまり円買い取引が加速したのです。
これまでの日本株は、円安とセットで動いていましたし、円売りをしていた投資家は、日本株の購入もセットでやっていた、とも言われていたため、株も売られて、月曜日の日経平均は4,551円安、約12%も下落しました。
ちなみに、この日はアメリカ株も下落しましたが、S&Pは3.5%程度の下げでしかなく、世界中のマーケットを見渡しても、日本株が1番大きく下落していました。
8月5日の各国の株式指数の騰落率
日本に次いで、酷かったのが、韓国と台湾ですね。
震源地は間違いなく日本だとは思いますが、サムスン電子もTSMCも1日で10%近く下落しており、アメリカへの輸出シェアが大きい国ほど、影響を受けた、と見ることもできます。
しかし、酷かったのは、月曜日だけで、火曜日は約10%の上昇をし、その後も堅調に推移したため、35,025円で引けています。
今後の株価の見通しは、円相場と一緒に解説します。
3、円ドル相場
次に、円ドル相場です。
8月9日現在、円ドル相場は146円台で終わりました。
5日月曜日に、141円台まで急激に円高が進みましたが、その後に急激に反転し、一時は147円台にまで、円安に触れました。
先週、日銀が利上げを発表し、アメリカでも先週金曜日の雇用統計がメタメタだったことを受けて、FRBが利下げをすべきだ、という流れができました。
これまで、円安がどんどん進んできた理由として、日米の金利差が大きかったことが挙げられていましたが、その金利差が縮小していく、という見通しから、逆回転が始まったという解釈が一般的だと思います。
実際、今週月曜日は、これらの条件が揃ったことを受けて、大きく円高に進みました。
しかし、その後に日銀の内田副総裁が「マーケットが不安定な状況で、利上げをすることはない」と言う内容の発言をしたことを材料に、翌日からは一気に円安に向かいました。
そのため、なんだか茶番っぽい感じの1週間になってしまいましたね。
「なんだよー、びっくりさせるなよー」みたいな感じでした。
これほど円高、株安が一時的だったこともあって、
「ちょっとみんなビックリしたと思いますが、正常運転になりました。株はこれからも上がりますよ」
みたいな、日常に戻ったような雰囲気が作られたように思います。
ですが、本当にそうなのでしょうか?
今回の一連の政府の動きを少し遡りながら、考えてみたいと思います。
今週8日に、日銀と財務省、金融庁の3省庁の代表者が集まって、意見交換を行う三者会合が行われました。
その内容を一言で言うと、「マーケットが大きく動くのは困るので、協力して安定させていきましょう」
と言うものだったようです。
メディアの記事をいろいろ読んでみても、それ以上のことは書かれていませんでした。これだけでは、いまいち、何のために集まったのか、よくわかりません。
ですが、この会合は、3月27日にも行われており、その時の議題は「円安をどうにかしよう」と言うものでした。
当時の為替は、151円台で、年初の140円台から10円以上も円安になっていました。
2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻の後から、円安と物価高が進んでいましたので、「円安が進むと物価もさらに上昇していく」と言う認識が、広く知られていました。
そのため、このまま円安を放置していれば、政府の無策ぶりに不満を持つ人が増えていくような状況にあり、政府としても、何とかしようと集まったのでしょう。
そして、その後の4/23には、トランプと麻生副総裁の会談がありました。
会談の内容は明かされていませんが、その後のトランプ氏の発言などから、現在の円安ドル高を問題視している、と言う認識を得たと思われます。
その結果、4月末から5月に約10兆円、7月に約3.5兆円の円買い介入へとつながったものと考えられます。
つまり、今回の円高は、政府サイドから見れば、予定通りだったと言うことなのです。
おそらく、株式市場がこれほど下がらなければ、今回の三者会合も、日銀の副総裁による「利上げは慎重にする」発言もなかったと思われます。
このことから予想できることは、今後円安が仮に進んだとしても、150円を超えると、政府による円買い介入が起こる可能性が高いと言うことです。
そのため、円キャリー取引の解消がさらに進むことはあっても、復活する可能性は低いと考えられます。
そして、日本株は円安とセットで上がってきましたので、さらなる業績の向上などがなければ、株価は頭打ちとなると予想します。
ちなみに、今週は、4-6月の決算発表がピークとなっており、8日までの決算内容をSMBC日興証券さんが集計されていました。
これを見ると、前年同期比で、製造業では機械、電気が12~13%の増益、科学は20%以上の増益、そして自動車は2.9%の増益でした。
前年の4-6月の円ドル相場は、だいたい135円です。それに対して、今年の4-6月は、155円ぐらいですので、約20円の円安、つまり、15%近く円安が進んでいるのです。
そう考えると、現在の増益率は、円安になった分だけとも解釈できるわけで、「これから円高が進めば、当然、利益も減るよね」と、マーケットが織り込んでいくと予想します。
また、短期的に見ると、これほど下げた後には、リバウンドが入ることが多いですが、その後にもう1度、二番底を探るパターンがよく見られます。
今回の大幅下落をブラックマンデーに例える記事が多いですが、ブラックマンデーの後の株価の動きを見ると、すぐに持ち直した後に、再度下げており、本格的な上昇になるまでに、けっこうな時間がかかっています。
また、リーマンショックの時もそうですね。
大きく下げた後に、リバウンドしていますが、その後にまた下落しています。
円キャリー取引とは、つまりはレバレッジをかけての取引になりますので、今回のような大幅な下落でもポジションを解消していない人でも、ある程度戻ってきたら、清算しようという動きになりやすいです。
そのため、もう少し上がったら売りたい、と言う人は、まだいると考えられます。そういった人たちのポジション調整が済むまでには、時間がかかると思いますし、このままどんどん上がっていく、と言う可能性は低いと考えられます。
4、米国株
次は米国株です。
今週の米国株は、日本株の大暴落を受けてのスタートとなりましたが、月曜日の下落率は3~4%程度で、その後も大きく下げることはなく、少し上昇して終わりました。
目立ったのは、中小型株の指数であるラッセル2000の大幅な下落ですね。
7月13日のトランプ氏の銃撃を受けて、トランプ・トレードが始まりました。トランプ氏の政策は、アメリカ国内の製造業の復活を掲げたものだったため、アメリカ国内の中小型株に恩恵がありそうだと、上昇していたのです。
それが、先週の雇用統計の悪化を受けて、アメリカ国内の景気後退が始まったと考える人が増え、中小型株への期待が剥がれたのだと思います。
また、ウォーレン・バフェット氏の投資会社であるバークシャーズ・ハザウェイが、アップル株を約半分売却していた、と言うことも話題となりました。
投資の神様と言われるバフェット氏が、これほど大量にアップル株を売却したことで、「ビッグテックは割高だ」と言うイメージが広がりました。
そのためか、ビッグテックの株価も冴えない動きとなっていますね。
このように、株式市場は、明確な買い材料を見つけにくい状況にあります。
5、ゲームのルールが変わった?
そして、私が感じているのは、「ゲームのルールが変わったのではないか?」と言うことです。
1970年から今回まで、これまで14回の大統領選挙が行われてきましたが、そのうち11回までが、選挙までの1年間の株価のパフォーマンスがプラスとなっていました。
再選を狙う大統領や、政権政党が、選挙対策にいろいろと景気対策を行うため、株価が上昇しやすかったからです。
「株価も上がってるから、景気もいいんだ。だから、民主党に投票しておけば、間違いない」というシナリオですね。
ところが、このシナリオが崩れてきています。
その兆候は、6月27日のバイデン大統領とトランプ氏のテレビ討論会から始まりました。
YouTubeでも、その時の動画がアップされてますので、見ることができますが、どう見ても、バイデン氏のボケ老人ぶりが酷かったのです。
司会者の質問に対して、全く見当違いの回答をしてて、まともな受け答えができないことが明るみになったのです。
これを受けて、それまでバイデン氏が有利と報じていた、リベラル系のメディアを中心に、「バイデンはやめた方がいい」と、バッシングが始まりました。
いやいや、これまでも何度もバイデン氏の会見を報道してるんだから、気づいていたでしょ?
と思うのですが、「初めて知った。これはやばいよ」という感じの、見事な手のひら返しとなっていました。
また、先週金曜日の雇用統計に対する反応もそうです。
「これまでは、アメリカの経済は強い、だから株高はもっと続く」と散々言われていました。
そして、「景気が悪いサインが来れば、FRBが利下げをするだろう。利下げをすれば、景気が良くなるから、株価はさらに上昇するはずだ」という期待で買われてきました。
ところが、今回、失業率が悪化して、アメリカの景気悪化が確認された途端に、「アメリカの株はこのままではヤバイ。利下げをしなければ、とんでもないことになる」と騒いでいます。
「いやいや、利下げ期待で上がるんじゃなかったの?」と突っ込みたくなりますよね。こちらも、壮絶な手のひら返しが起こっているように見えます。
なぜ、このような、民主党現政権にとって、不利なことが起こっているのか?
私の解釈では、2つの可能性があると思っています。
(1)戦争モードへの変更
1つ目は、戦争モードへの変更です。
バイデン氏のボケっぷりも、経済の悪化もいずれバレると開き直って、「それ以外の大きな問題で目をそらす」と言う方法ですね。
現在、イスラエルとイランが、一触即発の状態になっています。
ブリンケン国務長官が6日に、「早ければ24~48時間以内に、イランがイスラエルを攻撃する可能性がある」と予告したことから、ロシアのウクライナ侵攻の時のような雰囲気になってきています。
あの時も、バイデン大統領が、「ロシアがウクライナに侵攻する」と言うことを事前に発表していました。
また、イランの支援を受けていると言われる、レバノンのヒズボラも、今回の攻撃に参加する可能性が高いと言うことで、カナダやイギリス、アメリカなどの大使館が、「レバノンから脱出するようにと」呼びかけていますし、イスラエルにアメリカが艦艇を派遣して、防衛にあたるとしています。
4月にも、イランからイスラエルにドローンやロケットの攻撃がありましたが、今回はそれを上回る規模のものとなる可能性があり、場合によっては、周辺諸国やアメリカを巻き込んだ、大事になりそうです。
大事の規模感にもよりますが、第3次世界大戦レベルの戦争に発展すれば、選挙どころではなくなってくると思いますので、現政権の延命が図られるかもしれません。
(2)官僚機構、メディアが現政権を見限り始めた?
2つ目が、現民主党政権を官僚機構やメディアが、身限り始めた、と言う可能性です。
トランプ氏が大統領に当選する可能性が高まってきたことを受けて、首を切られたくない公務員が、民主党政権の政策から抜け出そうとしているのではないか?と言うことです。
具体例を2つ挙げます。
①司法省がトランプ裁判に有利な判決を下し始めた
1つ目は、トランプ氏に対する裁判が有利な展開になってきたことです。
現在、トランプ氏は、4つの事件で起訴されていますが、7月1日に最高裁が、大統領在任中の「公的な行動」は刑事責任に問われない、と言う免責特権の判断を下したのです。
これによって、現在訴えられている事件の判決や、量刑の言い渡しが延期になったりしており、起訴されることすらされなくなる可能性も出ています。
司法や検察は、法に対して中立的な立場だからこそ、権威を持つ存在なわけですが、トランプ氏が起訴されている量は、異常であり、不公平だと感じている人が多いのでしょう。
実際、起訴されるほどに、トランプ氏への献金が増えて、支持者が増えていますからね。
②財務省が、トランプ氏の政策に合わせてきた
2つ目は、イエレン財務長官の、円高容認発言です。
4~5月の為替介入の際に、イエレン財務長官は、「為替介入は稀であるべきだ」と発言していたり、為替操作リストに日本を入れていたりと、円買い介入に対して、否定的な見方をしていました。
ところが、7月27日の日経新聞のインタビューに対し、「円安誘導の為替介入は受け入れられないが、円高誘導の為替介入は問題ない」という内容の回答をしていました。
これは、ドル安政策を求めているトランプ氏の政策と合致しています。
トランプ氏の当選確率が上がってきたことで、そのような政策転換が行われているのではないでしょうか。
③FRBが追随する可能性は?
そして、もしこのように、各省庁が、それぞれの思惑で動いていくのであれば、1番気になるのは、FRBです。
トランプ氏は、ブルームバーグのインタビューで、「現在のパウエル議長が、トランプ氏の思うように動いてくれるのであれば、クビにしない」という内容の回答をしています。
また、トランプ氏は同時に、「大統領選挙までに利下げをすることは、現政権に有利になるため、控えるべきだ」とも言っています。
8/2発表の雇用統計の後、メディアが「利下げをしろ」の大合唱をしていますが、もし、パウエル議長がトランプ氏の再選を想定するならば、9月の利下げはないのではないでしょうか。
そうすると、利下げで景気悪化を食い止めて欲しいマーケット関係者は、ショックを受けますので、株価も大きく動きそうです。
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