この記事では、住宅ローンの金利がこれからどうなるのか?について解説して行きます。
1、【2023年11月】住宅ローンの金利の推移
まずは、足元の住宅ローンの金利の動きを見てみましょう。
全期間の金利が固定されているフラット35(期間21〜35年)の金利は、1.96%ともうすぐ2%を越える水準にまで上がっています。
それに対して、半年ごとに金利が見直される変動金利では、さらに金利が下がっています。
例えば、住信SBIネット銀行では、新規での申し込み分で0.298%と、過去最低水準を更新しました。
なぜ固定金利は上昇して、変動金利は下がっているのか?
その理由は、日銀の異次元緩和の一部しか、政策を修正していないからです。
異次元緩和政策は、大きく分けて3つの政策で成り立っています。それをまとめたのが、下の表です。
政策内容 | 主な目的 | 2023年4月以降の修正内容 |
①10年国債の買い入れ・低金利への誘導 | 銀行の貸出金利を下げることで、企業にお金を借りやすくさせる | 長期国債の金利を徐々に引き上げ→長期固定の住宅ローン金利が上昇 |
②日銀の当座預金金利を-0.1%に設定 | 銀行の余っているお金を有効活用させる | 変更なし→変動金利も影響なし |
③ETF(株式投信)、REIT(不動産投信)の買い入れ | 株価を上げて、企業活動を活発化させる | 変更なし→701億円購入し、株価は安定 |
4月に日銀の総裁が植田総裁に代わって以降、政策が修正されたのは、①の長期金利の部分だけです。
そのため、変動金利の住宅ローンは影響がないのです。
また、銀行が変動金利の住宅ローンで儲けるのは、金利部分ではなく、事務手数料(だいたいどこもローン残高の2%。3,000万円貸したら、60万円の手数料が入る)のため、ローン金利を0.3%から0.2%にしたところで、ほとんど損はありません。
このような事情から、長期固定の住宅ローンは上昇しているものの、変動金利型の住宅ローンは逆に下がっているんですね。
2、金利はこれからどうなるのか?
今のところ、国内の金利上昇は、日銀の政策が修正によって起こっています。
では、なぜ日銀は金利を引き上げているのか?というと、物価が上昇しているからです。
そもそも、2013年から日銀が異次元緩和政策を始めた理由は、当時、物価がどんどん下がっていく中で、労働者の給料が上がらず、経済も落ち込んでいたためです。
そんな物価を何とか引き上げようとしたのが、異次元緩和政策でした。そして、年率2%の上昇を目指したのでした。
しかし、現在の日本の物価は、それ以上のペースで上昇をしています。
日本の消費者物価指数は、2023年9月時点で、前年同月比で+3.0%となっており、新型コロナの感染拡大が起こった2020年から比べると、約5%も上昇しているのです。
十分に目標を達成したとして、異次元緩和を止めてもおかしくない水準なのです。
(参考:米国労働統計局、総務省統計局「消費者物価指数」)
しかし、日銀が異次元緩和をやめたとしても、物価の上昇が止まらない可能性が出てきました。
それが、1ドル150円台に乗せてきた円安です。
上のグラフで分かる通り、日本よりもアメリカの方がはるかに物価上昇率が高く、この2年で2割近い上昇となっています。
そのため、アメリカでは、物価上昇を抑えるために、政策金利(FFレート:短期金利をコントロールする)を5%台にまで引き上げています。
そして、10年ものの米国債の金利も10月末時点で4.87%にまで上がっているのです。
アメリカの金利が上がると、円安も進んでいる
日本は金利が徐々に上がっているとは言え、アメリカほど急激ではありませんので、銀行にお金を預けても、ほとんど利息がつかない状況は変わっていません。
そのため、高い利息がもらえるアメリカの国債や外貨預金へとお金が流れて、円安が止まらない状況となっているのです。
円安になると、海外からの輸入品の値段が上がりますから、物価も上がります。
ガソリン価格が1ℓ=180円台になったり、いろいろな値段が上がっていますが、その理由の多くが、円安によるものなんですね。
ということは、アメリカの金利がまだまだ上がるのであれば、さらに円安が進み、物価上昇が進む可能性があります。
そうすると、日銀としても、さらに金利を引き上げざるを得なくなり、住宅ローン金利がさらに上がる可能性もあるわけです。
アメリカの金利は、これからも上がるのか?
そうなると気になるのは、「アメリカが、さらに金利を引き上げるのか?」ということです。
足元のアメリカの物価上昇率を見ると、2023年9月は、前年同月比で+3.7%でした。
一時は+9.1%まで行ってましたので、物価上昇率はかなり収まってきたと言えるでしょう。
(参考:NHK「アメリカ 9月の消費者物価指数 前年同月比3.7%上昇」)
そのため、10月31日〜11月1日に行われたFRB(日本で言うところの日銀)の会合では、物価上昇の勢いが落ち着いてきたことから、さらなる利上げは見送られました。
(参考:NHK「米FRB 2会合連続利上げ見送り インフレ落ち着く傾向などが要因」)
しかし、アメリカの政策金利(FFレート)は、そのままとなっているものの、10年ものの国債の金利はどんどん上昇しています。
アメリカの政策金利が現在の水準の5.25%にまで上昇したのは、2023年5月ですが、その当時の米国債(10年)の金利は、3.5%程度でした。
ところが、その後も米国債の金利は上昇し続け、5%にまで迫る勢いなのです。(薄いオレンジ色の期間を参照)
同じ期間の円ドル相場を見てみると、130→150円台にまで円安が進んでいます。
つまり、FRBが利上げをしなくても、米国債の金利が上がったことで、円安が進んでいるわけです。
なぜ米国債の金利が上がっているのか?
では、なぜ金利が上がっているのか?
経済メディアや資産運用会社の記事を見てみると、以下の3点が上げられるケースが多いようです。
- フィッチが米国債の信用格付けを引き下げ(AAA→AA+)
- 国債の発行額が増えて、買い手がつきにくくなってきた可能性
- 経済が好調なので、国債に投資する人が減った可能性(GDP成長率が、+4.9%と2年ぶりの高い伸び)
(参考:ピクテ「米長期金利はなぜ上昇?連銀ナウキャストから考察」)
1.の格下げについては、他の格付け会社(S&P社)が2011年にすでに格下げを実施しているため、特に大きな影響を与えているわけではありません。
しかし、2、3については、もう少し詳しく見ていく必要があります。
新型コロナ以降の借金の増え方がヤバい
アメリカでは、2020年以降、かなりの国債を発行しています。
例えば、新型コロナによる失業対策としての給付金や、22年に起こったロシアのウクライナ侵攻に対する軍事援助、23年10月からのイスラエル・ハマス紛争への軍事援助(予定)など、毎年のように、大規模な支出が行われているからです。
その結果、新型コロナ前の2019年と比べて、アメリカの借金の残高は、なんと約1,400兆円以上も増えているのです。
さらに、中国はアメリカと貿易戦争が起こっています。ロシアも、ウクライナに戦争を仕掛けたことで、アメリカから経済制裁を受けています。
そのため、アメリカ国債を減らす国も増えています。
このように、あまりに借金を増やしすぎたことと、海外からの購入が減ったことで、買い手がつきにくくなった結果、金利が上昇しているのではないでしょうか。
アメリカの経済は、本当に好調なのか?
また、アメリカの経済が本当に好調なのか?についても、疑問もあります。
10月に発表された実質GDP成長率は、7〜9月で+4.9%と、2年ぶりの高水準となっています。個人消費が好調なため、という解説がされることが多いようです。
(参考:ジェトロ「米GDP成長率、2023年第3四半期は前期比年率4.9%、個人消費が牽引」)
ですが、個人のクレジットカードローンの残高を見ると、2020年以降、かなりのペースで増加しています。
2023年第2四半期(4〜6月)の時点で、史上初の1兆ドルを超えてしまったのです。
(参考:FRB of NY)
しかも、2022年以降、アメリカでは急激な利上げが行われていますので、カードローンの金利も22%を超えている中での、残高の増加なのです。
クレジットカード金利は現在、平均22.16%と過去最高水準に達し、1年前の16.65%から上昇している。
上で引用した記事では、カードローンの残高が増えている理由は、アメリカ人の借金体質が原因と語られています。
ですが、不動産担保ローン(上のグラフの緑色の線)のような、家を担保に低金利で借りられるローンの残高は増えていません。
つまり、担保となる資産がない、賃貸の人たちが、物価上昇で生活が苦しくなっているため、金利の高いカードローンを利用している可能性が高いのです。
実際、アメリカの家賃は、新型コロナ以降に急激に上がっています。
新型コロナで失業者が増えた2020年〜21年にかけて、大家さんは家賃滞納者の強制退去を制限されました。
そのため、家賃の支払いがないまま、期限がすぎた後に退去した人もいたでしょうから、大家さんもかなりの損失を被った可能性が高く、よけいに賃料の引き上げに拍車がかかったのでしょう。
つまり、現在のアメリカのGDP成長率の上昇は、景気が良いというよりは、物価上昇によって、ムリヤリお金を払わせられているのではないかと考えられます。
結論:金利はまだ上がる可能性が高い
というわけで、日本の金利は、アメリカの金利の動きに影響を受けている、という状況を見てきました。
問題は、これからどうなるのか?ですが、個人的には、アメリカの金利はまだまだ上がりそうだと思われます。
最も大きな理由は、アメリカはこれからもっと借金を増やすと考えられるからです。というのも、
- ウクライナへの軍事援助
- イスラエルへの軍事援助
- 毎月20〜30万人ペースで、アメリカに入国している不法難民への支援費
など、何十〜何百兆円規模で必要な問題が、まだまだ山積みだからです。
おそらく、今後さらにアメリカの借金が膨れ上がります。
また、それを買えるだけの投資家がいないため、もっと金利を上げることで、買い手を集めるしかない状況が続くでしょう。
米国債の金利が上がると、円安がさらに進みます。
1ドル160〜170円レベルの円安になれば、日本の物価上昇はさらに進みます。そのため、円安と物価上昇を食い止めるために、日本でもさらに金利の引き上げに動くのではないでしょうか。
そのため、日本の住宅ローン金利は今後もジリジリと上がっていくでしょう。変動金利も、すぐに上がることはなくても、数年後には上がり始めるのではないでしょうか。
3、買うなら?売るなら?
では、これから不動産を買いたい、売りたい人は、どうすればいいのでしょうか?それぞれまとめてみました。
買うなら:低金利なのでチャンスだけれど、、、
本来であれば、低金利は家を購入するチャンスな訳ですが、建築費が上がっているため、家を建てるハードルも上がっています。
なので、いい物件を探すことがポイントになってきます。
非公開物件=安い物件
不動産を売る理由はさまざまですが、「周りに知られずに売却したい」という売主は一定の割合でいます。
そのような物件は、ネット上にも出回らず「非公開物件」として、特定の不動産会社が取り扱っている場合があります。
当然、このような物件は少ないお客さんにしか目にとまる機会がないため、相場よりも価格の安い可能性が高いです。
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売るなら:金利上昇が本格化する前に
フラット35のような、固定金利は2022年から上昇を始めていますが、今年の公示地価やマンションの売り出し価格などのニュースを見ても、大都市圏を中心に上昇が続いています。
その理由の1つとして、変動金利の住宅ローンを選択する人が増えていることが挙げられます。
2015年ごろまでは4割程度だったのが、現在では7割を超えているのです。
そのため、住宅金利の上昇が、不動産価格に影響を及ぼすのは、変動金利が本格的に上昇する頃になってからでしょう。あと2〜3年はかかるかもしれません。
ただし、不動産の売却には数ヶ月単位で時間がかかりますし、エリアによっては、すでに買い手がつきにくくなっているところもあるので、情報収集は早めに始めた方がいいかもしれません。
不動産会社選びを間違えると損する?
不動産会社によって、得意とするエリアや物件種類(戸建て・マンション)が違うので、実際の取引では、公示地価より高く、または安く取引されることがあります。
例えば、「柴崎町(しばさきちょう)」という地区があります。
柴崎町は、立川駅の南側に広がる住宅地です。
このエリアの土地取引を調べてみたところ、
- 公示地価:97万円/坪
- 実際の取引価格:59〜130万円/坪
と、公示地価の約0.6〜1.3倍で取引されていました。
最高価格は、最低価格の2.2倍です。
どちらも「第一種低層住居専用地域」と呼ばれる同じような街並みのエリアです。駅からの距離は多少違いはありますが、これほどの価格差が考えられるでしょうか?
【立川市柴崎町の土地取引】
- 立川駅から徒歩11〜15分のエリアで、59〜130万円/坪で取引されている
- この取引情報のアンケート回収率は約2割のため、実際の取引数はこの5倍程度ある
なぜ、これほど売却価格が変わるのでしょうか?
その理由は、不動産会社によって、持っている取引情報に差があるからです。
不動産取引は、株式市場のように、全ての取引情報を管理しているところがないため、
- 自社でどれだけ取引情報を持っているか
- どれだけ買い手のリストを持っているか?
で、評価額も、売れる金額も変わってくるのです。
持っている取引情報が違うため、評価額・売却額が変わる
*REINSとは、不動産会社間でだけ共有できる物件情報・取引情報のサービスです。ただし、売主の承諾が必要なため、情報の共有率は、全体の取引の約11%程度となっています
(2022年実績:売り物件報告件数17.5万件 ÷ 土地取引件数152.5万件 = 11.4%)
また、不動産会社が持っている取引情報や、買い手のリストは、エリアや物件によって違いますから、いくつかの不動産会社に査定を申し込むことで、
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