2024年の東京23区の不動産市場はどうなるのか? | イエ&ライフ

2024年の東京23区の不動産市場はどうなるのか?

東京都北区 コラム

この記事では、2024年の東京23区の不動産市場について解説していきます。

具体的には、以下の2点について解説します。

  1. 駅近の高層マンション
  2. 住宅地

それでは参りましょう。

 

1、駅近の高層マンション

(1)2023年までのマンション価格の動き

これまで、23区のマンション価格は、都心3区を中心に大きく上昇してきました。

各地区の中古マンション価格の平均単価を見ても、前年比で5〜10%の上昇をしています。

 

東京23区の中古マンション価格の推移

(参考:東日本不動産流通機構)

 

さらに、新築価格においてはもっと顕著で、23区の1戸あたりの平均価格は、1億円を超えました。

多摩地区や神奈川、千葉、埼玉などの他のエリアと比べてみても、いかに23区のマンション価格が異常なのかがわかります。

 

首都圏の新築マンション価格の推移

(参考:不動産経済研究所)

 

このように、23区のマンション価格が大きく上昇した、最も大きな理由は、世界的な株高です。

株価の動きと、特に都心3区の中古マンション価格は、かなり似た動きになっています。

 

都心3区の中古マンション価格と日経平均

(参考:東日本不動産流通機構yahoo finance

 

その理由は、株価上昇によって利益を得た投資家が、不動産へと資金をシフトさせてくるからです。

具体的には、

  • 日本の金融資産の大半を60歳以上が保有しているため、資産が増えると、節税対策として高層マンションが活用された
  • 資産の運用先として、REIT(不動産投資信託)という商品に資金が集まったため、いつでも換金しやすい大都市のマンションへの投資が増えた
  • 日本に住む場所が欲しい海外の富裕層が増えた

といったことが挙げられます。

 

このような結果、一般世帯は、都心のマンション購入が難しくなり、その周辺の通勤しやすい駅近マンションの購入へと移っているわけです。

 

(2)2024年のカギは、アメリカ大統領選

日本の株式市場は、アメリカの株式市場に影響を受けますので、来年のアメリカの株式市場がどうなるかによって、国内外の富裕層の購入意欲にも影響が出てきます。

では、アメリカの株価は上がるのか?

 

ポイントは、来年11月に行われるアメリカの大統領選挙です。

2001年以降のアメリカ大統領選挙と、株価の関係を見てみると、リーマンショックが被った2008年を除いて、選挙までの1年間で、5〜15%の上昇をしていました。

 

S&P500と大統領選1年間の株価上昇率

(参考:yahoo finance US)

 

アメリカ大統領の任期は、2期8年までなので、2期目の再戦を狙う年は、選挙を有利にするために、経済政策を打ち出すことが多いです。

そのため、1期目の大統領の時の株価の上昇率が高い傾向にあります。ブッシュ1期、オバマ1期、トランプ1期の1年間の上昇率は、10%以上でした。

 

このような傾向を考えると、バイデン大統領も現在1期のため、再戦を狙って来年は経済政策を打ち出す可能性があります。

そうなると、株価が上昇する可能性は高そうです。

 

リーマンショックのような金融危機のシナリオは?

ですが、2023年3〜5月に、アメリカでは中堅銀行のシリコンバレー銀行、ファーストリパブリック銀行が破綻しました。

 

2023年に破綻した主なアメリカの銀行
銀行名 破綻日(2023年) 総資産(概算)
シルバーゲート銀行 3月8日 1.6兆円
シリコンバレー銀行 3月10日 28兆円
シグネチャー銀行 3月12日 14兆円
ファーストリパブリック銀行 5月1日 31兆円

 

財務長官が預金の全額保護を宣言したため、リーマンショックのような金融危機になりませんでしたが、破綻した銀行の資産額だけを見れば、リーマンショック級のヤバさでした。

 

なぜ、これらの銀行が破綻したのかというと、

  • 金利上昇で、銀行が持っている債券の含み損が膨らんでいた
  • さらに、リモートワークが広がったことで、オフィスの空室が増えて、オフィスのオーナーの破綻が増え、銀行にも被害が波及してきた
  • このような状況を受けて、「銀行が潰れるのではないか?」と不安になった富裕層が一斉に預金を引き出した
  • 銀行は預金引き出しに応じるために、含み損の資産を売却しなければいけなくなり、赤字が表面化し破綻した

とまとめることができます。

 

それで、このような環境が改善されたのか?というと、実はそんなことはありません。

アメリカの金利は、依然として高いままですし、銀行の含み損もかなり膨らんでいる状況に変わりはありません。

 

アメリカの銀行の含み損益

(参考:米預金保険公社 「FDIC quarterly banking profile」)

 

そのため、預金者が大量に引き出す動きが出れば、またどこかで銀行破綻が起こる可能性は残っている状況です。

 

また、アメリカの商業用不動産の景気も、決して良いわけではありません。

日本もそうですが、リモートワークが定着してきましたので、オフィスの空室率は、ロサンゼルスやシカゴなどの、人口の多い大都市ほど上昇している状況です。

 

空室率が高い都市ランキング
都市名 州名 2023年の空室率(前年比) 人口(万人)
サンフランシスコ カリフォルニア州 18.85%(+4.18%) 81.5
ヒューストン テキサス州 18.64%(+0.43%) 228.8
ダラス テキサス州 17.93%(+0.35%) 128.8
オースティン テキサス州 16.11%(+3.87%) 96.4
ワシントンDC コロンビア特別区 15.87%(+0.46%) 71.3
フェニックス アリゾナ州 15.78%(+1.57%) 162.5
シカゴ イリノイ州 15.62%(+0.36%) 269.7
デンバー コロラド州 15.34%(+1.13%) 71.2
ロサンゼルス カリフォルニア州 14.99%(+1.32%) 384.9
アトランタ ジョージア州 14.58%(+0.76%) 49.6

(参考:全米不動産業者協会)

 

そのため、アメリカ政府の経済政策に期待はしつつも、アメリカの実体経済に注意を払う必要があるでしょう。

 

結論

以上を踏まえて、駅近の高層マンションを購入・または売却するなら、どうすべきでしょうか?

 

買うなら

日本の給料水準が、これから劇的に上昇する可能性は低く、リモートワークの普及もあって、立地的な理由から、高額なマンションを購入する一般世帯は減少していきます。

 

また、アメリカ経済の状況を考えると、仮に2024年は株価が上昇しても、政策的なモルヒネでの延命策である可能性もあり、買って数年で金融危機、というシナリオは十分にあり得ます。

そのため、短期的な投資目的か、相続税対策などの理由がない限りは、オススメできないと感じます。

 

売るなら

アメリカの2024年の経済予想を見ると、「不景気の株高」という内容のものが目立ちます。

経済状況は決して良くないけど、株は上がる、という予想ですね。

(参考:日経新聞「2024年市場の行方は(上) 米景気減速でも株高予想」)

 

私見ですが、アメリカの実体経済は、悪化していると思うので、金融危機のリスクは十分にあり得ると思っています。

そのため、2024年が絶好の売却のチャンスではないかと思います。

 

2、住宅地

(1)2023年までの住宅地の土地価格の動き

東京23区の住宅地は、高層マンションが立地する商業地には劣るものの、新型コロナ以降も上昇してきました。

5年間で14.5%の上昇です。

 

東京23区の公示地価

(参考:国土交通省 地価公示)

 

これほど順調に上昇している最も大きな理由は、人口・世帯数が増加していることによって、家賃が上がっているためです。

この5年間で、東京23区の人口は、約17.3万人の増加、世帯数は約25.6万世帯も増えているのです。

 

東京23区の人口

世帯数が増えるということは、家を買ったり借りたりする人が増えるわけですから、家賃は上がりやすくなります。

そのため、賃貸マンションは5年で1割前後の上昇をしていました。

 

東京23区の家賃相場

(参考:東日本不動産流通機構「首都圏賃貸用物件の取引動向」)

 

家賃が上がれば、その不動産の価値は上がりますので、不動産価格も上がりやすくなります。

 

この他にも、

  • 住宅ローンで変動金利を選ぶ人が増えている
  • 建築費の上昇で、住宅価格が上がって、土地価格も連れ高している

といった理由もありますが、最も大きいのは、世帯数の増加→家賃の上昇だと思います。

 

(2)2024年も、人口流入で上昇しそう

2024年に限った話ではないですが、23区への人口流入はこれからも続きそうですので、「世帯数の増加→家賃の上昇→土地価格の上昇」という流れは変わらないでしょう。

 

ただし、不動産価格が上がりすぎていることと、リモートワークの普及によって、30代以上の世代は、多摩地区や埼玉、千葉、神奈川などに移住する動きが広がっています。

 

東京23区の転入超過数(引っ越してきた人 ー 出て行った人)を年代別に見てみると、15〜29歳は進学や就職で大幅に増え続けていますが、30代以上と0〜14歳を含む子育て世帯は、23区から出て行っていました。

 

15〜29歳の若い世代を除いて、23区から出て行っている

東京23区の年代別の転入超過数

(参考:総務省統計局 住民基本台帳人口移動報告)

 

2024年問題で、住宅価格はさらに上昇

さらに、働き方改革が建築・運輸業界にも広がる2024年問題が始まるため、人件費上昇から、輸送費・建築費が上昇します。

そのため、住宅価格の上昇は避けられず、土地価格の高い23区内で、戸建てを購入するハードルは、さらに高くなるでしょう。

 

特に、駅から離れたエリアの戸建てについては、少しずつ売りにくくなっていきそうです。

 

結論

以上を踏まえて、東京23区内に住宅地を購入・または売却するなら、何に注意すべきでしょうか?

 

買うなら

2024年問題や、金利上昇が予想されるため、住宅ローンを組んでの住宅購入は、今後さらにハードルが上がってきます。

特に住宅ローンを変動金利で組む場合は、数年後の金利上昇を視野に入れて、慎重な返済計画を立てるべきでしょう。

 

売るなら

若い世代の人口流入は、今後も進みますので、世帯数の増加→賃料の増加が見込め、緩やかではありますが、土地価格の上昇が期待できるでしょう。

ですが、リモートワークの普及によって、30代以上の世代において、近隣の県への移住が増えていますので、持ち家需要は弱まってきます。

 

そのため、駅から遠い戸建てエリアであれば、売却は早めに検討しておいた方がいいでしょう。

 

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この記事を書いた人
ゴトウ

証券会社で12年間勤務。営業と店舗マーケティングに従事後、2018年から当サイト「イエ&ライフ」を運営しています。

不動産価格の動きの理解や今後の予想は、金融マーケットの知識があると理解しやすいため、読者のお役に立てるのではないかと、サイトを運営しています。

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