あおぞら銀行の赤字決算から、アメリカの不動産市場の現状を解説 | イエ&ライフ

あおぞら銀行の赤字決算から、アメリカの不動産市場の現状を解説

あおぞら銀行の株価 コラム

(本記事にはプロモーションが含まれています。該当するサービスには、【PR】と表記しております)

 

この記事では、

  • あおぞら銀行の赤字決算の内容
  • アメリカの不動産市場の現状
  • 日本の不動産市場への影響

の3点について解説します。

 

2024年2月1日、あおぞら銀行が業績の下方修正の発表をしました。

(参考:NHK「あおぞら銀行 今年度業績予想 一転 280億円の赤字見通し」)

 

それを受けて、あおぞら銀行の株価は大幅に下落、1日はストップ安の700円安、翌日2日も407円安と、2日で約34%も下落しました。

 

あおぞら銀行の株価

(参考:Yahoo ファイナンス)

 

今回、これほど大きな下落となった理由は、アメリカの不動産市場の混乱です。

この記事では、あおぞら銀行の今回の決算資料をもとに、アメリカの現在の不動産市場がどうなっているのか?について解説していきます。

 

1、あおぞら銀行の決算資料からわかるアメリカの不動産市場のヤバさ

まず、今回のあおぞら銀行の決算内容を簡単にまとめます。

2024年2月1日に発表された決算内容を見ると、2023年当初は240億円の黒字を見込んでいたものが、逆に280億円の赤字になる、という内容に下方修正されました。

 

あおぞら銀行の決算内容 2024年2月

(参考:あおぞら銀行 2024年第三四半期 決算概要)

 

黒字が一転して大幅な赤字になったので、市場はショックを受け、株価も3割以上もの暴落をしたわけです、

その理由の大部分が、米国オフィスビルの価格下落でした。

 

米国オフィスビルの価格下落

アメリカでは、新型コロナ以降、

  1. リモートワークが普及して、オフィスを解約する企業が増えた
  2. 不法移民が大都市になだれ込んできたことで、周辺の治安が悪化して、本社を郊外に移す企業が増えている

といった理由から、大都市ほど、オフィスビルの空室率が上昇しています。

 

全米不動産業者協会のレポートによると、アメリカの都市別のオフィスビルの空室率ランキングを見ると、軒並み人口の多い大都市ほど、空室率が高い結果となっていました。

 

オフィスの空室率が高い全米の都市ランキング
都市名 州名 2023年の空室率(前年比) 人口(万人)
サンフランシスコ カリフォルニア州 18.85%(+4.18%) 81.5
ヒューストン テキサス州 18.64%(+0.43%) 228.8
ダラス テキサス州 17.93%(+0.35%) 128.8
オースティン テキサス州 16.11%(+3.87%) 96.4
ワシントンDC コロンビア特別区 15.87%(+0.46%) 71.3
フェニックス アリゾナ州 15.78%(+1.57%) 162.5
シカゴ イリノイ州 15.62%(+0.36%) 269.7
デンバー コロラド州 15.34%(+1.13%) 71.2
ロサンゼルス カリフォルニア州 14.99%(+1.32%) 384.9
アトランタ ジョージア州 14.58%(+0.76%) 49.6

(参考:全米不動産業者協会)

 

全米2位、3位の大都市である、ロサンゼルス、シカゴがランクインしています。それ以外の都市も、数十万〜百万人規模の大都市が多いですね。

これらの大都市の大半は、「聖域都市」と呼ばれている都市で、不法移民を積極的に受け入れています。

 

現在のアメリカは、不法移民が大挙して押し寄せてきている状況のようで、毎月20〜30万人規模で国内に入ってきています。

Youtubeで、たとえば「asylum seeker(亡命希望者)」というキーワードで検索すると、本当にたくさんのニュース動画が出てきます。

NYやシカゴの街中に、いかに移民が大量に押し寄せているかがわかります。

 

 

それらの大量の不法移民をこれらの都市が受け入れるために、ホテルや廃校舎、公園などに仮設住居を作って対応していますが、あまりに数が多すぎるため、各都市でも限界に来ている状況です。

(参考:NHK  2023.8.3「NY路上に移民希望者あふれる “受け入れ困難” 市が支援求める」)

 

そのため、街の中心部に行くあてのない移民が留まることになり、窃盗などの治安の悪化も起こっているのです。

 

日本で例えるなら、「東京の丸の内に、中国や北朝鮮、東南アジアから、数千人〜1万人規模で押し寄せて、そこに住み始めたら?」というイメージでしょうか。

当然ですが、丸の内で働いている人は、通勤したくなくなるでしょう。しかもそれが数ヶ月単位で続けば、治安の悪化を心配して、退職したり、リモートワークを希望する人が増えるでしょう。

 

このような状況を反映して、あおぞら銀行が融資しているオフィスビルも空室率が上昇し、評価損を計上せざるを得ない状況に追い込まれたと考えられます。

 

では、具体的に、どの街で、どれだけの評価損となっているのか?

決算資料の中に、該当部分がありました。

 

あおぞら銀行の都市別のオフィスビルの評価損率

(参考:あおぞら銀行 2024年第三四半期 決算概要)

 

なんと、ニューヨーク、ワシントンDC(アメリカの首都)、シカゴ、ロサンゼルスなどの大都市で全て、軒並み5〜6割の下落率となっていました。

これはヤバすぎですね。

 

今後1〜2年は、回復の見込みはない

この評価損の計上は、「今後1〜2年は回復の見込みがない」という判断のもとに、改めて評価をしなおした結果です。

なので、3ヶ月前から一気に評価損が増えたわけですが、あまりのひどさに投資家が驚き、ストップ安となったわけです。

 

2、アメリカの銀行は大丈夫なのか?

ここまではあおぞら銀行の決算内容の解説でしたが、あおぞら銀行のアメリカのオフィス向けの貸し出しは、全体の約6.6%でしかなく、倒産する可能性は極めて低いです。

 

ですが、アメリカの銀行はどうでしょうか?

あおぞら銀行が評価をしなおした結果、5〜6割も下落しているのであれば、ニューヨークやシカゴ、ロサンゼルスなどの大都市を基盤にして、オフィスに貸し出している銀行は、もっとヤバイはずですよね。

 

ほぼ同じタイミングで、アメリカの地銀が、決算を下方修正したことで、株価が大幅に下落しています。

 

ニューヨーク・コミュニティ・バンコープが赤字転落

それが、ニューヨークを地盤に展開しているニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)です。

NYCBの総資産は、約17兆円ほどで、千葉銀行よりも少し小さいぐらいの規模です。

 

昨年3月に経営破綻したシグネチャー銀行を買収した、地銀の勝ち組と言われていた銀行なのですが、1月31日に業績を下方修正、赤字になるとの発表をしたことで、株価が約4割下落しました。

(参考:ブルームバーグ「米地銀NYCB、株価暴落-不動産リスクの衝撃が市場揺さぶる」)

 

NYCBの株価

(参考:Yahoo Finance US)

 

赤字になった理由は、「シグネチャーバンクを買い取ったことで、資産規模が大きくなったため、規制が厳しくなり、引当金を多く積まなければならなくなった」という内容のコメントをしています。

日本で例えるなら、「地銀が他の地銀を買収して、都銀になったので、金融庁からの規制が厳しくなった」という感じでしょうか。

 

ですが、そのようなルール変更による引当金の積み増しは、買収した時点で予想ができていますので、投資家がこれほど驚いて投げ売りするようなことではありません。

やはり、商業用不動産の損失が膨れ上がっているためと考えた方が自然でしょう。

 

第2のリーマンショックが来るのか?

昨年3月にシリコンバレー銀行、ファーストリパブリック銀行、そしてスイスのクレディ・スイスが経営破綻しました。

数十兆円規模の金融機関がバタバタと潰れたため、「第2のリーマンショックが来るのか?」と心配されました。

 

2023年3〜5月に破綻した主な銀行

  所在国 破綻日(2023年) 総資産(概算)
シルバーゲート銀行 アメリカ 3月8日 1.6兆円
シリコンバレー銀行 アメリカ 3月10日 28兆円
シグネチャー銀行 アメリカ 3月12日 14兆円
クレディ・スイス スイス 3月20日 80兆円
ファーストリパブリック銀行 アメリカ 5月1日 31兆円

 

ですが、金融不安はなんとか収まったわけですが、その頃から「次は商業用不動産が危ない」と言われていました。

(参考:ニッセイ基礎研究所「アメリカの商業用不動産市場の動向-FRBは中小銀行のリスク集中を懸念」)

 

それが、現実になったのが、今回の一連の銀行の下方修正です。

不法移民が増え続け、大都市にあふれている状況では、リモートワークからオフィスに戻ることはないでしょうし、インフレを抑えるために利上げをしたため、大家の金利負担はさらに重くなっていきます。

 

そのため、今後もさらに悪化すると考えるのが自然でしょう。

いずれ、財務体質の弱い地銀の経営破綻が、次々と出てくるものと思われます。

 

3、日本の不動産市場への影響は?

このような状況が進んでいくとして、日本の不動産には、どのような影響が出てくるのでしょうか?

おそらくですが、現在高騰しているマンション市場が、反転暴落する可能性があります。

 

というのも、日本の大都市のマンション価格は、株価の上昇とともに、上がってきたからです。

なお、リーマンショックの時は、マンション価格は下落しています。

 

都心3区の中古マンション価格と日経平均

(参考:Yahoo finance US東日本不動産流通機構

 

日本の新築マンション価格は、東京23区で平均1億円を超えてきました。

給料が上がりにくい現在、1億円以上の物件を買えるのは、正社員の共働き世帯か、高所得者か、富裕層になります。

(参考:読売新聞オンライン「23年の首都圏新築マンション平均価格、東京23区で初の1億円超え…最高価格は45億円」)

 

そのため、株価が下落すると、高額のマンションを購入する人が減ったり、株での損失を埋め合わせるために売却を迫られたり、と言った形で、マンション価格の下落が起こると予想されます。

 

日本の株式市場は、アメリカの株式市場ともほぼ同じ動きをしていますので、投資目的で、マンションを保有している方は、今後のアメリカの株式市場に注意を払った方がいいでしょう。

 

日経225とSP500

(参考:Yahoo finance US)

 

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この記事を書いた人
ゴトウ

証券会社で12年間勤務。営業と店舗マーケティングに従事後、2018年から当サイト「イエ&ライフ」を運営しています。

不動産価格の動きの理解や今後の予想は、金融マーケットの知識があると理解しやすいため、読者のお役に立てるのではないかと、サイトを運営しています。

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