この記事では、「日経平均が10万円を超えたとき、日本はどうなっているのか?」について、考察します。
なお、同じ内容の動画も作成しました。
ここからの記事では、詳しいデータやグラフ、引用先なども掲載していますので、自分のペースでじっくりと考えながら読みたい方はこのままどうぞ。
それでは、参りましょう。
2024年2月22日に、日経平均株価は、34年ぶりに最高値を更新しました。
その後、4万2,000円台をつけた後、下落しているものの、8月16日現在、3万8,000円台となっており、あと1割も上昇すれば、最高値を更新する位置にいます。
しかも、今年から新NISAも始まり、投資に興味を持つ人も増えているようです。
そんな中、経済の専門家の一部からは、「10万円を超える可能性もある」という声も聞こえてきました。
株価が今の2倍以上になる、ということであれば、景気は今よりも良くなっているイメージがありますよね。
ですが、2013年のアベノミクスが始まった時から比べると、すでに株価は4倍近く上がっているのです。
この11年間、日本は経済的に豊かになったと思いますか?
この動画では、これまでの株高によって、日本に何がもたらされたのか?や、金融先進国のアメリカの事例などを参考に、日経平均10万円になったときの日本の姿を予想してみたいと思います。
1、日経平均が10万円になるための条件
まず、そもそも日経平均が10万円になるには、どのような条件が必要になるのかを考えてみましょう。
大きくは2つあると考えられます。
(1)アメリカの株式市場が上がること
1つ目は、アメリカの株高です。
日本に上昇している株式の3割以上を外国人投資家が持っている関係上、海外、特にアメリカの株式市場の影響を受けやすくなっています。
こちらのグラフは、2010年以降の日経平均と、アメリカの代表的な株式指数であるS&P500を並べたモノですが、かなり似たような動きになっていることがわかりますね。
また、アメリカの株高が続けば、それ以外の国でも株高になる可能性が高く、海外投資家による投資も活発に行われることになりそうです。
(2)円安が進むこと
2つ目は、円安です。
さらなる株高が進むには、今以上に企業の業績が伸びなければなりません。ですが、人口減少と、少子高齢化が進んでいく日本では、個人消費はどんどん減っていくと考えた方が、現実的です。
そのため、海外での売り上げ増加を目指すことになるわけですが、その際に、大きな影響を与えるのが、円安です。
現在の日本の上場企業の営業利益をランキング形式で並べてみると、上位に来るのは、自動車や通信でした。
アベノミクスが始まった2013年の決算を比べてみても、本業の儲けがかなり増えていることがわかります。
通信は国内の産業ですが、インフラ的な側面を持っていて、景気の良し悪しや、円安円高などに、あまり影響を受けません。
一方で、自動車産業や鉄鋼などは、海外の売り上げの比率が高い産業なので、円安が進むほどに、売り上げが伸びます。
アベノミクスが始まってすぐに、株価も上がり始めましたが、同時に円安も進みました。当時1ドル90円前後だったのが、110円台にまで一気に円安が進みましたからね。
また、2022年あたりから、円安が加速し始めていますが、これに合わせて、株価だけでなく、輸出企業の業績もさらに伸びています。トヨタの営業利益が5兆円を超えたのも、円安の影響が大きいでしょう。
そのため、日経平均がさらに上がるのであれば、通信などの国内産業だけ引っ張るのは難しく、1ドル200~250円以上の円安が進んでいると考えられます。
2、日経平均10万円の日本
ということで、ここまでの条件を前提に、これまでの日本や海外の動きを参考に、日経平均が10万円になったときの日本の姿を予想してみましょう。
(1)円安の効果
まず、円安の影響によって、何が起こるのかを考えてみましょう。
2022年ごろから円安が、急速に進み始め、115→160円にまできてしまいました。この2年間で、コンビニやスーパーで買い物をしていると、値段が上がったなあと実感することが確実に増えていますよね。
日本は海外からの輸入に頼っている品目が多いため、このような円安が続けば、モノの値段にも確実に反映されていきます。
そして、日経平均が10万円を超えるのであれば、1ドル200~250円になっていてもおかしくはありません。そうすると、今よりも単純に20~36%、円の価値が下がりますので、その分だけ物価が上がります。
これによって起こることを、いくつか挙げてみます。
①外国人観光客の増加
円安がさらに進むと、海外からの観光客が増えます。今年に入ってから、月単位での外国人旅行者数は、かなりのペースで増加しています。この調子であれば、年間3,600万人を超え、過去最高となる可能性も出てきています。
特に地方は、少子高齢化で若い世代の人口流出が深刻ですが、観光資源のある地域であれば、今後一発逆転の可能性がありそうです。
②外国人労働者の減少
その一方で、日本で働く労働者の数は、減っていくでしょう。直近のデータを見てみると、2023年時点では、まだ在留外国人の人口は増え続けているため、1ドル150円前後の円安であれば、まだ海外から移住してくる人はいるようです。
ですが、今年に入って160円も見えてきて、ここからさらに2~3割円安になるとなれば、どこかのタイミングで、海外からの移住者が止まるのではないかと考えられます。
日本では、これから団塊世代が全員、後期高齢者に突入することで、医療や介護の需要がさらに増えます。介護職全体の従事者は、約233万人で、介護施設で働ける特定技能1号の外国人は、約20万人と、約1割を占めます。
2040年には、280万人必要と言われていますので、さらに外国人の担い手が必要となってくるはずですが、円安が進めば、移住してくる人は減ってくるでしょう。
介護以外にも、建設業や小売、飲食など、人手が多く必要なのに、賃金が低い職種では、思うように人が集まらないため、閉店や廃業を選ぶ業者も増えていきそうです。
③物価上昇
そして、本命が物価上昇です。
日本は多くのものを輸入しているため、円安は物価上昇に直結します。1ドル200円ごえとなれば、食品やガソリン、水光熱費など、生活費も今より2~3割上昇してくるでしょう。
これで給料も上がれば、問題はないのですが、円安でメリットを受けるのは、海外に輸出をしている企業だけですので、おそらく、多くの人は、物価上昇以上の給料アップは見込めないでしょう。
株を持っていなければ、生活は苦しくなっていきそうですね。
3、投資家、資産家の動向
次に、株で儲かった資産家、投資家が、どのような行動をとって、どのような影響を与えるのか?について、考えてみます。
(1)大都市のマンション価格が上がる
1つ目が、大都市のマンション価格の上昇です。
特に都心3区のような、いつでも売却しやすい、投資しやすい物件の多いエリアでは、日経平均の動きと中古マンション価格が同じような動きをしています。
なぜ、このようなことが起こるのかというと、高層マンションが富裕層の節税対策に使われるからです。
日本の金融資産は、60代以上の方が、約63%を保有していると言われています。そのため、株高で恩恵のある人の多くが、60代以上の方です。
(参考:内閣官房「新しい資本主義実現本部事務局」 PDFファイル)
家も車もあって、子育てもひと段落している人も多いため、お金はあっても、使い道に困ることも増えてきます。そのような人が、考えるのが、相続税対策のためのマンション購入です。
株で儲かって1億円残しておくと、1億円に対して相続税がかかりますが、タワマンの上層階を購入すれば、6,000万円ぐらいに評価額を減額することができますからね。
そのため、23区の新築マンションは、近隣3県や都下と比べて、あり得ないほどに価格が上がっています。
(参考:不動産経済研究所「首都圏新築分譲マンション市場動向」)
平均価格が1億円を超えているということは、円安で日本の資産が割安に見える海外投資家や、日本の資産家による相続税対策をあてにした価格設定と言えます。
普通の人にはなかなか買えませんからね。
このように、マンション価格が上がってきた結果、子育て世帯の区外への移住が増えてきました。リモートワークが解禁されたことで、それまで我慢していた人たちが、一斉に区外へ出て行ったような感じですね。
日経平均が10万円を超えれば、さらに国内外の富裕層によるマンション購入が進むと考えられますので、値上げについていけなくなった一般世帯は、さらに区外へ引っ越すようになります。
また、都心部では、不動産価格の上昇によって、家賃の値上げの動きも見られるため、学生や若い独身社会人が、都心に住むハードルはさらに高くなります。
仕事を求めて大都市に移住してきたものの、生活費が高すぎて、ちょっと郊外に住む、という動きも増えていくと考えられます。
円安で物価が上がっても、輸出企業以外は、あまり恩恵がないため、給料があまり上がらないからです。
そのため、ちょっと乱暴ではありますが、上記の図のような感じの、棲み分けが進むのではないでしょうか。
- 都心:富裕層
- 23区内の賃貸:独身社会人や学生
- 近隣3県や都下(持ち家):子育て世帯
といった具合ですね。
結論
というわけで、ここまでをまとめると、日経平均が10万円になる過程で、
- 1ドル200〜250円レベルでの円安が進む
- 物価は上がるが、儲かっている輸出企業以外では、給料は上がらず、生活は苦しくなる
- 外国人観光客は増えるが、労働者は減少するので、人手不足になる
- 富裕層による都心の不動産購入が進み、一般人は郊外へ移住する
といったことが進むと予想されます。
これまでの日経平均1万円時代から4万円にまで来た過程で、見られてきたことなので、それほど外れたいないのではないかな、と思います。
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