BRICS新通貨で米ドル崩壊?ビットコインは米ドルを救えるのか? | イエ&ライフ

BRICS新通貨で米ドル崩壊?ビットコインは米ドルを救えるのか?

コラム

この記事では、「ビットコインは米国債を救うのか?」について、考察していきます。

今月10月の下旬には、BRICS首脳会議がロシアで開催されます。

ここでは、BRICSの新通貨についての発表があると言われており、本格的に、欧米先進国と、中露インドなどのBRICS諸国とで、経済圏がさらに分断され、ドルの覇権がさらに低下すると予想されています。

 

ブリックスサミット2024

(出典:BRICS summit 2024)

 

そして、2週間後の11月5日には、のアメリカの大統領選挙があります。

どちらが勝つのかは、最後までわからないと思いますが、トランプ氏が勝利した場合は、さらに欧米先進国と、BRICS諸国との分裂が決定的になってきます。

 

と言うのも、トランプ氏は、国内の製造業を復活させるために、海外からの輸入品に対して、高額の関税をかけると公約しているからです。

 

トランプ氏の政策

 

すでに、中国はアメリカとの貿易が制限されてきていることもあって、国内経済がガタガタになっています。YouTubeで上海や北京の動画を見ると、若い人を中心に、多くの失業者が出ていたり、お店がどんどん閉鎖されている状況が確認できます。

 

トランプ氏が当選すれば、中国との関係はさらに悪化します。関税を60%とか100%にまで引き上げると言っているわけですからね。

そうすると、中国とロシアは、アメリカなしで経済圏を作らなければなりませんので、BRICS諸国との連帯を強めていくでしょう。

 

そのためには、米ドルを使わないで、相互にお金をやり取りできる仕組みが必要となります。

今回のBRICS首脳会議は、このような状況を踏まえてのものとなるので、BRICS新通貨のお披露目をすることで、多くの途上国を参加させる目的があると思われます。

 

では、アメリカにとっては、何も悪いことはないのか?というと、そういうわけではありません。

トランプ氏の政策は、低所得の人たちに高収入の仕事を与えるために、海外からの安い輸入品を締め出し、企業に国内に工場を作らせ、高い賃金で雇わせることを狙っていますので、物価上昇は避けられません。

 

このようなインフレを防ぐために、国内にある原油を採掘することで、ガソリン代や電気代を安くし、物価上昇を抑えようと考えているようですが、本当にうまくいくのかどうかは分かりません。

かなり大掛かりな、経済の実験になるでしょう。

 

こんな感じで、トランプ氏が当選すると、アメリカも世界も、仕組みが大きく変わってくる可能性があるわけですが、その中でも、面白そうなのが、「ビットコイン大国にする」という公約です。

 

ビットコイン2024でのトランプ氏の演説

(参考:bitcoin 2024)

 

7月の銃撃事件の後の、7月24日に、ビットコイン・カンファレンスにトランプ氏が登壇し、「アメリカをビットコイン超大国にする」と宣言しました。

ビットコインは、偽造などの不正取引ができない仕組みなのですが、その取引を維持するためには、膨大なPCによる計算が必要となるため、かなりの電力を消費します。

ちなみに、これはマイニングと呼ばれます。

 

そのため、電気代の安いところで、運営しなければ、採算が取れないのですが、そこにトランプ氏が手を挙げた、というわけです。

しかし、これだけでは、発電所やビットコインのマイニングの設備を置くだけなので、それほど産業や雇用の活性化にはつながりません。

 

では、なぜ、トランプ氏は、わざわざビットコインのカンファレンスにも参加して、ビットコインを政策の目玉の一つに掲げたのでしょうか?

この点について、考察するのが、今回の記事になります。

前置きが長くなってしまいましたが、ここからが本題です。それでは、参りましょう。

 

1、なぜビットコイン超大国を目指すのか?

結論を最初に言ってしまうと、「ビットコインをさらに盛り上げることで、アメリカの財政赤字問題を解消したいから」、という狙いがあると考えられます。

実は、トランプ氏がビットコイン2024で宣言した後に、共和党上院議員のシンシア・ルミス氏が登壇して、「ビットコインは、財政赤字に役立つ」と講演しているんですね。

 

ビットコイン2024に参加した政治家

 

このビットコイン2024には、それ以外にも、ケネディ大統領の甥っ子のロバート・F・ケネディ氏や、共和党の大統領候補の予備選に出ていたビベク・ラワスワミ氏なども参加しており、けっこうな政治家が、ビットコインに注目しているのです。

 

別に、トランプ氏が、思いつきで参加したわけではないんですね。

それで、なぜビットコインが財政赤字の解消に役立つのか?というと、

ビットコインなどの暗号通貨を購入する際に、アメリカなどの米ドルが使われている国では、テザーというステーブルコインと呼ばれる通貨が決済に使われます。

 

これは、日本で言えば、証券会社の決済口座にMRFという商品が使われることに似ています。

日本では、証券会社で口座を開く際に、MRFという投資信託を決済口座に使う契約をさせられます。

 

MRFとテザーの説明

 

例えば、SBI証券で株を買いたい場合、銀行口座からSBI証券に100万円を送金します。そして、その送金された100万円は、取り合えずMRFという投資信託を自動的に買い付けてしまうのです。

 

その後、トヨタの株を買ったとすれば、そのMRFは、買い付けた金額の分だけ自動解約されて、差し引かれます。

80万円分買ったとすれば、残りの20万円が、MRFのままになっているわけです。

 

なぜ、このようになっているかというと、預かり金のままでは、利息がつかないからです。

MRFは、期間が短い国債などの金融商品で運用されるため、ほんのちょっとですが、利息がつきます。

 

投資信託という仕組みなので、元本保証ではありませんが、元本が減らないように、潰れないような資産でしか運用しないので、まあ大丈夫な商品です。

こんな感じのことが、ビットコインなどの暗号通貨の取引でも、行われているんですね。

 

ビットコインは、企業が運営している取引所に自分のアカウントを持つことで、購入することができるわけですが、一時的に売却して、現金化している時期もあるわけです。

その時の受け皿として使われているのが、テザーと呼ばれるステーブルコインなんです。

 

ステーブルコインとは、法定通貨に連動させるように作られた通貨のことです。今回のテザーであれば、ドルに連動させているため、1テザーは1ドルです。

では、このテザーという暗号通貨が、ドルと連動させるために、どうしているかというと、発行した分のテザーと同額のドル資産を持っています。

 

そして、そのうちの約7割が、米国債なんです。

こちらは、テザーの時価総額と、米国債の保有残高の推移です。

 

テザーの保有資産残高

(参考:Tether)

 

テザーの時価総額は、6月末時点で約18兆円で、そのうち米国債は、約12兆円にもなります。

つまり、ビットコインなどの暗号通貨が、これからさらに盛り上がってくれば、テザーの残高も増えていくので、米国債のお得意様になってくれる、というわけですね。

 

2、どこに米国債を保有してくれる人がいるのか?

現在、テザーやビットコインなどの、暗号通貨と言われる資産については、中央銀行が発行した通貨ではないため、本格的に導入している国はそれほどありません。

エルサルバドルという、人口が600万人ぐらいの中米の国が、ビットコインを法定通貨として採用していますが、それぐらいです。

 

ですが、米ドルを法定通貨として採用している国は、結構あります。

それがこちらの表です。

 

米ドルを法定通貨として使っている国

 

エクアドルやパナマ、東ティモール、ジンバブエなどですね。これに、エクアドルを加えると、人口きぼで約4,600万人、GDPで2,500億ドルぐらいになります。

そして、昨年12月に大統領になったアルゼンチンのミレイ大統領も、法定通貨をドルにすると公約に掲げていますので、数年後には、アルゼンチンも米ドルになる可能性があります。

そうすると、人口9,200万人、GDPは約8,900億ドルにもなります。

 

また、観光地などで米ドルが使われている国も結構あります。中米や東南アジア、アフリカなどかなりの広範囲にわたっています。

 

観光地などで、米ドルが利用できる国

 

メキシコやカナダでも使えるようですね。これらを合わせると、人口で約4億人、GDPで約4.3兆ドルにもなります。人口では日本の約3倍、GDPでは、ほぼ同じぐらいの規模になるのです。

 

トランプ氏が、「アメリカをビットコイン超大国にする」と宣言していますが、それは、ビットコインの計算で使われる施設や発電所を増やす、ということだけでなく、もっとビットコインやテザーなどの暗号通貨を、実生活でも使えるようにすることもセットで考えていくでしょう。

そうしないと、参加者の裾野が広がりませんからね。

 

そして、仮にこれが実現するとなると、米ドルを使っている国々も、ビットコインやテザーを決済通貨として導入すると予想されます。

そうすると、あーら不思議、テザーの利用者が増えるため、テザーの米国債の保有残高が、どんどん増えていくことになるのです。

 

他国でビットコインやテザーが普及するのか?

そんなに簡単に普及するのか?と思うかもしれませんが、途上国ほど、自国の通貨の価値は、とても不安定ですし、銀行口座を持っていない人も多いです。

そのため、スマホ1つで簡単にアプリをダウンロードして、アカウントが作れるため、利用者はかなり増えるのではないかと思われます。

 

昔、キューバに行った時に感じたのですが、自国通貨のペソで買えるものは、基本的にキューバ国内で作られているものでした。

家電や車などを買うには、ドルが必要だったんですね。

 

なので、自国に産業がほとんどない、途上国の人ほど、自分たちの生活をより豊かにしようと思うと、ドルを欲しがる状況は変わっていないと思われます。

そして、海外の国が、暗号通貨を通じた決済を利用すればするほど、米国債の安定保有者が増える、というわけですね。

 

3、BRICS新通貨の影響は?

10月の下旬に、ロシアでBRICS首脳会議が行われます。ここで、BRICS新通貨についての発表が予定されており、脱ドル化が本格的に進むと予想されています。

以前にこちらの動画で解説しましたが、BRICSの新通貨は、UNITと呼ばれる仕組みを使われる可能性が高いということで、この通貨は現地通貨が6割、そして金が4割組み入れられると言われています。

 

そのため、中央銀行がただの紙切れを刷り散らかして、インフレを起こすようなことはできないため、資産性に優れ、投機家に通貨を暴落させられる心配もなくなるため、途上国を中心に、32カ国が参加を表明しています

 

世界における、米ドルのシェアは、年々低下しています。世界の外貨準備に占める、米ドルの割合は、この20年で10%以上低下しています。

 

米ドルの外貨準備高に占めるシェア

(参考:IMF)

 

ロシアに対する経済制裁や、中国との貿易摩擦もこれからさらに進みそうですので、この割合はさらに減っていくでしょう。

 

また、原油を輸入する際には、米ドルが必要でしたが、昨年あたりから、サウジアラビアなどの産油国が、米ドル以外での決済も相談に乗る、とコメントしているように、必ずしも米ドルがなくても、他の国との貿易ができるように、少しずつ進んでいます。

 

サウジアラビアがドル以外での石油決済について言及している記事

(参考:ブルームバーグ)

 

このように、米ドルのシェアが低下していくということは、米国債を買ってくれる国が、これからさらに減っていくことになります。

日本でもそうですが、国の借金はこれまで増えることはあっても、減ったことはありませんでした。

 

今後も増え続けるとなれば、新たな買い手が必要となります。

日本のように、中央銀行が国債を買ってしまう手もありますが、いくらでも刷り散らかすことができる紙切れのドルよりも、金の裏付けがあるBRICS通貨を選び投資家は増えると思います。

 

実際、金の価格は、昨年あたりから、かなり上がっていますからね。

なので、今はまだアメリカドルに対する、世界の信頼感はまだ高いですし、世界中がドルから逃げ出す前に、トランプ氏は、ビットコインとその決済手段であるテザーなどのステーブルコインを広げていく戦略を取るのではないかと思います。

なので、来年以降は、BRICSの新通貨と、米ドルと紐づけられたビットコインやテザーとの間で、シェア争いが始まるのではないでしょうか。

 

4、有望な投資先は?

最後に、このような状況が進んだ場合に、何が有望な投資先になるのか?について、考えておきたいと思います。

とりあえず、思いつくのは、3つです。

なお、あくまで、ただの思いつきですから、投資をする際は、自己責任でお願いしますね。

 

(1)金(ゴールド)

1つ目は、金です。

BRICS新通貨に金が組み入れられるのであれば、発行量を増やすためには、各国が金を保有しなければいけませんので、金の需要は今後もどんどん増えていくでしょう。

 

近価格のチャート

(参考:田中貴金属工業)

 

すでに金は、最高値を更新していますが、まだまだ上がるのではないでしょうか?

 

(2)半導体企業の株式

2つ目は、半導体企業の株式です。

アメリカの半導体大手のエヌビディアが、今年だけで株価が3倍近く上がりましたが、これはAIへの投資をGoogleやメタなどのビッグテックが大規模に行ったからです。

 

ですが、もともとエヌビディアの半導体は、PCゲームや、ビットコインのマイニングに活用されてきました。

今後、トランプ氏が勝利して、アメリカをビットコイン超大国にするために、いろいろな政策を打つとなれば、計算能力の高い半導体の需要はさらに増えるでしょう。

 

そのため、半導体関連の企業の株価は、今後も有望だと考えられます。

ただし、エヌビディアは、すでにかなり高いので、エヌビディアの半導体を作っているTSMCや、サムスン、ソニーなどが狙い目になるような気がします。

 

(3)途上国向けのインフラ提供企業

3つ目は、途上国向けの、生活を豊かにしていくような企業の株式です。

BRICSの新通貨ができると、恩恵を受けるのは、最貧国と言われる西アフリカなどと言われています。

 

そのため、これらの国々でも、本格的にインフラ整備などが行われていくと予想されます。上下水道や道路、発電所などの整備が進むでしょう。

そうなると、例えば、海水を真水に変える逆浸透膜を持つ東レや、海外でのインフラ開発に定評がある荏原製作所などのような企業の仕事が増えると予想されます。

 

 

 

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この記事を書いた人
ゴトウ

証券会社で12年間勤務。営業と店舗マーケティングに従事後、2018年から当サイト「イエ&ライフ」を運営しています。

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