東京都の高校授業料の実質無償化による、人口・不動産価格への影響は?

学校の校舎 コラム

この記事では、東京都の授業料の実質無償化によって、人口や不動産価格に、どのような影響がありそうか?について解説していきます。

 

1、なぜ今、政府・自治体から、授業料の無償化が相次いで出てきているのか?

2023年12月5日に、東京都の小池知事は、私立を含む全ての高校の授業料を2024年度から実質無償化にすると発表しました。

これまでの910万円未満という所得制限を撤廃することで、すべての学生の、公立・私立の授業料が無料になります。

(参考:東京新聞 「高校授業料『実質無償化』2024年度から 東京都、所得制限を撤廃 小池知事『子育て世帯を全力サポート』」)

 

また、ほぼ同じタイミングで、政府からも、3人以上いる子育て世帯の大学授業料の無償化を、2025年度に行うとの発表がありました。

(参考:朝日新聞「多子世帯の大学授業料 無償化へ 2025年度から 政府方針」)

 

このような政策が、政府・自治体から相次いで出ているのは、日本の少子高齢化がかなりのスピードで進んでいる、という危機感からでしょう。

日本の出生数は、かなりのペースで落ち込んでおり、2023年は1〜7月で41.6万人でした。

日本の出生数の推移

(参考:厚生労働省 「人口動態調査」)

 

単純計算すると、月に6万人弱なため、年間72万人前後となります。2022年と比較しても5万人近く減るわけです。

 

東京都では、子育て世帯の脱出が加速している

また、東京などの大都市では、不動産価格の上昇が10年も続いており、子育てできる広さの家を持つことのハードルは年々高まっています。

 

実際、東京都の転入超過数(引っ越してきた人 ー 出て行った人)の推移を見てみると、新型コロナの感染拡大があった2020年〜2021年に、大きく減少しています。

 

東京都の転入超過数の推移

(参考:総務省統計局 「住民基本台帳人口移動報告」)

 

これだけを見ると、リモートワークが普及してきたことが理由と思ってしまいますが、年代別の内訳を見ると、2020年以降に、0〜14歳の転出超過(都外へ出て行っている)が大きく増加しています。

 

*ピンク色の部分が0〜14歳

東京都の年代別の転入超過数の推移

(参考:総務省統計局 「住民基本台帳人口移動報告」)

 

つまり、子育て世帯が、東京都から脱出しているわけです。

東京都が授業料の無償化を発表したのは、このような危機感が背景にあったのではないでしょうか?

 

2、東京都に子育て世帯は戻るのか?

今回の公立・私立高校の授業料無償化(所得制限の撤廃)は、賛否があるようです。

ここではその賛否には踏み込みませんが、今回の政策によって、東京都の出生数が増えたり、子育て世帯が引っ越してくるのか?と言われると、23区と多摩地区とでは、影響が異なると考えられます。

 

(1)23区はマンション価格が高すぎて、影響は小さい

23区のマンション価格は、かなりのハイペースで上昇しています。

理由をざっくり言うと、①株価上昇で国内外の富裕層による購入が増えている、②建築費の上昇、③変動金利の利用者の増加、あたりが大きな理由と考えられます。

*こちらの記事で、詳しく解説しています

東京23区のマンション価格|上昇・下落した理由|今後の見通し
東京23区のマンション価格について、区別に一覧で確認できます。また、この5年間のマンション価格の動きと、今後の見通しについて解説しました。

 

特に、23区の新築マンションの平均価格は、1億円を超える月が増えており、多摩地区(東京都の市部)や、神奈川、千葉、埼玉などの近隣県の平均価格とは別世界になっています。

 

首都圏の新築マンション価格の推移

(参考:不動産経済研究所)

 

この影響は、中古価格にも広がっています。

都心3区が別格ですが、城西地区(渋谷、新宿など)や城南地区(品川、目黒など)でも、100万円/㎡を超えています。

 

東京23区の中古マンション価格の推移

(参考:東日本不動産流通機構 マーケットデータ)

 

ファミリー向けの70㎡ぐらいのマンションでも、平均で7,000万円を超えているのです。

多摩地区では、50〜60万円/㎡ですから、70㎡の中古マンションが、4,000万円台で手が届くことを考えると、倍近くの開きがあります。

 

高校の無償化による、子育て世帯への経済的な支援は、私立高校の場合に、年に47.5万円ですから、1人あたり3年で約143万円になります。

決して支援が少ないとは言えませんが、高すぎる不動産価格に見合う支援とは言えないでしょう。

 

(2)多摩地区は、少しは恩恵がありそう

では、23区ではなく、多摩地区ではどうでしょうか?

多摩地区の新築マンションの平均価格は、5,000〜6,000万円台、中古で3,500〜4,000万円台です。

神奈川、埼玉、千葉などの周辺県と同じぐらいの相場感になっており、一般世帯にも手が届く水準となっています。

 

そのため、多摩地区の転入超過数を見てみると、一貫して増加傾向にありました。

特に2019年あたりから、0〜14歳の転入超過が増えており、23区からの移住が増えていることが想像できますね。

 

多摩地区の転入超過数の推移

(参考:総務省統計局 「住民基本台帳人口移動報告」)

 

なお、周辺県の高校授業料の支援は、所得制限がついているため、多摩地区の方がお得な場合もありそうです。

そのため、これまで神奈川や千葉、埼玉へ移住していた層のうち、ある程度の割合が、多摩地区へと移住先を変える可能性はありそうです。

 

まとめ

というわけで、ここまで転入超過数と、マンション価格を中心に、授業料無償化の影響を考えてみました。

結論としては、

  • 23区は、マンション価格が高すぎるので、授業料の無償化で23区内に留まる子育て世帯は少ないだろう
  • ただし、多摩地区では、周辺県とマンション相場が近いため、他の県でも無償化の動きがなければ、移住する子育て世帯が増える可能性はある

というのが、現時点で言えることでしょう。

 

なお、不動産価格への影響としては、2024年問題による建設費の上昇や、金利の上昇による住宅ローン負担の増加など、もっと大きなリスクがあります。

その辺について、詳しく知りたい方は、こちらの記事なども参考にしてみてください。

 

東京23区のマンション価格|上昇・下落した理由|今後の見通し
東京23区のマンション価格について、区別に一覧で確認できます。また、この5年間のマンション価格の動きと、今後の見通しについて解説しました。

 

東京都の土地価格の推移と今後の見通し
東京都の土地価格がどのような理由で上昇してきたのか?そして、これからどうなるのか?について解説しています。

 

長文お付き合い、ありがとうございました。

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