この記事では、路線価の計算方法・実際の路線価図の見方・調べ方について解説します。
1、路線価の探し方
路線価とは、道路に面している土地の1㎡あたりの価格のことを指します。
国税庁のホームページ「路線価図・評価倍率表」から、調べたいエリアを探すことができます。
下の画像は、実際の路線価図です。
だいたいの地名までは、クリックして探すことができますが、ピンポイントで番地の検索はできません。
そのため、このような画像を何枚か見ながら、知りたい場所を探すことになります。①や②のような、○で囲まれた数字が番地です。
2、路線価の計算方法
ここからは、路線価の計算方法を解説していきます。
道路との接し方によって、何種類かに分けられるので、当てはまるケースを見てください。
(1)1つの道路に面している場合
土地の価値は、正方形に近いほど価値が高く、細長いほど、使いにくいため価値が低くなる傾向にあります。
そのため、1つの道路に面している土地でも、縦横の長さによって、路線価の評価額も変わります。その掛け目のことを「奥行き価格補正率」と呼びます。
奥行距離とは、道路に面していない部分の土地の長さを指します。
そして、該当する土地が、住宅地にあるのか、商業地や工業地にあるのか、などによって、該当する掛け目も変わります。
実際の計算式は、以下の通りです。
では、実際に下のケース(住宅地)について、計算してみましょう。
計算項目 | 実数値 |
①正面の路線価(千円/㎡) | 240千円/㎡ |
②土地の面積(㎡) | 200㎡ |
③奥行き価格補正率(倍) | 1.0倍 |
評価額(①×②×③) | 4,800万円 |
*奥行き価格補正率:住宅地で奥行きが20mの場合、補正率は1.0倍
なお、こちらの入力フォームで、実際に計算することができます。
(2)2つの道路に面している場合(①角地)
正面と側面が道路に接している土地、いわゆる角地の場合には、計算方法が変わります。
角地は、正面と側面のどちらの道路も簡単に利用できるため、価格が高くなる傾向にあります。そのため、計算式も、加算的な要素が加わります。
実際の計算式を見る前に、何をやろうとしているのかを先にいうと、
- まずはじめに、縦と横の評価額(路線価 × 奥行き価格補正率)をそれぞれ出して、価格の高い方を正面、低い方を側面と決める
- 正面の路線価に、側面の路線価をちょびっと足す(側方路線価)
ということになります。
(*「側面」と「側方」という言葉を使い分けている点に注意してください。)
で、具体的な計算式がこちらになります↓
- ①正面路線価 = 路線価 × 奥行き価格補正率
- ②側方路線価 = 路線価 × 奥行き価格補正率 × 側方路線影響加算率
- (① + ②) × 土地の面積
まだちょっとピンと来ないかもしれないので、実際に計算してみましょう。
下の図の土地(住宅地)を計算してみます。
2つの路線価を使うので、横に走る道路の路線価を「横」、縦に走る道路の路線価を「縦」とします。
1、縦と横の評価額を計算して、高い方を正面とする
計算項目 | 横の評価額 | 縦の評価額 |
①路線価(千円) | 240千円/㎡ | 200千円/㎡ |
②奥行き価格補正率(倍) | 1.0倍 | 1.0倍 |
評価額(①×②) | 240千円/㎡ | 200千円/㎡ |
*奥行き価格補正率:住宅地で奥行きが10〜20mの場合、補正率は1.0倍
→横の路線価の方が高いので、横の道路に面した土地を正面とする
2、側面の路線価に側方路線影響加算率をかけて、側方路線価を出す
項目 | 実数値 |
①側面(縦)の路線価 | 200千円/㎡ |
②側方路線影響加算率(角地) | 0.03倍 |
側方路線価(① × ②) | 6千円/㎡ |
*今回は普通住宅地の角地ということで、0.03倍を採用。
なお、準角地とは、こういう角地です。
3、正面路線価に「側方」の加算分を足して、土地の面積をかけて計算
項目 | 実数値 |
①正面(横)の路線価 | 240千円/㎡ |
②側方の路線価 | 6千円/㎡ |
③土地の面積 | 200㎡ |
評価額{(① + ②)× ③)} | 4,920万円/㎡ |
前の章で、正面しか道路に面していない土地では、同じ面積・同じ正面路線価でも4,800万円でしたから、角地の方が、少し高くなることが分かりますね。
なお、こちらの入力フォームで、実際に計算することができます。
(3)2つの道路に面している場合(②正面と裏面)
正面と裏面が道路に接している土地の場合も、独自の計算方法があります。
このような土地も、正面と裏面のどちらの道路も簡単に利用できるため、価格が高くなる傾向にあります。そのため、計算式も、加算的な要素が加わります。
角地の場合と、あまり変わりませんが、何をやろうとしているのかを先にいうと、
- まずはじめに、表と裏の評価額(路線価 × 奥行き価格補正率)をそれぞれ出して、価格の高い方を正面、低い方を裏面と決める
- 正面の路線価に、裏面の路線価分をちょびっと足す
ということになります。
で、具体的な計算式がこちらになります↓
- ①正面路線価 = 路線価 × 奥行き価格補正率
- ②裏面路線価 = 路線価 × 奥行き価格補正率 × 二方路線影響加算率
- (① + ②) × 土地の面積
角地のケースとほとんど変わりませんが、実際に計算してみましょう。
下の図の土地(住宅地)を計算してみます。
2つの路線価を使うので、上に走る道路の路線価を「上」、下に走る道路の路線価を「下」とします。
1、上と下の路線価を比較して、高い方を正面とする
裏面と表面の比較は、奥行きが共通しているので、それぞれの路線価を比較するだけでOKです。
計算項目 | 上の評価額 | 下の評価額 |
路線価(千円/㎡) | 200千円/㎡ | 240千円/㎡ |
→下の路線価の方が高いので、下の道路に面した土地を正面とする
2、裏面の路線価に二方路線影響加算率をかけて、裏面路線価の加算分を出す
項目 | 実数値 |
①裏面(上)の路線価 | 200千円/㎡ |
②二方路線影響加算率 | 0.02倍 |
側方路線価(① × ②) | 4千円/㎡ |
*今回は普通住宅地ということで、0.02倍を採用。
3、正面路線価に「裏面」の加算分を足して、土地の面積をかけて計算
項目 | 実数値 |
①正面(下)の路線価 | 240千円/㎡ |
②裏面の路線価の加算分 | 4千円/㎡ |
③奥行き価格補正率 | 1.0倍 |
④土地の面積 | 200㎡ |
評価額{(① + ②)× ③ × ④} | 4,880万円/㎡ |
*奥行き価格補正率:住宅地で奥行きが10〜20mの場合、補正率は1.0倍
角地の加算分が、0.03倍だったので、裏表の二面で面した土地の方が、角地よりも評価が少し低くなることがわかります。
なお、こちらの入力フォームで、実際に計算することができます。
これ以外の場合
ここで挙げたケース以外にも、崖の近くであるとか、不整形地など、様々なケースで、補正率があります。
あまり細かくなると長くなるので、ここでは触れませんが、詳しく知りたい方は、国税庁のこちらのページから、補正率を調べることができます。
3、数字の横についているアルファベットは、借地権の割合
路線価図には、道路に路線価の数字だけでなく、その横にA~Gのアルファベットがついていますが、こちらは借地権割合です。
相続した家が借地だった場合には、路線価にこちらの掛け目をかけて、評価額を出します。
たとえば、下の図の場合、路線価は240千円/㎡、借地権割合はC=70%となりますので、借地としての評価額は、168千円/㎡となります。
したがって、土地全体の評価は、3,360万円(=200㎡ × 168千円)となります。
まとめ
というわけで、路線価の計算方法を解説しました。
路線価は、相続税の申告をする際に必要な知識ですので、実際に一度計算してみることをお勧めします。
なお、この路線価という価格は、公示地価の8割を目安に出されている価格のため、実際の価格とは大きく異なる可能性があります。
この価格差でトラブルとなるのが、遺産分割協議です。
実際の価格はもっと高いのに、路線下で計算した評価額は低くなるため、「不動産を相続した人の方がズルい」となりやすいのです。
そのため、実際の価格も調べておくことをお勧めします。
当サイトでは、各都道府県、市町村ごとの土地価格の動向についても分析・解説しておりますので、ご興味のある方は、こちらもチェックしてみてください。
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