この記事では、「想像以上に、これから不動産が売れなくなる件」について、考察していきます。
不動産の売却を考え中の方は、ぜひ、参考にしてもらえると幸いです。
それでは参りましょう。
1、日本の不動産市場は、一見活況に見えるが、、、
現在、日本の不動産市場は、一見すると、活況に見えます。
例えば、
- 東京のマンション価格が1億円越え
- 公示地価、基準地価が、この10年で最も高い上昇率になっている
といったニュースを目にしたことがあると思います。
なので、少子高齢化は進んでいることは知ってるけど、「なんとなく、景気はいいのかな」とか、「もっと待っていれば、不動産は高く売れるんじゃないか」とか、思ってしまう人もいるんじゃないかなと思います。
実は、急激な少子化が進んでいる
ですが、今、同時並行で恐ろしいことが起こっています。それが、出生数の急激な減少です。
特に2018年ごろから、おかしくなっていまして、年率4%以上のペースで、出生数が減っています。
一生に一人の女性が何人の子供を産むのか?を表した、合計特殊出生率も、昨年は1.2倍まで低下しています。
この原因は、いろいろ言われていますが、1番大きい原因は、婚姻数の減少でしょう。結婚しようと思う人が減っているんです。
経済的な問題もあるでしょうし、結婚することのメリットを感じなくなったとか、親のプレッシャーがうざいとか、理由は様々だと思いますが、とにかく結婚する人の数が、急激に減っていて、出生数の減少と同じような動きとなっているのです。
これによって、何が起こるのか、というと、持ち家を求める人の減少です。
私は、このチャンネルで、各都市の土地価格の動きについて解説していますが、その中で、気づくのは、戸建ての着工数の減少です。
特に、昨年の新築着工数を見てみると、過去最低を更新している街がかなりあります。
人口が100万人以上の都市で挙げると、横浜、大阪、名古屋、札幌、神戸、京都、さいたま、広島、仙台です。
まだ大丈夫なのは、福岡と川崎だけでした。
つまり、家を求めている人が減っている中で、不動産価格が上昇しているのです。
人気エリアのマンションや、新興住宅地なら、買い手はつくのでしょうが、そうでないところについては、大都市であっても、これからはちょっと難しくなるのではないか?ということなんですね。
2、国の人口予測は甘すぎる
このサイトでは、各都市の土地価格の解説の際に、今後の人口の予想も紹介してきました。
その参照元は、国立社会保障・人口問題研究所という国の機関です。
この機関が、各都道府県、各市町村の将来の人口予測を出しており、私もそれをそのまま引用していました。
ですが、「未来の年表」シリーズで有名な、河合雅司さんという方の「縮んで勝つ」という新書を最近読んだのですが、この本の中で、「人口問題研究所の人口予測は、甘すぎる」と指摘していたんですね。
例えば、この機関の人口予測は、今後の出生数を合計特殊出生率が1.3倍前後で、これからずっと推移する、という予測のもとに計算しています。
ちなみに、2023年の実績は、1.2倍です。すでに、推計を下回っているんです。そのような予測をもとに、各都市の人口予測をしているので、かなり甘い結果になっているんですね。
では、なぜこんな甘い推計を出しているのかというと、この本の中では、「公的年金の見通しをよく見せるためだ」とのことです。
「少子高齢化で、どうせ年金なんてもらえないだろ」と思ってる若い世代が増えて、年金を払わなくなる人が増えるのは困るから、ということなんですね。
まあ、お役人が考えそうなことではあります。
問題は、将来の人口予測が、これしかないということです。
国や自治体の政策は、この予測をもとに建てられるため、これからも、かなり甘い政策になる可能性があります。
そして、一般人にとって問題になるのは、「不動産の買い手がいなくなる」ということです。
岡山市を例にとると、、、
実際にどれぐらいのインパクトがあるのか?具体例を挙げていきましょう。
先日、岡山市の土地価格についての記事を更新しました。
その時に、この5年間の出生数の減少ペースをもとに、人口予測の悲観シナリオを作成した結果がこちらです。
岡山市はこれから10年で約2.2万人減るという予想
*中位シナリオ:合計特殊出生率1.3倍の水準がこれからも続く
*悲観シナリオ:2018〜2023年の5年間の減少ペースを反映(岡山県は年率4.4%減)
(出典:国立社会保障・人口問題研究所 「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」)
岡山県では、出生数が2018年から23年で、20%減っています。全国平均が21%減なので、だいたい平均並みではあります。
この5年で20%減がずっと続いて行ったらどうなるのか?を検証したのが、こちらの赤い棒グラフの悲観シナリオです。
青い棒グラフが、人口問題研究所の合計特殊出生率1.3倍のシナリオになります。
11年後の2035年の予想で、すでに2万人も違ってきています。
児童数は、10年で4割減る
*中位シナリオ:合計特殊出生率1.3倍の水準がこれからも続く
*悲観シナリオ:2018〜2023年の5年間の減少ペースを反映(岡山県は年率4.4%減)
(出典:国立社会保障・人口問題研究所 「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」)
そして、問題は、0~14歳の中学生までの人口です。
先ほどの2万人の違いは、ここに反映されるわけですが、2035年時点で、国の予想が7.6万人に対して、このままいくと、5.6万人になります。
2025年から10年で、3割以上も減る計算になるのです。これ、やばくないですか?
ここまで減ってしまうと、小学校の統廃合の話が出てくるでしょうし、子育て世帯の数も減るということですから、家を買う人も、2割から3割は減るのではないかと思います。
このような状況が、全国で起こるのです。
例外は、福岡や川崎などの、本当に一部の大都市に限られるでしょう。
東京は例外なのか?
なお、東京はどうなのか?というと、特に23区は、不動産価格の上がり方が尋常ではないので、子育て世帯が、郊外の街に移住しています。
昨年は、1万人以上の0~14歳の子供が、23区へ引っ越してくる数よりも、出ていく数の方が多い、転出超過となっていました。
また、今年の1~6月の新築マンションの販売戸数は、3割減少したそうです。
平均価格が1億円越えという高額すぎて、手が出ないということもそうなのでしょうが、婚姻数や出生数そのものが減っているので、家を買おうという人の数そのものが、減っているのかもしれません。
ただし、東京のマンションは、国内外の投資先として使われますので、値崩れを起こすか?というと、ちょっとわかりません。
都心のマンションは、株価との相関も高いので、株価が暴落すれば、価格は下がるでしょうが、今のところは、そういう雰囲気はあまり感じられませんね。
このまま下がり続けるとは限らないのでは?
「でも、こんな機械的に、どんどん出生数が減るとは限らないのでは?」と思う人もいるでしょう。
ですが、この出生数の低下は、日本だけに限らず、特にアジア圏で進んでいるんですよ。
そして、シンガポールや台湾、韓国などでは、すでに合計特殊出生率は、1倍を切っており、韓国は0.7倍すら切ろうとしている状況なんです。
なので、むしろ、日本はこれまでが優秀だった、と言える状況なんです。それが、近隣の国と同じレベルになっていく、と考えれば、特に不自然なことではないと思います。
3、買い手が減っていく危ないエリア
最後に、買い手が減っていく危ないエリアについて、解説していきます。
(1)県庁所在地レベルの大都市(人口:30〜100万人)
まず、県庁所在地レベル以上の大都市については、中心部の住宅需要は、これからもあるでしょう。また、多くの町で、海外からの移住者が増えています。
こういった人は、車の免許を持っていないので、鉄道やバスが使える場所に住みますから、中心部の賃貸需要は、比較的強いです。
なので、こういった場所については、買い手はまだつくでしょう。
その一方で、駅から離れた郊外では、子育て世帯がこれからさらに減るので、キツくなっていくでしょう。
ただし、イオンなどの商業施設の近くであれば、人気が高いので、買い手はつきやすいと思います。それ以外は、難しいでしょうね。
(2)中小都市(人口10〜20万人ぐらい)
次に、人口があまり多くない街についてですが、こちらは、中心部が廃れているケースが多く、中心部の住宅需要の回復は見込みにくいと思います。
ですが、進学などを考えると、中学校や高校へ通学しやすい場所の人気は、そこそこあると思います。また、イオンのような商業施設の近くも、買い手はつきやすいでしょう。
それ以外のエリアは、さらに厳しくなっていくと思います。
(3)大都市(人口100万人以上)
最後に23区や大阪市、名古屋市などの大都市はどうか?ということですが、こちらも中心部の需要は強いと思いますが、これらの大都市でも、郊外では、すでに買い手がつきにくくなっている場所も出てきています。
また、大都市では、マンションの需要はあっても、戸建ての需要はそれほど高くありません。
土地代も高いので、家を建てるハードルはかなり高くなっていますので、高所得の人たちに人気だと思われるエリアではなければ、さらに厳しくなっていくと思います。
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