なぜ石破氏は、自民党総裁選で逆転勝利できたのか?誰が票を入れたのか? | イエ&ライフ

なぜ石破氏は、自民党総裁選で逆転勝利できたのか?誰が票を入れたのか?

石破氏当選の理由についてのサムネ コラム

この記事では、「なぜ、石破茂氏が、自民党の総裁選の決選投票で勝てたのか?そして、どのような意味があったのか?」について、考察します。

 

昨日927日、自民党の総裁選が行われて、石破茂氏が2回目の決選投票で、高市早苗氏を破り、自民党総裁に就任しました。

 

自民党総裁選の結果

(参考:日経新聞)

 

ですが、1回目の投票内容を見ると、1位は高市早苗氏で、株式市場も高市氏が勝利するだろう」との見通しから、株価が大きく上がり、4万円まであと少しというところまで上昇しました。

 

ところが、蓋を開けてみると、決選投票では石破氏が勝利し、引け後の先物は暴落、円ドル相場も146円台まで円安が進んでいたのが、142円台にまで急激な円高が進んでいます。

マーケット的には、「財政出動をして、稼ぐ力を取り戻すぞ」という高市氏が当選すれば、企業の業績は上がるだろうとの期待があったと思うのですが、それが見事に外された形となっています。

 

これほど意外な結果だったということから分かる通り、「なぜ石破氏が逆転できたのか?」が気になりますよね。

国会議員表で見ると、高市氏が石破氏に26票も差をつけていたのに、決選投票になったら、逆転していました。

 

自民党総裁選の1回目の投票結果

 

一体、どういうことなのでしょうか?

誰が、これほど石破氏に入れたのでしょうか?

この記事では、この点について、考察してみます。

 

1、石破氏が決選投票で、逆転できた理由

はじめに、私の結論を言うと、「地方票の高齢者の多くが、石破氏に流れたため」と解釈しています。

 

その理由は、決選投票で使われた、各都道府県連票がヒントになります。

こちらは、日経新聞がまとめた図になりますが、濃い赤色が石破氏で、灰色が高市氏への支持票となっています。

 

県連の投票結果

(参考:日経新聞)

 

東名阪の三大都市圏や、仙台のある宮城、福岡、広島、京都、岡山、新潟、金沢のある石川など、大都市を要する都道府県は、ほとんどが高市氏を支持していることがわかります。

 

唯一例外なのは、札幌のある北海道ですが、札幌の人口が約200万人に対し、北海道全体で500万人いますので、札幌以外の地方票が優ったと言うことなのでしょう。

このように、「高市氏は都市部で、石破氏は地方で」支持を広げていたことがわかります。

 

自民党議員は、どう動いたのか?

では、自民党議員の都道府県別の分布は、どのようになっているのでしょうか?

比例で当選している人は、都道府県別に集計できないので、小選挙区で当選した議員の数を都道府県連票が支持した候補者に振り分けてみた結果がこちらです。

 

県連の結果を反映させた場合

 

なお、衆議院の数には、無所属の会の方が3名ほど入っていますが、調べられなかったため、そのまま入れてます。3名分の誤差があると思ってみてだくさい。

高市氏の方が、41名も多く取れる計算になるんですね。

 

これは、決選投票で、石破氏が高市氏よりも、議員票を42票も多く取った結果とは真逆です。

 

しかし、東名阪や仙台、福岡などの大都市のある都道府県でも、衰退している地方はいくらでもあります。

そして、そういうところに住む人たちは、若い人がどんどん大都市に移住するため、高齢者の割合が多いです。

例えば、埼玉県であれば、都心への通勤圏は、県南エリアに限られますし、神奈川県でも、県の中央を流れる相模川より東側の、湘南エリアまでになるでしょう。

 

埼玉県と神奈川県の人口増減地図

 

それ以外のエリアは、高齢者の多い、地方都市になりますから、地方創生などの高齢者向けの政策アピールが多い、石破氏を支持した方が得だと考える議員が多かったのではないかと思われます。

 

ちなみに、東名阪や札幌、福岡などの大都市圏の都道府県の議員のうち、4割ぐらいが石破氏に投票したとすると、今回の決選投票に近い計算になりました。

 

県連の結果を参考にしつつ、都市部の4割が石破氏に投票した場合

 

これに、比例の議員が衆参合わせて105名いますので、そこでも石破氏を支持する地方が地盤の議員が多ければ、42名の差をつけて、石破氏が勝利したことにも納得できるような気がします。

 

2、なぜ地方は、石破氏を選んだのか?

では、なぜ、高齢者が多いであろう、地方の支持者は、高市氏ではなく石破氏を選んだのでしょうか?

私の解釈では、3つの理由があります。

 

(1)アベノミクスへの反動

1つ目は、これまでのアベノミクス政策に対する反動です。

 

2013年から始まったアベノミクス政策によって、

  • 株式や大都市の不動産を持っている人
  • 円安で潤う輸出企業
  • 大都市でビジネスを展開している企業

が良い目を見てきました。ですが、これらの人は、ごく一部であり、特に地方都市では、ほとんど恩恵がない状況です。

 

例えば、若い世代は、進学率の上昇もあって、どんどん首都圏や、県庁所在地へ移住していきますので、高齢化が深刻です。

商店街は寂れていますし、郊外のロードサイドのお店ぐらいしか、新しい店舗がありません。

 

高卒での就職率が2割を切っていますから、地方では、若い世代がほとんど残りませんし、公共事業の予算もどんどん削られてきたこともあって、新しい産業も生まれません。

 

このような真綿で首を絞められるような状況の中で、高齢化が進み、ついにはインフレで物価上昇が起こっているため、年金でのやりくりも厳しくなっているわけです。

 

そんな状況で、高市氏が「円安にして、新しい産業を起こして、日本を豊かにしていこう」みたいなメッセージを出しても、

高齢なので、もう働いていませんし、円安がさらに進めば、物価が上がるので、さらに生活が厳しくなる、としか思えないでしょう。

 

むしろ、石破氏の地方創生を元気にする、と言うメッセージの方が、うまくいくかどうかは分からなくても、応援したくなるのではないかと思います。

 

(2)台湾有事への不安

2つ目は、台湾有事です。

高市氏、中国に対する強気な姿勢が、支持されている理由の1つと考えられますが、石破氏は、中国とも仲良くしていこう、と言う印象があります。

 

石破氏当選に対する中国の反応についての記事

(参考:毎日新聞)

 

うちの親は、ネットを使わない地方住みの後期高齢者なのですが、たまに電話で話をすると、テレビで見るロシアのウクライナ侵攻や、台湾有事が心配だ、みたいな話をよくします。

 

私はネットばかり見ているので、クリックしなければ、そう言う戦争がらみの映像を目にしませんが、テレビだと強制的にそう言う映像を目にしてしまうため、気になるのだそうです。

 

おそらく、そう言う地方の高齢者は多いのではないかと思います。

ネット上では、毅然とした態度や、リーダーシップなどが、イメージアップにつながる場合も多いと思いますが、特に最近の世界的にきな臭い状況の中では、戦争しそうになさそうな、石破氏の方が安心感があるのではないかと思います。

 

ちなみに、石破氏は、鳥取県出身だそうですが、うちの親戚にもいそうな顔をしています。

頭を禿げさせて、赤ら顔にしてしまえば、こういう人は、田舎にたくさんいますからね。

高齢者ウケはいいと思います。

 

(3)能登半島地震への自民党の対応

3つ目は、能登半島地震への自民党の対応です。

今年の元旦早々に起こってしまった、能登半島の地震では、最近の豪雨も重なって、いまだに復旧の目処が立っていません。

 

能登半島地震の復興状況についてのニュース

(参考:NHK)

 

若い人の人口流出による人手不足や、地理的に工事がしにくい難しさなど、調べてみると、いろいろと原因はあるようです。

また、政府としても、数千億円単位の予算を使って、復興作業にあたっているため、決して手を抜いている、と言うわけではないと思います。

 

ですが、結果だけをみると、

「すでに半年以上も経っているのに、道路も水道も復旧していない、瓦礫もそのまま」

とうい状況なので、いつ自分たちが同じような目に遭うのか?と不安に思う、地方の人は多いでしょう。

 

特に最近は、温暖化が進んでいるからなのか、台風や豪雨などの自然災害の被害が大きくなっているような印象もありますからね。

このような不安に対して、石破氏は、「防災省を作る」ことを公約に掲げました。

 

石破氏の防災省創設に関するインタビュー

(参考:AERA)

 

これによって、特に災害の被害が大きくなりやすい、山間地では、石破氏一択になったのではないかと思います。

 

まとめ

と言うわけで、石破氏が勝利した理由について、考察してきました。

来週のマーケットは、石破ショックで始まると思いますが、具体的な政策はこれからですし、これでどんどん下がる、と言うことにはならないと思います。

 

また、あと1ヶ月ちょっとで、アメリカの大統領選挙もありますので、マーケットは、こちらの方に注目が集まるでしょう。

石破氏の政策は、次のアメリカ大統領が誰になるかでも、大きく変わってくると思いますので、その辺も今後の記事で考察していきたいと思います。

 

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この記事を書いた人
ゴトウ

証券会社で12年間勤務。営業と店舗マーケティングに従事後、2018年から当サイト「イエ&ライフ」を運営しています。

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