今回の動画は、「エマニュエル・トッド教授とピーター・ティールの対談。世界の終わりとは何か?」ということで、やっていきたいと思います。
1、はじめに
4/10に、文芸春秋5月号が発売されたのですが、ここにエマニュエル・トッド教授と、ピーター・ティールの対談が掲載されていました。

ピーター・ティールは、トランプ政権の黒幕の一人であり、ヴァンス副大統領を当選させ、副大統領に押し上げた人で、CIAや国防総省などのAIシステムを提供しているパランティアという会社の共同創業者でもあります。
そんなティールが、3月に高市首相と会談のために訪日していたのですが、そのタイミングで、フランスの人類学者のエマニュエル・トッド教授も来日していたということで、対談が実現したようです。
今回の対談内容は、12ページ分と、それほど分量的に多くはないのですが、二人の考えを繋げると、結構興味深い結論になったと思ってまして、今回はこの点について考察していきたいと思います。
また、トッド教授と伊藤貫先生との対談も掲載されており、こちらも面白かったので、オススメです。
それで、本題に入る前に、ちょっと前置きしておきたいのですが、最近ウチのチャンネルでは、「英国から独立しようともがいているアメリカ」という視点で、あれこれ解説しているのですが、こういった雑誌や書籍をいろいろ見てみても、国内外問わず、イギリス悪玉説を組み入れて、自説を喋っている人は皆無なんですよね。
しかし、今回ざっと文藝春秋を読んでみた印象として、ピーター・ティールと、佐藤優先生は、反イギリスを隠しながら喋っていると感じました。
この視点を入れておくと、いろいろなことがもっとすんなりと理解できると思います。
今回のティールとトッド教授の対談も、ティールは反イギリスという前提に立って、あれこれ考察していきますので、その点だけよろしくお願いします。
それでは、参りましょう。
2、世界の終わりと反キリスト

まず、今回の対談では、いろいろなテーマについて話しているのですが、その中でも重要だと思ったのは、ティールが最近あちこちでしゃべっている「世界の終わり」と「反キリスト」という概念と、それに対するトッド氏の見解についてです。
ピーター・ティールは、以前から聖書を引用しながら、現代社会が終末に向かっているとか、そういうことを喋ってきましたが、現代人の感覚から見ると、昔作られた聖書の内容が、現代に当てはまるって言われても、ピンとこない人が大半です。
そのため、なんだかケムに巻かれてしまっているような、場合によっては、ちょっとオカルトチックな評価を受けがちだったと思います。
では、なぜティールは、この「世界の終わり」や「反キリスト」という概念について、一生懸命語っていたのでしょうか?
私が思うに、その理由は2つあります。
(1)技術停滞への不満
1つ目は、技術的停滞への不満です。

PayPalを創業したり、Facebookに投資をして大儲けしたりと、自身の財産は3兆円ぐらいにまで膨らんでいるティールですが、成功して使えきれないほどの資産を手に入れても、そして、新しいサービスを作り出してきても、それに応じて社会が進歩していかないことに不満を感じていました。
その不満を具体的に表していたのが、
「空飛ぶ車が欲しかったのに、代わりに手に入れたのは140文字だった」
というフレーズでした。
要するに、Twitterみたいな、スマホでポチポチして楽しむおもちゃは手に入れたけど、物理世界はほとんど変わってないよね、と不満です。
例えば、1976年から2003年まで飛んでいた、コンコルドという航空機があります。
このコンコルドは、NYからパリまで3時間半で行ける超音速旅客機だったのですが、燃費の悪さや事故の多さなどから、採算が合わず、全廃されました。
その結果、現在のNYからパリまでの航空機は、8時間半かかるそうです。
これって、技術が進化してるって言えるのか?というわけです。燃費が悪かったり、事故が多かったのなら、それをなんとかするために技術開発するべきだったのでは?
それが技術革新ってものだろ?というわけです。
(2)グローバリズムへの恐怖
そして2つ目が、グローバリズムへの恐怖です。
新型コロナのどさくさで、あれを打たないと海外に行けないとか、マイナンバーみたいな個人情報の登録をしておかないと、給付金を受け取れなくなるとか、テレビをつければ、今日も過去最悪な感染者数でしたと煽り散らかすニュースばかりと、当時を振り返ると、かなり異常な状態だったと思うのですが、それを指示してきたのは、国連やWHOなどの、世界政府的な権力でした。

さらに、グレートリセットとか言って、二酸化炭素の排出をゼロにしようとか、環境にいいことをしてる企業に投資しようとか、キャッスレスにしようとか、そういうわけのわからないことを推進しようとしていたのが、ダボス会議の連中です。
これらのハゲ散らかした、キッショいおっさんたちは、別に私たちが選挙で選んだ人ではありません。
なのに、なんでそんなことを宣言して、それを日本やアメリカの政治家が、ハイハイと従ってるのか?全く意味がわかりませんよね。
特にアメリカは、2021年からバイデン政権になって、充電設備も十分にないため、ろくに使えない電気自動車を推進し、大量の不法移民を受け入れて犯罪件数も増加して、さらに、DEI政策によって、マイノリティの人たちを贔屓することで、能力のある人たちに機会を与えないことで、弱体化が進みました。
このようなリスクが今の世界にあると思っていたため、これを何とかしようと、キリスト教で使われてきた「世界の終わり」や「反キリスト」という言葉でそれを見える化しようとしてきたのだと思います。

では、この2つの言葉が意味するところは、一体何なのでしょうか?
これは私のざっくりとした解釈なのですが、「世界の終わり」とは長期目標のことで、「反キリスト」とは、目先の欲望をちらつかせることで、邪魔したり、回り道をさせようとする詐欺師みたいなイメージです。
例えるなら、受験勉強している高校生にとっての、志望校に合格したいという目標が、「世界の終わり」に対応して、
その高校生の集中力を奪って勉強の邪魔をしようとする、TikTokやYouTubeが、「反キリスト」に対応するような、そんな感じです。
ただ、世界の終わりが長期目標って、ちょっと意味がわからないと思うので、補足します。ティールの恩師であるルネ・ジラールという哲学者が、1945年までは、教会で世界の終わり、終末について、神父さんが結構説教をしていたと語っていたそうです。
キリスト教徒にとっての世界の終わりとは、最後の審判と結びつきます。
キリストが現世に再降臨して、良い行いをした人間を天国へ、そうでない人間を地獄へ落とすというイベントのことですね。
なので、教会で世界の終わりについて説教するということは、いつか神様が戻ってくるから、その時に地獄に落ちないように、良い行いをして生きていきましょうね、みたいなメッセージを伝えるものだったのでしょう。
ところが、日本に原爆が落とされて、一発で何十万人も殺傷できる核兵器が生まれたことで、教会では世界の終わりについて、説教に出て来なくなったといいます。

というのも、人間がやべえ武器を作って、世界中に落とすことができるようになったことで、世界の終わりが、宗教的なものではなく、いつか自分たちの身に降りかかるかもしれない、恐怖のイメージに変わってしまったからです。
つまり、世界の終わりというイメージが変わってしまったことで、最後の審判が来た時にも大丈夫なように、良き行いをして生きていこう、という長期的な目線で生きていくことが難しくなってしまったというわけです。

その結果、人間は目先の欲望に振り回されるだけの存在になっていきました。
長期的な目標がない人間や組織は、どこに進めばいいのかわからず、その場で立ち止まってしまいがちになる。
投資家を騙すために、派手なビジョンを掲げるものの、実は中身が空っぽのベンチャー企業とか、細分化されすぎて、役に立つのかどうかもわからない研究開発など、
ティールが不満に感じている技術的な停滞は、このような長期的な目標意識の欠如、世界の終わりという将来に目を向ける意識の欠如があるのでは?と考えているような気がします。
さらに、目先の欲望しか残らなくなると、人に支配されやすくなります。
目先の欲をちらつかせて、金をぶんどる欺師広告や、目先の恐怖を煽ることで、信者を支配する新興宗教、コロナでアレを打て打てと煽り散らかしてきたテレビなど、完全に国民を支配しようとしてましたよね。
このようなことをやる人間を反キリストと呼ぶことで、見える化しようとしたのだと思います。
ティールは、そんな反キリスト的な人間として、環境活動家のグレタさんとか、AIは世界を滅ぼす的な悲観論と規制を求める、エリゼル・ユドカウスキーなどを挙げていますね。
グレタさんは、これ以上環境破壊が進めば世界が滅ぶと脅し、ユドカウスキーは、このままAI を進化させていったら、人類が滅ぶと脅し、政府横断的な規制、つまり世界政府による支配を正当化させる存在だと見ているというわけです。
ティールは隠れ反イギリス派
それで、ティールの主張というのは、聖書を引用しながら、グローバリズムを批判するという立ち位置にいますので、これは反イギリス的な立場でもあります。
例えば、ティールは、2016年の大統領選挙の頃からトランプ支持者でしたが、これはトランプが反イギリスの大統領になると分かっていたからでしょう。

また、2022年にJDヴァンスが上院議員選挙に当選しましたが、この時に何十億円という選挙資金を支援もしました。2020年ごろまでのヴァンスは、「自分はアンチのネバートランプ派だ」と言ってましたが、この頃にはトランプ批判をやめて、一転して支持に回っていますし、2022年には、イスラエルに行って嘆きの壁で祈ってもいます。
JDヴァンスは2019年にカトリックの洗礼を受けていますので、ユダヤ教の聖地である嘆きの壁に行って、キッパというユダヤ教の帽子をかぶって祈るというのは、宗教的にどうというよりは、むしろ、イスラエル派に入りましたという宣言だと思われます。
前回の動画で詳しく解説しましたが、現在のトランプ政権が親イスラエルなのは、イギリス系のグローバリストが政権内に入ってくることを防ぐためのものだと考えています。
実際、フランクリン・ルーズベルト政権は、ソ連のスパイがウジャウジャいたと言われていますが、これはイギリス系のグローバリストが政権内に入り込めないようにしたかったからだと思います。それをトランプも真似ているというわけです。
なので、ティールは、ヴァンスに
「お前の故郷のオハイオ州がボロボロになったのは、イギリスによる自由貿易政策にアメリカが追い込まれたからだ。だから、故郷を復活させたいなら、反イギリスのトランプを支持して、トランプとタッグを組んでいるイスラエル派に入れ」
と説得したのでしょう。
こんな感じで、ティールは明確にイギリスを敵視してきたわけではありませんが、グローバリズムを反キリストと言って批判してきたり、反イギリスの政治家としてJDヴァンスを支援し育てたりと、ぱっと見、わかりにくいような形でイギリスに敵対してきた人だと、私は解釈しています。
3、トッド教授はどう捉えたのか?
では、トッド教授は、今回の対談の中で、ティールやティールの世界の終わりと反キリスト理論について、どう考えていたのでしょうか?
トッド教授は、宗教には3つの段階があると考えています。

1段階目は、アクティブな状態で、神の救済も信じてるし、そのために必要な道徳や規範も守るという状態です。
2段階目は、ゾンビ状態で、神の存在は信じてないけど、宗教時代の規範が社会に溶け込んで、それをみんなが守ることで、社会の秩序が維持されているような状態です。
大体の日本人はここに入って、欧米の常識的な人たちもここに入るでしょう。
そして第3段階は、ゼロ状態で、神も信じないし、モラルなんて無視、やったもん勝ちという状態ですね。これは、グローバリストがそうですし、トッド教授から見ると、トランプとその支持者もそのように見えているようです。
トッド教授は、トランプの今回のイラン戦争をアメリカ国内のボロボロな状態から、国民の目を逸らすための目眩しだと考えていて、さらに、アメリカのエリート層は、これまでの戦争屋と一緒で、何の目的も戦略もなく、戦争さえやって軍需産業が儲かればそれでいいと考えてる奴らばかりだったから、今回もそうだろうと捉えていました。
私はトランプ政権に対するトッド教授の見方は、ちょっと違うなと考えてはいますが、それは置いておいて、トッド教授のこの3段階目の宗教ゼロの状態に、先進国では、陥っている人間が多いのではないかと思いますね。

特に、上っ面は綺麗事を言うくせに、実際にやることはえぐいという、腐ったイギリスの上流階級は、完全に宗教ゼロの人間が多いと思います。
例えば、
イギリスが支援してマルクスに作らせた1848年の共産党宣言では、「全ての国民が平等なパラダイスみてぇな国をつくりてぇ」と言う綺麗事を言ってる割に、暴力的な革命を肯定しています。
また、1928年にムスリム同胞団を作ったハサン・アル・バンナに、本部となるモスクを建設する支援をしたのは、スエズ運河会社で、この当時はイギリスとフランスが株式を独占していました。
そして、この時期のイギリスはスエズ軍隊を駐留させていたので、イギリスによる関与がかなり高いと思われるのですが、当時のエジプトはイスラム教の影響が少なくなっていたのに、そこで無理やり宗教を立て直して、反ユダヤを掲げ、ナチスとの関係を深めるなど、かなり荒っぽい過激派組織へと育てていきました。
イギリスという腐った国は、自分たちで敵を育てて、育てた後に「あいつらは酷い奴らだ!」と騒ぎ出して戦争を仕掛けるという、救いようのない頭の構造をしていますので、
共産主義になったロシアを攻めに行き、過激派になった中東を攻めに行くという、一体何がしたいの?と思うようなことを平気でやっていますが、これこそ、宗教ゼロの人間の集まりがやることなのでしょう。

それで、トッド教授は、この宗教ゼロの状態が続くと、社会集団としての結束力がなくなり、その中にいる個人も弱くなっていくと分析しています。
その結果生まれるのが、虚無感で、この虚無感に晒され続けると、人生の意味がわからなくなり、現実をぶっ壊したいというニヒリズムに陥ってしまうと見ています。
じゃあ、このニヒリズムを乗り越えるにはどうすればいいのか?というと、それは宗教ではなく、国家ではないか?というのが、トッド教授の考察です。
カトリックを守りたい、仏教を守りたい、とは思わなくても、フランスや、日本を守りたい、という感覚を持てる人は多いだろうからというわけです。

一方で、ティールは、宗教、というかキリスト教を国家よりも重要だと考えているようですね。
ティールがキリスト教を考えるきっかけとなったのは、ルネ・ジラールというスタンフォード大学の哲学科の教授だったのですが、ジラールは、初期のキリスト教こそが、歴史を前に進めたと考えていた人でした。
なぜかというと、それまでの人間というのは、何か天変地異があったり、社会の雰囲気が悪くなってきたら、集団の中の一人をスケープゴートにして、生贄にすることで、やり過ごすということをずっと繰り返してきたからです。
しかし、そこにキリストが現れました。
キリストは磔にされて死んでしまいましたが、彼は何も悪いことはしていません。
それまで、スケープゴートにされてきた人たちは、何かしらの理由がでっち上げられたりしてきましたが、キリストはそんな罪も何もない状態で、人々の生贄にされてしまったのです。
あれ?俺たちって、何で何の罪も犯していないキリストを磔にしたんだ?もしかして、ストレス解消にやってたってこと?というのが、バレたのです。
これ以降、キリスト教を信じる人たちは、キリストが自分たちのために磔になったことを思い出すことで、社会の中で生じるストレスを解消する術を手にいれ、社会を前に進めることができるようになったんだ、というのが、ジラールの解釈であり、それに影響を受けたティールは、キリスト教が世界を前に進める力を持っていると考えているのだと思います。
宗教ゼロになった先進国では、人間の孤独が社会問題化してて、イギリスでは孤独対策をする行政組織までできています。なので、これからどうやって集団的な力を復活させるのか?個人の力を復活させるのか?
というのが、これからのテーマの一つとなるのかなと思いますね。
ピーター・ティールとトッド教授については、今後もこんな感じで、たまに考察していきたいと思います。






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