この記事では、「アメリカの相互関税で、絶縁するBRICS」ということで、やっていきたいと思います。
1、はじめに
4月3日の日本時間の朝方に、トランプ大統領が相互関税政策について発表しました。日本には、24%の相互関税をかけるということで、株式市場は大きく下落し、木曜、金曜とそれぞれ1,000円近い下落となり、先月28日の先週末と比べて、9%以上の下落となりました。
さらに、その後のNY市場も大きく下落していることから、日経平均先物はさらに下げており、この動画を作成している5日時点で、32,100円台とつけていますので、月曜日も1,000円ぐらい下げそうな感じです。
私は以前から、株や為替については、株安、円高を予想してきました。
昨年11月にこんな感じの動画を出してまして、おかげさまで数万再生されて、登録いただいた方も増えてます。
では、なぜこんな話を、以前からしていたのか?というと、「トランプ政権が、現在の世界の仕組みをひっくり返すだろう」と、思っていたからです。
今回の関税についても、経済の専門家は、
①影響は大きいが、なんとかなるだろう、という楽観論か、
②トランプが無茶苦茶やってるおかげで、どうなるか分からない、という様子見か、
のいずれかになっているように思います。
これらに共通するのは、「世界の仕組みは変わらない」という前提で、考えているという点です。
しかし、本当にこの前提で、今後の株式市場を予想していっても大丈夫なのでしょうか?
今回の記事では、「トランプが世界がひっくり返すから」という可能性に沿った、株式市場の予想について、考察していきたいと思います。
それでは、参りましょう。
2、相互関税について
まず最初に、今回の相場崩壊のきっかけとなった、相互関税の内容について、簡単に触れていきたいと思います。
4月3日の日本時間の朝に発表された、相互関税は、日本に対して24%というかなり厳しい内容のものになりました。
前回、こちらの動画で、関税の計算式についてアレコレと予想してみたのですが、以前から言われていた、消費税や円安効果などが算出の根拠となっているわけではなく、単に貿易赤字を輸入額で割った数値を半分にした、というものだったようです。
あまりに単純な計算式だったため、多くの専門家が、全く公平なものではないとブーイングを出していますが、トランプ政権は全く気にしていないようです。
この反応は、私にとっては、特に驚くようなことではありませんでした。
というのも、トランプ氏の目的は、アメリカ国内への製造業の回帰であり、貿易赤字の削減だからです。
口では、「アメリカは海外との貿易で不利な条件になっているから、やり返すんだ」と言ってますが、仮に日本が公平な条件を提案したところで、アメリカの貿易赤字が減らなければ、全く意味がないのです。
なので、計算式の中身は、どうでもよくて、とにかく、
「アメリカに工場を持って来い」
「アメリカにモノを売るなら、その分だけ何か買え」
ということなのです。
そのため、これから各国が、条件交渉を行うことになるようですが、その交渉によって、経済が安定することはないでしょう。
経済のルールが変わる
これまでの経済システムは、「アメリカというお母さんに、各国がお手伝いをすることで、ドルというお駄賃をもらって、駄菓子屋に行くような」そんなルールでした。
ですがこれからは、トランプ母さんは、お手伝いをしたら、りんごの皮ぐらいは剥いて出してくれるかもしれませんが、お駄賃をくれなくなります。
なので、アイスが欲しいなら、直接駄菓子屋でお手伝いをするなりして、駄菓子屋さんを喜ばせなければ、手に入らなくなるのです。
このような世界の変化を前提に、株式投資がどうなるのか?を考えなければいけないのではないかと思います。
3、大きな影響を受けるのは?
では、このような世界の仕組みがひっくり返る状況になるとしたら、大きな影響を受けるのはどこでしょうか?
(1)ビッグテック
1つ目は、アップルのようなビッグテックです。
今回のアメリカの相互関税に対して、中国は報復関税として、同率の34%を課すと発表しました。
アメリカは、今回の相互関税は、半分にまけてやっているんだから、交渉してこいと言ってます。そして、対抗しようとするのであれば、こちらはさらに上げるだけだと言っています。
なので、今回の中国の報復関税は、アメリカの相互関税をさらに引き上げる結果にしかならず、最終的には、中国とアメリカとの経済の絶縁宣言につながると考えられます。
元々、トランプ政権は、中国で作ってアメリカで売っている企業に対して、アメリカに戻せと、第1期の頃から言ってるので、はっきり言って狙い通りです。
なので、中国との貿易の絶縁は、短期的には痛みが大きくても、トランプ氏は必要なことだと考えています。
ということは、中国で作られているiPhoneに対する関税は、今回の相互関税で54%に上がったわけですが、そこに中国が34%の報復関税をすると発表したため、今後さらにエスカレートしていきますので、おそらく100%を超えるでしょう。
すでに、アメリカでiPhoneを買うには、4割以上の値上げが必要となるので、最上位機種で33万円を超えるのではないかと観測記事が出ていますが、関税合戦によって、おそらく50万円を超えるのではないかと思います。
こうなると、アップルの売り上げはガタ落ちしますので、今後は株価の暴落は避けられないでしょう。
グーグル・ピクセルなどの、他社のスマホも、米国製ではなく、中国やベトナム、インドが多いようです。ベトナム、インドも30%以上の関税をかけられますので、アメリカのスマホ価格は、かなり上がっていくでしょう。
ウォーレン・バフェット氏率いる投資会社のバークシャー・ハザウェイは、昨年から一貫して、アップルの株式を売却して6割以上も減らしてきていましたが、トランプ氏が当選する前から、このリスクについて考えていたのだとしたら、凄すぎますよね。
(2)金融
2つ目は、金融です。
今年1月に世界経済フォーラム、通称ダボス会議に、トランプ氏がリモートで参加しました。その中でも、話題となったのが、バンク・オブ・アメリカのCEOであるブライアン・モイニハン氏に対する叱責です。
トランプ氏が大統領に当選するまで、バンク・オブ・アメリカのようなアメリカの大銀行は、保守派の人たちの口座開設を拒否したり、すでに開いている口座を閉鎖するので、他に移ってくれと要請したりと、かなりの嫌がらせをしていたようです。
トランプ氏の奥さんのメラニア氏や、息子のバロン氏も、銀行名は明かしていませんが、同じような目にあっており、トランプ氏にとって、今の金融業界は、自分たちをいじめる、偉そうな邪魔者でしかない、と思っていてもおかしくありません。
そもそも、現在のアメリカの格差がこれほど開いてしまった大きな原因の一つに、金融業界のやりたい放題があります。
リーマンショックもそうでしたが、「大きくなりすぎたので、潰せないでしょ?助けるしかないよね?」ということで、誰も責任を取らずに、政府やFRBの支援を受けまくって、高い給料をもらい続けています。
2023年のウォール街の平均給与は、過去3番目の高さで、年収7,000万円を超えていました。一体、どんな社会的な価値を創出して、これほどの給料をもらえているのでしょうか?
そもそも、金融の役割は、経済の潤滑油とも言われるように、実体経済を円滑にするためのものであって、実体経済で働く人たちの生活が苦しいのに、金融だけが儲かっているのであれば、それは、金融の力が強すぎるということになります。
トランプ政権が、製造業の国内回帰を進めるのは、国内の生産力を高めることと、中間層の復活ですので、金融の力は、当然ですが、今よりも大きく削ることになるはずです。
じゃないと、中間層が豊かになれませんからね。
では、具体的に何をするのか?
①金利の引き下げ
1つ目は、金利の引き下げです。トランプ氏は、FRBに対して、金利の引き下げ要求をしていますね。
パウエル議長は、トランプ関税によって、物価が上がるはずなので、安易に金利は下げられないと反発していますが、いずれ、引き下げをすることになるでしょう。
これによって、クレジットカードや、住宅ローンの金利がさらに下がり、一般市民の経済負担は減るものと予想されます。
②BRICSの脱ドル化
2つ目は、今回の関税による、金融市場の切り離しです。
今回、中国がアメリカに報復関税をかけてきたことで、関税合戦が始まりました。これが、小競り合いで終わる可能性はもちろんありますが、私はそうではなく、中国がアメリカとの貿易関係をほぼ止めるのではないかと見ています。
というのも、トランプ政権は、今回の関税以外でも、アメリカと中国との経済関係をどんどん切り離しに来ているからです。
パナマ運河における、中国の権益を排除したり、TikTokの買収を提示したりなどですね。
中国としては、アメリカとの貿易関係を切りたくないのが本心でしょうが、アメリカが関係改善の気がないのであれば、頑張ってもしょうがない、と諦めたのではないかと思うのです。
中国は、リーマンショック以降、米ドルに頼らない経済システムの構築を進めてきました。
2022年にロシアがウクライナに侵攻し、アメリカを中心とした西側諸国が、ロシアをSWIFTという決済ネットワークから排除し、米ドルを使えないようにしたものの、中国が完全にバックアップしてきたこともあって、問題なく経済運営ができており、ウクライナ戦争も勝利で集結に向かいつつあります。
また、昨年はBRICSへの加盟国を4カ国増やし、今年はインドネシアも加盟したことで、10カ国に拡大しています。
パートナー国なども入れると、30カ国以上の経済グループとなっているため、通貨・決済システムさえ整えれば、アメリカなしでも経済が回る状況になっているのです。
仮に、中国のアメリカに対する絶縁宣言が本当だったとすると、中国はこれから本格的に、BRICS新通貨のシステムを始動するはずです。
トランプ氏は、以前に、米ドルを使わないで貿易をしようとするBRICS諸国には、100%の関税をかけると言ってましたが、これも本当にやるはずなので、BRICS諸国の米ドルへの依存率はさらに下がってくるでしょう。
つまり、米ドルを利用しないBRICS諸国と、米ドルを基軸通貨として使う欧米諸国とその他の国々、という大きく2つの経済圏に、これから本格的に、分かれるのではないでしょうか?
そうなると、米ドルを扱うことでデカい顔ができていた、欧米の金融機関の影響力はさらに小さくなります。
アメリカでは、2023年にシリコンバレー銀行などの、中堅銀行がいくつか潰れた後、金融危機のような雰囲気はありませんが、相変わらず、オフィスや商業施設の空室率は高く、政府の支出も絞られていますので、これからアメリカの地銀を中心に、やばいところが出てきそうな感じがあります。
大手銀行の株価が、ビッグテック並みに暴落
今回の関税ショックによって、アメリカの大手金融機関の株価は、大きく下落しています。
トランプ氏に喧嘩を売られたバンク・オブ・アメリカは、この2日間で18%も下落し、JPモルガンも約15%下落しています。ゴールドマンサックスも16%以上下げてますね。
この下げは、エヌビディアやアップルなどのビッグテックの下落率とほぼ同率です。
これらのことからも、今回の関税ショックは、ビッグテックだけでなく、金融業界に対しても、大きな構造変化の波が押し寄せると見ている、投資家が多いからではないかと思われます。
もし、この見立てが正しければ、これから中国はアメリカと本格的な関税戦争に入っていくでしょうし、それと同時に、BRICSの新通貨システムの話も出てくると思われます。
なので、個人的には、これからの株式市場は、短期的には、結構下げすぎたので、そろそろリバウンドが入ってもおかしくない水準にまできてると思いますが、これから数ヶ月は、かなりの大荒れになっていくのではないかと思いますね。
この辺りについては、引き続き、ウォッチしていきたいと思います。
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