この記事では、「ルペン有罪を喜ぶトランプ」ということで、やっていきたいと思います。
1、はじめに
フランスの極右政党と呼ばれている、国民連合の全投手である、マリーヌ・ルペン氏が、公金を不正に流用したという裁判で有罪になり、懲役4年、執行猶予2年、そして政治活動が5年間停止となる判決を受けました。
ルペン氏は、2027年の大統領選挙における最有力候補です。
さらに、今回の公金の不正流用については、同じことを現在の首相であるバイルー氏も行っており、こちらは無罪となっています。
なので、はっきり言って、検察の言い掛かりみたいな起訴なのです。
このような、普通の民主主義の国であれば、考えられないようなことは、他の国でも起こっています。
昨年12月に行われた、ルーマニアの第1回目の大統領選挙でも、極右候補と呼ばれていた、ジョルジェスク氏が首位になった途端に、裁判所が無効判断とやり直し命令を出し、さらに、ジョルジェスク氏は候補から外されてしまいました。
この裏には、欧州委員会が関与していたと、もと欧州委員のティエリー・ブレトン氏が語っており、今回のルペン氏に対する国策捜査、そして、選挙からの排除という動きも、ヨーロッパ全体のこういった流れや、もしかしたら直接的な影響もあったのかもしれません。
それぐらいに、今回の判決は、フランス国民をバカにした、酷いものだと思います。
特に、国民連合を支持されているフランス人の方にとっては、かなりの理不尽だと感じているのではないでしょうか。
ところが、このような事態に対して、トランプ政権の反応は、「非常に大きな問題だ」とコメントしているものの、どこか人ごと感がある感じです。
また、イーロン・マスク氏も、「極左は選挙で勝てないと分かると、逮捕しようとするからな~」とリベラルな人たちをバカにはしているものの、やはり人ごと感を感じます。
「それって、あなたの感想ですよね。」
と思われた方もいると思いますので、私がトランプ大統領が、ルペン氏の有罪を喜んでいると考えている理由について、これから解説していきます。
それでは、参りましょう。
2、ルペン有罪を喜んでいると思う理由
私が思うに、理由は2つあります。
(1)NATOから撤退できる口実になる
1つ目は、欧州がどんどんやばいことをやってくれることで、アメリカがNATOから撤退できる口実が増えていくからです。
トランプ氏は、第1期の頃からNATOからアメリカを撤退させたいと言っており、第2期に入って、ヴァンス副大統領を矢面に立たせて、徹底的に欧州と対立させるようにしています。
2月に行われたミュンヘン安全保障会議でのヴァンス副大統領の演説もそうですし、3月にシグナルというチャットアプリの投稿が漏洩した際の投稿内容もそうなのですが、「欧州って、うぜえよな。関わりたくないよ。」みたいな感じで、喧嘩を売り続けています。
アメリカがNATOから脱退するには、上院の3分の2以上の承認を受けるか、議会で新しい法案が通らない限りは、難しくなっています。
なので、民主党の票も必要となってくる可能性が高いので、「欧州がアメリカの敵」というイメージが定着してもらった方が、何かと都合がいいのです。
(2)NATOをフランスに引き継いでもらいたいから
2つ目は、アメリカがNATOから撤退した後は、フランスを中心に引き継いでもらいたいと考えているからです。
ルペン氏率いる国民連合の政策は、移民の受け入れ制限や、環境規制の反対など、トランプ政権に似たところがありますが、NATOに関しては、以前は完全撤退を主張しており、現在もNATOには残っていても、アメリカの指揮下には入りたくないと言っており、かなり消極的なのです。
その一方で、マクロン氏は、2019年に「NATOは脳死状態にある」と表明したり、NATOはアメリカなしでもやっていけるようにすべきだと主張しており、アメリカのNATO撤退後を引き継ぐ気が満々です。
なので、トランプ氏の本音としては、NATOを引き継ぐ気があるマクロン氏を応援したいのだと思われます。
実際、トランプ氏は、ルペン氏を避けているように見えます。
例えば、2017年1月に、トランプ氏が大統領に就任する直前に、ルペン氏はトランプタワーに会いに行きました。
わざわざフランスからNYまで、しかも大統領に会いに行ってるわけですから、事前にアポも取れての訪問だったはずです。ところが、会えなかったというわけですから、ドタキャンをくらったと考えられます。
これはおそらくですが、NATOからの撤退を考えているならば、ルペン氏と仲良くすべきではないと、誰かがアドバイスをしたからでしょう。
そして、その後も関係はギクシャクしたままです。
今年の1月20日の大統領就任式には、多くの海外の政府高官が招かれましたが、フランスからは、ルペン氏や国民連合ではなく、レコンキスタ党のエリック・ぜムール氏が招待されています。
一方で、イギリスからはリフォームUK、ドイツからはAfDが招待されています。
これらの政党は、イギリス、ドイツにおいて、極右政党と位置付けられているものの、支持率がどんどん上がってきており、AfDは2月の選挙で得票率が2割を超え、リフォームUKも、支持率が与党の労働党に迫る勢いとなっています。
しかし、これら3党の中で、国民連合が支持率が最も高く、政権与党を取る可能性があるのです。それなのに、その国民連合もルペン氏も、招待されていないというのは、どう考えてもおかしいですよね。
それだけではありません。
今回のトランプ政権に入って、いろいろと活動しているのが、イーロンマスク氏ですが、イギリスのリフォームUKに寄付を申し出たり、ドイツのAfDのアリス・ワイデル党首と対談を行ったりして、盛んに支援活動を行っていますが、ルペン氏率いる国民連合に対しては、ほとんどノータッチなのです。
これはおそらくですが、トランプ氏から、イギリスやドイツはいいけれども、フランスのルペン氏を応援するなと、釘を刺されているのでしょう。
今回のルペン氏有罪のニュースを受けての、トランプ氏、マスク氏の反応が、けっこうあっさりしているように見えるのは、このような背景があるからだと、私は解釈しています。
3、まとめ
というわけで、ルペン氏の有罪判決をトランプ政権は、喜んでいそうな理由について、解説してきました。
なお、国民連合を支持しているフランスの方にとっては、絶望的な話に見えるかもしれませんが、個人的には、それほど悪い方向へ転がるとは思っていません。
というのも、マクロン氏は、左派連合と連立を組んでいるものの、左翼の狂った政治家を主将などの中枢に据えることなく、バランスをとって政策を運営しているように見えるからです。
7月の選挙後にマクロン氏が指名した首相は、バルニエ氏と、現在のバイルー氏ですが、いずれも中道政党からの指名であり、極端なことをやるような人たちではありません。
また、予算の成立に遅れていたフランスですが、与党に入っている左派連合が反対したものの、ルペン氏率いる国民連合が、左派連合と組まなかったため、反対案が通らず、可決に持ち込めました。
このような動きを見ていると、ルペン氏は大統領になれなくても、そして、国民連合が与党を取れなくても、中道政党への影響力を持ち続ける形で、国民連合の政策を反映させていくことになると思われます。
なので、フランスの政治環境は、一見すると、国策捜査で政治家が捕まったり、ウクライナ戦争支持派が政権を取り続けたりと、イカれた状況にしか見えないものの、実際に行われる政策は、けっこうまとも、という状況が続くのではないかと予想しています。
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