この記事では東京都の
- 公示地価、基準地価
- 土地価格がこれまで上昇・下落した理由
- 今後どうなるのか?
の3点について解説しています。
(なお、本ページはプロモーションが含まれています。該当するサービスには、【PR】と表記しております)(※1)
1、過去5年間の東京都の不動産の動き
東京都の土地価格は、この1年間で、住宅地で+2.6%、商業地で+3.3%と、大きく上昇しました。
また、2018→2023年の5年間で見ると、住宅地で+9%。商業地で+16.7%でした。
ですが、もちろん地域によって、動きに大きな差があります。
そこで、この5年間の公示地価の変化率を市区町村別に表してみました。
【住宅地】東京都の5年間の土地価格の変化率
濃い赤色のエリア(北区や豊島区、文京区など)は、5年で20%以上の上昇をしています。
その一方で、薄い青色のエリア(青梅市・あきる野市・多摩市など)は、0.1〜5%の下落をしていました。
傾向的には、23区でも特に北側のエリアで上昇率が高く、市部では、23区から離れるほどに、上昇率が小さくなっていますね。
【商業地】東京都の5年間の土地価格の変化率
商業施設やオフィスビル、高層マンションが建てられる商業地では、さらに大きく上昇していました。
特に23区において、20%以上の上昇(濃い赤色のエリア)が多く見られますね。
なぜ、これほど上昇し続けているのか?
理由は大きく4つあります。
①金利が低下して、高い物件が買えるようになった
そもそも、不動産価格が上昇した最も大きな理由は、金利の低下です。
アベノミクスによる異次元緩和政策が始まった2013年から2020年ごろまでは、固定金利が2%台から0.82%まで、1%以上も下落したのです。
さらに、2022年に入ると、変動金利がさらに下がりました。それまで0.5%前後だった金利が、0.3%台にまで下がったのです。
新型コロナ以降も、都心部や大都市圏を中心に不動産価格は上がり続けていますので、それでも買いたい人が、変動金利を利用するようになり、ついに7割以上が変動金利を選ぶようになっています。
これによって、同じ返済額でも、買える物件の価格が大きく上がりました。
アベノミクスが始まる前の2012年ぐらいまでは、月に約10万円の返済(ふらっと35)で、約3,000万円の物件しか買えませんでした。
ですが、2023年現在、変動金利を選べば、約4,130万円の物件まで買えるようになっているのです。
月10.4万円の返済で、いくらの物件が買えるのか?
今の夫婦は、共働き世帯が多いですから、変動金利で、2人でそれぞれ月10万円を返済すると決めれば、なんと約8,200万円の物件が買えるわけです。
東京23区では、新築マンションが8,000万円を超えていますが、このような事情があるからなんですね。
②建築費が上昇したため、土地価格も連れ高している
2つ目が、建築費の上昇です。
新型コロナの感染拡大や、ロシアのウクライナ侵攻によって、世界的にモノ不足が広がった結果、物価上昇が続いています。
日本の建築費も例外ではなく、特に新型コロナ以降は、マンション、戸建てそれぞれ2〜3割も上がっている状況なのです。
マンションの建築費
木造戸建ての建築費
そのため、戸建てやマンション価格も大きく上昇しています。
特に23区内の新築マンションの平均価格は、23年に入って1億円を超えてしまいました。
もちろん中古価格も上昇中です。
2018年から比べて、中古マンションでは約33%、中古戸建てでは約18%も上昇しています。
このように住宅価格が上昇した結果、周辺の土地価格も連れ高しているわけです。
特に、昨年から今年にかけての土地価格の上昇率が、過去に比べて高いのは、建築費の上昇によるためでしょう。
③東京都では、人口増加も追い風に
建築費が上がったといっても、買い手がつかなければ、土地価格も上がりません、
しかし、東京都では、人口・世帯数ともに増加傾向にあります。
2018年からの5年間で、人口は約20.4万人、世帯数は35.4万世帯も増えているのです。
特に、世帯数が増えていると言うことは、住宅に対する需要が増えているということでもありますので、不動産価格は上がりやすくなっているわけです。
では、具体的に、どこに人が集まっているのか?
この5年間の転入超過数(市区外から引っ越して来た人 ー 出て行った人)を調べてみた結果がこちらです。
特徴を整理すると、
- 豊島区、新宿区、目黒区、港区などの、商業エリアが充実して、不動産価格が大きく上昇したエリアでは、人が出て行っている
- 足立区、練馬区、世田谷区などの郊外の区では、リモートワークもしやすいため、引っ越してくる人が増えている
- 多摩地区では、八王子市や町田市などの、通勤時間がかかるエリアでも、リモートワークの普及で、引っ越して来ている
といったことがわかります。
特に新型コロナ以降は、景気がまだ回復しているわけではないため、価格の高い商業エリアに近いところに住みたいという人が減っています。
都内の住宅地で人口が増加、土地価格の上昇が起こっているのは、中心部からちょっと離れた戸建てエリア、山手線以外の駅周辺のようです。
④株高で国内外の投資家が、マンション投資に向かっている
特に23区について言えるのですが、世界的な株高によって、国内外の投資家が、東京のマンション投資に動いているという点も大きいでしょう。
23区の新築マンションの平均価格は、2023年3月に1戸あたり2億円を超えました。
(参考:朝日新聞デジタル「3月の新築マンション、23区平均初の2億円台 都心で超高額相次ぐ」)
どんなに高年収の共働き世帯でも、2億円のマンションは買えませんから、富裕層や投資家による購入が、いかに大きいのかが分かりますね。
株価上昇とともに、マンション価格も上昇
特に、日本の富裕層の大半は、60代以上ですから、株で儲かったら相続税対策を考えます。
株や現金は、100%相続税の対象になりますが、高層マンションなら評価額が何割か減らせますから、高い物件ほど、人気が集まりやすくなっているわけです。
さきほど、新宿区や豊島区、目黒区などで人口流出が続いていることを確認しましたが、それでも土地価格が大きく上昇しているのは、このような富裕層による高額マンションの購入によるためでしょう。
というわけで、東京都の不動産価格は、
- 金利低下と、特に変動金利の利用者が増えたことで、今までよりも高い金額を借りれる人が増えている
- 建築費の上昇によって、新築・中古価格が上昇し、幅広いエリアで土地価格も連れ高した
- 人口や世帯数が増加しているため、住宅の需要が強く、買わざるを得ない人は、高値でも買ってしまっている
- さらに23区のマンションについては、株高で、国内外の富裕層が、相続税対策や、資産の分散先として高額マンションを購入しているため、上昇率が大きい
といった条件が重なって、値上がりが続いているわけです。
3、これからどうなるのか?
東京都の今後の土地価格に影響を与えそうなリスクをまとめました。
(1)そろそろ金利が上がりそう
日本では、低金利が長く続いているため、金利の上昇リスクを心配しない人が増えており、7割以上の人が、半年ごとに金利が変わる変動金利を選んでいます。
ですが、本当にこれからも金利は上がらないのでしょうか?
実は、10年〜30年までの長期金利については、すでに上昇し始めています。特にロシアのウクライナ侵攻が始まった2022年ごろから、本格的に上がって来ています。
(参考:財務省)
これによって、変動金利は低いままですが、ふらっと35などの固定金利は上昇を始めています。
なぜ上昇しているのかと言うと、世界的に物価が上昇しているからです。
例えば、アメリカでは、物価が一時、前年比で9%以上も上がったため、政策金利を0.25%→5.25%まで、1年間で5%も引き上げました。
ドイツでも、前年比で11%以上も上がっていたため、こちらも政策金利を0%→3.5%にまで、約1年間で3.5%も引き上げています。
その結果、欧米各国でも、住宅価格が下落をはじめています。
アメリカの先月の中古住宅価格は前の年の同じ月と比べた下落幅(-1.7%)がおよそ11年ぶりの大きさとなり、住宅価格の下落傾向が鮮明になっています。
急速な利上げに伴う住宅ローン金利の高止まりで需要が落ち込んでいることが背景にあります。
欧州連合(EU)域内で、住宅価格が2015年以来初めて四半期ベースで下落に転じた。借り入れコストの上昇(=金利の上昇)が10年近くに及ぶ住宅用不動産ブームに終わりをもたらしている。
EU統計局は4日、22年10〜12月期に住宅価格が前の期と比べ1.5%下落したと発表した。域内27カ国のうち15カ国で下がった。下落幅が最も大きかったのはデンマークとドイツで、それぞれ6.5%、5%低下した。
金利を引き上げたことで、住宅価格が下落しているのです。
ちなみに日本の物価上昇率は、前年比で3.0%の上昇です。
(参考:NHK「2022年度 消費者物価指数 前年度比3.0%上昇 41年ぶり水準」)
そして、日本でも、7月28日に、植田日銀総裁が、政策修正を発表し、事実上の利上げを行いました。
これまでは、10年国債の金利が0.5%以上に上がらないようにコントロールしてきましたが、それを1.0%まで引き上げたのです。
(参考:野村総合研究所 2023.7.28「日銀が長期金利の上昇を容認するYCCの運用柔軟化策を決定(日銀金融政策決定会合)」)
これによって、期間10年以上の固定金利については、今後、徐々に上がっていくことが予想されます。ふらっと35などの、長期固定の住宅ローン金利は上がるでしょう。
変動金利が上がる可能性は?
今回の事実上の利上げは、期間10年以上の長期金利への影響が大きいですが、変動金利への影響は、今のところ、ありません。
ですが、物価上昇が続くようであれば、いずれ短期金利も引き上げざるを得なくなるでしょう。
というのも、そもそも、金利を引き上げている理由は、お金を借りにくくすることで、モノの消費や生産をおさえ、物価上昇を止めるためだからです。
長期金利を引き上げても、物価上昇が止まらないのであれば、短期金利の引き上げも、いずれ視野に入ってくるはずです。
なお、日銀が見込んでいる、今後の物価上昇率は、2024年が年率1.9%で、2025年が年率1.6%です。
(参考:野村総合研究所 2023.7.28「日銀が長期金利の上昇を容認するYCCの運用柔軟化策を決定(日銀金融政策決定会合)」)
もし、今回の利上げでも、現在の年率3%の物価上昇率がおさまらなければ、さらに政策を修正する可能性は高く、その際には、変動金利型の住宅ローンにも、影響が出てくるかもしれません。
1%金利が上がると、不動産価格は15〜20%下がる可能性
ちなみに、金利が1%上がると、住宅ローンの利息は、35年で15〜20%増えます。
例えば、月に約10万円の返済を考えている人であれば、現在なら3,500万円の物件が買えますが、金利が1%上がると、毎月10万円の支払いで、3,000万円の物件しか買えません。
なお、すでに変動金利で組んでいる人については、5年ルールという、当初5年間は、返済額が固定(ただし、増えた利息はあとで支払う)というルールがあるため、すぐに払えなくなって投げ売りが始まるわけではありません。
しかし、新しくローンを組む人は、変動金利でも高い金利になるため、今まで通りの高い価格でローンを組むことが難しくなりますから、価格は下がりやすくなるでしょう。
(2)2024年問題で、建築費がさらに上がる
この2024年問題とは、簡単にいうと、
「建設業・運送業の従業員に対して、残業の規制が厳しくなることで、今まで以上に人件費の負担が上がり、建設費に跳ね返ってくる」
という問題です。
これまで、運送業や建設業は、中小企業が多く、競争が激しかったこともあって、安い価格で建設工事・運送業務を行っていた会社がたくさんありました。
しかし、2024年4月以降は、従業員に同じような働き方をさせることができなくなります。
1日8時間、1週間で40時間、残業は年720時間(運送業は年960時間)という上限が決まり、違反すると雇用者は罰せられることになるのです。
建設業の労働時間の規制
そのため、資材の運搬や、建設の工期の長期化によって、建設費の上昇がほぼ確実に進むことになります。
それ以外にも、省エネ基準への適合が必須に
さらに、25年からは、省エネ基準への適合義務付けが始まります。
これによって、
- 省エネ基準を満たすための建築申請業務が増えるので、その分の人件費・申請費用が、建築コストに上乗せされる
- 省エネ基準を満たすために、追加費用がかかる(主に断熱性能の強化のために、約87万円/120㎡の住宅)
といったことも予想されます。
そのため、一般世帯の戸建て住宅を購入するハードルは、さらに高くなるでしょう。
(3)これから東京都の人口はどうなるの?
国立社会保障・人口問題研究所が、2018年に発表した東京都の人口の見通しによると、2025→35年の10年間で約5,800人増加する、という予想でした。
人口は、これ以上増えない、という予想です。
(出典:国立社会保障・人口問題研究所 平成30年度人口推計)
しかし、ここ5年間で約20万人増えている状況を考えると、まだまだ増加が続きそうです。
実際、東京都の転入超過数(東京都内に引っ越して来た人 ー 出て行った人)を見てみても、2021年はかなり落ち込みましたが、昨年22年は3万人ほど増加していました。
ただし、年代別に見てみると、15〜29歳は増えているものの、それ以外の年代は、減少傾向(都外に出て行っている)にあります。
特に0〜14才(ピンク色の点線)は、都外に引っ越す人が増えており、子育て世帯が出て行っていることがわかります。
0〜14才の転出超過(出ていく人の方が多い状況)は、2020年以降に本格化していることから、リモートワークの普及が後押ししているのでしょう。
そのため、「賃貸需要は強く、持ち家需要は、価格がさらに上がっていけば、さらに減少する」ということになるでしょう。
4、東京でこれから上がりそうな地域は?
大きく3つのエリアに分けて、整理してみます。
- 23区:特に、マンション価格が上昇しすぎていて、エリアによってはバブルになっている。子育て世帯が区外に出て行っているところも多いため、富裕層の相続税対策や、海外投資家によるマネーゲームに使われている可能性が高い
- 多摩地区の東側:中央線の沿線は人気も高く、すでに大きく上昇しているため、割安な京王沿線沿いが狙い目(調布や稲城、府中など)
- 多摩地区の西側:八王子や町田では、市外からの人口流入が増えているが、2024年〜25年にかけて、さらに建築費が上がっていくため、戸建てを購入する世帯は減り、駅近のマンションへと流れる可能性が高い
参考になれば幸いです。
結論:売るなら?買うなら?
買うなら:低金利なのでチャンスだけれど、、、
本来であれば、低金利は家を購入するチャンスな訳ですが、建築費が上がっているため、家を建てるハードルも上がっています。
なので、いい物件を探すことがポイントになってきます。
非公開物件=安い物件
不動産を売る理由はさまざまですが、「周りに知られずに売却したい」という売主は一定の割合でいます。
そのような物件は、ネット上にも出回らず「非公開物件」として、特定の不動産会社が取り扱っている場合があります。
当然、このような物件は少ないお客さんにしか目にとまる機会がないため、相場よりも価格の安い可能性が高いです。
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売るなら:よほど立地が良い場所以外は、早めの対応を
金利の引き上げや、建設業・運送業の労働時間規制が始まるため、住宅の購入費用は、さらに上がっていきそうです。
これが土地価格の上昇につながるのは、国内外の富裕層が購入しやすい23区の駅近エリアでしょう。
その一方で、一般世帯にとっては、住宅ローンが組みにくくなったり、建築費の上昇に耐えられなくなるため、購入を断念したり、郊外に引っ越すケースが増えていきます。
そのため、お持ちの物件の立地条件によっては、早めに売却を考えた方がいいケースが増えそうです。
不動産会社選びを失敗すると、数百万円単位で損をする理由
この記事では、公示地価をもとに土地価格の動きについて解説してきましたが、実際の取引では、はるかに高い価格、または安い価格で取引される場合があります。
例えば、「田園調布」という、田園調布駅から多摩川駅にかけて広がる住宅地があります。
こちらの公示地価と実際の取引を比べてみると、
- 公示地価:220万円/坪
- 実際の取引価格:160〜330万円/坪
と、公示地価の約0.7〜1.5倍で取引されていました。
最高価格は、最低価格の約2倍です。
どちらも「第一種低層住居専用地域」と呼ばれる同じような街並みのエリアです。
駅からの距離は多少違いはありますが、これほどの価格差が考えられるでしょうか?
なぜ、これほど売却価格が変わるのでしょうか?
その理由は、不動産会社によって、持っている取引情報に差があるからです。
不動産取引は、株式市場のように、全ての取引情報を管理しているところがないため、
- 自社でどれだけ取引情報を持っているか
- どれだけ買い手のリストを持っているか?
で、評価額も、売れる金額も変わってくるのです。
持っている取引情報が違うため、評価額・売却額が変わる
*REINSとは、不動産会社間でだけ共有できる物件情報・取引情報のサービスです。ただし、売主の承諾が必要なため、情報の共有率は、全体の取引の約11%程度となっています
(2022年実績:売り物件報告件数17.5万件 ÷ 土地取引件数152.5万件 = 11.4%)
また、不動産会社が持っている取引情報や、買い手のリストは、エリアや物件によって違いますから、いくつかの不動産会社に査定を申し込むことで、
- どれだけの評価額になるのか?
- どこの会社が、自分の不動産を高く売ってくれるのか?
を知ることができます。
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それぞれ、「すまいバリュー(運営元 三井不動産リアルティ株式会社)」「イエウール(運営元 株式会社Speee)」「タウンライフ(運営元 タウンライフ株式会社)」の委託を受けて作成しております
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