今回の動画は、「ハリウッドは、なぜこれからも衰退していくのか?」ということで、やっていきたいと思います。
*この記事は、YouTube動画の元原稿になります
1、はじめに
アメリカのメディアを追いかけていると、最近よく目につくのが、ハリウッドがヤバい系の記事です。

10月2日に、「ロサンゼルスのエンターテイメント経済はまるで災害映画のようだ」という内容の記事を出しました。
また、こちらのハリウッドリポーターというメディアでも、ロサンゼルスの映画、テレビ番組の制作日数が、前年比で13%のマイナス、制作費も前年比で1割減少と、過去最低を記録している状況を報道しています。

こんな状況のため、雇用もかなり酷いことになっていまして、LAでの映画産業従事者は、この2年間で14.2万人から10万人に減少し、3分の1の人たちが失業しています。
特に美術スタッフは、75%の人たちが失業状態ということで、美術スタッフ養成学校では、卒業しても就職先がないということで、募集停止を決定しました。

今年は、1月に山火事が酷いことになっていましたので、その影響もあると思うのですが、もちろんそれだけではなく、LAでのテレビロケの撮影は、2021年がピークで、24年はそこから約6割の減少となっています。
なので、すでにハリウッドは、昨年までも衰退し続けていたのです。

そのため、YouTubeでも英語圏では、ハリウッド終了を解説する動画が結構出ています。
しかも、その視聴回数が数十万再生ぐらいということで、もしかしたら、視聴者の方々の興味すら薄れてしまっている状況なのかもしれません。

また、私はプク太の世界時事ニュースというチャンネルが好きで、結構見ているのですが、最近のハリウッド映画の話題となると、ほとんどが爆死を話題としたもので、しかも、映画好きのプクちゃんが実際に見てみた感想を聞いても、爆死している映画の多くが、結構脚本が酷いとか、そういうものが多い感じです。
実写化された白雪姫なんかは、かなり酷かったようですね。
そこで、今回の動画では、なぜハリウッドがこれほど衰退しているのか?について、考察していきたいと思います。
それでは、参りましょう。
2、ハリウッドが衰退している理由
まず最初に、北米の映画興行収入の推移をざっと見ていきましょう。
こちらのグラフは、売上高の推移なのですが、赤色が実際の売上高で、紫色がチケット代の値上がり分を考慮に入れた、インフレ調整後の売上高になります。

なので、紫色が、アメリカの映画産業の実態を表しているわけですが、2002年ごろがピークなんですよね。この頃が、来乗客数が一番多かったということになります。
そして、2020年の新型コロナがあって、ガクッと落ちてから、コロナ前までは回復しておらず、ピークの2002年と比べると、ほとんど半分ぐらいの水準になっていることがわかります。
つまり、アメリカの映画産業は、この20年ぐらいは、徐々に衰退に向かってきていたのです。では、なぜこれほどの長期間、ハリウッドは衰退し続けてきたのでしょうか?
アマプラやネットフリックスのような動画配信サービスの普及が、まず1番に思い浮かびますが、それ以外でも、私がいろいろ調べてみた感じ、5つぐらいの理由を見つけました。
(1)マンネリ化
1つ目は、マンネリ化です。
2000年から24年までの、その年の興行収入1位の作品を見てみると、2003年ぐらいまでは、映画1作目のものが多いのですが、それ以降は、ほとんどが続きものなのです。

紫色のタイトルが続きものの作品で、()内の数字が、そのシリーズの何作目なのかを表しています。
なお、スパイダーマンは、1980年代ぐらいにテレビで放映されていたようですが、20年以上経っての初の映画化なので、往年のファンによる集客効果はそれほど高くないと思って、シリーズ作としてカウントしていません。
また、トップガンは、トム・クルーズファンは多そうですし、そういう人はトップガンも見ている人が多そうなので、集客効果高めということで、シリーズ作品としてカウントしています。
うちの嫁さんも、トム・クルーズ好きなので、一緒に観にいきましたが、観客の年齢層は、やはり高めでした。まあ、こんな感じの主観も入った表だと思ってみてください。
それで、特に、2012年から21年にかけては、マーベルブランドのアベンジャーズとか、スパイダーマンとか、そういうヒーローものがかなりの頻度で入ってきており、まるで日本のAKBや乃木坂などの、秋元康プロデュースのアイドル団体にCDセールスが独占されているかのような状況です。
日本の音楽シーンも、あれ以降、おっさんの私は、何が売れてるのか?どんな曲が好かれてるのかが、よくわからなくなって、2010年代はボーカロイドやK-popなど、YouTubeなどの動画サイトで見つけたものばかり聞いてました。
それに似たような感じに、アメリカの映画業界もなっていたのではないでしょうか?
また、マーベル作品がたくさん入っているということは、CGを使うなど、刺激的な映像を求める人が増えてきたのでしょう。そうなると、制作費も余計にかかるようになりますから、どんどん外せなくなってきます。
その結果、前に売れたシリーズものが増えていき、それによって、大当たりの新タイトルが生まれにくくなり、マンネリ化が進んできたのだと思われます。
(2)アカデミー賞の受賞基準の改悪
2つ目は、アカデミー賞の受賞基準にDEIが導入されて、頭がおかしくなった人が増えたということです。

第1期トランプ政権が発足した2017年から21年にかけて、リベラルな人たちは、「俺たちはトランプとは違う」ということを社会に示すことに躍起になっていました。
日本ではネット上で炎上に加担するのは、40代以上のおっさんで、しかも全体の1%にも満たない人たちだということが、研究でわかってきているようですが、2017年当時は、炎上したら、多くの人に否定されているのではないか?とビクビクしていた時期です。
なので、あの会社は、あの作品は、あの俳優は、と後ろ指を刺されないように、うちは人種差別してませーんというアピールをする必要があると思った人は多かったのでしょう。
例えば、2017年には、CEO Action という団体ができたのですが、これはアメリカの有名な企業経営者が、うちの会社は人種差別をしないで人を雇うようにしますよ、ということをアピールするために立ち上げられたものです。
さらに、2020年5月には、白人警官が黒人を◯したということで、ブラック・ライブズ・マター暴動が起こり、全米の大都市を中心に、活動家がはしゃいで、暴動を起こしました。
そういうシッチャカメッチャカな状況になったため、アカデミー賞の受賞基準にも、黒人やLGBTQとか、そういうマイノリティを入れなきゃダメ!ということになったのです。

じゃあ、その結果どうなったのか?というと、例えば、こちらは脚本家協会の人の投稿なのですが、
2018年までは、会議をやるとなれば、質の良い映画を作るということに向かっていたが、
2019年からは、政治的なメッセージをどうやって入れ込むべきかみたいな話が主流になってきて、
とうとう2023年には、どうやって黒人やマイノリティをキャストに入れるか、みたいな話になってしまったのだそうです。
それで、有能な人材が集められて、良い映画が作れればいいですが、そんなことは起こってないから、最近のハリウッド映画はシリーズものの大作ほど赤字続きなわけです。
また、例えば、ある仕事で、本当に必要な人材が白人だったとすると、それで基準が満たせなければ、そこに黒人をつけて、女性をつけてと、余計な人を贅肉のようにぶら下げて仕事をすることになります。
当然、実力不足の人でも、あっちでは一人前に意見を言う権利がありますから、それでさらにおかしくなるという地獄の展開になったこともあったようです。これで余計に人件費がかかれば、制作費も膨らみますし、質も落ちて最悪なものしかできなくなった、というわけです。
(3)他地域との価格競争で敗北
3つ目が、他地域との価格競争での敗北です。
アメリカは日本よりもはるかに物価が高いことはご存知と思いますが、西海岸のLAは、その中でもかなり物価が高いエリアです。ラーメン1杯3000円以上するようですからね。単純に日本の3倍ぐらいはあるでしょう。

そうすると、他のエリアで撮影した方が撮映費用も浮かせられます。
こちらは、トランプ氏に指名されたハリウッド特別大使のメル・ギブソン氏へのインタビュー動画ですが、その中で彼が語っていたのは、ハリウッドで1日撮影する費用と、ブルガリアで3、4日撮影する費用は同じだということでした。もちろん、スタッフの宿泊費と航空費込みでの話です。
一体、どれだけボッタクってんだよ?というレベルの話なんです。
さらに、例えば、ロンドンで撮影すると、助成金がもらえるということで、そういうところをあてにして、海外で撮影する映画も増えているようです。
LAにも、そういう制度はありますが、映画スタジオに助成金を渡すと言っても、そのお金は税金ですから限りがあります。
しかも、物価も高いLAで制作すれば、費用も助成金もかなりの額になりますので、州民もなんでハリウッドにそんなに金渡すんだよ!という話になります。
そんなこんなで、撮影日も減って、スタジオを借りての撮影も減ってと、負のサイクルが止まらなくなっているんですね。
(4)保守層がハリウッドを拒絶
4つ目が、保守層がハリウッドを拒絶しているということです。
以前から、ハリウッドは、DEIとかトランスジェンダー礼賛とか、観客そっちのけの自己満足映画を量産しては爆死してましたが、いよいよ、保守層がハリウッドを本格的に拒絶し始めているように思います。

それを感じたのは、レオナルド・デカプリオの最新作の「ワンバトル・アフター・アナザー」の興行の失敗です。
私は見てませんが、YouTubeで、この映画を見た人たちの感想を見てみると、結構高評価なんですよね。
傑作という人もいますし、その内容についての感想を見ても、それほど反トランプとか、反保守層とか、そういうリベラルな説教臭さがあるようには感じませんでした。
ところが、アメリカでは、そういう見方ではなくて、これは極左の親アンティファの映画だとか、トランプ氏が勧めている不法移民排除を行っている移民関税執行局、通称ICEを批判した映画だ!とか、そういう視点で批判している人が、SNS上でみると、結構いるみたいなんですよ。
その結果かわかりませんが、この映画の興行成績は低迷しており、赤字になるんじゃないかとまで囁かれています。
これは個人的には、9月に起こったチャーリー・カーク氏暗殺を受けて、リベラル左派が小躍りして喜んでいる動画を出してたり、メディアもカーク氏を死体蹴りするような発言をしたりと、かなりの保守層を怒らせた影響があるのではないかと考えています。
なので、映画の中に、ちょっとでもそういう政治的な匂いを感じさせる要素があると、
「はいはい、カークが死んで喜ぶような奴らの説教なんて、聞きたくねーんだよ」
と、生理的に受け付けなくなっている保守層が増えているのではないかと思います。
(5)AI女優の登場で、今後さらに衰退へ
と、ここまでは、これまでのハリウッドが衰退してきた理由についてのあれこれでしたが、最後の5つ目は、今後の衰退を決定づけるものとして、AI女優の登場です。
9月に、ロンドンの制作会社が、AI女優のティリー・ノーウッドの動画を公開しました。youtubeでもみることができますが、本当に実在する女優と見分けがつきませんでした。

すでに、今年に入って、GoogleのVeo3とか、最近オープンAIが出したSORA2など、実物と見間違えるようなレベルの動画生成ができるようになっています。
最近の動画生成AIは、進歩が凄まじいので、いずれ映画俳優もAIになっていきそうな気がします。
日本だと、芸能人の不倫スキャンダルが、企業イメージまで壊すことのリスクを考えて、AIのキャラクターを使うという話が以前から出てましたが、アメリカだとリベラルと保守との対立が激しすぎるので、そういう政治的な意見を表明せずに済むという意味で、AI俳優が活用されるようになりそうな気がしますね。
というわけで、今回はハリウッドがもう終わりそうだということについて、考察してきました。
今回調べて思ったのは、製作サイドが想像以上に腐ってそうだなということでした。
私が今年見たのは、ミッション・インポッシブルですが、3時間近い映画だったにも関わらず、ハラハラドキドキで時間を感じさせずに、一気に見れたすごい映画だと思ったのですが、そういう映画は、今のハリウッドでは、少なくなっているのかもしれませんね。
特に、製作費が何百億円とかかっているものほど、残念なことになっているような印象です。
すでに、シリコンバレー周辺のIT企業は、生成AIを理由に社員のクビを切りまくっていますが、映画産業までこうなってしまったら、カリフォルニアは、天気はいいけど、税金が高すぎて、産業は何もない、つまらない街になってしまいそうな気がしますね。







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