この記事では、日本がBRICSへ加入する可能性について、考察します。
11月5日に、アメリカの大統領選挙が行われ、集計に時間がかかると予想されていたものの、翌日には、あっけなくトランプ氏の勝利が確定しました。
それを受けて、7日に石破首相は、トランプ氏に電話で祝意を告げ、早期の会談を行いたいとの要望を伝えたものの、結局1月の就任以降に持ち越されました。
これを受けて、テレビやYouTube界隈でも、石破はトランプに嫌われているとか、本当に石破首相で大丈夫?などの声も聞かれています。
その一方で、今月ペルーで行われたAPECでは、中国の習近平主席と会談を行いました。新聞各紙の報道の内容を見てみると、思ったよりも、中国の対応は柔らかい印象でした。
石破首相は、中国が水産物を輸入して欲しいとか、台湾との関係どうなの?みたいなことを言ってましたが、中国の対応は、それほど敵対的ではなかったように見えます。
【主な新聞記事と見出し】
(日経新聞:「中国2大苦境が誘う習・石破会談、12年経て豹変」)
(朝日新聞:「石破首相、習近平氏と初会談 「戦略的互恵関係」の包括的推進を確認」)
(読売新聞:「石破首相と習近平国家主席が初会談…日本産水産物の輸入再開申し合わせ、中国軍への懸念も伝える」)
また、11月22日には、中国へ入国する際の短期ビザが、30日間までは免除するとの発表もありました。
このような対比を見てみると、もしかしたら、「アメリカは日本を切り捨てて、中国が日本を拾う、つまりBRICSへの加盟を誘ってくる」という展開になっているのではないか?と見えなくもありません。
そこで、この動画では、トランプ政権になることで、起こるであろう東アジアへの対応を考察しつつ、日本がBRICSに入る可能性と、もし加入した場合に、どんなことが起こるのか?について、予想していきたいと思います。
それでは参りましょう。
1、トランプ氏の外交についての動き
まず、現在のトランプ氏の動きや考え方について、ざっと見ていきましょう。
ここ数年、メディアでは、たびたび台湾有事についての特集が組まれていました。
中国が台湾に軍事侵攻する可能性が高く、アメリカがそれを許さないため、日本も巻き込まれてしまうのでは?と不安に感じていた人も多かったでしょう。
ですが、そもそも、この台湾有事がいつ頃から騒がれ始めたのか?というと、バイデン政権になってからなんですね。
Wikipediaによると、2021年3月に、アメリカ軍の高官が、「中国が台湾を占領する可能性が高い」と発言したことを発端として、話が広がったものなのです。
では、トランプ氏はどう考えているのか?というと、ずっとノーコメントを貫いてきました。バイデン氏が、「中国が攻めてきたら、台湾を守る」と明言していたのとは対照的です。
つまり、トランプ氏は、中国が台湾に攻めてきても、軍を動かそうとは思っていないのです。
現在続いているウクライナ戦争についても、自分が大統領になったら、すぐに終わらせると宣言していますし、イスラエルとハマスについても、そのような意向を示しています。
今回の選挙戦では、元共和党議員のリズ・チェイニー氏が、民主党のカマラ・ハリス氏の応援に回りました。彼女は、イラク戦争を起こした張本人のディック・チェイニーの娘さんで、いわゆる戦争屋です。
そのような人たちが、トランプ氏と敵対していたことを考えると、次期トランプ政権は、戦争を終結させようとする気が満々だということが窺い知れます。
トランプ氏は、在韓米軍を撤退させたい
それだけではありません。
第1期のトランプ政権の時には、在韓米軍の撤退の話も出ていました。
北朝鮮の金正恩氏と会談を行ったのも、戦争状態をやめさせることで、在韓米軍の撤退させようとしていたのではないでしょうか?
そして、今回も、トランプ氏は金正恩氏との会談を検討しているとの報道が出ています。
時期などについては、まだ未定ですし、トランプ氏の最終決定はまだということですので、流動的ではありますが、政権移行チームがさっさと北朝鮮との関係を正常化したいという意志が見て取れます。
おそらく、その目的は、在韓米軍の撤退でしょう。
台湾有事に関与する気はなく、北朝鮮と韓国の対立を解消させることで、在韓米軍も撤退するとなれば、在日米軍はどうなるでしょうか?
普通に考えれば、在日米軍も撤退することになるのではないでしょうか?
在日米軍の撤退の可能性
米軍が撤退なんて、そんなことがあり得るのか?と思う人の方が大半かもしれませんが、その可能性は十分にあると思います。
その理由は、トランプ氏が自らそれを匂わせるようなことを公約にしているからです。
トランプ氏自身のWEBサイト「アジェンダ47」に、それらの動画が公開されています。
例えば、その中には、「トランプ大統領、アメリカ最後の戦争屋とグローバリストを阻止する計画を発表」というページがあります。
この中で、トランプ氏は、このように語っています。
数十年にわたって、ビクトリア・ヌーランドや彼女と同じような多くの人々が、ウクライナをNATOに加盟させることに執着し、国務省がウクライナの蜂起を支援してきたことは言うまでもない。これらの人々はイラクや世界の他の地域の場合と同様に、長い間対立を求めてきたが、今、私たちは第三次世界大戦の瀬戸際にいる。
第三次世界大戦は今ほど近づいていることはない。ディープステート、ペンタゴン、国務省、国家安全保障産業複合体にいる戦争屋やアメリカ最後のグローバリストを一掃する必要がある。
以上が、抜粋部分です。
つまり、アメリカ国内に、戦争を起こすことで得をする企業や高級官僚がいっぱいいるため、そいつらをぶっ潰す、と言っているんですね。
では、どうやってぶっ潰すのか?もちろん、そういう人たちを解雇する、ということが行われるでしょう。予算も減らすでしょう。もしかしたら、逮捕や訴追を行うかもしれません。
ですが、そもそも、そう言う工作ができないように、世界中の基地から撤退する、ということは十分に考えられます。
現在、アメリカは180以上の国に基地を展開し、165万人も駐留しているそうです。
トランプ氏から見れば、その基地を拠点に、戦争の火種を起こしていると考えるのは、ごく自然なことではないでしょうか。
また、現在、アメリカはあまりに借金が増えすぎたことで、イーロン・マスク氏が政府効率化委員会を立ち上げて、政府予算の削減計画を練っていく予定です。
その目標は、政府予算の約3割に当たる、年間2兆ドル、約300兆円の削減を目指すのだそうです。
トランプ氏が、戦争屋を追い出すと言っているわけですから、当然ですが、軍事支出の見直しも入ります。現在の180ある海外の基地のリストラだって検討するでしょう。
過去にも、トランプ氏は、日本に対して、米軍の駐留を続けさせたいなら、もっと金を出せと言っていましたので、はっきり言って、金食い虫のリストラ対象です。
そのため、在日米軍の撤退は、十分にあり得るシナリオだと思っています。
2、なぜ、石破首相は、トランプ氏との会談を断られたのか?
このようなアメリカの状況を踏まえて、石破首相がトランプ氏に、早期の会談を断られた理由について、考えてみましょう。
ここ最近の自民党は、台湾有事を騒ぎ始めた、現在のアメリカ民主党政権の影響もあって、中国に対してファイティングポーズを取らなければいけない状況でした。
バイデン政権は、台湾有事を起こしたがっていましたし、言うことを聞かなければならなかったからです。
そのため、自民党総裁選の決選投票では、中国に対して強硬に行くべきだという高市氏と、アジア版NATOを作って、封じ込めていくべきだ、という石破氏の2名が残り、いずれも、中国に対して一家言持っている人同士での戦いとなりました。
結局、石破氏が首相になったわけですが、そもそも、アジア版NATOを作ろうとしていたのは、2つの目的がありました。
1つ目は、中国と戦うのは、日本だけでは無理だから、他の国と団結することで、戦争を起こしにくくするためであり、2つ目は、日本とアメリカの軍事同盟の関係を対等にするためということです。
だからこそ、グアムに自衛隊を駐留させるという案が出ているわけです。
ところが、ここまで見てきたように、トランプ氏は、アジア版NATOとか、どうでもいいと考えている可能性が高いです。
そもそも、現在のウクライナ戦争を長引かせている本家のNATOや、それを焚き付けてきた、アメリカ国内の戦争屋を排除しようとしているわけですからね。
すでに、アメリカがウクライナ戦争に使っているお金は、30兆円以上とも言われており、ただただ、ウクライナ人の命を無駄にして、戦争屋だけを儲けさせている、と見ていると思います。
なので、アメリカを中国と台湾とのゴタゴタに巻き込むな、と言うのが本音なのではないでしょうか?
つまり、トランプ政権になって、アメリカのゲームのルールがすっかり変わっているのに、「もうちょっと日本のことも考えて下さい。でも今まで通りやっていきましょう」と話し合おうとしていたのが、石破首相だということなのです。
だからこそ、石破首相との会談を1月以降にしているのだと思います。
トランプ氏からして見れば、
「俺は今、世界中の戦争から手を引くために、紛争が起こっている国々を仲裁して、米軍基地の撤退を準備しているんだ。
石破は、もっと日米同盟を強固なものにしようと考えているかもしれないが、アメリカは、日本も含めたアジアからも手を引くつもりだ。だから、今まで通りの延長線上で、交渉してくることに意味はない。
だから、優先順位が後回しなんだよ。」
と言うことなのでしょう。
3、関税政策で、海外からの輸出もシャットアウト
それだけではありません。
トランプ氏の国内政策の目的は、国内産業の復活です。
そのために、関税を使って、海外からの輸入を減らして、アメリカ国内に工場を増やして、雇用を増やそうとしています。
実際、トランプ氏は、11月25日に、追加の関税を発動すると、SNSに投稿しました。
その内容を見ると、中国は10%なのに対して、お隣のカナダとメキシコには、なんと25%も上げるというのです。
これまで、中国への関税については、60%とか100%とか、かなり厳しい対応をとると言っていましたが、今のところ、最も厳しく当たっているのは、実はカナダとメキシコなのです。
その理由は、明らかに、
「中国や日本のような、遠い国から輸出している商品については、アメリカに工場を作ると言っても、大変だろうけど、隣の国で作るつもりなら、アメリカ国内で作ればいいじゃん」
ということなのでしょう。
そもそも、対中貿易戦争とは、第1期トランプ政権の頃に始まったのですが、その目的だって、アメリカの企業が中国に工場を作って、アメリカに輸入することを阻止するためだったと考えられます。
中国の貿易に占める、外資系企業の割合は、年々減少傾向にあるものの、4割近くあります。
アップルのiPhoneは、アメリカのアップル本社で設計して、中国で作っていることは有名ですが、このような対中貿易が4割近くあるのです。
なので、この工場をアメリカに戻せれば、アメリカの雇用だって、かなり増やすことが可能です。
そして、今回のトランプ政権は、上下院の議会も共和党が過半数をとりましたので、トランプ氏のこのような意向が、かなり強く反映されることになります。
そうすると、おそらくですが、アメリカで売りたければ、アメリカに工場を作って、生産する、という流れがさらに進むと考えられます。
トランプ関税は、基軸通貨の停止を意味する
この様な動きを世界経済という観点から見ると、「アメリカドルが、基軸通貨の役割を止めるつもりだ」と捉えることができます。
これまで、アメリカは貿易赤字を通じて、世界中にドルをばら撒いてきました。
原油などの重要な商品の決済に、米ドルが使われていたため、世界中の国々が必死になって、アメリカにモノを輸出して、ドルを調達する必要があったからです。
ですが、このシステムは、アメリカの製造業で働く人たちを犠牲にして成り立っていました。海外からの安い商品に、アメリカ国内の工場や企業が負けてしまうからです。
しかし、今回トランプ氏が当選し、国内の製造業を復活させようとしているということは、この流れを止める、つまり、これまでの米ドルを世界にばら撒くシステムを止めることを意味します。
そうすると、米ドルを使って原油などの資源を輸入してきた国々は、完全に詰んでしまいますよね。資源のほとんどを海外から輸入している日本なんて、最悪です。
日本の原油の備蓄は、約200日分あると発表されていますが、それは節約モードで200日という意味であって、今まで通りの使い方をすれば、3ヶ月もしないでなくなっちゃいます。
なので、他の方法を探さなければいけません。
特に、米ドルを使わないで、原油などの資源を調達する方法についてです。
あれ、なんか、米ドルを使わないで、貿易をする仕組みを構築中の国々がどこかにありましたよね?そうです。BRICSがそれなんですよ。
10月にロシアのカザンで開催されたブリックスサミットでは、BRICS新通貨の発表はなかったものの、エジプト、イラン、エチオピア、UAEの4カ国が新たにメンバーとして承認され、加盟を申請中の国も含めて、36カ国が参加しました。
これらを合計すると、人口で約50億人と、全世界の6割をカバーする、むちゃくちゃデカい経済共同体になります。
そのほとんどが、新興国や発展途上国なわけですが、中東産油国も参加しており、資源の多くを保有していますから、このグループに入れれば、たとえアメリカドルを稼ぎにくくなったとしても、なんとかやっていくことができます。
今回のAPECでの中国との首脳会談で、習近平氏の態度が柔らかだったのは、そういう事情を読んでの、日本を引き入れようとするお誘いだったのではないでしょうか?
もちろん、まだトランプ政権も始まってませんし、今後の状況次第でいくらでも変わってくる可能性はありますが、個人的には、この様なシナリオはありそうな気がします。
今後の動画でも、日本のBRICS加入の可能性については、ウォッチし続けていきたいなと思います。
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