この記事では、「これからゴールドはどうなるのか?」について、考察します。
(なお、この記事は、YouTubeで投稿した動画の元原稿となりますので、一部、動画仕様の画像を使っています。)
私が金について注目し始めたのは、今から16年前のリーマンショックの時でした。
当時、証券会社に勤めていた私は、その崩壊の様を見て、現在の経済システムが変わっていくのではないか?と感じていました。
これは別に、私だけが感じていたわけではなくて、当時の金融系の書籍を見てみると、かなりゴールドについて取り上げていた人は多いと思います。
副島隆彦先生や、増田悦佐先生、松藤民輔さんなど、当時、金に関する本はかなり出ていたと記憶しています。
そして、実際に、リーマンショック以降のゴールドの価格を見てみると、2012年あたりまで、一貫して上昇していました。
「やはりアメリカの基軸通貨体制がそろそろやばくて、ゴールドの時代が始まるのではないか?」
と考えていた人は、結構いたと思います。
ところが、2013年からアベノミクスが始まって、円安株高のイケイケムードが始まりました。
そのころから金はむしろ下落し、アメリカでアップルやグーグル、フェイスブックなどが大きくなっていき、「アメリカ最強、アメリカ最強」というムードが作られました。
新型コロナやウクライナ戦争などの、世界的な混乱がありましたが、それで金が上がった、という印象を持っている人は、あまりいないと思います。
ですが、昨年から今年にかけての上昇は、ちょっと事情が変わってきているように感じます。
BRICSの新通貨の話が出てきたり、トランプ氏がアメリカをビットコイン超大国にすると、宣言するなど、米ドルを中心とした基軸通貨制度を変えようとする動きが出てきているからです。
今回の記事は、その辺りについて、詳しく紹介しつつ、これからのゴールド価格の見通しについても考察していきたいと思います。
それでは参りましょう。
1、なぜ2024年から上昇が始まっているのか?
まず、最初に、なぜ2024年から金が再び上がり始めているのか?について、考察していきたいと思います。
その理由は、ズバリ、欧米のゴールド価格のコントロールが効かなくなっているからです。
その実態については、こちらのイスラエルのエルサレム・ポストの10月に出された記事で、詳しく解説されているので、ご紹介します。
*英字記事をGoogle翻訳したもの
こちらのグラフは、各国政府の米国債の購入額と、各国の中央銀行によるゴールドの購入額の推移です。
青色の線がゴールドの購入額を表し、オレンジ色の線が米国債の購入額を表しています。
ご覧の通り、米国債の購入額はマイナス、つまり売却している状況なのに対して、ゴールドは一貫して増加していることがわかります。
アメリカの政府債務は、35兆ドルに達しており、毎年の利払も1兆ドルを超えています。かなり早い債務の増加ペースのため、いつかデフォルトを宣言するのではないか?と考える国が増えているのでしょう。
そのため、アメリカ政府がいくらでもスリ散らかすことができる米国債を売却し、確実に残り、他国との貿易にも利用できるゴールドの備蓄を増やす国が増えていると考えられます。
どこの国が金を購入しているのか?
では、実際のどこの国が買っているのか?というのが、こちらの表になります。
2023年は、中国が200トン以上購入していますね。ついで、ポーランド、シンガポールと続いています。
また、2024年は9月までのデータですが、ポーランド、トルコ、インド、中国と続いています。いずれも、BRICSを含めた新興国が増やしていることがわかります。
いずれにしても、中央銀行の購入量は売却量よりもはるかに上回っていることがわかります。つまり、ゴールドに対する需要は、とても強いのです。
欧米の金融機関が、わざと下げようとしていた疑惑
しかし、衝撃的なのは、ここからです。
この記事では、「このような旺盛なゴールドに対する需要に対して、欧米先進国の金融機関が、空売りを行うことで、下落させようとしている」というのです。
こちらは、エルサレムポストの別の記事ですが、銀行の金のショートポジションが過去最高を更新したというものです。
私も実際に、詳しく見てみましたが、スワップディーラーによる売りものが多いようですね。
*金額80兆円は8.3兆円の間違い
ゴールドの取引をマッチングさせるための役割を持つ金融機関のようですが、ここがそういう役割を担いながら、自ら先物でさらに売り注文を増やすことで、ゴールドの価格を抑えつけていた、というわけです。
価格操作なんて、本当にあるのか?
「そんな、価格操作なんてものが、本当に行われているのか?」
と疑問に思うかもしれませんが、その可能性はあると思います。
というのも、今回の2000ドルから2700ドル代にまで上昇したタイミングは、今年の2月下旬ごろからなのですが、それより数ヶ月前に、中国がLBMAから離脱しているからです。
LBMAとは、ロンドン貴金属取引協会のことで、金価格の値決めをする機関です。
ロンドンの金価格については、2014年にバークレイズ銀行が金価格を操作したということで、45億円の罰金を課されています。
このような前科のある取引システムに、中国の金融機関も参加していたのですが、それから昨年の10月に撤退しているのです。
普通に考えれば、昨年の中央銀行の購入量が一番多い中国が、金取引の総本山であるロンドンから脱退するのは、何か理由があると考えた方が自然です。
その理由が、このような不正操作だったのではないか?と考えれば、筋が通るような気がしませんか?
しかも、その数ヶ月後には、金価格が3割上がっているわけですから、中国などの中央銀行の旺盛な需要に対して、空売りをして価格を下げようとしてきた欧米の金融機関が勝てなくなってきた、という可能性は高いのではないかと考えられます。
2、なぜ、欧米の金融機関が、金を下げようとしているのか?
では、なぜ欧米の金融機関は、このようにしてゴールドの価格を下げたいのでしょうか?
その理由は、現在の米ドルを中心とした基軸通貨体制を守るためだと考えられます。
2008年のリーマンショックの時は、株や債券だけでなく、金もそれ以外の商品も全てさげました。
その時に、どこかのヘッジファンドの担当者のコメントが新聞に載っていたのですが、それが「全ての通貨を売りたい」というものでした。
つまり、現在の何の裏付けもない、中央銀行が刷り散らかしている紙切れに対して、不信感が高まっていた時期だったんですね。
その対抗策として、金が買われ、翌年にはビットコインなどの暗号通貨も生まれました。
また、中国などの新興国は、米ドル以外の決済方法を持とうと動き出し、2012年にはCIPSなどの仕組みを作り、その延長線上に今年発表が期待されたBRICS新通貨まで続いています。
つまり、ゴールドの価格が上がるということは、中国などの他の国々が、米ドルから離れている、というイメージを印象付けることになるんですね。
しかも、昨年あたりからは、サウジアラビアなどの産油国でも、米ドル以外の通貨での取引でも構わない、と発言していることから、ますます米ドルの価値が下がってくる可能性があります。
アメリカだけでなく、ヨーロッパの金融機関も、米ドルが基軸通貨であることのメリットは大きいと考えられますので、なんとか金価格を抑えるために、このような価格コントロールをする理由は十分にあると考えられます。
BRICS新通貨が出てこなかった理由
また、10月にはBRICSサミットが行われましたが、ここで新通貨のお披露目はされませんでした。
下部組織である、BRICSビジネス評議会では、新通貨にUNITと呼ばれる仕組みを検討している、という報道が一部されていました。
*詳細はこちらの動画で解説しています
このUNITには、ゴールドが4割組み入れられるということだったので、UNITを採用すると発表されれば、ゴールドの需要はかなり上がり、価格も爆上げするのではないかと思っていたのですが、実際には、UNITのユの字も出てこなかったため、肩透かしを食らった方も多かったのではないかと思います。
ですが、もし欧米の金融機関が、空売りを仕掛けて価格を下げようとしていたのであれば、今回のBRICSサミットでUNITを正式に導入すると発表した場合、ゴールドが爆上がりすることによって、どこかの銀行が大損こいて破綻する可能性もあったと思います。
先ほどご紹介したスワップディーラーの空売りの規模は、19万枚ということで、約8.3兆円にもなります。
鉱山会社のように金鉱山を持っているわけではないので、損が膨らめば反対決済して負けた分のお金を払うしかありません。
また、アメリカの大統領選挙前ということもあって、もしそんな時に金融恐慌が起これば、アメリカがどのように狂ってしまうかわかりませんでした。なので、そういった影響も考えて、大人しくしていたのではないかと勝手に想像しています。
3、世界が変わった
今回、アメリカの大統領選挙で、トランプ氏が勝利し、ビットコインが大きく上昇しています。
これは、トランプ氏が7月にビットコイン・カンファレンスで、アメリカをビットコイン超大国にする、と宣言したためです。
保健福祉省の長官に指名された、ロバート・F・ケネディJr氏も、このカンファレンスに出席しており、400万ビットコインまで購入すべきだと発言しています。
それ以外にも、共和党上院のシンシア・ラミス議員も、毎年20万ビットコイン購入し、5年間で100万ビットコイン増やすべきだという法案を提出しており、米ドルをビットコインで裏付けようとする動きが出てきています。
これまで、日米欧の中央銀行が、際限なくお金を刷り散らかしてきましたが、株高とインフレを起こすだけで、金持ちはより金持ちになり、貧乏な人はさらに貧乏になる格差の原因となってきました。
しかし、ビットコインは、2100万ビットコインまでしか発行されないため、際限なく増えることがないため、中央銀行のお金を刷り散らかす動きを止めることができると考えているわけですね。
このように考えると、BRICSや新興国がゴールドを買い、アメリカがビットコインを購入しようとしているのは、中央銀行の仕組みをもう一度、作り直そうとしているからだ、と捉えることができます。
そのため、ゴールドに対する需要は、特にBRICS諸国や新興国で、これからも強くなっていくでしょう。
しかも、もし、欧米の金融機関による空売りが通用しなくなってきたとすると、需要が増えている分だけ、これからはきちんと価格に反映されていくことになりそうです。
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