この記事では、「ポリコレ企業の末路」ということで、海外のポリコレに染まった企業の業績や株価がどうなっているのか?について、解説します。
第3弾の今回は、ナイキを取り上げます。
1、ナイキの株価と業績
まずは、ナイキの業績についてみていきましょう。
赤色の線画、売上高で、青色の棒が営業利益、つまり、本業での利益です。
売上高は、上昇傾向にあり、2024年に513億ドルということなので、約7兆円ぐらいの規模の会社となっています。
では、利益はというと、約6,000億ドルということなので、9,000億円ぐらいですね。
2022年がピークで、それ以降は、横ばいが続いています。
株価は、ピークの半値以下
このような業績なわけですが、株価はどうなっているのでしょうか?
実は、2021年10月に177.5ドルの高値をつけて以降、なんと半値以下に下落しています。
また、6月の決算では、次の第一四半期の売上が、1割下がると発表されたことで、2割近く暴落し、その後も、回復しきれない状況が続いています。
2、ナイキの株価が大きく上昇した理由
まず、ナイキの株価が下落している理由を考える前に、なぜ、それ以前に株価が大きく上昇したのかを押さえておく必要がります。
ナイキの株価が最高値をつけた2021年10月がどういう時期だったのかというと、6~8月の決算が出た時期でした。前年同期に比べて、売上は16%の増加、利益は23%も増えていました。
なぜ、これほど株価が上昇したのか?
その理由は、大きく3つあります。
(1)コロナ給付金で、消費が爆発
1つ目は、コロナ給付金が出て、多くの人が、消費にお金を使ったということです。
2021年3月に、アメリカでは3回目のコロナ給付金が支払われており、前年の12月にもロックダウンを行なっていた都市もあったため、ようやく、自由に消費ができるような状況になった時期だったのです。
なので、ナイキに限らず、アメリカの多くの企業が、2021年にかなり上昇しました。この時期がピークだった企業は、けっこうあります。
(2)ネットビジネスへの期待が高い時期だった
2つ目は、ナイキがネットでの販売に力を入れ始めたという点です。
ナイキは、新型コロナの直前に、ジョン・ドナホー氏が新しいCEOに就任しています。
彼は、元eBayという、日本でいうところの、ヤフオクのような会社のCEOも経験しており、ネットビジネスに明るいことから、ナイキでも、ネットでの売上拡大を目指そうとしました。
新型コロナ以降に、大きく上昇したのは、Googleやアマゾン、マイクロソフトなどの、ビッグテックです。
ナイキも、CEOがネットビジネスに明るく、その方向へと舵を切っていたことから、テック系の銘柄の波に乗れたということも大きかったでしょう。
(3)転売ヤーが増えて、中古価格が上昇
そして、3つ目が、転売ヤーによる購入が増えたことで、ナイキの製品にプレミアムがついたことです。
新型コロナで、世界中で多くの人が失業したことで、増えたのが転売ヤーの存在です。
日本でも、新型コロナの影響が少しおさまってきた2020年11月に、プレステ5が発売されましたが、その時に大きな問題になったのが、転売ヤーの買い占めと、価格の吊り上げでした。
定価が約5万円のものが、倍の10万円、ひどい場合には、35万円で売り出されることもあって、けっこうな話題になりました。
これと同じことが、アメリカでは、ナイキの靴でも起こっていたのです。
給付金はもらえたけど、失業した人が増えたことで、副業感覚で、ナイキの靴を買って、転売をして稼ぐ人が増えたんですね。
こちらは、エアジョーダン1のいろいろなモデルについて、発売1週間後の中古品サイトでの価格が、定価よりどれだけ高く出品されていたかを示すグラフです。
2020年から22年の前半にかけて、多くのモデルが、定価よりも高い価格で売れていました。
平均すると、50%以上の値上がりをしていたので、転売ヤーの人たちにとっても、かなり美味しい副業だったと考えられます。
このような状況は、ナイキにとっては、願ったり叶ったりでした。
ナイキは、ABCマートのような小売店にも、靴を卸していましたが、利益率が低く、直営店舗やネットで販売した方が儲かるため、そちらにシフトしていこうとしていたからです。
転売ヤーが、確実に買ってくれるのであれば、わざわざ、利益率の低い小売店に卸す必要もありません。しかも、これらの小売店は、コロナの影響で売上も鈍く、売れ残るリスクもありましたからね。
そのため、小売店への商品の供給を減らし、利益率の高い直営店とネットへシフトすることで、さらに業績が良くなり、株価上昇へとつながったわけです。
3、ナイキの業績・株価が転落した3つの理由
このように、業績も株価も好調だったナイキですが、2022年に入ると、株価がどんどん下落していきます。
なぜ、こんなことが起こったのでしょうか?
(1)インフレで利益率が悪化
1つ目は、インフレ率の上昇です。
アメリカでは、ロシアのウクライナ侵攻後に、物価が大きく上昇し始めました。ひどいときは、年率9%以上もの上昇となり、企業の原価率が上がり、利益が出にくくなったのです。
そのため、2022年6月から2023年5月期の決算は、売上は増加したものの、利益は15%以上の減少となりました。
それまでナイキは、ネットや直営店での販売にシフトすることで、高い利益率の会社になると、投資家は期待していました。
そのため、株価もビッグテックのような割高感がありましたが、普通の靴屋だということがわかり、株価が下がってしまったわけです。
(2)アメリカの治安の悪化
2つ目は、アメリカ国内の治安の悪化です。
民主党のバイデン政権に変わってから、メキシコ国境からの不法移民が大量に流入しました。これによって、ロサンゼルスやポートランドなど、不法移民を積極的に受け入れる聖域都市で、万引き被害が急増したのです。
実際、ナイキは、2022年11月に、ポートランドにあったファクトリーストアを閉店しています。
このポートランドのお店では、2019〜22年で400件以上の万引き被害があったといいます。
ナイキのシューズは、中古市場で高値で売れることが知られていましたので、かなり集中的にやられたようです。
先ほどのエアフォース1の再販価格は、2022年から下落していますが、原価0円で盗んだスニーカーをさっさと現金化したいという犯罪者が増えたのかもしれません。
これによって、ネットと直営店による販売を増やすという戦略が頓挫してしまいました。
北米のナイキの店舗を見てみると、直営店はほぼ横ばいで、ショッピングモールに入っているインラインストアだけが増えています。
おそらく、全米で治安の悪化が進んでいるため、大規模なフロアでの直営店での出店ができない状況にあるのでしょう。
(3)提携先の小売店の減少
3つ目は、小売店の減少です。
治安の悪化によって、直営店やネットでの販売が思うように行かなくなっているため、ナイキでは、ABCマートのような、小売店へ靴を卸売する方向へと転換しようとしています。
ですが、新型コロナ以降、小売店への商品供給を減らしたり、契約を切ったりしていたため、信頼を回復することは容易ではありません。
そして、これらの店舗もまた、治安の悪化によって、店舗の閉店が増えています。
例えば、日本の靴の小売店であるアトモスを買収したフットロッカーという、アメリカのABCマートのようなお店がありますが、この会社でも、店舗の縮小を発表しています。
2026年までに400店舗の閉店を予定しているということですので、かなりの販売縮小です。
ナイキでは、小売店との関係の再構築のため、古巣の役員を復帰させて、信頼回復に努めようとしていますが、おそらく、うまく行かないでしょう。
失った信頼を回復するのは難しい、ということもそうですが、交渉先となるお店自体が、どんどん減っているので、対策の立て用もありませんからね。
4、ポリコレの悪影響は?
ここまで、ナイキの株価と業績が低迷している理由について、解説してきましたが、ポリコレが悪影響を与えているようには見えませんでした。
ですが、ナイキはポリコレ先進企業であることは間違いありません。
代表的な例を3つ挙げます。
(1)従業員の多様性をノルマ化
1つ目は、従業員の中で、非白人の割合を引き上げると、公然と宣言している点です。
現在、ナイキの従業員に占める、白人の割合は約34%、黒人は約25%、ヒスパニックやアジア系などの、それ以外の割合が約41%となっています。
数値目標を設定して、ここまでマイノリティの人たちを雇用する割合を引き上げる、というのは、逆を言えば、白人は雇わない、ということを宣言していることとも同じだ、ということで、逆差別だとして、訴訟になっています。
(2)コリン・キャパニック氏の広告起用
2つ目は、コリン・キャパニック氏の広告起用です。
キャパニック氏は、アメフトの選手で、2016年に試合前の国歌斉唱を拒否したことで、アメフト界から追放処分になった人です。
キャパニック氏の主張は、「黒人や有色人種への差別がまかり通る国に敬意は払えない」ということで、そのような人をナイキが広告起用したということで、かなり話題となりました。
これによって、売上がかなり伸びて、株価も当時の最高値を更新しました。
(3)トランスジェンダーを女性用ウェアのモデルに起用
3つ目は、トランスジェンダーのディラン・マルバニー氏を女性用のスポーツウェアのモデルとして起用したことです。
アメリカでは、トランスジェンダーの選手が、女性のスポーツ大会に出て、無双したりする状況が続いていますので、トランスジェンダーの方が、女性の代表として扱われることに、不快感を感じる人も多く、反感を買っているようですね。
「高価格・低品質による、顧客離れ」が起こっている
このように、かなりポリコレ寄りの企業なわけですが、おそらくこれから、深刻な影響が出てくると考えられます。
それは、「高価格、低品質による、顧客離れ」です。
ナイキについて語っている、国内外のユーチューバーの動画を見てみると、ナイキの品質が低下していることを嘆いている人を多く見かけます。
私の息子も、小中学校の時は、バスケをやっていたので、バスケットシューズを買いに行った時に、ナイキのシューズも見たのですが、見た目はかっこいいけど、こんなに頼りない作りだったっけ?という印象でした。
これは、コロナ以前の話なのですが、その当時から、すでにナイキって、あまり作りが良くないなという感じだったのですが、2022年以降の物価上昇で、さらに値上げが起こったじゃないですか?
当時、ナイキは、再販価格がプレミアがついていたので、かなり強気の値上げをしていました。日本でも、エアフォース1が1万円ぐらいだったのが、今では1.6万円ですからね。
つまり、ただでさえ低品質だったところで、強気で値上げをしたため、「低品質、高価格」という特徴が、際立ってしまっているのが、今のナイキだと思うのです。
ナイキは、品質からイメージの会社へ
それで、なぜこれとポリコレが関係あるのかというと、品質ではなく、イメージで勝負しているように見えるからです。
従業員に多様性を求めて、数値目標を課すとか、品質に関係ないじゃないですか?
むしろ、「差別していない会社です」という企業イメージを打ち出したいわけですよね。
また、ポリコレ要素の強い広告やモデルを起用することも、有名選手に何十億円、何百億円とスポンサー契約することも、品質の向上にはつながらず、ただのイメージ戦略でしかありません。
このように、企業イメージ全振りでやってきた結果、これまではそれで良かったのかもしれませんが、品質改善を行わずに、値上げを行った結果、品質と価格のバランスが崩壊してしまったのが、現在のナイキだと考えられます。
勝ち組と負け組で、二極化してしまった株価
その証拠に、この期間に株価、業績が上がっているのは、HOKAを要するデッカーズ アウトドアや、アシックス、ミズノ、スケッチャーズなどの、クオリティ重視の、地味な会社が多いです。
逆にダメなのは、アディダスやナイキ、プーマなどの、広告宣伝がちょっと派手な会社なんですね。特に、アディダスは、ナイキと同じように、トランスジェンダーを女性用ウェアのモデルに起用なんかしています。
当分の間、ナイキは、これらの勢いのある会社に、シェアをどんどん食われていくでしょう。
今四半期の売上が1割減少するとの見通しを出していましたが、当分の間は、業績・株価ともに、厳しい状況が続きそうです。
民主党が勝てば、さらに売り上げが下がる可能性大
また、皮肉なことですが、ナイキはそのリベラルなメッセージ性から、今回の大統領選挙では、民主党のカマラ・ハリス氏を応援していると思いますが、現在の民主党政権こそが、不法移民の流入を増やして、ナイキのお店を万引き天国にした張本人でもあります。
なので、ハリス氏が当選した場合には、治安悪化によって、さらにナイキの売上は、減少していくことになるでしょう。
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