この記事では、「この3ヶ月が勝負。始まったトランプ・レスリング・エンターテイメント」ということで、やっていきたいと思います。
1、はじめに
4月9日に、トランプ大統領が、各国への相互関税を90日延長することを表明したことで、株式市場は一気に反発し、米国市場では、10%以上の上昇をしました。これを受けて、日本でも大きく反発し、4月10日現在、34,000円台を回復しています。
ですが、今回のトランプ氏の発表は、90日間の延長であり、取り消しではありませんので、各国の交渉次第ではありますが、最低でも10%の関税はかけられたままのそうです。
また、中国については、報復関税合戦となっているため、今のところ、アメリカは125%の関税をかけて、中国は84%の関税をかけるという、泥沼のような戦いとなっています。
こんな感じで、コロコロと発言も政策も方向転換してしまうので、何も信じられないと感じてしまうかもしれません、これから起こるであろう、株価暴落と、世界経済のシステム変更について、考察していきたいと思います。
それでは、参りましょう。
2、ポイントは、BRICSサミット
私が、相互関税の90日の延期期間が終わった後に、株式市場が暴落すると思っている理由は、ちょうど、この時期にBRICSサミットがブラジルで行われるからです。
今回のブリックスサミットは、7月7日から8日にかけて行われます。相互関税の延長期間90日が終わるのが、7月7日または8日なので、ちょうどBRICSサミットに被るのです。
これは、はっきり言って、狙ってやったとしか思えません。
前回のBRICSサミットでは、BRICS新通貨の話が出ませんでしたが、今回は中国がアメリカとほぼ絶縁状態になっていますので、7月のBRICSサミットでは、アメリカとの貿易関係がなくても、やっていけることを前提とした、経済システムの発表を行うことになると予想されます。
なお、トランプ氏は、大統領に就任前に、BRICS諸国に対して、米ドル以外の通貨で決済するようなら、関税を100%に上げると脅しています。
なので、もしBRICS諸国が、新しい通貨圏、経済圏を作るとなったら、アメリカとの貿易はほぼ絶望的になってしまい、BRICS諸国とアメリカとの貿易関係は、激減してしまうのではないかと思います。
しかし、今回の相互関税の延期によって、中国以外の国は、影響を免れています。また、関税をかけられるからと言って、アメリカと取引をゼロにしたい国も少ないでしょう。
なのに、BRICS諸国が、中国について、アメリカとの貿易関係を諦めるなんて可能性は、ちょっと考えると無理があるように思えますよね。
ですが、もしこの3ヶ月間で、アメリカの金融システムが、例えば、リーマンショックの時のようなやばい状況になったとしたら、どうでしょうか?
おそらくですが、アメリカは、BRICS諸国に対して、中国と一緒に、アメリカとの貿易を諦めるような政策を打ってくるのではないか?というのが、私の見立てです。
では、トランプ政権は、具体的に何をやりそうなのか?
今のところ見えている部分から、その手がかりを探して見ましょう。
(1)関税の影響
1つ目は、停止されなかった関税の影響です。
相互関税については、90日間の停止を宣言しましたが、各国への一律10%の関税と、鉄鋼やアルミ、自動車などに対する25%の関税、そして、中国に対する125%か、それ以上の関税の引き上げは、すでに実施されています。
そのため、中国で作って、アメリカで販売していたアップルや、日本の自動車メーカーなどは、すでに大きな影響を受けており、アメリカ国内での物価上昇に直面します。
4月10日の日経平均は、相互関税の停止報道を受けて、3000円近いの値上がりをしましたが、本日11日の午前中の時点では、2,000円近くの下落をしており、中長期的に見て、アメリカ経済がかなり落ち込むと、投資家は見ているのでしょう。
(2)債券市場の崩壊
2つ目は、債券市場の崩壊です。
4月3日に、トランプ氏による相互関税が発表され、8日までは、株式市場はどんどん下落していきました。
通常、株式市場が下落すると、安全資産として見られている米国債は買われて、金利が下がります。ところが、株式市場が悲観一色になっていた4月7日から、金利が急騰したのです。
これは、ベーシス取引と呼ばれる、米国債の現物と先物の価格差を狙ったサヤ取りに、大量の金をぶっ込んでいたヘッジファンドが失敗したためと言われています。
この取引には、自己資金の最大100倍のレバレッジをかけることができるらしく、その残高は8,000億ドル、約120兆円もの規模になっていたのだそうです。
それが、トランプ相互関税という、世界を狂わすルール変更をゴリ押ししてきたことで、大損をこいてしまったため、借金をして博打を張ってきたヘッジファンドが、手仕舞いのために国債を売却して、借りた金を返済しなければいけなくなり、国債価格の下落、つまり金利の上昇が起こってしまったということなのです。
一説によると、今回の相互関税の90日間の延長は、国債金利が急上昇したため、ベッセント財務長官が、延長を進言したと言われていますが、私はこれは逆だと思います。
ヘッジファンド経験者でもあるベッセント氏から見れば、現在のベーシス取引のヤバさは認識していたはずなので、ここにトランプ相互関税をぶっ込むことで、ヘッジファンド業者に大損させ、そこに金貸しをしていた銀行を困らせようとしたのだと思います。
ベッセント氏は、最近、全米銀行家協会で講演を行い、「これからはウォール・ストリートではなく、メイン・ストリートがアメリカン・ドリームを取り戻す番だ」と発言していました。
つまり、株や為替のようなマネーゲームで、一部の人だけが儲ける時代から、実体経済を盛り上げていくことで、多くの国民が豊かになる時代へと変えるんだと、表明しているのです。
だから、大手銀行が、ヘッジファンドに多額の金を貸して、ベーシス取引のようなことをやらせて儲けさせるのではなく、信用金庫のような中小の金融機関が、中小の企業の事業資金を貸し出すことで、実体経済を復活させようとしているわけです。
なので、今回の相互関税とそれに付随して、ベーシス取引の崩壊と、国債金利の急騰は、意図的にやったのではないかと思います。
そして、おそらくですが、BRICSサミットが行われる7月までの約3ヶ月間は、米国の金融市場は、かなり混乱する、というかさせるのではないでしょうか?
そうすることで、アメリカにつくか、中国につくかで迷っているBRICS諸国を中国側に、引きつけさせて、新しい通貨圏を作らせようとしていくと予想しています。
(3)ヒール戦略
3つ目は、ヒール戦略です。
昔からプロレスでは、善玉役をベビーフェイス、悪役をヒールと呼んでいました。
トランプ氏は、昔にWWEの会長のビンス・マクマホン氏と、負けたら坊主というルールで、代理レスラーを戦わせるという試合をやったことがあります。
残念ながら、トランプ氏が場外戦でビンス氏にラリアットをかまし、勝利してしまったので、トランプ氏の頭がバリカンで刈られることはありませんでしたが、こういうプロレス的なノリが、トランプ氏のディールの中に入っていると、個人的には感じています。
例えば、2月に行われたミュンヘン安全保障会議では、ヴァンス副大統領が、欧州の政府高官を前に講演を行い、「現在のヨーロッパは、人権意識がなくて、とても同じ西洋人とは思えない。マジで縁を切りたい」みたいなことを言って、欧州の人たちを怒らせていました。
なぜ欧州の人が起こったのかというと、もともとそれをやらせたのがアメリカだからです。
ルーマニアの大統領選挙で、保守系の政治家であるジョルジェスク氏が、第1回目の投票でトップに立った際に、あいつをやめさせろと圧力をかけたのは、当時のバイデン政権です。
だからこそ、EUが圧力をかけて、ルーマニアの憲法裁判所に選挙無効とさせたと言われています。
それを拾って、「欧州は酷い国だな」とディスってくるのは、「いやいや、お前が始めた物語だろ」とツッコミを入れたくなるのは当然ですよね。
また、今回の相互関税に際しても、貿易黒字国を挑発しています。
4月7日に、経済諮問会議の委員長を務めるスティーブン・ミラン氏が、ハドソン研究所で講演を行い、この内容がホワイトハウスのHPに掲載されていました。
つまり、ここで話されている内容は、トランプ政権の公式見解だと見なすことができます。
この人は、第1期トランプ政権での、中国に対する関税引き上げを行った人です。
では、どんなことを講演していたのか?というと、
- アメリカは世界のために、軍事と米ドルを提供してきたせいで、アメリカ国民に多大な負担を与える一方で、諸外国を豊かにさせ過ぎてしまった
- 例えば、2008年のリーマンショックは、中国がアメリカの住宅ローン債券を大量に買ったため、バブルが拡大して起こってしまった。こんな感じで、諸外国は、アメリカから分捕ったドルを使って、アメリカの資産を買いまくって、好き放題やっている
- だから、この不公平なルールを改めるために、アメリカと貿易をしたい国は、関税を払うべきだし、溜め込んだ金を使って、さらに米国債を買うべきだ
みたいな発言をしていました。
例えるならば、息子たちに、これ買ってこい、あれ食わせろと、わがまま放題、贅沢し放題やってた、おっかない親父が、糖尿病になったと医者に言われたのがショックで、お前らが俺を甘やかしたから、こんな体になったんだから、治療費払えとブチギレているようなものだと思います。
普通であれば、こんなイカれた親父とは、さっさと縁を切りたいところだと思うので、中国は報復関税という形で、さっさと縁切りしてしまい、残された日本や欧州などは、これからどうしようか、、と頭を悩ませているような感じでしょうか。
この内容に「何様だよ?」とブチギレている国は、結構あると思います。
私も、さすがにリーマンショックは、中国のせいではなく、アメリカの金融機関が好き放題やったせいだと思っています、かなり無茶苦茶なことを言っているように思います。
日本にしても、これまで米国債を無理やり買わされてきました。それに逆らおうとした政治家は、残念なことになっています。
こんな感じで、わざと相手を怒らせるような発言を撒き散らすことで、アメリカに対する信頼を失わせようとしているように見えます。
一見すると、これはアメリカを自滅に追い込むものであり、トランプ氏は狂ったのではないか?と思う人が出てきても無理はないと思います。
ですが、それこそが、トランプ氏の狙いだと、個人的には思っています。プロレスのヒール役を買うことで、相手の怒りを買い、試合を盛り上げて、アメリカとBRICS諸国との引き離し、という最終的な目的へと進めようとしていると思うのです。
3、なぜBRICSと縁を切りたいのか?
では、なぜトランプ政権は、こうまでして、中国を含めたBRICS諸国と、縁を切りたいのでしょうか?
理由は大きく3つあると思います。
(1)製造業の国内回帰
1つ目は、製造業の国内回帰です。
今のアメリカは、米ドルという紙切れはたくさんあるけれども、薬も車も、スマホも、マスクも、何も作れない、ポンコツの国に成り下がっています。
その理由は、アメリカが何もしないでも、米ドルを刷れば、世界中の国々が商品を持ってきてくれるからです。それこそ、孝行息子に甘え続けた結果、糖尿病になってしまった、おっかねえ親父みたいな状況なのです。
なので、これらの息子に甘えることなく、自分で筋トレして、食事制限もして、体を作り直して、健康にならなければいけません。そのためにも、近くに息子がいると困るのです。甘えちゃいますからね。
(2)もう戦争したくない
2つ目は、戦争に首を突っ込ませないようにするためです。
アメリカには、民主党という頭のイカれた戦争好きな政党があります。今のところは、LGBTとかで脳みそをやられているので、民主党の支持率は3割を切って、復活の兆しはありませんが、5年10年すれば、復活してくる可能性は十分にあります。
その時に、ヨーロッパや中国にちょっかいを出せる状況にあったら、またアメリカの一般国民が戦争に巻き込まれてしまいます。
なので、民主党が政権を取った時にも、ちょっかいをかけられないぐらいにBRICS諸国がきちんと団結してもらわないと困るのです。
トランプ政権は、NATOからも離脱すると思いますが、その根底には、このような理由があるからだと思います。
(3)金融の力を削ぐ
そして3つ目は、金融の力を削ぐためです。
現在の米ドルは、世界中の資源を購入する際の決済通貨となっているため、金融業が儲かりやすい状況になっています。
しかしそれが原因で、製造業が衰退し、ろくにモノが作れないポンコツの国になってしまいました。
なので、国内に工場を戻すことで、製造業を復活させようとしているわけですが、それだけでは足りません。
例えば、ゴールドマンサックスという投資銀行がありますが、この会社は本当にエグくて、2009年のギリシャ危機は、ゴールドマンがギリシャ政府に販売したデリバティブ契約によって、粉飾をできたことによって起きました。
こんな感じで、国1つ潰れても、儲かればいいというのが、金融屋の本性でもあります。
日本でも、損保ジャパンという小物がいますが、ビッグモーターと組んで、やりたい放題してましたよね。あれで多くの自動車オーナーが犠牲となりました。
なので、ちょっと油断すると調子に乗ってしまうので、金融屋なのです。
先ほどのベッセント長官の発言を見ても、ウォール・ストリートからメインストリートへと移行するつもりですので、BRICS諸国が欧米の金融機関の影響から外れれば、金融屋の力はずいぶん落ちるでしょうし、実体経済を邪魔することもなくなってくるでしょう。
なお、金融の力を削ぐのに、1番手っ取り早いのは、一度金融危機を起こして、金融機関をある程度潰した上で、規制強化をするという方向です。
そうすれば、BRICS諸国は、アメリカではなく中国について、BRICS経済圏が確実の構築されることになるでしょう。
しかし、そうなれば、アメリカ経済はかなり痛手を被りますし、来年の中間選挙までに復活できるのか怪しいので、可能性はありそうだとは思うものの、メインシナリオにはならないかなと思っています。
いずれにしても、この3ヶ月間は、いかにBRICS諸国を中国側に押し付けるかが勝負になると思いますので、トランプ政権の動きが、一見すると理解不能な展開になりそうな気がしています。
今後のマーケット系の動画では、このようなシナリオの答え合わせをしながら、予想していきたいと思います。
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