この記事では、「トランプ恐慌は本物か?アメリカ社会をリセットしたいトランプ」ということで、やっていきたいと思います。
1、はじめに
このサイト・チャンネルでは、トランプ政権の政策を追いかけながら、世界の金融市場や、各国の政治情勢への影響などを考察しています。
そんな中で、あまり取り上げてなかったのが、選挙で負けた後のアメリカ民主党の動きです。
これが本当にひどくて、どうしようもない状況にあります。
まず最初に、私が衝撃を受けた3つのエピソードをご紹介します。
(1)テスラ解体運動
1つ目は、テスラ解体運動です。
トランプ氏勝利に大きく貢献し、政府効率化省を立ち上げて、政府の無駄な組織、公務員をバシバシクビにしている、イーロン・マスク氏への報復として、テスラのEVや、販売店舗への放火を行っています。
そもそも、この抗議活動が起こっている理由は、現在のトランプ政権の政権運営が気に食わないから、ということのようです。
テスラに対する抗議は、世界中に広がっており、平和的な抗議をしている人の方が多いようですが、過激な人もおり、なかなか香ばしい状況となっています。
これに対して、司法長官のパム・ボンディ氏や、FBI長官のカッシュ・パテル氏は、このような破壊行為を国内テロと認定しており、この警告を出した時点ですでに3人が逮捕されていました。
(2)トランプ当選で、永久不妊手術をする女性が出現
2つ目は、トランプ当選を受けて、民主党支持者や、一部の民主党議員の女性が、永久不妊手術を行ったということです。
大統領選挙では、中絶に対する権利も、争点となりましたが、カマラ・ハリス氏は、連邦政府が統一した規制を作るべきだと主張していたのに対して、トランプ氏は、各州の判断に任せるとしていました。
Wikipediaで、米国の中絶に関する規制を調べてみると、福音派などの宗教的背景を持った支持者が多い保守的な地域と、民主党が地盤とする大都市の影響力が多い地域では、中絶に対する考え方が違うため、規制も州ごとに違います。
トランプ氏は、州ごとの判断に任せるべきだという主張だったのですが、ハリス氏は、トランプ氏が当選したら、性犯罪に巻き込まれた女性でも、避妊できないひどい世界になると攻撃していたため、それをそのまま信じてしまった女性が、一定数おり、しかも、州議会の議員にもいたのです。
女性にとって、一生子供が産めなくなることを選択するのって、かなり勇気がいることだと思うのですが、トランプ氏が当選したことで、本当に女性の権利が脅かされると本気で思ってやったのでしょうか?ちょっとは調べなかったのかな?と、衝撃を受けました。
(3)民主党全国委員会の委員長選挙が酷い
3つ目は、民主党全国委員会の委員長選挙です。
トランプ氏に負けた民主党は、2月に組織を立て直すために、全国委員会の委員長選挙を行いました。
ステージには、8人の候補者が出てきたのですが、本当に酷い内容でした。
・候補者の一人は、お笑いのオーディションと勘違いしたのか、自己紹介で歌い始めました
・別の候補者は、自分は黒人女性だから、黒人女性だから、と人種や性別だけを連呼して、それで自分が相応しいとアピールしてました
・司会者が、カマラ・ハリス氏が選挙で負けたのは、人種差別と女性蔑視が原因だと思いますか?と質問したところ、全員がそうだと、挙手をしたのをみて、「良かった。全員合格だ」と踏み絵を迫るようなジョークを飛ばしていました。何が負けた原因なのかを各人が主張する時間も与えませんでした
・聴衆が、質問しようとしたところ、抗議者扱いされ、会場から連れ出されました。都合の悪い話題が出ないように、司会者だけが質問できるようにして、進めようとしていました
これ以外にも、探せばいろいろとあると思うのですが、要するに、何の反省もしない、フジテレビやジャニーズの記者会見みたいなことをやって、委員長を決めていたのです。
現在、民主党の支持率は3割を切っているようですが、この調子であれば、次の大統領選挙も、負けることは確実だなと感じました。
とまあ、こんな感じで、現在の民主党は、本当にボロボロというか、とりあえず共和党に反対さえすればいい、みたいな、どこかの国の最大野党みたいなことしかやっていないのです。
何をどうすべきかとか、そういう建設的な話は一切なく、ただただ喚くだけの集団に成り下がっているようなのです。これは本当に酷いなと思いますね。
それで、この記事では、なぜアメリカの民主党が、というか、アメリカの高学歴のエリートを含むリベラルが、今回の選挙で負けて、知性のカケラもない人たちになってしまったのか?ということについて、考察していきたいと思います。
そして、この考察の行くつく先は、もしトランプがアメリカを復活させたいのであれば、一度アメリカをリセット、つまり金融恐慌を起こすしかない、という結論になりました。
なので、特に今、投資をしている人は、ぜひ最後まで見てもらって、じっくりと考えることをお勧めします。
それでは、参りましょう。
(参考書籍)「西洋の敗北」について
なお、今回の記事を作るにあたり、参考にした書籍があります。
それがこちらの、エマニュエル・トッド教授の「西洋の敗北」です。
伊藤貫先生が、最近の動画で、こちらの本について解説されていたので、私も読んでみました。
以前からトッド教授の書籍は、いくつか拝読していたのですが、今回の本はかなり刺激的でした。
いろいろなテーマの記事を作れると思っていますが、現在のアメリカが、なぜこんなポンコツになってしまったのか?について、文化人類学的な視点から、詳しく解説されていて、とても興味深く読めました。
興味のある方は、こちらからAmazonでチェックできます。
それでは、ここからが本題です。
2、アメリカがポンコツになった理由
(1)トッド教授の家族システム理論について
トッド教授は、アメリカのエリートが、再起不能なほどに、ポンコツになってしまった理由は、実は歴史的、宗教的な背景があると言います。
まず、最初に、トッド教授の理論について、簡単に解説します。
トッド教授の理論は、家族システム理論と呼ばれており、家族の形がどのようなタイプなのかによって、その国の文化や価値観の傾向が見えてくるというものです。
大きくは2つの切り口があって、それぞれ2種類あるので、2カケル2の4タイプに分けられます。
1つは、親子関係で、同居か別居かで分けられます。
成人しても、親と同居する場合は、父親のいくことを聞かなければいけないので、権威とか伝統に価値を置く傾向にあります。
逆に、別居の場合は、おっかない父親が近くにいないので、自由に価値を求める傾向になりますね。
日本は家制度が長い間続いてきていて、両親との同居が普通と考えていた時期が長いので、前者と言えるでしょう。
もう1つは、兄弟関係で、平等か不平等かで分けられます。
それがハッキリ出るのが、相続の時で、長子や末子に全部財産を相続させる文化もあれば、平等に相続する文化もあるので、これまた2種類に分けられます。
日本では、愚かな人のことを指す言葉に、「たわけ者」がありますが、この言葉の語源は、田を分ける者、つまり、相続の時に、子供に財産を分割する人を指すという説があります。
米の生産量が少なかった時代に、何人もの子供に田んぼを分けて相続させると、子の代、孫の代と進むうちに、食べ物不足になって、共倒れしてしまうということから、この言葉が生まれたというのです。
日本では、長子相続の伝統が長いのは、このような背景があるからだと思われますし、兄弟関係は不平等な文化だったと特徴づけられます。
兄弟間の不平等な地域は、世界的に見ると、北欧に多い傾向にありますが、それは、北に行くほど、穀物の生産量が少なくなることと、関係があるのかもしれませんね。
それで、この2つの軸で分類したのが、こちらの表になります。
日本は親と同居の、長子相続が長く続いてきたということで、直系家族に分類されます。このような文化の国は、日本以外ですと韓国やドイツ、スウェーデン、スコットランドなどの、北欧に近いところが多いですね。
一方で、アメリカやイギリスなどは、兄弟間では長子相続の伝統がありつつも、成人したら親と別居する文化なため、絶対核家族と分類されます。
父親の影響が強いので、教育水準が高くなりつつ、成人すると外に出されるので、新しいものを生み出しやすい傾向にあります。資本主義が盛り上がったのが、このタイプの国からなのも、納得ですね。
次に、中国やロシアは、同じ家族類型で、兄弟関係は平等なものの、親と同居する共同体家族と分類されます。この文化圏の中国とロシアは、独裁者のいる共産主義を経験していますが、それは、家族形態が統治スタイルと似ているからです。
親が独裁者、そして全ての子が、平等な国民という関係に対応しています。
そして最後に、フランスやスペイン、イタリア、あとは中南米などのカトリック諸国が多いのが、家族を持ったら、親と別居して、相続は兄弟平等という、平等主義核家族です。
カトリックは、人類皆平等を建前上掲げていますので、平等意識が強い、これらの国々は、宗教改革後も、カトリックを受け入れ続けたのだと思われます。
このように、親子という縦の関係と、兄弟という横の関係に対する考え方の違いによって、ものの考え方や価値観、何を大事にするのかが変わってくるというんですね。
(参考書籍)「エマニュエル・トッドで読み解く世界史の深層」
なお、この辺りの話は、「西欧の没落」では、あまり詳しく解説されていません。この辺りについて詳しく解説しているのは、鹿島茂先生の「エマニュエル・トッドで読み解く世界史の深層」が詳しいと思います。
(参考:Amazon「エマニュエル・トッドで読み解く世界史の深層」)
(2)アメリカの家族類型について
それで、アメリカに話を戻すのですが、アメリカは、親子関係は自由放任で、兄弟間は不平等な、絶対核家族に分類されます。
これを宗教的に見てみると、イギリスのプロテスタントである清教徒が入植したのが、アメリカの最初ですので、宗教的にはプロテスタントの国と言えます。
プロテスタントの国を見てみると、アメリカやイギリスなどの英語圏を除くと、ドイツや北欧に集中しています。
これらの国は、工業が発達している、いわゆる先進国と呼ばれる国が多いです。
では、なぜプロテスタントの国に先進国が多いのでしょうか?
その理由は、プロテスタントの国は、不平等を受け入れやすい土壌にあるからです。
先ほど、日本や北欧では、長子相続が多いと説明しましたが、生産量が少ない中世ぐらいまでであれば、ただの不公平な文化にしか見えません。
しかし、技術が進歩して、努力次第で成り上がれる世の中になってくると、不公平を受け入れやすい土壌の国ほど、「頑張れば報われる」という考え方を受け入れやすくなります。
だって、もともと、世界は不平等にできていると、家族関係や社会制度から教えられてきているわけですからね。
プロテスタントの予定説が、不平等を肯定した
もともと、プロテスタントとは、16世紀のルターやカルバンが宗教改革で、新たに立ち上げた流派で、カトリック教会が腐っているから、ということが背景にありますが、このプロテスタントが広がったのは、主に商工業が発達していたイギリスや北欧でした。
では、なぜ商工業が発達していた地域で広がったのか?というと、プロテスタントは、人間の不平等を肯定したからです。
それまでのキリスト教は、ローマ帝国が崩壊して、いろいろな技術が失われたため、文明水準が大きく落ち込み、生産量も減りました。
なので、一部の人だけが富を独占しようとすると、途端に社会が回らなくなってしまうため、「貧乏でも我慢しろ」「みんなで分け与えよ。じゃないと、地獄行きだぞ」という価値観で乗り切ってきたのです。
しかし、年代を追うごとに、技術も進歩して、生産量が増えてきたことで、都市部を中心に豊かになっていく人が増えていきました。
そういう人たちにとって、「貧乏でも我慢しろ」「みんなで分け与えよ。じゃないと地獄行きだぞ」という価値観はとても窮屈ですし、聖書が教える世界観と、社会が発展して豊かになる人が増えている状況という、宗教と現実とのギャップが大きくなって、違和感を持つ人がたくさん増えたのだと思います。
そこでカルバン派は、「神様は人間は不平等に作られた。でも、真面目に働いて豊かになるのはOK」と主張したのです。
この不平等を肯定する考え方を、予定説と呼びます。
神様は、天国に行く人と、地獄行きの人を、予め決めている、という理論です。ここですでに、人間は不平等だということが言われていますよね。
そして予定説では、誰が天国に行く人なのかを、人間は知ることはできないと言います。
つまり、それはカトリックの偉そうな司祭だろうが、法王だろうが、わからないということなのです。であれば、あとは自分の実感次第です。
だったら、頑張って仕事をして、社会に貢献して、金をもらって、豊かになっていけば、「俺はいいことをしている。だから、俺は神様に選ばれているはずだ」という自信が持てるじゃないですか。
だからこそ、商工業者が多く、世界は不平等でできていると学んできた北欧を中心に、受け入れられたわけです。
しかし、この理論には、神に選ばれているという基準はありませんから、ここまで豊かになったからもう大丈夫だ、という確信は持てません。なので、死ぬまで稼ぎ、富を築き上げようとすることになります。
このような、富に対する飽くなき欲求、そして努力が、資本主義の元になったというのが、マックス・ウェーバーの「プロテスタンティズムと資本主義の精神」という本の主張だと、私は捉えています。
なので、アメリカは格差が広がって大変だと言われていますが、それは、このようなプロテスタント的な考え方、つまり、人間は不平等なんだという考え方が続いてきたので、受け入れられやすいということなのです。
(3)アメリカの社会はどう変わってきたのか?
しかし、資本主義というのは、このような「①不平等を受け入れる土壌」と、「②富に対する飽くなき追求が、神に選ばれる条件であるという確信」から生まれたとしても、ほとんどの現代人は、宗教を信じていません。
そうするとどうなるのか?
トッド教授は、プロテスタント国家が、時代に応じて、3つの段階へと進んできたと主張しています。それがこちらの表です。
プロテスタントが宗教として信じられていた①の時期から、科学が発達して豊かになっていったことで、神の存在を信じない人が増えていった②のゾンビの時期、そして現在の③のゼロの時期に分けられます。
なぜ2015年がゼロの完成なのかというと、アメリカで同性愛が合法化されたからです。
プロテスタントやカトリックなどの宗教は、同性愛を禁じていますので、これが合法化されたことで、宗教が完全に無価値化したと判断したわけです。
私が重要だと感じるのは、それぞれの時期における、生きる意味です。
神が信じられていた①の時期は、現世での頑張りは、最終的に天国へ行けるかどうかという目標が意識の中にありました。
なので、宗教的なモラル、例えば、困った人を助けるとか、ズルをしないとか、神様がどこかで見ているということを考えると、ひどいことはなかなか出来ないという意識が働いていたと考えられます。
②のゾンビの時期においても、神様の存在は信じていなくても、技術の発達や人口の増加によって、社会は少しずつ良くなっていく方向にありました。なので、国が繁栄することは、自分たちの自信を高めることにつながったと思われます。国家が、国民の連帯感を作っていたんですね。
また、この時期は、黒人を差別することで、白人同士の団結心が強まり、平等が確保されていたと言います。
プロテスタントの「世界は不平等だ」という世界観が、そのまま当てはまる現実があることで、世界に対する違和感を感じずにすみ、そして、親世代から受け継いでいた、勤勉さや、高い教育が豊かさにつながるんだ、という教えを素直に受け止められていたと考えられます。
(4)プロテスタント・ゼロへ進んだアメリカの悲惨さ
ですが、1960年代から始まっている、プロテスタント・ゼロへの流れは、アメリカをかなり致命的な状況へ追い込んできました。
その特徴は、大きく3つあると思います。
①現実の否定
1つ目は、現実の否定です。
1960年代以降になると、公民権運動によって人種差別が悪となり、それまでの償い的な意味合いもあって、黒人やマイノリティを採用や大学入試で優遇する、アファーマティブアクションが導入されました。
これ自体は、アメリカにあった根深い差別を解消するという意味で、良いことであるのは間違いありません。
ですが、これによって、当時のエリート層を作っていた、いわゆるアングロサクソン系の白人で、プロテスタントを信仰する人たち、略してWASPと呼ばれる人たち同士の団結心や、共有していた理想、そしてモラルなどがなくなっていきます。
いろいろな人種や宗教の人たちが、エリート集団に入ってきたので、同じ理想を共有できなくなったからです。
また、アファーマティブアクションによって、それまで日の目を見てこなかったマイノリティの人たちは、実力がなくても、大学に入学できたり、昇進したりということができるようになりました。
例えば、今年に入ってから、LAで山火事が大変なことになりましたが、この当時の消防署の要職についていた多くの人が女性でした。こちらの画像は、消防署長、けんしゅう・支援局、そして公平・人材局の責任者です。
LA消防局の女性比率は約4%ですが、このような要職についている割合は、20%を超えています。つまり、女性だからと人事的に有利な昇進が行われていたのです。
そのため、そういう多様性に配慮した採用とか、教育研修にばかり予算が使われ、肝心の消化能力や水の確保をおろそかにした結果、大きく被害が広がったと批判されています。
トランプ大統領は、1月20日の大統領就任日に、こんなバカなことはやめる、実力主義の社会を復活させると言って、DEIを廃止するという大統領令に署名しましたが、それは、これまでの「現実の否定」をよしとする風潮を否定するという宣言だったと思います。
また、トランスジェンダーについても同様ですね。
XY染色体を持つ男性が、性転換手術をしたところで、XX染色体の女性に変わるわけではありません。子供が産めるようになるわけではないのです。
それなのに、性転換手術をすれば、男性が女性に、または女性が男性になれるというのは、現実の否定です。
トランプ氏は同じく就任日の大統領令で、アメリカには男と女の2種類の性別しかない、ということを公約化しましたが、これも否定されていた現実を復活させる動きだったと読み取れます。
②カネ中心の価値観に変わった
2つ目は、社会的に有用であることから、カネ中心の価値観に変わったということです。
1970年代に入ると、ニクソンショックもあって、米ドルが金と交換できなくなりました。
これによって、米ドルをいくらでも刷り散らかすことができるようになります。
つまり、今までのように、頑張っていい商品やサービスを作って、他国に売らなくても、米ドルという紙切れを渡すだけで、いくらでも世界中から商品を購入できるようになったのです。
また、その副作用として、製造業が衰退し、海外に工場が移転するようになったり、日本や中国のような新興国からの輸出品にシェアを奪われるようになっていきます。その一方で、米国債などの金融商品への需要は増える一方だったので、金融業が儲かる産業になっていきました。
こうなると、頑張って理系の大学に行って何か新しい技術を開発したりするよりも、法律や金融工学のようなものを学んだ方が、手っ取り早く儲かります。
その結果、アメリカ国内の大学生のうち、工学系のエンジニアを目指す人は7%程度しかいなくなり、製造業を含めた、社会を豊かにする産業の力が落ちていきました。
儲かったのは、金融という通帳の残高が増える商売と、ビッグテックだけです。
それ以外にも、アメリカは一人当たりの医療費が世界で1番高い国ですが、国民皆保険がなく、新生児の死亡率も先進国中最下位、平均余命も低下傾向、そして、悪徳製薬会社と医者が結託して、国内に致死率の高い麻薬である、オピオイドを蔓延させるなど、完全にモラルが破綻しています。
こんな感じで、社会を良くするとか、そういうモラルがほとんどなくなってしまったのです。
全てのビジネスは、金を稼ぐための手段としてだけあって、そのビジネスが社会をより良くするという貢献は、微塵も考えなくなってしまったのです。
③社会の分断と過激化
3つ目は、社会の分断と、破壊衝動の強化です。
ピューリサーチ研究所が、昨年、アメリカで重要な問題は何か?というアンケートをとったことがあります。それによると、インフレが1位でしたが、2位がなんと、他の政党支持者と一緒に働くことの難しさでした。
アメリカで社会が分断されてしまっている理由は、政党ごとに政策が違いすぎる点や、経済格差が拡大していること、人種間の反発など、いろいろと挙げられます。
しかし、この分断というのが、鮮明になってきたのは、2016年にトランプ氏が大統領選挙で当選してからです。
アメリカの大学では、暴力的な抗議活動が始まったのが、トランプ第1期が始まった2017年からでした。大学で講演会を開く際に、自分たちと考え方が違う人がスピーカーで出席するとわかると、暴力を使ってでも阻止しようとする学生が出てきたのです。
有名なのは、2017年2月に起こった、バークレー大学でのトランプ支持者であるヤノプルス氏の公演を阻止するために起こった暴動です。これによって、大学だけでなく、銀行の窓ガラスを壊す人も現れました。この流れは、その後も増え続け、2020年のBLM暴動へと繋がっていきます。
では、なぜこれほど暴力的な活動が、2017年のトランプ政権から出てきたのか?ネットやSNSの普及も大きな影響があると思いますが、最も根本的な理由は、自分たちがいじめる側、支配する側にいると思っていたリベラルが、いじめられる側のはずだった学歴のない白人男性から支配されることに、我慢ならなくなったからだと思われます。
先ほどの表を見てもらうと、それぞれの時期において、不平等な関係に置かれる人たちがいました。
①のプロテスタントの時期は、プロテスタントが上で、カトリックやネイティブアメリカンが下です。イギリスのピューリタンが最初に移住してきて、アメリカを建国したため、イギリス系のプロテスタントが主流派であり、それから遅れてきたカトリックの白人や、ネイティブ・アメリカンの人たちを迫害してきました。
②のプロテスタント・ゾンビの時期は、白人が上で、黒人が下です。
支配層がWASPと呼ばれる、白人が占めていましたし、奴隷として連れてこられていた黒人に対する偏見も根強く、黒人を下に見ることで、白人同士の一体感、平等意識が維持できていました
そして、現在の③のプロテスタント・ゼロの時期は、黒人や女性、マイノリティが多いリベラルが上で、低学歴の白人が多い保守層が下です。
公民権運動をきっかけに、人種差別が違法となり、それまでの白人の悪行を叩く流れが進み、特に保守系が多い低学歴の白人が、差別の対象となりました。
このように考えてみると、第1期、第2期のトランプ政権において、リベラル系の暴力が過激化しているのは、例えるならば、黒人への差別が根強く残っていた1960年代に、キング牧師が大統領になって、黒人政党が与党を取ってしまった時の、白人の反応なのではないかと思います。
1921年にオクラホマ州のタルサという街で、黒人の富裕層が住むコミュニティのグリーンウッドという地区を白人が襲撃して、300人以上の人が亡くなり、1万人近くの人の家がなくなりました。
これは、要するに、「黒人のくせに、俺たちよりも豊かに暮らしてるなんて、生意気だ」という感情に火がついて起こった事件です。その破壊ぶりは本当に凄まじく、襲撃にあった地区の家はほとんど焼け落ちてしまっています。
このような感じで、暴力的な現在のリベラルは、トランプ支持者を、当時の黒人をみるような白人の目線で、見下しているのでしょう。
だからこそ、「のび太のくせに生意気だ」的に、徹底的に叩くような反応をしているのだと思われます。
実際、昨年10月にあったハリケーン・ミルトンの被害救助にあたり、トランプ支持の旗や看板を掲げていた家に対しては、助けるなという指示を出していたというニュースも出ていました。
このような、困っている人をさらに足蹴にするようなメンタリティは、いじめっ子がいじめられっ子を徹底的にいたぶって楽しむものと変わりませんよね。
つまり、リベラルは、「トランプ支持者をこのように扱っても、許される。だって、俺たちはいじめる側なんだから」という差別意識が、ここにハッキリと現れているのです。
このように、アメリカは、宗教的な信仰や、モラルなどがなくなる一方で、差別意識だけは根深く残ってしまい、その時期その時期で、形を変えて、いじめる側といじめられる側を作ってきたと言えます。
そして、現在のトランプ政権をきっかけにした、社会の分断と暴力の増加は、いじめられる側が政権をとったことによる、いじめる側のヒステリーだと捉えるのが、正解に近いのではないかと思いますね。
まとめ
というわけで、ここまでをまとめるとこうなります。
・アメリカの社会は、プロテスタントとしての宗教意識や、労働倫理を当初は持っていたが、宗教意識が希薄になり、基軸通貨国として、米ドルという紙切れを刷るだけで、欲しいものが手に入るようになったため、真面目に働くのがバカらしくなる人が増えた
・その結果、金を中心に考える人が増えた。金のために人命を犠牲にする医療制度、社会正義のために、能力主義を捨てさせる活動家、人を騙しても金さえ儲かればいいという金融業など、社会を良い方向へ変えていこうという政治家や企業がいなくなった
・このような社会に変わっていくにつれて、高学歴や、黒人などのマイノリティという立場を利用したリベラル層がいじめる側になりり、低学歴の白人男性の多い保守層がいじめられる側になった。そして、トランプ政権が始まったことで、これまでいじめる側にいたリベラルな人たちが発狂している
ということになります。
4、ポンコツなアメリカ
こう考えると、ちょっと今のアメリカって、救いようがない感じがしますね。
現在、トランプ政権は、関税をうまく使って、アメリカ国内に工場を移して、雇用を増やそうとしています。私の動画では、このことを度々解説していますが、結構な頻度で、「そんなことをしても、アメリカが復活するとは思えない」というコメントをいただきます。
おそらく、コメントをしてくれる方は、このようなアメリカの現状を知っていたり、感じているのでしょう。
トッド教授の「西洋の没落」の中でも、アメリカの衰退ぶりを具体的に説明してくれています。
それらをいくつか紹介しますと、
・工業生産高の世界シェアは、1928年に44.8%だったが、2019年には16.8%まで低下
・そのうち、工作機械は6.6%しかなく、日本とほぼ同じ規模
・小麦の生産高は、1980年に6500万トンあったが、2022年は4700万トンにまで減少
・防衛産業の雇用者数は、1980年代に320万人いたが、現在は110万人と、ほぼ3分の1
・理系技術者の海外の労働者の比率は、2000年には16.5%いたが、2019年は23.1%に増加しており、海外の技術者への依存度が高まっている
と言った感じです。
スティーブ・ジョブズが生きていた2012年に、オバマ大統領が「アメリカでiPhoneを作ってくれないか」と要望したところ、iPhoneを作るための多くの部品が、中国や日本などにあるし、労働者の真面目さが違うといった理由で、それは無理だと回答したと言われています。
こう言った状況が、すでに10年以上前にあったわけですから、それを回復するのは、5年10年単位で必要となってくるのでしょう。
それ以上に深刻なのが、高学歴エリートやマイノリティを利用したリベラル層のイカレ具合です。これはもう、10年とか20年とか、そういう単位で見ていかないと、まともなリベラルは育たないのではないでしょうか?
また、この数十年間で、いい思いをしてきた、役立たずのリベラル層の性根を叩き直さないと、民主党が政権をとったら、また調子に乗って、世界中でいろいろとやらかすはずです。
トランプが壊すであろう、2つの仕組み
なので、もしトランプ氏が、本気でアメリカの復活を考えているのであれば、2つの仕組みをぶっ壊さないといけません。
①教育
1つ目が、教育です。
現在の大学は、リベラル派が大部分を占めており、共和党支持の教授がいない学部は全く珍しくありません。
じゃあ、リベラル派の教授が、何を教えているのか?といえば、白人はこれまで黒人を奴隷としてこき使ってきたとか、だから白人は、アメリカ社会では隅っこにいるべきだとか、いわゆる批判的人種理論と呼ばれるアホな理屈で洗脳させられているのです。
北朝鮮から脱北して、韓国そしてアメリカに移住した女性に、パク・ヨンミさんという方がいます。彼女は、2016年にコロンビア大学という、日本でいうところの早稲田慶應レベルの格の大学に入学したのですが、あまりにポリコレすぎて、北朝鮮にいた時よりも息苦しいと語っていました。
そういう状況が、今も続いているため、トランプ政権は、こういった狂った大学に対する補助金を次々と停止しています。ハーバードやコロンビアなど、東大、京大レベルの大学にもう金は出さねえと言ってるのです。
おそらく、今いる気狂いみたいな大学教授の半分ぐらいがクビになって、保守層の大学教授に入れ替えるまでは、このような状況が続くのではないかと思います。
そうしないと、人権とか、ジェンダーとか喚いて、真面目に働く白人や労働者をいじめる構図を壊すことができないですし、高学歴の人間に、真面目に働くべきだという、モラルが戻らないからです。
また、アメリカでは、小中高の教育も、崩壊しているようなので、ここの立て直しも急務となっています。
トランプ氏は、3月に教育省を廃止するように命じる大統領令に署名をしました。
最終的には、議会による承認が必要となるため、実現するには超党派の賛成が必要になりますが、職員数の削減や、機能を取り上げるなどの、いろいろな改革が行われています。
大学に行かなくても、真面目に働けば豊かになれるというモラルを若い人に身につけてもらうには、10年20年という時間がかかると思いますが、やらなければいけないことなので、この流れは変わらないでしょう。
②基軸通貨システム
そして、もう1つが、米ドルという基軸通貨システムです。
米ドルを刷りさえすれば、何でも手に入るという、今の状況を止めないと、真面目に働く人が増えませんからね。
なお、現在の関税政策は、米ドルを海外に出さないようにしようとしているので、部分的には基軸通貨システムの機能不全へと向かっているように思います。
しかし、これだけでは、おそらく足りません。
アメリカの産業別のGDPを見てみると、金融、保険、不動産のいわゆるFireと言われる3業種が占める割合は、年々上昇傾向にあり、2割を超えています。
株高や不動産価格の上昇で豊かになれるのは、一握りの人たちだけですので、ここの力を削がないと、真面目に働く人が増えていきません。
現在のトランプ政権は、関税をかけると言ったり、停止すると言ったりと、投資家を振り回しまくっていますが、最終的な目的が、国内の調子に乗った寄生虫業界を叩き潰すということであれば、これから起こるのは、間違いなく、株式市場の暴落と、ドル安、不動産安でしょう。
お金持ちの支援者の多くは反対するでしょうが、もしトランプ氏が、本当にアメリカを建て直したいと考えているのであれば、ここを壊すのではないでしょうか?
なお、トランプ政権は、政府効率化省を立ち上げて、政府の無駄な支出の削減を進めていますが、そこで浮いたお金を来年以降に、納税している世帯に、5,000ドル、約70万円を還元する予定だそうです。
大部分の低所得層にとっては、株高よりも現金の方がいいに決まっていますから、これで来年の中間選挙を乗り切るつもりなのでしょう。
そうすると、今年はガッツリと株式市場を下げてもいいだろうと考えているような気がしますので、やはり今年は、要注意だと思います。
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