【1ドル120円シナリオ】トランプが中国と絶縁して得する3つのメリット | イエ&ライフ

【1ドル120円シナリオ】トランプが中国と絶縁して得する3つのメリット

コラム

この記事では、「1ドル120円シナリオの検証、2025年5月版。基軸通貨制度の変更に気をつけろ」ということで、やっていきたいと思います。

 

1、はじめに

昨年11月から月1ペースで解説を続けている、1ドル120円シナリオの検証シリーズの7回目で、今回は2025年5月版になります。

始めた当初は、154円ぐらいでしたので、10円ほど円高ドル安に進んできています。

 

 

特に、先月の4月2日に出されたトランプ相互関税によって、米国市場は、株式、為替、米国債のトリプル安に見舞われました。

ドル円も一時は、140円割れまで円高に進みましたし、日経平均も、もう少しで3万円を破れるところまで行きました。株価はそこから2割ぐらい戻していますが、ドル円はこの記事を作っている、5月7日時点で143円台と、3円ほどしか円安になっていません。

 

トランプ政権は、日本も含めて、貿易交渉を行っており、多少は関税率の引き下げもありそうだということで、今のところは、落ち着いていますが、今後はどうなっていくのでしょうか?

この記事では、トランプ政権が目指している、新しい経済システムへの動きを考察していきながら、今後のドル円相場について、予想していきたいと思います。

それでは、参りましょう。

 

2、私の「1ドル120円シナリオ」の根拠

まず最初に、私が以前から1ドル120円まで円高になると言っている理由について、簡単に説明したいと思います。

先月の相互関税によって、気づく人が増えてきたのではないかと思いますが、トランプ政権は、米ドルという基軸通貨システムを止めようとしています。

 

この基軸通貨システムとは、簡単にいうと、「アメリカはドルという紙切れをくれてやるから、他の国は、俺様に色々な商品やサービスを売り込みに来い」というシステムのことです。

このシステムのデメリットは、金融業などの一部の業種では、儲かるものの、他の国と競合状態になる製造業では、どんどん衰退してしまうということです。

 

実際、アップルのiPhoneなどを見て貰えばわかりますが、設計するのはアメリカの本社ですが、工場があるのは、中国などの人件費の低い国です。

こんな感じで、一般庶民にとって、今の状況というのは、安い賃金で働く場所しかなく、金融やITのような、賢そうな人がやる商売以外では、なかなか豊かになれないのです。

 

(参考:Forbes)

 

その結果どうなっているのか?というと、軍事力が落ちてきています。アメリカでは、造船業が実質的に停止してしまい、軍艦の建造や修理もままならないのです。

また、もう少しで停戦に向かいそうなウクライナ戦争ですが、昨年の時点で、すでにウクライナ軍は弾薬不足に悩まされていました。

 

本来であれば、36万発分の155mm砲弾が必要だったにもかかわらず、アメリカ国内の製造能力は、わずか月産3万発だったというのです。

その後、順次、製造能力は引き上げられているものの、2025年現在でも月産10万発分の砲弾が作れるかどうかということで、もし、台湾有事が起こった場合には、1週間で弾薬を使い切ってしまうと言われています。

 

こんな感じで、ただ米ドルを刷り散らかして、「俺のところに、いい商品とサービスをもってこい」と偉そうなことを言い続けていたために、いざという時に、国を守る国防力や、必要なものを自国で作る能力が、まるで無くなってしまったのです。

そのため、アメリカ国内の製造業を復活させるには、今までアメリカにどんどん輸出してきた国との貿易を減らして、アメリカ国内に工場を作らせなければいけません。

 

だからこそ、トランプ政権は、相互関税を発動したのです。

「アメリカで商売したいなら、アメリカの工場を作れ」「関税を下げて欲しいなら、輸出に有利な通貨安政策をやめろ、日本は円安政策をやめろ」というわけですね。

 

私が、1ドル120円になるだろうと予想しているのは、このような、アメリカからの圧力によって、1985年のプラザ合意のような、政治的な合意によって、為替レートが円高になってしまうだろうと思っていたからです。

2月の日米首脳会談で、貿易赤字の削減ではなく、解消と言っていた時点で、その本気度はすでに現れていましたが、先月ついに世界中が思い知らされた、というのが、私の見方です。

 

3、相互関税後の3つの動き

では、相互関税を宣言してから、世界中の国々は、どのような動きをしていたのでしょうか?私が気になったポイントは3つあります。

 

(1)各国が通貨高政策に動き出す

1つ目は、アメリカと個別に交渉している国が、通貨高政策へと舵を切ってきた、ということです。

相互関税発動後、米国政府は、中国を除く、主要貿易相手の17カ国と交渉を進めています。ベッセント財務長官によると、今週内にも、合意に至った国との内容について発表すると発言しています。

 

(参考:日経新聞)

 

このような中で、5月に入って、台湾ドルが急騰しています。

これは、アメリカからの通過切り上げ要請を受けてのものだと報道されています。

台湾は、日本の熊本でも工場を作ったTSMCという半導体企業が、世界中に輸出をして外貨を稼いでおり、アメリカとの貿易黒字もものすごいことになっています。

 

トランプ政権は、貿易黒字の国に対して、「お前ら儲けすぎだ、通貨を切り上げることで、貿易収支を改善しろ」と迫っているので、それを受けての動きと言えます。

トランプ氏は、2月に相互関税をかけると発表したときに、貿易相手国の関税率だけでなく、為替水準、消費税を通じた補助金、アメリカからの製品を輸入しにくくする法規制などをもとに、関税を上げるとしていました。

 

結果的に、関税率の計算方法は、貿易赤字を輸入額で割る、という相互関税とは名ばかりの計算式ではありましたが、「とにかく、そっちだけが儲かっている状況をなんとかしろ」ということなので、消費税の減税や、法規制の緩和などの、議会を通さないと進まないものよりも、効果が大きくて、赤字解消となるのは、為替介入です。

つまり、日本で言えば、円買い介入ですね。

 

これを台湾政府が、先駆けてやったということなので、おそらくですが、この動きに追随する国は出てくると思われます。

 

日本もやりそう

最近、日本では、加藤財務大臣の発言を「米国政府を脅すために、米国債の売却はしない」という感じで報道されていますが、「円買い介入のために、手持ちの米国債を売却する」ということについては、否定していないようです。

 

(参考:ブルームバーグ)

 

なので、私はこれから本格的に、円買い介入が始まるのではないかなと予想しています。

 

(2)中国の脱ドル化の動き

2つ目は、中国の脱ドル連合の囲い込みです。

4月2日にトランプ相互関税が発表されて、マーケットが大きく動揺した後、8日に中国を除く国々への90日間の期間延長が発表されました。

 

(参考:WSJ)

 

この期間延長によって、日本を含めた国々が、アメリカと交渉を行っているわけですが、中国はアメリカと報復関税合戦となっており、それぞれ125%、145%の関税率にまで跳ね上がっています。

また、アメリカは、各国との関税交渉の中で、中国との取引をやめるように要求もしていると言われています。

 

これを受けて、中国は、各国に対して、アメリカの要求に屈して、中国との貿易を減らそうとするなら、報復関税をかけると発言しています。

 

(参考:CNN)

 

さらに、今回の90日間の延長が切れる日は、なんと7/6~7/7の、BRICSサミットの開催日にあたっています。

これらのことを総合して考えると、現在の交渉期間というのは、単にアメリカと交渉することで、関税を引き下げてもらう期間ではないのです。

 

アメリカにつくのか、それとも中国につくのか、という踏み絵を迫られている期間として捉えるべきだと思います。

実際、中国は、このように捉えていて、習近平国家主席は、ベトナムやカンボジア、マレーシアに訪問し、アメリカに負けないように、協調関係を構築していってます。

 

このように、ここ1ヶ月ぐらいの、米中関係を見てみると、中国とアメリカは、全く別の経済圏を作る準備に入ったと考えた方がいいと思います。

 

(参考:Wikipedia)

 

そして、おそらくですが、相互関税の延長期限であり、BRICSサミットの開催日である7月6日~7日には、BRICS諸国は、米ドル以外の通貨での貿易体制をさらに進めると発表するでしょう。

それに対して、トランプ政権は、「米ドルを使わないで貿易するなんてけしからん、お前らには、関税を100%追加発動するからな」と発表するでしょう。

 

(参考:ロイター)

 

すでに、こういった発言を以前からしているからです。

そうなると、BRICS諸国は、本当はアメリカとも貿易関係を維持したいのに、トランプがそれを許さないから、という大義名分ができるので、堂々と脱ドル化が完成する、という流れになると予想されます。

こうなると、世界貿易に占めるドルのシェアはさらに下がるため、ドル安が進みやすくなると考えています。

 

(3)ユーロダラーが追い込まれてる?

そして、3つ目が、ユーロダラーの行方です。

先月から今月にかけて、激しく動いたのは、為替やドル円相場だけではありません。一番大きかったのは、金だったと思います。

 

 

一時は、1オンスあたり3500ドルを超え、日本でも一時は、1キロ1700万円を超えました。その後、1割ぐらい下がって、3200ドルを割りましたが、すぐに戻して、現在また3400ドル前後まで回復しています。

 

なぜ金がこのタイミングで上昇したのか?

それは、トランプ相互関税で、米ドルに対する信任が崩れてきた、という見方もありますが、もう1点、あまり語られていないのが、ユーローダラーの行き場がなくなるという可能性です。

 

ユーロダラーとは、アメリカ国外で流通しているドルのことです。

これまで、米ドルが世界の基軸通貨として使われてきたので、各国は貿易のためだったり、いざという時のために、米ドルを溜め込んでいました。

 

(参考:Mitrade)

 

日本ですと、財務省が外為特会という特別会計で200兆円近くの外貨を保有していますが、その大半がドルと言われています。

 

このような、海外で保有されているドルは、国が持っているだけでなく、投資家や金融機関、企業なども保有しています。

そして、その額は、なんと13~14兆ドルとも言われています。日本円で2,000兆円とか、そういうレベルなのです。

 

このお金が、各国が原油や資源を輸入したいときなどに、使われていたわけです。

ですが、今回米中貿易戦争がさらにエスカレートして、BRICS諸国が米ドルを使わない貿易体制に移ったとしたら、どうなるでしょうか?

この、米国外にあるユーロダラーって、使い道がかなり減ると思いませんか?

 

例えば、日本が円でもドルでも使える国だったとしましょう。そして、私が現金で1万ドル、約140万円のドルを持っていたとします。

このドルを使って、日々生活をしていたのに、いきなりドルが使えなくなったらどうなりますか?

それが生活費であれば、ドルから円に変えるでしょう。この動きは、円高ドル安に向かいます。

 

では、ドルで資産運用をしている人なら、どうでしょうか?

日本でドルが使えていたのが、使えなくなるのであれば、持っているドルを誰かに貸して、利息を取ることもやりにくくなります。借りたい人が減るからです。

なので、そうすると、ドルを必要とするアメリカに投資するか、金やビットコインなどの、他の資産へとお金を移す可能性が上がるでしょう。

 

特に、ドルが使える場所が減るのですから、ドルに対する信用も下がるという不安も生まれますからね。

また、私が参考にさせていただいている、銀silverゴールドchさんの最近の動画で、とても興味深い内容のものがありました。

 

(参考:YouTube「銀silverゴールドch」)

 

なんと、21兆ドル、約3,000兆円ものお金が、アメリカ政府の帳簿から、消えているというのです。

気になる方は、概要欄にリンクを貼っておくので、チェックしてみていただきたいのですが、要するに、アメリカの裏側にいる人たちが、こっそりとドルをどっかに持っていってしまった、というんですね。

 

国内の金融機関にお金が預けているのであれば、財務省などの監督官庁が調べてみつけられるでしょうから、おそらく、海外に逃しているのでしょう。ということは、これらのお金もユーロダラーになります。

先ほど説明した、13~14兆ドルのユーロダラーと、どれだけ重複分があるのかわかりませんが、隠して外に出したのであれば、足すと5,000兆円ものドルが、海外に滞留していることになります。

 

現在、アメリカは、36兆ドルもの政府債務を抱えていて、いつデフォルトになるか分からないと危機感を持っている人は結構います。

FRBのパウエル議長も、この状況は長く続かないと言ってますし、ベッセント財務長官も、財政赤字は深刻な問題だと捉えています。

 

(参考:Telegraph)

 

しかし、今回の相互関税によって、BRICS諸国と絶縁することで、アメリカ以外のほとんどの国で、ドルが使えなくなったら、どうなるでしょうか?

運用先に困ったユーロダラーは、アメリカに戻るしかなくなりませんか?

 

そうなれば、真っ先にお金が向かうのは、米国債です。

トランプ氏は、パウエル議長に金利を下げろとプレッシャーをかけていますが、何千兆円というユーロダラーが米国債に殺到すれば、金利は下がります。

そうなると、他の国との金利差がさらに縮まりますので、円高になりやすくなります。

 

または、こっそりと外に出した金ならば、金やビットコインなどの、持ち主がわかりにくい商品にお金が流れるかもしれません。というか、すでにそのようにして、金もビットコインも上がっているのかもしれません。

ここ1年ぐらいの金価格とドル円相場の関係は、ほぼ逆の動きになっています。

金が上がると、ドルに対する信任が下がっているような印象を受けるので、ドル安に向かい易いのでしょう。

 

また、ビットコインに資金が流れると、暗号通貨の決済通貨に使われるテザーやUSDCなどの、ステーブルコインの残高が増えます。

 

 

ステーブルコインとは、証券会社で株を買うときなどに、一時的に資金を預けておくMRFと呼ばれる金融商品と同じようなもので、要するに、預けている間はちょっとだけ利息がつく、という商品となっています。

 

では、ステーブルコインは、何で運用しているのか?というと、主に米国債なのです。

そのため、ビットコインなどの暗号通貨へ投資する人が増えれば増えるほど、間接的に米国債を保有する人が増えるのです。

 

(参考:Forbes)

 

トランプ政権は、暗号通貨大国を目指すということで、暗号通貨を押していますが、その一つの理由として、米国債の安定保有者を増やせるというメリットもあるんですね。

このように、相互関税を活用して、米ドルを使える範囲を狭めることで、ユーロダラーが米国債に戻ってくるか、金やビットコインしか行けないように仕向けることで、財政問題を解消または、延命させて行こうとしてるのではないかと思います。

 

なので、現在のトランプ相互関税は、いろいろな目的とメリットがあって、行われていると理解した方がいいと思います。

当面の注目点は、7月のBRICSサミットにかけての、米中の動きですね。

アメリカがどれだけ中国を突き放そうとするのか?

中国がそれを見越して、どれだけBRICS諸国との関係を強化するのか?

が重要なポイントになりそうです。

 

 

そして、その先には、米ドルとBRICS通貨という、2つの別々の経済圏ができあがるのではないかと予想しています。

 

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この記事を書いた人
ゴトウ

証券会社で12年間勤務。営業と店舗マーケティングに従事後、2018年から当サイト「イエ&ライフ」を運営しています。

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