今回の記事は、「LA、そして伝説へ。トランプが刺激する、不法移民対策で、民主党の地盤が地獄の展開」ということで、やっていきたいと思います。
1、はじめに
日本のメディアでも、大きく報道されていますが、今LAがとんでもないことになっています。
ことの発端は、6月6日に移民関税執行局、通称ICEが、ロサンゼルス市内の4カ所を一斉捜査し、不法移民や抗議者100名以上を逮捕、勾留したことでした。
これに怒った抗議者1,000名以上が、逮捕者を勾留していた連邦政府ビルを取り囲み、職員を襲撃し、タイヤを切り裂いたり、落書きをしたりして抗議しました。
また、自動運転車のWEIMOを壊して落書きするなどの映像も出回っています。
その後も抗議活動は、過激化し、トランプ政権は州兵を2,000名、海兵隊を700名投入することを決めました。
それでも、抗議活動は収まらないため、さらに追加で2,000名の州兵の投入を予定しています。
一方で、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事や、LAのカレン・バス市長はこれに反発し、連邦政府による介入に対して提訴をしているような状況です。
今回の動画では、LA暴動が、なぜ起こったのか?そして、これからどうなるのか?ということについて、考察していきたいと思います。それでは、参りましょう。
2、LA暴動が起こった背景
まず最初に、今回の暴動が起こった背景について、押さえておきましょう。
ポイントは3つあります。
(1)アメリカの移民政策
1つ目は、アメリカの移民政策についてです。
アメリカは移民の国と言われていますが、移民の受け入れ人数については、時期によって大きく波があります。
こちらの表は、アメリカの1850年から2023年までの移民の数です。オレンジ色が移民の割合ですが、1930年から1970年ごろまでは、移民の受け入れをかなり減らしていました。
それが変わってきたのは、1980年代からです。
80年代は、中南米で民主化が進められたものの、経済的には債務危機が起こったりして、貧困から逃れるために、アメリカへ移民が流入するようになりました。
これを受け入れるために、カトリック教会や市民団体が中心となって、聖域都市運動を展開していきます。サンフランシスコが、アメリカで最初の聖域都市を宣言し、不法移民に対する連邦政府の捜査に協力しないようになりました。
それがどんどん拡大し、現在では、カリフォルニア州全体が聖域都市となっています。こちらの地図のうち、青色が賛成の州で、赤色が反対の州です。
西海岸、東海岸、そしてシカゴがあるイリノイ州など、主に大都市があるところの州では、聖域都市に賛成しているところが多いですね。
その結果どうなったのか?というと、これらの大都市を要する州では、民主党が政権を取るようになりました。
(参考:wikipedi「アメリカ合衆国大統領選挙の州別結果」)
こちらの表は、大統領選挙で、どちらの政党が勝ったのかを時系列で整理したものです。
🔴が民主党が勝利した年なのですが、1988年または92年以降、すべての年において、民主党が勝利しています。
そもそも、民主党の支持基盤は、労働者が中心となっていましたが、日本や西ドイツなどの敗戦国が経済復興し、アメリカに輸出をガンガンやってきたため、70年代のあたりから、製造業の衰退が進んでいきました。
その結果、民主党の支持基盤となる労働者層が弱体化したため、移民を受け入れることで、その支持基盤をシフトさせていったんですね。
バイデン政権でも、移民をガンガン入れてきた
バイデン前大統領の就任初日に、トランプ氏が作ったメキシコ国境との壁を撤廃する大統領令に署名し、その後も、不法移民を無茶苦茶入れて、アメリカ国内に大混乱を引き起こしました。
その理由は、これらの不法移民を入れて、その後なし崩し的に選挙権を付与して民主党の支持基盤を安定させるという目的があったわけです。
今回の暴動を受けて、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事や、LAのカレン・バス市長は、トランプ政権へ協力的ではなく、むしろ批判をしています。
それは、カリフォルニア州、そしてロサンゼルスという街が、不法移民を当てにしてきた街なので、それに協力してしまうと、移民の支持基盤を失ってしまうと考えているからなのでしょう。
(2)不法移民に依存した経済システム
2つ目は、不法移民に依存した経済システムが出来上がっている、ということです。
不法移民として入ってきた人たちは、アンドキュメンテッド・ミグラント、つまり書類上の登録がされていない人たちとも呼ばれています。
そのため、たとえば、最低賃金などの政府が決めたルールに従う必要がないため、かなり安い賃金で働かせることが可能になります。
こちらは、2017年の日経の記事ですが、相場の3分の1で雇えるというわけですから、企業としては、選ばない理由はないですよね。
しかし、これで割を食うのは、元からいるアメリカ人労働者です。
さらに、カリフォルニア州では、住宅の供給数が圧倒的に少なく、不動産価格と家賃の高騰が止まりません。
州政府は、年間30万戸以上の供給を目標として掲げていますが、実際の建設数は10万戸程度であり、まったく足りない状況が続いています。
そのため、家賃が払えない個人、家族が追い出されて、ホームレス数も増加傾向にあります。カリフォルニア州は、薬物による死亡者数も多いですが、それは、このような殺伐とした環境にあるからなんですね。
(3)トランプ政権の不法移民対策
3つ目は、トランプ政権の不法移民対策です。
1月20日の就任初日から、不法移民の強制退去や保護的な措置の撤廃を行い、犯罪者を中心に逮捕摘発を進めてきました。
さらに、2月には、滞在2年未満の不法移民は、裁判なしで強制退去を可能にしたり、5月には、逮捕者数がなかなか増えないことにブチギレて、1日3,000人のノルマに引き上げて、成績の低い担当者を首にすると発表しました。
これによって、移民関税執行局もケツに火がついたため、手っ取り早く実績があげられる大企業への捜査を増やしているようです。
今回の抗議活動は、実は2月からすでに始まっており、この頃はまだここまで過激ではありませんでしたが、当局の捜査が厳しくなってきたことに合わせて、抗議活動もエスカレートしているように見えますね。
トランプ政権は、不法移民摘発をさらに厳しくやる
というわけで、ここまで、LA暴動が激しくなったのか、そしてその背景について見てきましたが、では、これからどうなっていくのでしょうか?
おそらくですが、トランプ政権による取り締まりは、今後さらに強化されていくと思います。
というのも、今のペースでは、不法移民問題が全然解消されないからです。
トランプ政権は、移民執行関税局に、毎日3,000人逮捕しろとハッパをかけていますが、100%達成したとしても、1ヶ月に9万人です。
2022年時点の調査では、不法移民は1,200万人いると推計されていますし、その後もバイデン政権は、不法移民をどんどん入れまくって、治安の悪化が進みましたので、おそらく2,000万人近い不法移民が、現在のアメリカ国内にいると考えられます。
つまり、仮に月に9万人捕まえて、本国へ送り返すとすると、1割減らそうとしても2年、全員送り返そうとすると、20年近くかかるのです。
なので、逮捕のノルマはさらに上がっていくはずですし、LAの暴動はさらに過激化していくのではないかと思います。
3、アメリカでこれから起こる2つの大変化
そして、それによって、2つの大きな変化が起こると考えています。
(1)不法移民に依存した経済システムの崩壊
1つ目は、不法移民に依存した経済システムが崩壊する、ということです。
4月に出されたトランプ相互関税もそうでしたが、今回のトランプ政権は、アメリカ国内に雇用を取り戻すことを公約に掲げて、実行に移しています。
日本や中国などの輸出してくる国に対して、高い関税をかけることで、海外からの商品が入ってくる量を減らし、国内で作られた商品で経済を回すことによって、雇用を増やそうとしているわけです。
しかし、不法移民に安い賃金で働かせたままでは、その効果も半減します。
お隣のメキシコは、アメリカに出稼ぎに行ったメキシコ人による仕送りが、GDPの3.5%にもなると言われています。
これでは、アメリカ国内でお金が回らないため、経済が良くなりません。
なので、海外に仕送りをする不法移民ではなく、アメリカ国内で働いて、アメリカ国内でお金を使うアメリカ人を増やそうとしているのでしょう。
大企業の安売り企業は、かなり影響を受ける
これによって、最低賃金以下で働く労働者がいなくなれば、人件費が値上がりしますから、商品やサービスの価格も上がりますので、安売りを全面に出しているウォルマートのような大企業は影響を受けます。
実際、ウォルマートは、今月に入って、トランプ政権による不法移民の雇用に対する規制が厳しくなったことで、一部店舗で解雇したというニュースが出ていました。それ以外にも、ディズニーも解雇を実施しており、これまでのような、ズルができなくなっていくようです。
そのため、ウォルマートの創業一家のクリスティ・ウォルトン氏が、今回のLA暴動をさらに拡大していこうと、6/14に「no kings」というデモへの参加を呼びかける広告を出しています。
不法移民が雇えなくなると、困るので、必死になって、トランプ政権に嫌がらせをしているのでしょう。
なお、この14日のデモは、全米各地で行われ、世界中でも開催される予定のようですが、おそらく、あまり効果はないと考えられます。
というのも、反トランプのデモは、政権発足以降、毎日のようにどこかしらで行われているものの、それで何かなったわけではないからです。
Wikipediaで、「ドナルド・トランプに対する抗議活動」というページがあるのですが、
そこにまとめられているものを数えてみると、
1月は2日、
2月は10日、
3月は24日、
4月は21日、
5月は22日、
と、3月以降は、ほぼ毎日のように、どこかしらでデモが起こっていますが、政権運営に影響は出ていません。
今回のLAの暴動も、ここまで焼き討ちのような騒ぎになったので、州兵や海兵隊の派遣まで大ごとになっていますが、だからと言って、これによって、不法移民の逮捕者が減っているわけではありません。
ニューサム知事も、バス市長も、トランプ氏を非難してはいるものの、不法移民の取り扱いをグレーにすることで、構築してきた経済システムですし、不法移民の犯罪も社会問題となっているわけですから、政府の介入の口実は十分にありますので、口ではギャーギャー喚くものの、何もできないでしょう。
(2)民主党の支持基盤の大都市が崩壊
2つ目は、民主党の支持基盤の崩壊です。
1968年にニクソンは、大統領選挙で、民主党が地盤だった南部を共和党支持に変え、勝利しました。
この背景には、公民権運動によって黒人の権利が認められたことで、南部の黒人が民主党に加盟したことを嫌った白人支持層を取り込めたからです。これは南部戦略と呼ばれています。
このように、それまで民主党の牙城だと言われていたところでも、その支持層を分断することができれば、共和党支持に傾けることが可能なのです。
今回のLA暴動は、過激化して極左に偏りすぎてる
それで、今回のLAの暴動なのですが、かなり左翼的な思想に偏っているように思います。
メキシコの国旗を振り回してる暴徒の画像が、たくさん出回っていますからね。
さらに、メキシコの上院議員が、今回のLA暴動を受けて、「1830年代の国境に基づいて、国境の壁を建設する。」とも発言して、プロレスに参戦しています。
流石に、カリフォルニアに住んでいて、メキシコ人とも仲良くやっているアメリカ人であっても、メキシコに領土を返すべきだなんて言う人はいないでしょう。
つまり、これからLAは、
①不法移民の権利を守るために、メキシコ国旗を振り回して、そこらじゅうで暴れ回る民主党支持者と、
②それはやりすぎだろと思う民主党支持者
とで、さらに分かれると予想されます。
そして、そのうちの穏健派の方が、共和党に流れるのではないか?というのが、私の見立てです。
今はまだ、、、と思うが、トランプは今後も激しくやる
今はまだそんな兆候はないと思われるでしょう。
ですが、トランプ政権は、今後も不法移民の摘発を行いますから、それに抗議する人、過激な人は、さらに増え続けます。
また、現在の民主党は、2020年のBLM暴動で調子に乗っているため、警察や消防署などの予算をどんどん減らしてきました。
その結果、LAでは、1月に複数の地域で山火事が起こり、大惨事となりました。
この山火事が起こった当時、カレン・バス市長は、アフリカに視察に出て行っており、前年は消防署の予算を27億円削減して、消化活動が思うようにいかない原因を作っていました。
そのため、お前はもう市長をやめろ、というリコール署名が13万人分も集まるほどに、信頼が失墜しています。
今回のLA暴動への対応を見ても、メディアは平和的な抗議だとか、今でも誤魔化してますし、警察も積極的に活用しておらず、山火事も消せないし、治安も維持できない、ポンコツぶりが露呈していますので、さらに信用が失墜していくはずです。
つまり、トランプ政権の不法移民対策によって、
・過激派はさらに過激化して治安を悪化させ
・それに対応できないカリフォルニア州政府やLA市長の信頼がさらに失墜する
ということが起こると予想されます。
それと、おそらくですが、これはNYやシカゴなどの、他の聖域都市の大都市にも波及していきますので、これらの民主党地盤の大都市では、今後さらに抗議活動が激化し、市民をウンザリさせることになるでしょう。
なので、アメリカはこれからさらに大混乱に陥るのではないか?と予想しています。
そして、これほどの荒療治の先にあるのは、
・アメリカ国内の雇用を増やし、ブルーカラーでもまともな給料がもらえる経済システムへ変える
・さらなる物価の上昇
・そして、民主党の衰退
ということなのでしょう。
今後のアメリカ社会の動きについては、このシナリオを基本としながら、追いかけていきたいと思います。
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