この記事では、「トランプ効果でひっくり返る5つの国」について、見ていきたいと思います。
11月のアメリカ大統領選挙で、トランプ氏が当選して1ヶ月半ほど経ちますが、その間に、アメリカと仲が良かった、先進国やそれに準じた国ほど、大きな混乱に見舞われています。
1、先進5カ国の崩壊ぶり
まずは、各国の政権が崩壊している状況を簡単に見ていきましょう。
(1)ドイツ
ドイツは、11/6にショルツ首相が所属する自由民主党(FDP)のクリスティアン・リントナー前財務大臣を辞めさせました。
リンドナー氏は、移民に対する給付や、ウクライナへの軍事支援を減らすように主張しており、これがショルツ氏の気に入らなかったのでしょう。
これによって、社会民主党、緑の党、FDPの3党連立政権が崩壊しました。12月16日に行われたショルツ氏の信任投票が否決され、議会が解散され、来年2月に解散総選挙が行われます
(2)フランス
フランスは、12月5日に、内閣不信任案が可決され、首相のミシェル・バルニエ氏が辞任しました。もともと、7月の総選挙では、マクロ大統領が率いる中道政党は、大負けしたのですが、左派と組んで連立与党となりました。
しかし、首相は、少数になったマクロン大統領のいる中道政党から指名されたため、第1正当になった左派連合が騙されたとして、ルペン氏率いる国民連合と組んで、今回の内閣不信任案に至ったようです。
これで、左派が首相にならなければまとまらない状況となっています。
(3)イギリス
イギリスは、7月に左派の労働党が与党となり、スターマー首相が就任初日に、不法移民に対する退去命令を撤回しました。
これによって、不法移民がさらに増え続け、治安も悪化し続ける状況となり、総選挙を求める署名運動が盛り上がっており、11月下旬時点で署名が200万票を超え、議会で審議せざるを得ない状況に追い込まれています。
(4)カナダ
カナダは、12月15日に、日本でいうところの、国土交通省の大臣であるショーン・フレイザー氏が辞任し、翌日の16日には、財務大臣のクリスティア・フリーランド氏が辞任することをXに投稿しました。
これらの閣僚の辞任を受けて、トルドー首相は、辞任をするか、議会の閉会を検討していると報じられています。
(5)韓国
お隣の韓国では、ユン大統領が戒厳令をしこうとして失敗し、現在弾劾の手続きが取られている最中です。
もともと、ユン大統領の当選時も、対立候補に僅差で勝ったものであり、議会は、野党の共に民主党が第1政党となっており、与党の政策が否決されやすい状況にあります。
今回の戒厳令も、ちっとも与党案が通らないことや、閣僚に対する「辞めろコール」にあたる、弾劾裁判が止まらないため、ついにキレてやってしまった感が強いです。これによって、大統領の辞任と再選挙の可能性が高まっています。
2、なぜ、これほどの国で崩壊が起こっているのか?
と、こんな感じで、どこの国でも、政治が乱れに乱れてきているわけですが、なぜ、トランプ氏の勝利が確定しただけで、これほどの国々が、崩壊してきているのでしょうか?
私が思うに、理由は大きく3つあります。
(1)ウクライナ戦争終結に伴う、ツケの精算
1つ目は、ウクライナ戦争終結の可能性が高まったことです。
2022年2月から始まったロシア・ウクライナ戦争によって、NATO諸国は、ウクライナを応援するために、軍事支援だけでなく、医療や、難民への生活支援など、さまざまな経済的な負担がしてきました。
キール研究所の調査によると、米国が最も多く、約15兆円の支援を行なっており、ドイツは約8兆円、イギリスも3兆円、日本も1.5兆円の支援をしています。
ちなみに、日本は支援額で6番目に多く、なんでこんなに払っているのか?全く意味がわかりません。
しかも、今年2月に、ジャーナリストのタッカー・カールソン氏とロシアのプーチン大統領のインタビュー動画が公開されました。
このインタビューの中で、2022年2月に戦争が始まり、その年の5月には、ロシアとウクライナは停戦交渉を始めたが、イギリスのボリス・ジョンソン元首相がウクライナにやってきて、和平をぶち壊したと語っていました。
これを受けて、ボリス・ジョンソンは激しく否定しており、真相は闇の中です。
ですが、戦争開始から2年以上経っており、多くの国がウクライナに対して財政支援を続けられない状況に来ています。
そして、もしあの時に、ボリス・ジョンソンが邪魔をしないで和平ができていたら、現在の高い電気料金を払う必要もないし、ウクライナからの移民が大挙して押し寄せてくることもなかったし、軍需産業だけ儲かって、一般国民は物価高で苦しむこともなかったはずだと、考えている人は多いと思います。
戦費の浪費のしわ寄せが、増税として返ってくる
こういう潜在的な不満がある中で、各国は、財政的に厳しくなっているため、増税をするか、社会保障などの支出を削減するかしない状況に迫られています。
ドイツのリントナー財務大臣、フランスのバルニエ首相、そしてカナダのフリーランド財務大臣の辞任は、このように財政が苦しくなっている状況で、増税や年金の減額など、与党が国民に皺寄せをすることしか考えていないため、このままでは選挙に負けると思って、逃げてしまったような状況です。
例えるなら、日本がウクライナに1.5兆円軍事支援して、財政が厳しくなったので、消費税を12%に上げますとか、言ってるようなレベルです。
絶対ブチギレますよね。今のヨーロッパやカナダは、そういう状況ということなのでしょう。
(2)景気の悪化
2つ目は、景気の悪化です。
特に欧州では、EVを前面に押し出してきたことによって、中国のEVメーカーとの安売り競争に巻き込まれてしまったため、フォルクスワーゲンやベンツ、アウディなどの名門企業が軒並み業績を悪化させ、リストラ、工場閉鎖に追い込まれています。
日産がホンダと経営統合しましたが、これもEVに全振りして、思いっきり外してしまったことが原因だと思います。
そもそも、このEVというのは、環境に対して全くいいシロモノではありません。
イギリスやEUが作った規制は、走行時の二酸化炭素を出す車かどうかで、良い車と悪い車とで分けています。
プリウスなどのハイブリッド車を含めたガソリン車は悪い車で、EVは良い車、という分類です。
ところが、製造時のCO2まで含めると、EVが環境にいいのは、10万キロから15,6万キロぐらいまでであり、それ以外の走行距離の間は、ガソリン車の方が優れているのです。
しかも、長く乗れば、バッテリーの交換で数百万円単位で追加費用がかかりますし、走っている間も、バッテリーの寿命は少しずつ短くなりますから、街乗り以外では、ほとんど実用的ではない、趣味の車なのです。
そんなポンコツ仕様の車に、補助金という税金を投入して普及させようとしてきたわけですが、各国ともに、財政が苦しくなって、補助金をやめたり、減らしたりしてきました。
その補助金があれば、作り直せたであろう橋や道路、上下水道などのインフラはガン無視して、推進したわけですから、生活水準が上がるわけでもなく、しかも、中国との価格競争に負けて、工場の閉鎖も進んでいるため、ドイツやフランスの景気はさらに悪化しそうな状況なのです。
トランプ当選で、アメリカのEV戦略は廃止に
そこに、今回のトランプ氏の当選です。
トランプ氏は、EVなどの環境対策に使ってきた補助員を撤廃し、ガソリンをたくさん掘って、エネルギー価格を下げることで、物価上昇を抑える方針です。また関税の引き上げもやります。
これまで、EUでは、2030年代には、ガソリン車の販売を停止するぐらいの意気込みで、規制を強化してきましたが、これはアメリカも同じように規制強化に動いていたため、アメリカ市場でもEVが売れると期待していたからです。
ドイツやフランスの自動車メーカーも、ガソリン車への設備投資をやめ、EVに全振りでやってきましたが、今回のトランプ氏の壮大な梯子はずしによって、どんなに頑張っても、ヨーロッパでしか売れない車になってしまいました。
そのため、現在の厳しい環境規制を続けようとする、与党への支持率はさらに落ち込んでいると思われます。ドイツのショルツ首相の不信任案が決議されたのも、このような事情があるものと考えられます。
(3)移民の増加による治安の悪化
そして、3つ目が、移民の増加による治安の悪化です。
アメリカだけでなく、ヨーロッパ各国でも、アフリカや中東からの移民が増えており、犯罪も多発しています。
EU圏への移民の流入数は、2022年は510万人を超えました。ウクライナ戦争による影響だと思われますが、それ以前でも毎年200万人規模での流入が続いています。
しかし、このように急激に移民が増加していることもあって、治安が悪化しています。EUの失業率は、若い人ほど高く、25歳以下の失業率は14%を超えています。
そのため、移民としてきても、思うように職を手に入れることができなかったりする人も出てくるため、そのような人たちが犯罪に走ってしまっているようです。
例えば、イギリスの小売店の被害額を見てみると、年々増加傾向にあり、昨年は4,000億円を超えてきました。
また、今年の7月末に、イギリスのサウスポートという街で、3人の女の子が殺害される事件がありました。
両親がルワンダ出身で、イギリス生まれの若い男性が、犯人だったのですが、これを受けて、移民は出て行け的な暴動が発生し、それに対して、「移民じゃねえし。人種差別してんじゃねえよ」的な抗議活動が行われたりしています。
この事件をきっかけとして暴動は、イギリス全土に広がっていたということもあって、かなり移民に対する不信感は強くなっているのでしょう。
このような事件は、他の欧州諸国でも起こっており、その度に、「人種差別はやめろ」的なメディアのキャンペーンによって、押さえつけられてきたといえます。
アメリカでは、移民の取り締まり強化に、180度政策転換
ところが、今回のトランプ政権が誕生することによって、アメリカでは不法移民への取り締まりが厳しくなります。
犯罪者はきっちりと刑務所に入れられますし、メキシコとの国境に壁も作り直しますし、アメリカで生まれたら即アメリカの市民権がもらえるルールも見直すと言っています。
アメリカのこのような180度の移民政策の転換を受けて、来年2月に総選挙が行われるドイツでも、最大野党のキリスト教民主同盟の首相候補である、フリードリヒ・メルツ氏が、「もうこれ以上、シリア人移民を受け入れることはできない。社会に溶け込めないシリア人には、シリアに帰ってもらう」などと発言し始めています。
このように、180度政策をひっくり返しそうなトランプ政権に変わることによって、国民を痛めつけてきた政策から脱却するために、現在の与党から逃げ出す政治家が出たり、不信任案が可決されたりして、政府が崩壊に向かっていると言えるでしょう。
3、ヨーロッパはこれからどうなるのか?
では、ヨーロッパは、これからどうなっていくのでしょうか?
私の勝手な予想ではありますが、来年以降は、極右政党が票数を伸ばし続け、そして、与党になるまでは、政治的な混乱が続くと考えられます。
理由は大きく2つあります。
(1)極右政党の政策が、まんまトランプ政権
1つ目は、各国の極右政党の政策を見てみると、まんまトランプ政権だからです。
こちらの表は、各国の極右と呼ばれる政党の公約をWikipediaなどからまとめたものです。
(参考:各政党のWikipediaより)
移民、補助金、減税というテーマについて、各政党がそれぞれ持っていることがわかります。
これらの政党は、移民を増えすぎて治安が悪くなった国を元に戻すために、移民を追い出したいという思いがありますし、それが理由で国民が暴動を起こしたりすることもあるため、テレビや新聞などのオールドメディアからは、「やべえ奴ら」扱いを受けがちです。
ですが、それは表面的なものでしかなく、実は補助金の削減や、減税などの、日本でも官僚の天下り先となっている既得権益を削るような政策を主張しているため、メディアと官僚と、政治家がタッグを組んで、攻撃をしていると考えられます。
例えば、フランスのルペン氏は、検察の捜査を受けて、5年間の政治活動の禁止を求刑されています。
また、ドイツのAfDも、東部のテューリンゲン州での総選挙で、AfDが第1政党になったことを受けて、このAfDを禁止すべきだとの声が出ているようです。
(2)極右政党の票数が伸びている
2つ目は、そんな極右政党が、票数を伸ばしている、という点です。
こちらの表を見てもらうとわかる通り、イギリス、フランス、ドイツのいずれの極右政党も、票数を伸ばしています。
(参考:Wikipediaの各国の議会選挙)
フランスの国民連合が、あともう少しで過半数を取りそうな勢いですね。
また、リフォームUKも、前回は2%程度の弱小政党だったものが、一気に12%もの増加となり、かなり存在感が増しているように思います。
イーロン・マスク氏が極右政党を応援
また、そんなリフォームUKに、イーロン・マスク氏が献金を検討しているとのことです。
マスク氏は、トランプ政権で、政府効率化省のトップでもありますから、リフォームUKの掲げる政策が似ているということで、応援したいということなのでしょう。
このように、オールドメディアは、「ヤバい政党」として、極右と呼ばれる政党を批判的に報道していますが、国民の支持は徐々に増えてきており、まさにトランプ現象に似た状況へと、各国が進んでいると言えます。
しかし、過半数を取るには、フランス以外は、まだまだ力不足な感じもありますので、数年から10年ぐらいの時間をかけて、小さな政府を目指す政党が、国民のコンセンサスになっていくと思われます。
それまでは、規制でがんじがらめの状況は変わらないと思いますので、さらに衰退していくことは避けられないでしょう。
4、韓国はどうなるのか?
最後に、おまけとして、韓国についても、考えておきたいと思います。
ヨーロッパ各国と違って、韓国はウクライナ戦争の影響も、移民流入による影響も少ないはずなのに、なぜこの時期に崩壊しかかっているのでしょうか?
これも私の勝手な想像ですが、トランプ政権に変わることで、親米反北朝鮮の姿勢を示す、現在のユン大統領が邪魔になったのではないか?と考えられます。
すでに、次期トランプ政権では、北朝鮮の金正恩氏との会談を予定しており、北朝鮮との国交正常化を狙っています。
トランプ氏は、第1期の頃から、在韓米軍の撤退を望んでいたそうです。
ですが、当時の国防長官だったエスパー氏が、「今はその時ではないので、2期目の最優先事項にしましょう」と助言したところ、「そうだな、2期目だな」と答えたとコメントしています。
なので、2期目に入ったら、かなり早い段階で在韓米軍を撤退するつもりなのだと考えられます。ところが、現在のユン大統領は、北朝鮮に敵対姿勢を見せているため、南北の戦争状態が解消されません。
そのためなのか、偶然なのか、今回の戒厳令による失脚によって、韓国では大統領選挙が行われる可能性が高まっています。
現在の議会は、北朝鮮と仲良くしたい「共に民主党」が過半数をとっていますので、今回の与党の失点もあって、次の選挙では「共に民主党」の候補が勝利する可能性が高いでしょう。
そうすれば、南北の戦争状態の解消が進み、在韓米軍の撤退も早い段階で行われると考えられます。
というわけで、トランプ氏が勝利したこともあってか、政府がひっくり返ってきている5つの国について、見てきました。
関税の引き上げや、各種政策はこれからですので、来年はいろいろな国の政治がさらにひっくり返っていきそうですね。この辺りについてもウォッチしていきながら、日本への影響も考察していきたいと思います。
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