(画像出典:wikimedia commons Mamusi Taka, 大津市内)
この記事では滋賀県の
- この7年間の土地価格の動き
- 新型コロナの影響を含め、今後どうなるのか?
の2点について解説しています。
1、過去7年間の滋賀県の不動産の上がり方の特徴とは?
まずはじめに、この7年間で滋賀県内の不動産が、どのような動きをしてきたのかをザッと見ていきましょう。
この7年間の滋賀県の公示地価を調べてみると、住宅地は4.0%の下落をしていました。
外国人観光客で賑わう京都府でも、平均するとマイナスという結果となっています。さらにお隣の岐阜県では7%近く下落しており、かなり地域によって格差が広がっているようですね。
そこで、今度は市区町村別に、この7年間の住宅地の上昇率を見てみましょう。
草津市、守山市を中心に上昇
ご覧のように、市区町村単位で見ると、草津市、守山市、野洲市、栗東市などの琵琶湖の南側のエリアで上昇しているものの、それ以外のエリアでは下落しています。
そもそも、今回の「不動産バブル」は、何が理由なのか?
そもそも、今回の「不動産バブル」は、2013年4月から始まった日銀の異次元緩和が原因です。
それまでの銀行の商売は、わたしたちから100万円預かったら、それで国債を買って、国から利息として1万円もらう代わりに私たちには100円ぐらいの利息をつけてて稼ぐ、ということをやっていました。
ですが、こんなことをしても、ちっとも景気も良くなりません。
そこで、日銀が銀行から国債を買い取ってしまい、「その浮いたお金を使って、どこかに貸して本業で稼ぎなさい!」
とやってしまったのです。
それで困った銀行は、不動産業者に融資をすることにしました。
この7年間で、企業や個人がお金を稼ぐために銀行から借りたお金(設備資金と言います)は、なんとその8割近くが不動産関連だったのです。
製造業はわずか1.7%、そのほとんどが不動産関係
お金が借りやすくなった企業や個人は、そのお金でバンバン、アパートやマンションを建てました。
その一部が、「かぼちゃの馬車」や「サブリース問題」「スルガ銀行の不正融資」などで個人の不動産投資家が餌食になっているんですね。
低金利によって、買い手の購買力が上がった
それに加えて、住宅地でも大きな追い風がありました。
それが金利の低下です。
異次元緩和によって、住宅ローンが約1%下がったのです。
(参考:ARUHI住宅ローン フラット35金利の推移 財務省 国債金利情報)
ザックリ言うと、この7年間で買い手は、同じ返済額で2割高い物件を買えるようになったということです。
例えば、フラット35で期間35年・3,000万円の住宅ローンを組んだ場合、月々の返済額は1.4万円も減りました。
異次元緩和前後のフラット35の返済額
*融資手数料:2.16%として計算
①緩和前 (2013年3月) | ②緩和後 (2019年1月現在) | ②ー① | |
フラット35の金利 (団信込み) | 2.27% | 1.33% | -0.94% |
月々の支払額 | 103,500円 | 89,400円 | -14,100円 |
総支払額 | 4,415万円 | 3,819万円 | -596万円 |
ご覧の通り、返済額で月1.4万円、総額で約600万円減った計算になります。
言い換えると、月々10.4万円の返済で、3,000万円の物件から3,500万円の物件まで買えるようになったことになります。
金利の低下によって、高い物件が買えるようになった
つまり、金利が下がったことで、買い手の購買力が上がったため、値上げにも簡単に応じられてきたわけです。
なぜ、草津市周辺だけが上がっているのか?
その理由は、大きく3つあります。
①琵琶湖周辺に進出している企業の業績が好調
琵琶湖周辺には企業の工場が多く集積していますが、名古屋にも大阪にも移動が便利な南側に特に集中しています。
そして、この5年間は日銀の異次元緩和政策によって、為替が円安になり、製造業の業績が好調なのです。
東証1部上場企業の決算を見ると、過去最高の純利益を更新しています。

そのため、琵琶湖南部の街では人口も増えて、土地価格も上昇しているんですね。
②公共事業の減少で、地方経済が疲弊
その一方で、公共事業はどんどん減っています。
この20年で、滋賀県の公共事業はほぼ半分に減少したため、特に工場の誘致がしにくい北部では景気が悪くなって、土地価格も大きく下げ続けてきたのです。
赤色の線:公共事業はこの20年間で半分に減少
また、90年代から2000年代の公共事業では、バイパスなどの道路の拡張工事が行われました。
そのため、国道などの大きな通り沿いに大きなお店が出店しやすくなったため、郊外に住む人が増えて、中心街がどんどん廃れてしまう原因となったのです。
③家を建てる中心年代の30代人口が減少
3つ目が、30代の人口の減少です。
家を建てる中心年代である30代人口は、2012年ごろにすでにピークを打ち、滋賀県ではこの5年間で2万人以上減少しています。
このような要因が重なって、人気のある南部では土地価格が上昇し、それ以外では下落するという二極化が進んでいるんですね。
なお、大津市の土地価格が下落しているのも、中心部では上昇し、郊外では下落する二極化が原因です。
2、新型コロナの影響はどうなのか?
滋賀県内の住宅地でも、これから影響が広がっていく
滋賀県では出ていませんが、京都府や大阪府では、3月7日まで緊急事態宣言によって、行動の自粛が要請されています。
具体的には、
- 飲食店に対する営業時間の短縮
- 外出、イベントなどの制限
- テレワークの推奨、20時以降の勤務抑制
などの要請が出されています。
昨年の緊急事態宣言によって、主に商業地や、それまで人気のなかった郊外の住宅地において、土地価格に影響が広がっていました。
ですが、今後はさらにその影響が広がっていくものと予想されます。
ワクチン接種に時間がかかる
というのも、感染の収束までに、まだまだ時間がかかりそうだからです。
今年の6月ごろには調達の目処がつきつつあるワクチンですが、本当であれば数年かかる承認を1年程度まで早めているため、副作用を心配する人が多いと思われます。
実際、「コロナワクチンを接種したいか?」という質問に対して、すぐに接種したいと回答した人は1割程度で、多くの方が副作用などの影響を見極めた上で、接種を検討しているようです。
(参考:「【新型コロナワクチン】6割以上の方が「すぐにではなく、いずれ接種したい」)
ということは、ワクチン接種による感染収束は、おそらく、来年以降になる可能性が高いのではないでしょうか。
イギリスでは、新種ウイルスも出てきた
現在イギリスで異なる種類のコロナウイルスが出てきており、3度目のロックダウンに入っています。
今回のロックダウンは、当初は4月までという見通しだったようですが、その予想を取り下げ、いつまで続くかわからない状況となっています。
(参考:ブルームバーグ「ジョンソン首相、3度目の英ロックダウンは夏まで継続も-罰則を強化」)
しかも、この新種のウイルスは、日本にもすでに入ってきているようですので、今準備されているワクチンで収束可能なのか不明です。
すでに赤字の企業はリストラモードへ
このような不透明な状況のため、赤字企業では、希望退職の募集が増えています。コロナ前の2019年は約1.1万人だったのが、1.8万人にまで増えています。
(参考:「上場企業「早期・希望退職」募集、20年は2.6倍に急増 コロナ禍で赤字リストラ目立つ」)
このことからも、今後は住宅の買い手が少しずつ減っていくことが予想されますので、よほど人気のエリアでなければ、土地価格は下落傾向に進みそうです。
3、その他のリスク
新型コロナ以外にも、どんなリスクがあるのかをまとめました。
(1)この低金利はいつまで続くのか?
地域によって上がった場所、下がった場所の違いはあるものの、日銀の異次元緩和政策で生まれたこの超低金利は、土地価格を押し上げるプラス要因でした。
そして、これ以上は、金利が下がらない水準まで来ています。
むしろ、その副作用の方が話題になることが増えました。
例えば、預金者のお金を国債で運用していた地銀は、この異次元緩和によって、金利が低下したことで利息収入が減り、半数以上が赤字になっています。
赤字の地銀がどんどん増えている
赤字が続けばいずれ倒産してしまいますから、いつまでも続けるわけにはいきません。
ちなみに、2005年にペイオフが解禁となっていますので、もし倒産した銀行にお金を預けていると、1,000万円しか戻ってこなくなるので、大混乱になります。
では、具体的にあとどれぐらいなのか?
ブルームバーグが経済の専門家45人にアンケートをしたところ、半数以上が2〜3年以内に限界が来ると予想していました。
半数以上が2〜3年以内に限界と回答
(参考:ブルームバーグ「2年以内で限界」が半数弱、現行の長短金利操作-日銀サーベイ)
このアンケートは2018年6月にされたものなので、2020〜21年前後となります。
聞き取り当時は、オリンピックが開催されると思われていたので、オリンピック前後と考える人が多かったと言えます。
この頃までは好景気も続くだろうという予想があったので、その頃までは地銀の経営状態も持つと思われていたのでしょう。
金利の上昇が始まった?
そして、最近ですが、アメリカの金利上昇が本格化してきたことで、日本でも5年ぶりの水準にまで上昇してきました。
(参考:ブルームバーグ「長期金利5年ぶり高水準、市場は日銀の政策点検に絡む対応を注目」)
(参考:財務省、 FRB of St.Louis)
2021年2月25日現在、日本の10年国債の金利は0.149%ということで、まだ低いですが、それでも5年ぶりの水準にまで上がってきています。
このような状況を受けて、大手銀行を中心に、住宅ローンの金利を引き上げる動きが始まっています。
(参考:NHKニュース「長期金利上昇 大手銀行 住宅ローン金利引き上げの動き」)
そもそも、日米の中央銀行が行っている異次元緩和政策は、お金を刷りまくって国債や株を買うものなので、お金に対する信頼が下がっていく政策です。
そのため、円安や金利上昇が起こるリスクのある政策であり、コロナによって、各国の中央銀行が無理をしてきた結果、金利上昇が始まっているのかもしれません。
もし仮に、このまま金利が上昇し続ければ、住宅ローン金利も上がるため、買える物件価格が下がりますので、土地価格も下がります。
ちなみに10年国債の金利が1%ぐらいにまで戻れば、土地価格は15%〜20%は下がると考えられます。
金利が上がると、同じ返済額でも買える価格が下がる
そのため、今後の経済状況次第では、金利上昇による不動産価格の下落も考えておいた方がいいでしょう。
(2)これから滋賀県の人口はどうなるの?
国立社会保障・人口問題研究所が、今年発表した滋賀県の人口の見通しによると、2025年までに1.8万人減少するそうです。
滋賀県の人口は、2025年までに1.8万人減る
(出典:国立社会保障・人口問題研究所 平成30年度人口推計)
また、家を買う中心年代である30代も、2025年までに33,000人減る見通しです。
若い人が減り、高齢者が増えるため、家を建てる人は減っていくでしょう。
滋賀県の30代人口は、2025年までに約33,000人減少
(出典:国立社会保障・人口問題研究所 平成30年度人口推計)
結論:売るなら?買うなら?
というわけで、滋賀県の今後の土地価格についての結論は、以下の通りです。
- 今回の土地価格の上昇は、日銀の異次元緩和がきっかけ
- 円安が進み、企業業績が回復したことで、工場の多い琵琶湖周辺のエリアでは上昇するも、それ以外では下落する二極化が進んでいる
- 新型コロナが長期化することで、店舗からの撤退が増えて、商業地の下落が加速する
- これから気をつけたいのは「金利」。特に日銀の異次元緩和が終了すれば、金利上昇で土地価格はさらに下がる
と言えそうです。
買うなら:商業地の周辺は様子見、それ以外は買い
新型コロナの影響が大きい商業地の周辺では、今後も影響が出ますので、坪単価が高いと感じられる場合には、まだ様子見の方がいいでしょう。
しかし、それ以外のエリアでは今が買い時の可能性が高いと思われます。
その理由は2つあります。
①土地価格の下落分よりも、待っている間の家賃の方が高くつく
例えば、坪30万円ぐらいの土地であれば、40坪でも1,200万円程度で買えます。
仮に数年で1割下げたとして120万円ぐらいしか安くなりませんから、その間の家賃を考えると、早めに買った方がトクになりますよね。
②異次元緩和で低金利の今がチャンス
また、現在は住宅ローンがかなり安いため、月々の返済負担が軽いのもチャンスです。
ですから、もし家を買おうと思っているのならば、土地価格が下がるのを待つよりも、金利が上がる前の今のうちに買うのがベストでしょう。
ただし、購入を検討する場合には、今後の金利上昇を想定しておかないと大変なことになるので、「フラット35」か「10年以上の固定金利」でも返済ができるかどうかで予算を考えるべきでしょう。
非公開物件=安い物件
不動産を売る理由はさまざまですが、「周りに知られずに売却したい」という売主は一定の割合でいます。
そのような物件は、ネット上にも出回らず「非公開物件」として登録されます。
また、売主はあまり相談する相手を広げたくないため、まずは建てたメーカーに相談する場合が多いです。
当然、このような物件は少ないお客さんにしか目にとまる機会がないため、相場よりも価格の安い可能性が高いのです。
こちらの「タウンライフ」に登録すると、お近くの複数の不動産会社から、非公開物件の情報を教えてもらえます。
価格が下がるのを待ちたい人でも、こちらで格安物件を見つければ、「低金利」と「安い物件」の2つの美味しいところが狙えるでしょう。
売るなら:金利が上がる前に売った方がいい
アベノミクス以降のこの7年間は金利の低下によって、買い手が月々の返済額を引き上げなくても値上がりした家を買える時期でした。
不動産を売るなら、金利の低い今が1番のチャンスと言えます。
特にコロナショックの影響は、長期間になる可能性もあり、景気が悪化するほど買い手が減っていきますので、今のうちに準備をしておいた方が後悔しないはずです。
公示地価を信じると損をする?
この記事では公示地価をもとに解説していきましたが、公示地価は「その地域の平均的な価格」なため、実際の取引ではこれ以上に高く、または安く取引されることがあります。
例えば、大津市に「朝日が丘(あさひがおか)」という地区があります。
大津駅の南側に広がる住宅地です。
この朝日が丘地区の公示地価(基準地価)と実際の取引価格は、
- 公示地価:45万円/坪
- 実際の取引価格:25〜55万円/坪
と、公示地価の約0.8〜1.4倍で取引されていました。
取引価格同士で比べると、1.6倍の価格差があります。
【大津市朝日が丘の土地取引(過去2年間)】
- 大津駅から徒歩8〜10分のエリアで、25〜55万円/坪で取引されている
- 基準地価も実際の取引も「第1種住居地域」で同じ建築制限
このような感じで、全国の公示地価と実際の取引を調べてみたのですが、やはり公示地価と実際の取引ではかなりの価格差があることがわかりました。
同じ地域なのに、
「公示地価の3割増し、場合によっては2倍以上の価格で取引されている」
といった取引がゴロゴロ見つかったのです。
都道府県 | 住所 | 公示地価/坪 | 取引価格/坪 | 公示地価の何倍? |
---|---|---|---|---|
滋賀県 | 大津市朝日が丘 | 45万円 | 25〜55万円 | 0.56〜1.22倍 |
滋賀県 | 草津市追分 | 30万円 | 32〜37万円 | 1.07〜1.23倍 |
滋賀県 | 長浜市祇園町 | 17万円 | 8.9〜23万円 | 0.52〜1.35倍 |
滋賀県 | 守山市守山 | 37万円 | 35〜53万円 | 0.95〜1.43倍 |
滋賀県 | 東近江市佐野町 | 20万円 | 23〜25万円 | 1.15〜1.25倍 |
滋賀県 | 彦根市外町 | 23万円 | 17〜31万円 | 0.74〜1.35倍 |
滋賀県 | 甲賀市水口町貴生川 | 12万円 | 8.4〜26万円 | 0.7〜2.17倍 |
滋賀県 | 近江八幡市堀上町 | 29万円 | 26〜66万円 | 0.9〜2.28倍 |
京都府 | 京都市深草大亀谷万帖敷町 | 41万円 | 22〜64万円 | 0.54〜1.56倍 |
京都府 | 宇治市小倉町 | 43万円 | 22〜55万円 | 0.51〜1.28倍 |
京都府 | 亀岡市大井町並河 | 29万円 | 9.9〜33万円 | 0.34〜1.14倍 |
京都府 | 舞鶴市伊佐津 | 21万円 | 19〜23万円 | 0.9〜1.1倍 |
京都府 | 城陽市久世 | 37万円 | 28〜49万円 | 0.76〜1.32倍 |
京都府 | 長岡京市今里 | 60万円 | 47〜73万円 | 0.78〜1.22倍 |
京都府 | 福知山市篠尾新町 | 22万円 | 20〜23万円 | 0.91〜1.05倍 |
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