この記事では、「もしトランプ氏が、アメリカ大統領になった場合、日本の不動産市場がどうなるのか?」について、考察します。
なお、この記事は動画にもしています。同じ内容なので、動画の方が見やすい方は、こちらをどうぞ。
以前に、①円ドル相場と②米国株、そして③日本株と、解説しましたので、今回が「もしトラシリーズ」の第4弾となります。
話を進める上で、前回と一部、重複するところもありますが、ご了承ください。
1、日本の不動産市場の現状
まずは、日本の不動産市場の現状を見ていきましょう。
2010年から人口が減少し始めている日本では、土地価格の動きも、地域によって、動き方が異なっています。
その特徴を一言で表すと、「二極化」です。人気エリアとそうでないエリアとで、格差がすごいのです。
(1)特徴1:二極化
例えば、都道府県別に、2013年以降の土地価格の変化率を見てみると、東京や大阪、名古屋などの三大都市圏では上昇しているものの、それ以外では下落していますね。
さらに、今度は市町村別に見てみると、東京ならば都心3区、大阪でも梅田や難波のある中心部、名古屋でも名駅や栄のある中心部、それ以外の都市でも、県庁所在地では上昇しているものの、郊外では下落、というパターンが見られます。
そして、さらに今度は市区町村の中で、もっと詳しく見てみると、大都市圏では駅周辺では上昇しているものの、郊外ではあまり上がっていません。
逆に、車が生活の基本となっている地方では、郊外にあるイオンなどのショッピングセンターの近くは上がっていますが、駅周辺はシャッター通りとなって下落している、と言った感じになっています。
基本的には、人が集まるところで上昇し、そうでないところでは下落、ということなのですが、人の集まる場所が、大都市ならば駅周辺、地方ならばショッピングセンターの周辺、というのが、ザックリとした傾向となっています。
(2)特徴2:マンションの金融商品化
もう1つの特徴が、マンションの金融商品化です。
特に首都圏のマンション価格を見ればわかるのですが、近隣3県や都下と比べると、新築価格が2倍以上に開いてきています。
最も大きな理由は、株価の上昇です。
特に都心3区のような、買い手がつきやすいエリアのマンションは、日経平均の動きと同じように動いています。同じように上げているだけでなく、リーマンショックのあった2008年から2009年には、2割近く下落もしており、下落相場にも連動しています。
日本の金融資産の6割以上を60代以上の方が保有しています。そのため、株価が上がった時に消費に回すのではなく、相続税対策としてマンション購入に動く人が、けっこうな割合でいるんですね。
また、日本の不動産に投資をするJーREITという金融商品がありますが、こちらの残高もこの10年で~倍に膨らんでいます。
株価の上昇とともに、資産の分散先として、REITを選ぶ人も増えました。これらのお金が、いつでも換金できる東京や大阪、名古屋などの中心部のマンション購入へと動いているのです。そうすると、買い手がつくため、さらにマンション価格が上がりやすくなります。
さらに、海外の投資家の購入も増えているようです。
新型コロナ以降、世界的に不動産価格がの調整が進んでいます。カナダは外国人の不動産購入を規制して、下落していますし、世界的に金利が上昇していることもあって、住宅ローン金利の負担が増えたことで、手放す人が増えている国もあるのです。
例えば、韓国や中国なんかはそうですね。
その点、日本は相変わらずの低金利なので、マンション価格も安定しており、海外の投資家も安心して購入し続けられるのでしょう。もちろん、最近の円安も、海外の投資家にとっては追い風となっています。
このように、マンションは戸建てと違って、住むためのものだけではなく、相続税対策や投資先、別荘、外国人の資産の逃避先、などの使われるため、一般世帯の買い手は減っています。
特に、首都圏では、リモートワークが追い風となって、近隣3県や都下へ移住する子育て世帯が増加していますね。
また、2023年は、区外に移住する人が減っていますが、同時に出生数も大きく減少しています。
生活コストの高い東京では、婚姻率も過去最低で、出生数も1倍を切っていることから、子育て世帯そのものが減った結果、区外に出ていく人が減っているのでしょう。
出生率の低下は、韓国や中国、台湾などを含めた、東アジア全体で共通する減少なので、日本が例外というわけではありません。
ですが、高学歴化や都市への一極集中、経済格差の拡大などは、どこの国でも共通していますので、お金がない若い世代が増えて、結婚をしなくなり、子供も産まなくなっているようですね。
2、トランプ氏が大統領になったら、どう変わるのか?
では、トランプ氏が大統領になった場合に、日本の不動産市場に、どのような影響が出てくるでしょうか?
ポイントをは大きく2つあると思います。
(1)超円高で、建築費・株価が下落
1つ目は、超円高が進むことによる、建築費の下落、株価の下落です。
4月に自民党の麻生副総裁と、トランプ氏がNYで会談をされました。当日についてのニュース記事と、翌日のトランプ氏の投稿内容から、
- 軍事費の増大を歓迎
- 現在の円安をどうにかしろ
というものだったと考えられます。
現在の1ドル160円という円安は、ここ数十年間で見ても、かなりの円安というだけでなく、他の先進国と比べても、異常なほどの円安です。日本だけが、これほど、ドルに対して弱い状況なのです。
理由は、以前の記事で詳しく解説していますが、ようするに
- 日米の金利差
- 国際収支の質の悪化
- 投機筋による円キャリー取引
- 政府による米国債の買い入れ
の4点が大きな理由と考えられ、その中でも、投機筋による円売りが酷い状況のようです。
財務大臣もそのようなコメントをしているため、実態として、そうなのでしょう。
しかし、現在のバイデン政権は、日本が4月5月に為替介入をしたところ、為替操作リストに入れられており、「そのまま円安にしてろ」という圧力を受けていると考えられます。
実際、今回の円買い介入を指揮した神田財務官が、責任をとって退任させられてしまいました。
このように、アメリカの圧力が強いのか、円安を放置せざるを得ない状況なのですが、トランプ氏の考え方は、これとは真逆です。「円高ドル安が望ましい」と言っているのです。
そのため、トランプ氏が大統領になったら、おそらく、日本への円高介入を強烈に進めるように、圧力をかけてくるでしょう。
以前の記事で詳しく解説していますが、120円ぐらいまでの円高は、十分に考えられると思います。そうすると、現在の160円から見ると、ざっくり3割ぐらいの円高ですね。
日本の建築費指数を見ると、2022年以降に大きく上昇しています。
まさに現在の円安が始まったタイミングであり、現在の建築費の上昇は、円安による影響だと言えます。これが、3割以上の修正が起こるとなれば、海外からの輸入価格が下がるため、建築費も下落し、買いやすくなってくるでしょう。
(2)低金利が続く
2つ目が、低金利の持続です。
今年3月に、日銀がマイナス金利を解除しましたが、その理由は、物価の上昇を抑えるためでした。
現在の円ドル相場は、日米の金利差が開きすぎていることを理由とした、投機筋の積極的な円売りだと理解していますが、円高が進めば、物価上昇も収まるため、金利を上げる理由がなくなります。
現在、変動金利で住宅ローンを組んでいる人は、全体の7~8割にまで上昇しています。変動金利の上昇は、多くの住宅ローンを組んでいる人たちの返済を苦しくさせますので、円高が進んだ方が、助かる人は増えるでしょう。
結論
というわけで、結論でまとめます。
- 日本の不動産市場は、人気エリアとそうでないエリアとで、全国レベルから、市内の地区レベルまで、二極化が進んでいる
- さらに、大都市のマンション市場においては、一般世帯の実需だけでなく、国内外の投資家や資産家による購入が増えているため、価格がさらに上昇し、郊外へ移住する子育て世帯も増えている
- トランプ氏が当選すれば、アメリカの雇用を守るために、現在の円安ドル高の修正を求めてくる可能性が高く、1ドル120円レベルでの超円高に修正される可能性が高い
- 超円高になると、物価が下がるので、建築費が安くなるし、物価上昇を理由とした利上げも行われなくなるため、変動金利でローンを組んでいる人にとっても、メリットが大きい
と言えます。
普通に暮らす分には、円高を求めるトランプ政権が、いいような気がします。
というわけで、トランプ氏が大統領になった時の、不動産市場の予想をしてみました。
参考になれば幸いです。
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