今回の記事では、「民主党を乗っ取るイーロン・マスク。トランプとバチバチバトルの目的」ということで、やっていきたいと思います。
1、はじめに
5月22日に、アメリカの下院議会は、大きくて美しい1つの法案、「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル」という税制、歳出法案を可決しました。
これを受けて、政府効率化省、通称DOGEのトップを務めていたイーロン・マスク氏は、ムチャクチャ、ブチギレました。
というのも、この法案の内容を見ると、結局3兆ドル以上の財政赤字が増えるというものだったからです。
1月20日に政権発足後、すぐにDOGEは、USAIDなどの、これまでのアメリカ政権がやってきた無茶苦茶な海外支援や、無駄な歳出の洗い出しを行なってきました。
財務省に監査に入ったら、それを邪魔しようとした高官が退職に追い込まれたりなど、結構な正義のヒーローっぽい動きをしていましたので、「これはかなりの政府の無駄の削減がされるんじゃないか?無茶苦茶やってきた公務員がクビになるんじゃないか?」と期待していた人たちも多かったと思います。
しかし、DOGEのWEBサイトを見ると、削減できているのは、6月3日現在で、約1800億ドルと、当初DOGEが目標としていた、2兆ドルの削減目標に対して、進捗は10%にもなっていません。
マスク氏は、DOGEは、政府支出の透明化と、提案の権限があるだけで、実際に予算を削減するのは議会だからだ、とは言っていました。
なので、これをもって、DOGEがうまくいっていないと判断することは難しいですが、だったら尚更、議会による歳出法案の中に、DOGEが見つけたさまざまな無駄の削減策を盛り込むべきだと思っていたでしょうし、期待もしていたと思います。
ところが、実際に蓋を開けてみると、減税はそのままで、ろくに削減をしていませんでした。政府債務の増加は、今後10年で3~4兆ドルと予想しているところが多いです。
しかも、EVへの補助金は削減されているので、マスク氏からみれば、DOGEで頑張ったことは無視されて、テスラのための補助金は減らされて、踏んだり蹴ったりのような状況なのです。
マスク氏は、5月30日の金曜日に、DOGEの責任者を引退しました。特別政府職員は、任期が130日間のため、任期満了となったのがその理由ですが、この時点では、それほど不満を表に出していませんでした。
バトルが本格的になったのは、6月3日火曜日からです。
この法案に対して、「不快で、忌まわしい」と非難し始めたのです。
そして、トランプ氏も「予算削減する簡単な方法は、イーロン・マスクへの政府補助金を打ち切ることだよ」と言い返したり、
さらにマスク氏も、「もうトランプ政権はダメだ。新しい政党を作った方がいいんじゃね?」とX上でアンケートを取ったりと、どんどんエスカレートしていっている感じです。
その後、仲直りするのか?と期待されましたが、トランプ氏は話すつもりはない、と突き放しており、おそらくですが、収束するまでにかなりの時間がかかると予想されます。
こんなこともあったため、マスク氏がオーナーを務める、テスラの株価も、トランプ政権からの補助金や各種優遇が受けられなくなるんじゃないか?ということで、5日木曜日には15%も下落し、翌日金曜日は4%ぐらい戻しましたが、今後もなかなか展開が予想できない状況にあります。
今回の動画では、なぜ今、こんなことになっているのか?わざとなのか?だとしたら、その目的は何なのか?ということについて、考察していきたいと思います。
それでは、参りましょう。
2、トランプvsマスクの目的
最初に私の結論を言ってしまうと、今回のトランプVSマスクの、この一連の騒動は、民主党を乗っ取るためのものだと考えています。
なぜそう思うのか?
理由は大きく2つあります。
(1)「トランプの敵」ポジションを取れる
1つ目は、トランプとバチバチの敵対関係になることで、民主党支持者の一部が、マスク氏を応援するようになると考えられるからです。
マスク氏は、DOGEの責任者に就任して、USAIDなどの悪行をバラしまくった結果、欧米のリベラル層から「トランプの手下」「民主主義の敵」みたいな位置付けとなってしまい、Tesla Take Down という運動が盛り上がっています。
その結果、欧米では5ヶ月連続の販売台数の減少となっており、BYDなどの中国のEVの値下げ攻勢もあって、かなり販売が厳しい状況になっています。
4月に発表された第一四半期の売上高は、前年同期比で9%のマイナスですが、直前の3ヶ月と比べると、約2割も下落しています。
このことからも、テスラテイクダウン運動の影響はかなり大きいと考えられます。
テスラのEVって、日本でも500万円ぐらいしますし、充電設備がないと不安ですし、修理代もバカにならないので、お金持ちの街乗り用のセカンドカー的な位置付けになります。
なので、世界中の小金を持ってるリベラルに嫌われてしまうと、かなり痛いので、DOGEの責任者を辞めたのを機に、思いっきりトランプ氏と喧嘩別れするようなバトルをやることで、「トランプの敵」というポジションを取ろうとしているのではないでしょうか?
そうすれば、トランプ憎しのリベラル層も、マスク氏を叩く理由がなくなるので、テスラテイクダウンの影響も減り、テスラ車の売り上げ回復を狙えますからね。
実際、マスク氏はX上で、トランプ政権じゃなくて、別の保守党政権を新しく作った方がいいんじゃね?というアンケートを取っていて、300万人以上が投票をし、8割以上の支持を得ています。
マスク氏は南アフリカ出身なので、大統領選挙への立候補資格はありませんが、アメリカでも有数の大富豪ですし、前回の大統領選挙でも多額のお金を注ぎ込んでいます。
なので、マスク氏が、打倒トランプで政党を作れば、おそらく、民主党系のまともな議員や、民主党系の穏健派のリベラルな人たちが支持するのではないかと思います。
(2)経済的混乱が起こった後の、バックアップ政党を作る
2つ目が、トランプ政権のこれからの政策で、経済的混乱が起こっても、マスク氏に乗っ取らせることで、民主党政権になった時にも、おかしな方向へ向かわせないためです。
4月2日に発表された、トランプ相互関税では、日本の株式市場も大いに荒れましたが、その後90日間の延期が発表され、7月8日までは交渉期間となっています。
ですが、それから2ヶ月ぐらい経っていますが、アメリカはまともな貿易交渉ができていません。イギリスとは、さっさと決まりましたが、もともとイギリスとの貿易では黒字でしたので、イギリスが10%の最低関税を呑んでくれれば、特に問題はありません。
しかし、それ以外では、中国との貿易交渉も、8月まで関税延期を行いましたが、その後も貿易交渉の進展は見られませんし、中国は中国で、ASEANや湾岸諸国との経済協力会議を開いて、アメリカの相互関税に備えるなど、脱アメリカ、脱ドルの準備を進めているようにも見えます。
また、7月6~7日には、BRICSサミットもありますし、すでに昨年から数十カ国がBRICS諸国への加盟を申請しており、今年はインドネシアの加盟も決まり、10カ国にまで拡大しています。
先月は、トランプ氏は南アフリカのラマポーザ大統領と会談を行いましたが、完全にケンカ越しで、「南アフリカは白人を虐殺してるやべえ国だろ!」みたいな挑発をして、わざと仲を拗らせて帰らせました。
アフリカ諸国の中で、最も対米貿易額が多いのが南アフリカですが、そこがこんな目に遭ってるわけですから、アフリカ諸国は一層、BRICSへすり寄るしかない状況へと追い込まれています。
こんな感じで、アメリカが各国と貿易を減らし、世界中でドルを使う現在の基軸通貨体制を否定するような動きを見せていますので、これからさらにドルがおかしくなるのは間違いありません。
アメリカは、現在36兆ドルの政府債務があり、DOGEなどの力で削減に向かうのかと思えば、今回の歳出法案で、これから10年でさらに3~4兆ドル債務が増えますから、これを乗り切るには、思いっきりインフレにするしかありません。
現在のアメリカのGDPは29兆ドルですが、これが10年後に2倍の60兆ドルになって仕舞えば、たとえ、借金がこれから10年で40兆ドルになったとしても、収入に占める借金の比率が下がるので、なんとかなります。
例えるなら、年収500万円のひとが600万円の借金をしてるのはきついですが、年収が1000万円になって、借金が700万円になったら、それは前よりもマシになりますよね。
これをやろうとしているのだと考えられます。
そのためには、ドル安にして、インフレにする必要があります。
つい先日、台湾がアメリカと貿易交渉をした後に、台湾ドルが急騰しましたが、これと同じようなことが、これから日本や韓国とも起こると思われます。
そうすると、アメリカはさらにインフレになります。ここ2、3年で、1ドル120円から160円になった際に、日本でも物価が大きく上昇しましたよね。
これと同じ、場合によっては、もっとひどいことが、アメリカでも起こる可能性があります。なので、おそらくですが、アメリカでは相当に、経済的にきつい人が出てくると思います。
ぶっちゃけ、トランプ政権についていける?
また、現在のトランプ政権は、普通の日本人の感覚では、ちょっとついていけないこともやっています。
例えば、パレスチナ支持の留学生を逮捕勾留したり、パレスチナ支持の大学への補助金凍結をしたり、ガザで多くのパレスチナ人が犠牲になっているのに、イスラエル支持を崩さないなどですね。
また、未成年の女性をお金持ちにあてがってきたことがバレて、拘置所で疑惑の残る自殺を遂げた、ジェフリー・エプスタインに関する機密解除も、のらりくらりと遅らせています。
このエプスタイン氏の事件を見ると、イスラエルとの関係があるようだという疑惑が広がっており、「トランプはイスラエル寄りだから、わざと後悔しないんだ」という批判を受けています。
それ以外にも、フォートノックスに預けてる金を見に行こうとか、FRBの監査をしようとか、かなり際どいことを言ってきたものの、実現できていない謎もいっぱいあり、不満に思っている人は、結構いるはずです。
ところが、今のアメリカには、このような不満の受け皿となる政党がありません。
普通に考えれば、民主党になるわけですが、今の民主党は、どうしようもありません。
2月に行われた、民主党の全国大会で、委員長を決める選挙がありましたが、みんなLGBTQがどうとか、中絶がどうとか、そんなことばかり喋ってて、経済とか不法移民で治安が悪化したこととか、そういうことへの対応を考える候補者は皆無でした。
というか、自己紹介で歌い始める人までいました。イメージ的には、東京都知事選とのど自慢を足して2で割ったような感じだったのです。
さらに現在、トランプ政権は、オートペンと呼ばれる、自動でサインができる機会で、前政権が、バイデン元大統領が知らないところで、大統領令を乱発していたという疑惑を捜査しています。
これが明るみに出れば、現在の民主党は完全に信頼を失います。政党の解体すら、議論が出てきそうな状況なのです。
つまり、もし、これからトランプがアメリカの借金をチャラにするために、インフレ政策を進めていって経済が混乱に陥った時に、それを立て直す、まともな政党がないのです。
その受け皿を作るために、マスク氏がトランプ氏と敵対した可能性は、十分にあり得るのではないでしょうか?
NASA長官に民主党寄付者が、はねられた理由
例えば、今回NASAの長官に推薦されていたジャレッド・アイザックマン氏が、以前に民主党に寄付をしていたという理由で、指名を取り消されました。
アイザックマン氏は、宇宙開発関係の企業の経営者で、マスク氏のスペースXの顧客でもあり、マスク氏との関係が深い人物です。
この取り消しは、トランプ政権のマスク氏に対する当てつけとも取れますが、逆に、民主党のまともな人たちの人脈をトランプ政権に入れずに、温存しようとしているとも取れます。
今回のトランプ政権に、アメリカの優秀な人材が全て集まっているわけではありませんからね。なので、これらの人たちをまとめ上げて、現在の民主党に変わる、新しい受け皿を作ろうとしている、という可能性は、けっこうあり得るのではないかと思います。
3、アメリカは新しい二大政党制へ
もし、私のこの見立てが、当たらずとも遠からずだとしたら、これからのアメリカ政治は、非常に興味深い展開になることが、予想されます。
それは、テクノリバタリアンと呼ばれる、超頭がいい大富豪による統治体制へと変わる可能性が出てくるのです。
共和党は、ピーター・ティール派へ
現在、トランプ政権には、いろいろなところから人材が集まっていますが、その中でも大きな影響力を持っているのが、ピーター・ティールです。
ティール氏は、PayPalの創業者で、その後もパランティアというデータ分析会社を経営したり、Facebookに1番初めに投資をしたりと、経営者、投資家のどちらの顔も持っている、超大富豪です。
このティール氏に関係する人材が、トランプ政権には、なんと16人も参加しています。
1番やばいのが、副大統領のJDヴァンス氏ですね。
これまで1期しか当選してなくて、いきなり副大統領になれたのは、間違いなくティール氏のおかげです。
それ以外にも、国防総省や軍、保健福祉省、政府効率化省のDOGEなどで、政府の要職に食い込んでいます。
これらの人たちの多くは、テクノロジー系企業で働いている経験を活かして、政府を効率的に運用しようとか、経済政策の立案などもしています。
民主党(または新政党)は、マスクが狙うのでは?
では、仮にイーロン・マスクが新しい政党を立ち上げるか、民主党を乗っ取ったら、どうなるでしょうか?
おそらく、こちらも、現在のトランプ政権には入りたくないけど、まともな国に建て直したい、というリベラル寄りの優秀な人たちを集められるでしょう。
例えば、イスラエルべったりは嫌だとか、環境のこともちゃんと考えてほしいとか、政府の無駄使いはきちんと管理すべきだ、といった、トランプ政権では実現できないことをやりたい、かといって、今までの民主党みたいなイカれた政党ではない、みたいな人たちが支持する政党として、正常化されるのではないでしょうか。
面白いのは、どっちの政党を選んでも、超頭のいい大富豪が、国を動かしていく、という形は変わらなそうだ、という点ですね。
今はまだ、私の妄想の域を出ませんが、この仮説が正しいとすると、これからアメリカは、各国にドルの切り下げを押し付け、経済ショックがくる可能性が高まると思います。
トランプ政権が、この混乱の中でも、支持率を落とさない可能性はありますが、マーケットがどれぐらい動くかは、誰にも予想できませんし、場合によっては、中間選挙で負ける可能性だって十分にあります。
しかし、その受け皿が、マスク氏率いる民主党であれば、安心して勝負に出ることができますよね。
ちょっと予想が先走った感はありますが、投資をしている人は、これからマスク氏がさらにトランプ氏とバチバチやって、新しい政党を作るとか、民主党と合流するといった話が出てきたら、このシナリオが生きていると見た方がいいかもしれませんね。
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