この記事では、「救いようのないほどに落ちぶれたドイツ。一体何が起こっているのか?」ということで、見ていきたいと思います。
1、はじめに
ドイツは、昨年11/6にショルツ首相が、連立政権を組んでいた、自由民主党(FDP)のクリスティアン・リントナー前財務大臣を辞めさせました。
この解任劇は、トランプ氏の大統領当選が確定して、なんと数時間後に行われました。
これによって、3党連立政権だったドイツの与党は崩壊し、政府は機能不全に陥りました。
そして、12月16日には、ショルツ首相自らが、自分の信任決議を行い、見事に不信任になったことで、今年2月の解散総選挙となりました。
この一連の動きから、トランプ氏が大統領になったことで、ドイツの与党は、一目散に逃げ始めたことがわかります。
では、なぜ、ドイツの政府は、トランプ氏が当選したことで、みんなが一目散に逃げているのでしょうか?
この理由について、この動画では、詳しく考察していきたいと思います。
参考にした書籍
なお、この動画を作る際に、参考にした書籍があります。
それが、こちらの「ドイツの失敗に学べ!」です。著者の川口マーン恵美さんは、30年以上ドイツに住まわれている方で、ドイツでの実体験に基づきながら、ドイツの現状を分析されているので、とても説得力があります。
今回の動画は、ちょっと強めの言葉で、ドイツをディスってる感じがありますが、それは、この本で書かれているドイツの政策が、あまりに衝撃的だったからでもあります。
これからの日本の政治を考える上でも、とても参考になると思いますので、興味のある方は、一度チェックしてみてください。
それでは、本題に参りましょう。
2、ドイツ政権が崩壊した理由
トランプ氏が当選したことで、現在の政府が一目散に逃げ始めた理由、それは、私の解釈では、現在のドイツの政府は、アメリカの民主党政権に瓜二つの、救いようがないほどの、愚かな政権だったからです。
それが、トランプ政権になることで、誰の目にも明らかに、その愚かさがバレてしまい、しかも、国民からも隠し通せなくなってしまうからだと、私は解釈しています。
では、どれぐらい今のドイツ政府が愚かなのか?
大きくは2つあります。
(1)移民の大量受け入れ
1つ目は、移民の大量受け入れです。
ドイツでは、メルケル首相時代の2015年に、国境を開いて以降、多い時は年間100万人以上、そうでない時も、年間30~50万人のペースで移民を受け入れています。
2015年ごろは、シリアやアフガニスタンなどの中東地域からの移民が多かったですが、2022年には、ウクライナからの難民が100万人以上も流入しています。
これほどの数の移民が入って来ると、大量の住居も仕事も必要になります。
ところが、特に中東からの移民の場合だと、ドイツ語が喋れるわけでもないですし、文字もアラビア語なので、うまく仕事につけない人が大量に生まれました。
その結果、仕事につけない若い人の多くが、犯罪などに走るようになって、治安の悪化が進んでいます。
2015年の大晦日に、複数の都市で、移民による女性への集団暴行事件がありました。被害に遭われた女性の数は、1200名以上にもなるとのことで、相当凄まじいことが、すでに10年近く前に起こっていたのです。
そして、昨年12月にも、クリスマスマーケットに、サウジアラビア出身の男性が車で突っ込んで、大惨事となりました。
これに怒った人たちが、抗議集会を行うと、「移民を排斥しようとする酷い奴らだ」という非難を、メディアや主要政治家が行うという状況が、10年近くも続いているというのです。
これは流石に、普通に暮らしている人たちも、ブチ切れるのではないでしょうか?
2月の選挙では、移民をもう受け入れないと言っている、「ドイツのための選択肢」略称AfD、が躍進すると言われていますが、ドイツ議会は、このAfDの選挙資格を剥奪すべきだと議論されています。
まさに、トランプ氏の選挙活動において、「トランプはヒトラーだ」とか「トランプは独裁者だ」とか、アメリカの民主党やリベラル系のメディアが騒いでいた状況と、瓜二つだと言えます。
(2)環境規制が酷すぎて、産業が逃げ出している
2つ目は、環境規制の強化によって、主要産業がどんどん海外に脱出しているということです。
ドイツでは、もともと反原発運動が盛んだったのですが、2011年の東日本大震災を受けて、原発の廃止を勧めていましたが、これを2023年に完了しました。
そして、その代替案として、再生可能エネルギーによる発電を進めていたわけですが、合わせて二酸化炭素の排出も減らすということで、2030年までに石炭火力発電もやめて、2035年には、風力や太陽光などの再生可能エネルギーだけにしようとしています。
こちらは、ドイツの電力価格の推移ですが、2022年に大きく上昇していますね。
ドイツは、ロシアから天然ガスの供給を受けていましたが、ウクライナ戦争が始まって、その後にノルドストリームというロシアとドイツを結ぶパイプラインも、誰かが爆破してしまったため、電気料金が跳ね上がってしまったのです。
その後は、落ち着いていますが、それでも2020年ごろと比べて、2倍以上の価格となっており、ヨーロッパでもデンマークと1位、2位を争うほどの、電気料金の高さとなっています。
風力や太陽光などは、風次第、天気次第なところもありますから、電力供給が不安定になりますので、工場での生産がやりにくくなります。
また、日本でも、再エネ賦課金という形で天引きされていますが、太陽光や風力発電は、コストが高いので、私たち国民が、電気代と共に税金をさらに取られて、発電業者にお金が流れていくので、ただの増税と変わりません。企業にも、個人にも、全くメリットがないのが、再生エネルギー政策なのです。
フォルクスワーゲンも、ドイツ国内の工場を閉鎖
そのため、昨年10月末に、フォルクスワーゲンがドイツの工場を3つ閉鎖すると発表しました。フォルクスワーゲンは、日本で言えばトヨタのような、国内の雇用を作ってきたナショナルブランドです。
その会社が、工場を3つ閉鎖すると発表したので、かなりの衝撃が走りました。
その後、工場閉鎖は見送りになったものの、3万5000人の人員削減をすることになりました。
工場閉鎖発表時には、数千人の解雇が予想されていましたが、工場閉鎖しない代わりに、数倍の社員がクビになることに決まったので、むしろもっとエグい結果になったと言えます。
それ以外のメルセデスベンツやBMWも、EV戦略が失敗して、売り上げが減少してきているため、いずれこれらの企業も、工場閉鎖を行うことになるでしょう。
このような動きは、一見すると、自動車メーカーのEV戦略の失敗のように見えますし、経済ニュースでも、そのように取り上げられています。
自動車だけじゃない。化学メーカーも逃げ出してる
ですが、年間の売り上げが10兆円規模の大手化学企業であるBASFも、11の工場をこそっと閉鎖して、中国に生産施設を移管しているのです。
これは、どう考えても、自動車産業の不振で片付けられるものではなく、ドイツの経済政策が、狂ってきているため、逃げ出しているのだと思います。
ドイツといえば、日本と同じように、製造業で発展した国です。その製造業を追い出すような政策を行なっているのが、現在のドイツ政府なのです。
3、なんでこんな愚かなことをしてるのか?
ですが、不思議ではないですか?
ドイツは、ヨーロッパの中では、最も工業化が進んだ、豊かな国だと思っている人は多いと思うのですが、なぜこれほど、自分たちを傷つけるような、自滅的で、愚かなことをしているのでしょうか?
私が思うに、理由は3つあります。
(1)EUという仕組みが、ドイツに有利すぎて、勘違いしてしまった人が増えた
1つ目は、EUという仕組みが、あまりにドイツに有利に働きすぎて、勘違いしてしまった人をたくさん産んでしまった、ということです。
EUという仕組みは、1952年の欧州石炭鉄鋼共同体という、西ヨーロッパの6カ国を中心に作られた経済グループが、徐々に発展してできた組織で、現在は、ユーロへの通貨の統合や、関税が撤廃され、自由に貿易ができたり、パスポートなしで加盟国間を行き来できるようになっています。
一見すると、メリットばかりのように見えますが、実は、産業力の強いドイツが一人勝ちのような状況が続いています。
1990年に、工業化が進んでいた西ドイツが、経済がボロボロになっていた東ドイツを吸収するような形で東西統一がされました。
そのため、統一後は、東ドイツを復活させるために、いろいろと混乱があり、2000年代に入るまでは、経常赤字が続いていました。
その後、ユーロが導入され、労働市場も解雇規制の緩和が行われたことで、経済が上向き始めました。おそらく、社会主義のぬるま湯に使っていた東ドイツの人たちに対して、もっと働けとケツを叩いたのでしょう。
これによって、ドイツの製品が、EU圏内でたくさん売れるようになり、経常黒字が増えていきました。通常、海外との貿易で、利益が出ている国の通貨は高くなる傾向にあります。
ドイツが儲けすぎても、他の国がダメダメなので、通貨高にならない
国内で作ったトヨタの車が、海外でバンバン売れていくことで、円高になるような、そんなイメージです。
ところが、ドイツはEUに所属しており、産業があまり育っていない東ヨーロッパの国々も入っているため、ユーロが通貨高になりません。
そのため、通貨が安いままで、海外に輸出できるので、いつまでも価格競争力が強いまま、経常黒字を溜め込める状況にあるのです。
このような状況が、メルケル首相が就任した2005年ごろから、ずっと続いているのが、ドイツだといえます。
そのため、経済的に裕福な人が増えてきたのでしょう。
余裕ができると、お金儲けだけじゃなく、社会的に良いことをしたくなる人が増えますので、環境とか、人権とか、そういうことを大事にしようという価値観が、広まりやすくなったのだと考えられます。
(2)人種差別者として批判されることへの恐怖
2つ目は、人種差別に対する、後ろめたさと恐怖です。
ドイツは、ナチスドイツ時代に、多くのユダヤ人を強制収容所に送って、大虐殺を行いました。
そのため、「人種差別をする人は、ナチス」的なイメージを持たれるのが怖くて、移民の犯罪にも強く反対できないような、そんな空気があるのだと思われます。
アメリカでも、不法移民の犯罪が問題となっていますが、民主党やリベラルな人、リベラルのメディアが、それらの犯罪を追求しようとする人間に対して、差別主義者だと攻撃していますよね。
アメリカでは、19世紀まで続いた奴隷制度や、1960年代の公民権運動、そしてその後も続く黒人差別について、後ろめたさを感じる人はそれなりにいると思いますので、このような差別主義者的なレッテルを貼られることへの恐怖は、アメリカ人もドイツ人も、同じように持っているのだと思われます。
メルケル首相が、2015年に移民を100万人以上受け入れると決めて以降、10年近くも、移民による犯罪が起き続けていますが、移民反対を掲げるAfDの支持率は、いまだに10%台でしかありません。
これは、公に反対の声を上げると、社会的な政策を受けてしまう、という恐怖があるからではないでしょうか?
(3)アメリカの関与の可能性
3つ目は、アメリカの関与です。
ここまで、ドイツの愚かな政策について、移民政策と環境政策について、詳しく紹介してきましたが、これ以外にも、LGBTQを大事にするとか、AfDに対する言論弾圧とか、ドイツの政治で、狂っていることは、たくさんあります。
そこで思い浮かべるのが、アメリカの民主党政権の政策との共通点です。
現在のバイデン政権も、同じような政策を行なっています。バイデン大統領が就任した初日には、メキシコの国境の壁を取り払う大統領令に署名していますし、LGBTQ推進もやってます。
また、天然ガスや石油の採掘を禁止し、EVなどの再生可能エネルギーへの補助金をジャブジャブ流してもいます。移民反対の声を上げる政治家や政党への攻撃も、同様です。
つまり、アメリカの民主党政権のドイツ支店とも言える状況なのです。
この記事の冒頭で、トランプ氏が当選した数時間後に、現在のショルツ政権が崩壊したことを紹介しました。
そして、本来であれば、今年9月に総選挙があるので、そこで信任を問えばいいものを、わざわざ昨年12月に、ショルツ首相自らが、「俺って、このまま首相やっててもいいかい?」と信任を問うて、予想通り不信任案が決議され、2月に解散総選挙をすることになったのです。
これって、ショルツ首相自身が、もうこれ以上首相をやりたくないって、放り出したかったということですよね?
おそらく、自分たちが愚かな政策をやっているという認識を持っていて、アメリカの民主党からの命令で、イヤイヤやらせられていた、ということなのではないでしょうか?
だからこそ、トランプ氏の当選が確定したことがわかって、「ようやく解放される」とさっさと政権を崩壊、解散総選挙へと進めようとしたのではないかと思われます。
4、これからドイツは、どうなるのか?
では、これからドイツは、どうなっていくのでしょうか?
2月の総選挙では、移民を止めると言っているAfDが躍進すると予想されています。
イーロン・マスク氏は、「AfDだけがドイツを救える」とX上で何度も投稿しており、AfDのアリス・ワイデル党首と対談を行うなど、AfDの支援を活発化させていますが、多くのメディアや議会、そして政治家は、これに反発しています。
また、AfDの支持率が高いのは、旧東ドイツの地域なんですね。
西ドイツは、戦後に民主主義国家としてスタートした分だけ、さんざん敗戦国として、ユダヤ人の大量虐殺について、反省させられてきたため、人種差別というレッテルを貼られることへの恐怖が強いのかもしれません。
なので、どれだけ、旧西ドイツの地域で、AfDが伸びるのか?が焦点になりそうですが、トランプ氏の勝利や、兵庫県の斎藤知事の勝利のように、メディアの評価を覆して、勝利を勝ち取るには、SNSでの盛り上がりが必要だと思います。
ですが、XでAfDのアカウントを見る限り、それほど見られている感じはないため、得票率は伸びると思いますが、過半数を取るとか、そういう劇的なことは起こらないのではないかと思います。
ラスボスは、欧州委員会
それと、ドイツが変わるには、おそらく、欧州委員会も変わらなければ難しいと思われます。
欧州委員会の委員長は、フォンデアライエン氏ですが、この人は、メルケル元首相が引き上げた人で、厳しい環境政策や、ロシアに対する徹底抗戦を支持するなど、アメリカの民主党とかなり近しい関係にあります。
トランプ氏が、フォンデアライエン氏と仲良くする可能性は低そうですが、EUのトップなわけですから、この人たちの政策が変わらなければ、ドイツの産業界が、ドイツから逃げ出す状況は変わらないでしょう。
なので、ドイツが復活する可能性は、なくはないと思うのですが、相当長い道のりになりそうな気がします。
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