この記事では、「1ドル120円シナリオ3月版:トランプが日本の円安を関税と見做し、やり返す宣言」ということで、やっていきたいと思います。
1、はじめに
このサイトでは、月に一度のペースで、1ドル120円シナリオが、まだ有効なのか?について、検証しています。
11月の1ドル152円の頃から始めて、今回で5回目になりますが、その後はずっと円安が続いており、今回初めて、1ドル147円台ということで、予想を下回ってきました。
個人的には、やれやれと思うと同時に、ここ1ヶ月で、かなりドル円に関しても、大きな動きが見られたので、今回はその辺りを拾いつつ、今後の予想についてあれこれ話していきたいと思います。
なお、この記事を参考にして、投資をして損をしても、一切責任は負えませんので、エンタメ感覚で、まあ、そういう考え方もあるよね、ぐらいで聞いてもらうのが丁度いいと思います。
それでは、参りましょう。
2、トランプ氏の関税引き上げの根拠
このサイトと並行して運営しているYouTubeチャンネルでは、ドル円のような為替の予想だけでなく、トランプ政権の政策と日本への影響についても、いろいろと動画にしているのですが、その中でも、先月たくさんの方に見ていただいたのが、こちらの動画です。
ちょっと簡単に解説すると、トランプ氏が、各国が導入している付加価値税、日本で言うところの消費税を関税と見做して、対抗して関税をかけるという発表をしたと言うものです。
アメリカの消費税は、売上税と言って、最終消費者が小売業者に税金を払って、受け取った業者がそのまま納税する形のものとなっています。
ですが、日本を含めた、ほとんどの国の消費税が、原材料の仕入れから、部品の購入、組み立ての外注など、製造に関わった企業との取引にもかかる、複雑な仕組みとなっています。
この仕組みの違いを利用して、日本を含めた、付加価値税の国は、輸出企業に補助金という形で、国民や中小企業から吸い取った税金を渡しています。
例えば、消費税が0%だったときに、中小企業から55万円の部品を仕入れたとします。
その後、消費税が10%に上がった後でも、税込で55万円でしか買わないと言ってしまえば、中小企業の売上は50万円になり、国に収める税金が5万円となるようなイメージです。
そうやって、大企業に毎年のように2兆円以上の消費税の還付金が流れています。
昨年度のトヨタは6,000億円以上を受け取っており、多くの自動車メーカーが1,000億円以上のお金を受け取っていますね。
最初にこの動画を出したときには、そんなのはデタラメだというコメントをいくつかいただきました。
しかし、先月、トランプ氏は、この点について、はっきりとこれは不公平だと言うことで、相互関税という考え方に則って、関税を課すと宣言しました。
日本の消費税は10%ですが、フランスなどの欧州では、20%以上のところも多く、こういった国々に対する関税の引き上げが、4月2日に予定されています。
トランプ関税は、消費税だけでなく円安も対象
それで、ここからが本題なのですが、この関税を課すという宣言の中で、トランプ氏は、消費税だけでなく、通貨安政策、つまり円安も関税の計算対象に入れると発言していたのです。
それから今月に入って、3日に、中国や日本の通貨安政策に対して、もしこのような政策を続けるのであれば、「関税を少し引き上げなければならない」と発言しました。
日本の当局は、そんなことはしていないと言ってますが、ハッキリ言ってやってます。
日本の場合ですと、それは、異次元緩和政策という形で行なっています。
2013年4月から、日銀は黒田総裁の元で異次元緩和を始めました。
日本の長期国債や株、REITなどを買いまくって、金利を引き下げ、株高、REIT高を進めていったのです。
それまで、日本の金融機関は、預金を集めて、1%ぐらいつく10年国債を買って、その利息で利益を上げてきました。ですが、それでは、世の中にお金が回っていかないということで、市中に出回っている国債をバンバン買い占めていったのです。
これによって、国内では、ほとんど金利がつかない運用先しか無くなってしまったため、海外に運用先を求めるようになりました。その結果、米国債などを購入する金融機関が増え、円安が進んでいったのです。
例えば、昨年は、農林中金が海外の債券で2兆円以上の大損をこいてましたが、それは、国内の低金利が続いてきたため、海外に活路を求めたためです。
ただ、農林中金は、リーマンショックでも大損をこいてたので、反省も責任も取らない、どうしようもない人たちの集まりだとは思いますけどね。
こんな感じで、間接的ではありますが、円安に誘導していったのは、間違いなく日銀の異次元緩和の影響が大きいですから、そこをトランプ氏は指摘しているのでしょう。
なので、現在の円安水準と、消費税の10%、その他にも輸出しにくくしているような複雑な規制などが、4月2日からの関税の引き上げの計算対象になると考えられます。
どれぐらい関税を上げるつもりなのか?
トランプ氏は、「日本が消費税や円安などで、アメリカに対して、これだけの関税効果を作って貿易してきているから、俺たちも同じだけの関税をかける」と言ってるわけですが、では、どれぐらいの関税をかけようとしているのでしょうか?
参考になるのは、第1期トランプ政権の頃のドル円のレートを根拠とするケースです。
当時のドル円相場は、だいたい105円~115円前後の間を行ったり来たりしていました。
安倍元首相とトランプ氏は、仲が良かったことで有名ですが、それは、このドル円レートの水準を適正だと考えていたこともあったと思います。
だとすると、仮に115円を適正レートと考えた場合、現在の147円というドル円は、28%安い、つまり28%分の関税をかけていると、みなされる可能性があります。
トランプ氏は、就任後の関税として25%という数字をよく使っています。
メキシコやカナダに25%の関税をかけたり、アルミや鉄鋼にも25%をかけてますので、日本に対しても25%という切りのいい数字を出してくる根拠にはなりそうですよね。
また、これに消費税の分が加われば、35%ぐらいまではありそうな気がします。そうなったら、財務省も消費税を下げなければいけなくなるかもしれませんね。
3、マーケット指標、政府の動きにも注目
このように、ドル円相場がとんでもないことになりそうな気配が、してきているわけですが、そのほかのマーケット指標や政府の動きも、確認してみましょう。
(1)日米の金利差
1つ目は、日米の金利です。
この1ヶ月で、日米の10年国債の金利差はさらに縮みました。日本の10年国債は1.5%を超え、アメリカの10年国債は、逆に4.1%台にまで下がってきています。
日本は物価上昇が止まらないため、ということもありますが、もし、トランプ政権の円安政策をやめろ、という圧力に日本が屈するとなれば、日銀による日本の国債買い入れも減らしていく可能性もあります。
最初の方で、異次元緩和と円安の関係について解説しましたが、日銀が国債を買って、金利を低く抑えたことで、金融機関が米国債などへの投資にシフトしてしまい、円安になってきたわけですから、そこを指摘されたのであれば、日銀としても、国債の買い入れをさらに減らさなければいけなくなるかもしれません。
そうすると、金利はさらに上がりますので、円高要因となります。
アメリカの好景気の嘘がバレてきた
また、アメリカの財務長官のベッセント氏が、バイデン政権の4年間は、景気がいいとずっと言われてきたが、トランプ政権になってたった1ヶ月程度で、景気が悪くなったとか言ってるけど、どういうこと?とツッコミを入れていました。
(参考:X)
つまり、アメリカの経済はずっと粉飾されていたと、取れるような発言をしていたのです。
そのような、アメリカ経済の減速感を反映して、米国債の金利は下がってきているわけですから、今後も金利が上がる可能性は低いような気がします。
そうすると、日米の金利差はさらに縮まりそうですので、やはり円高に触れやすくなりそうです。
(2)財務省による円買い介入も始まりそう
2つ目は、財務省による円買い介入の可能性です。
また、トランプ氏の今回の円安発言と4月2日の関税発動を考えると、財務省による円買い介入の可能性が高くなっているような気がします。
2022年から円買い介入が始まり、昨年は4月、5月、7月と行われましたが、その後は円買い介入は行われていませんでした。
しかし、昨年3月に行われた、財務省、日銀、金融庁の三者会合では、円安を問題として共有したとの報道がありました。当時の1ドル150円というドル円の水準が、明らかに円安だと認識していたと思われます。
なので、現在の147円ももちろん、財務省や日銀、金融庁から見れば、円安です。
アメリカからのOKさえ出れば、いつでも円買い介入をするつもりではないかと思っていたのですが、今回のトランプ氏の発言は、まさにそのOKサインをしているように映ります。
3月中に円買い介入を行うのか?は微妙
ただ、3月中に円買い介入を行うのかどうかは微妙なところです。
多くの企業の年度末になりますので、ここで急激に円高に触れたら、決算にも株価にも影響が出てきます。
思いっきり円高に触れれば、関税の引き上げ幅も小さくなるでしょうが、そもそも、どれぐらいの関税をトランプ政権がやろうとしているのかわからない中で、円買い介入を行って、結果的に10%引き上げますと言われても、なんで10%も上げさせたんだ!という、国内の批判が出てきそうな気がします。
だったら、とりあえず4月2日にトランプ政権が考える関税率を発表させて、そこから円買い介入によって、これだけ関税を引き下げることができました、ということを見せた方が、国内の納得感が得られるという計算も成り立ちそうです。
もし、1ドル120円ぐらいまで下がれば、物価も2割ぐらいは下がるでしょうし、アメリカ向けの輸出の際の関税も引き下げられるはずなので、一般庶民にとっては、いいことばかりのような気がしますね。
(3)投機筋の円買いも増えてきた
そして、3つ目は、投機筋の円買いです。
日米の金利差の縮小や、財務省による円買い介入の可能性もあって、円高にかける投資家が増えています。
シカゴ先物市場での、ドル円の通貨先物を見ると、昨年までは円安を予想する円売りポジションが続いていたのが、ここ1ヶ月ぐらいで円買いに転換していますね。
ということで、この1ヶ月の、トランプ政権やマーケットの動きを見てきました。
私がずっと円高になると思い込んでいるからかもしれませんが、以前よりも円高になりそうな条件が増えてきているような気がします。
注目は、4月2日の関税発動までに、財務省が円買い介入をするのか?ということですね。
これまで、こういう節目節目で、何かあるのでは?と言ってきましたが、ことごとく外れているので、話10分の1ぐらいで捉えていただいた方が、精神衛生上良さそうです。
また、1ヶ月後に、答え合わせをしていきたいと思います。
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