この記事では、「トランプが台湾に突きつける、エグい2択」ということで、やっていきたいと思います。
1、はじめに
3月5日、アメリカ国防総省の政策担当次官候補である、エルブリッジ・コルビー氏が、上院軍事委員会の公聴会で、「日本は防衛費をGDPの3%まで上げるべきだし、台湾は10%まで上げるべきだ」と発言し、日本のメディアでも、大きく報道されました。
日本に対しての3%という発言は、以前もインタビューで答えていたので、あまり驚きはありませんでしたが、台湾に対しての10%は、かなり驚かされました。
現在、台湾のGDPは、約117兆円ですので、10%となれば、ざっくり12兆円になります。
台湾の年間の国家予算は、約13兆円ですから、ほぼほぼ、年間予算を全部軍事費に当てろと言っていることと同じになります。
これは流石に、ムチャクチャな要求のように見えますよね。ですが、コルビー氏は、もし承認されれば、「我が国は、台湾に対して、適切な動機を与える必要がある」と、この公聴会で訴えています。
つまり、承認されれば、台湾に対して、早く国家予算規模で、軍事費を上げろと圧力をかけると言っているのです。コルビー氏は、トランプ大統領に指名を受けていますので、当然、トランプ氏の意思を反映したものと言えます。
トランプ政権は、台湾独立を支持?
さらに、トランプ政権になって、国務省のHPの台湾に関するページから、「台湾の独立を支持しない」という文言が削除されていることが話題となっています。
これは、アメリカが台湾の独立を認めるつもりか?、と中国外務省は受け止めており、アメリカに対して警告を行っています。
今回のコルビー氏の発言と合わせて考えると、「独立したいんだったら、死ぬ気で軍事費を上げなきゃダメよ」と言ってるように見えるのは、私だけでしょうか?
半導体製造大手のTSMCが、米国に事実上の引っ越し?
これだけではありません。
2日に、台湾の半導体製造大手のTSMCが、アメリカに1,000億ドルの投資を行うと発表しました。これはTSMCにとって、過去最大規模の投資案件となります。
これまで、アメリカが台湾を守るメリットの1つに、最先端の半導体工場がありました。生成AIのチップを設計するNVIDIAに対して、実際にチップを作るのがTSMCだったからです。
しかし、今回の発表によって、アメリカに工場を作ることが決まったので、台湾を守るべき大きな理由の1つが、無くなったことになります。
つまり、アメリカにとって台湾は、中国がこれ以上、調子に乗ったら困るなあ、ぐらいの価値に下がってしまった可能性すらあるのです。
トランプ政権のエグいメッセージ
これら3つを繋げて考えた場合に、トランプ氏の台湾に対するメッセージは、以下のようになります。
「アメリカにとって大事な半導体工場も、アメリカ国内に作ってくれることになったから、台湾を守る必要は無くなってきたよね。どうしても、守って欲しかったら、国家予算を全部軍事費に当てるぐらいに、必死でお金を貢いでもらおうかな。」
ということになります。
おそらく、これらのニュースを受けて、台湾の方は、トランプ氏をまるで鬼か悪魔のように見ているのではないでしょうか?
2、なぜ台湾にこれほどの仕打ちをするのか?
ですが、不思議ではないですか?
トランプ氏は、NATO各国に対して、GDPの5%まで上げろと要求し、日本には3%を要求してくると思います。
なぜ台湾だけが、10%という、とてつもないハードルを求めているのでしょうか?
私が思うに、理由は2つあります。
理由1:民主党政権に戻ったら、台湾が戦争に巻き込まれる
1つ目は、アメリカが何年後かに、民主党や戦争屋に政権を乗っ取られた時に、アメリカを頼らないで済むレベルの軍事力を持ってもらう必要があると、現在のトランプ政権が思っているからです。
こちらの動画で、詳しく解説しましたが、これまでのアメリカは、中東やヨーロッパの小国に介入して、戦争の火種を作っては、軍事介入することで、兵器産業を儲けさせてきました。
トランプ氏は第1期の頃から、NATOから徹底したいと言ってきましたが、ただ撤退するだけでは、政権が変わった際に、またアメリカがNATOに再加入して、戦争を起こす可能性があります。
そこで、ヨーロッパ諸国にGDPの5%まで、軍事費を上げろと要求しているのです。
このレベルまであげれば、欧州のNATO諸国の国防予算が、アメリカの国防予算を超えるので、アメリカに頼る必要がなくなりますからね。
このように考えると、台湾に求めているGDPの10%という要求は、中国からの国防的な意味だけでなく、アメリカからの自立という意味で、求められていると考えられます。
理由2:中国による、台湾併合を支援するため?
そして、2つ目が、中国による、台湾併合の支援です。
GDPの10%というのは、現在の台湾の軍事費の6倍であり、ほぼ国家予算ですから、台湾の方々が呑めるはずがありません。
しかも、TSMCはアメリカに15兆円の投資をするというのですから、アメリカの台湾に対する産業的価値もかなり下がります。
なので、台湾のアメリカに対する交渉力は、かなり落ちていくと予想されます。
これに加えて、トランプ政権は、関税をさらに引き上げていきますので、台湾としても、米ドルが稼ぎにくくなります。
こうなると、「もう中国と一緒になった方が良くね?」という声が、日に日に増していくことは、避けられないでしょう。
2024年に行われた、台湾総統選挙では、台湾独立派の民進党のライ氏が当選しましたが、得票率は40%だったのに対して、2位の親中派の国民党は33%と、かなり拮抗していました。
そして、今後アメリカの関税で、台湾経済が苦しくなっていくことが避けられませんので、中国への依存度がさらに上がることが予想されます。
もちろん、いきなり併合となれば、台湾の方の強烈な反発が出てくると思いますので、香港のように一国二制度で何十年間かの準備期間を設けるとなれば、台湾国内での国民投票を行ったとしても、賛成の方が多くなる可能性は、十分にありそうです。
3、2つの超大国に挟まれる台湾の現実
ここまで、好き勝手に、台湾の併合の可能性について語ってきましたが、台湾の方が見られたら、間違いなく不快に思われたと思います。
その点は、申し訳なく思います。
ですが、ちょっと考えて欲しいのです。
2022年に、アメリカのペロシ下院議長が、台湾を訪問しました。
ペロシは当時、アメリカのNo2と言われる立場にあり、そんな人が台湾に行けば、台湾を正当な独立国とみなしたと世界が捉えることになります。
中国は台湾を中国の一部と言ってましたので、当然にメンツは潰され、激しく怒りました。
その後の8月4日から7日かけて、台湾周辺で中国は軍事演習を行い、中台関係にかなり緊張が走りました。
そして、2024年1月1日に、中国は「愛国主義教育法」を施行しました。
こちらの記事によると、この法律の真の目的は、反日教育の強化ではなく、台湾統一への強烈な意思が込められていると言います。
第23条に「法に基づき台湾同胞の権利と利益を守り、『台独』分裂行動に断固として反対し、中華民族の根本的利益を守る」と追加されています。
台湾の独立は絶対許さないと宣言しているのです。
こんな強気になってしまったのは、おそらく、ペロシ訪問のせいでしょう。
これと全く同じことが、2012年の日本による尖閣諸島の国有化と、その後の反日デモになります。くわしくは、こちらの動画で解説しています。
どちらも、習近平国家主席の第1期と第3期の、就任式を前にしたもので、習氏の国際的なイメージの低下と、日中間、そして台中間の関係悪化を狙って、アメリカの民主党がやったことです。
つまり、トランプ政権は、台湾の人たちにこう言っているのです。
「これから4年後か、それ以降かもしれないが、民主党政権が返り咲けば、アメリカが中国を挑発して、台湾を紛争のおもちゃにするが、それでもよろしいか?」
ということなのです。
そして、当然ですが、トランプ政権は、こういう事態を望んでいませんし、いつの日か、民主党が返り咲いたとしても、台湾有事にアメリカ国民が巻き込まれないように、手を打とうとするのではないかと思います。
なので、おそらくですが、トランプ政権は、以下のエグい2つの選択肢を台湾に突きつけようとしているのだと思います。
1つ目は、民主党が返り咲いたときに、アメリカが台湾をおもちゃにできないレベルの軍事力を持ってもらうために、GDPの10%の軍事費を呑んでもらうこと
2つ目は、アメリカが台湾に手出しできないように、中国との併合を選んでもらうこと
の2つです。
トランプの台湾への仕打ちは、ガザへの対応に似ている
トランプ氏は、ガザの人たちをエジプトとヨルダンへ移住させ、その後にガザの瓦礫を撤去して、一大リゾート地として復興させると表明し、各国から非難を浴びました。
結局、「イスラエルにガザを明け渡すつもりだろ」とか、「パレスチナ住民のことを何も考えていない」とか、そういった批判ですね。確かに、こう思われても仕方がないような政策だと思います。
しかし、イスラエルとパレスチナの二国家解決を目指して何十年と経ちましたが、結局、この問題は、何の進展もありません。そして、その間、多くの場合において、パレスチナ人の人たちの命が失われてきました。
トランプ氏の提案は、確かにパレスチナ人の方たちの権利を無視しているように見えますが、それでも、これが実現すれば、少なくとも紛争はなくなるでしょう。
私が考える、現在の台湾に突きつけようとしている、トランプ政権の提案は、このパレスチナに対する移住提案に近いものを感じます。
台湾の方々の権利とか、感情とか、そう言ったものは、無視していると思います。
ですが、「いつの日か、俺たちアメリカが狂って、中国と戦争させられるよりはマシでしょ。」という判断をしているように思いますね。
この辺りをもうちょっと考えてみると、日本に対して、アメリカがどう考えているのかも、はっきり見えてきそうな気がします。
日本の今後については、改めて考えたいと思います。
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