この記事では、「ロシアがそろそろ勝ちそう。プーチンが描く世界新秩序」ということで、やっていきたいと思います。
1、はじめに
ゼレンスキー大統領に対する大規模な抗議デモが、ウクライナ全土で起こっているようです。これは、2022年のロシア侵攻後で初のもので、理由は、ゼレンスキー氏が、2つの汚職取り締まり機関を大統領の管轄下に置く法律を通したためと言われています。

つまり、政治家による汚職を骨抜きにしようとして、国民がブチギレたというわけですね。
また、これを受けて、EUは、17億ドルの援助を削減すると発表しています。
しかし、ウクライナの汚職がひどいのは、以前から知られていたことですし、これまでのEUは、それを無視して、ウクライナに対する全面支援を表明していました。

それが今更、こんなひどいなんて知らなかった!これでは、私たちもお金は出せません!なーんて、わざとらしい反応を見せているのは、そろそろ、ウクライナ戦争を終わらせようという動きが出てきているからではないでしょうか。
最近のトランプ氏やプーチン氏の動きを見ると、どうも、戦争終結は9月ごろを意識しているように思います。
9月には、北京で戦勝勝利80周年の式典があり、プーチン氏もトランプ氏も参加する予定のようで、この時に首脳会談を行うと予想されています。

また、7月16日には、NATOの事務総長のルッテ氏と会談した際に、50日以内に停戦しなければ、ロシアに関税をかけると、ほとんど意味のない脅しの発言をしてました。この発言から50日後といえば、訪中するタイミングです。

そして、9月からウクライナでは、18歳以上の青年への徴兵も一部始まるということなので、子供を巻き込むのはよくないから、この辺が潮時かな、ということなのかもしれません。
実際、トランプ政権になって、ウクライナへの軍事支援は続いているものの、新規予算は計上されておらず、今年になってからは、13億ドル分ぐらいしか武器を送っていません。それまでの3年弱で、1300億ドルを費やしてきたことを考えると、ウクライナへの支援はグッと減っていることがわかります。

一方で、欧州は、今年初めの3ヶ月で、235億ドルをウクライナ支援に費やしており、残り9ヶ月でさらに406億ドルの追加を予定しています。
それまでの3年弱で1200億ドル以上突っ込んできましたが、年あたりの負担額は5割り増しです。かなり財政負担が重くなっていることがわかります。
なので、もういい加減、こんなよその国の戦争に、金を突っ込むことにウンザリしてきたということなのかもしれません。
こんな感じで、ロシア勝利で終わりに向かっているウクライナ戦争ですが、この戦争が終わった後の世界秩序は、どのように変わっていくのでしょうか?
この記事では、プーチン大統領の過去の発言やインタビューなどから、今回のウクライナ戦争が、なぜこのタイミングで終わるのか?プーチン氏は何を達成したと考えているのか?について、考察していきます。
それでは、参りましょう。
参考書籍
その前に、今回の動画で参考にした書籍をいくつかご紹介します。
①オリバー・ストーン・オン・プーチン

まず一冊目は、オリバーストーン・オン・プーチンです。
これは、2015年に映画監督のオリバー・ストーン氏が、クレムリンに行ってプーチン氏にインタビューしたものになります。映画にもなってますね。
オリバー・ストーン監督は、プラトーンやJFK、そして2017年にはエドワード・スノーデンを題材にした「スノーデン」などの映画を撮っています。
また、オリバー・ストーンは、映画だけでなく、アメリカの歴史についての書籍も出しています。
「オリバーストーンが語るもう1つのアメリカ史」という本で、これは、いかにアメリカが、戦争三昧の国だったか、そして、それを裏で操っていた奴らや誰だったのか?といったことが書かれており、かなりアメリカ政府に対して、批判的な見方をしている人ですね。
そんな人が、プーチン氏とのインタビューを行なったものなので、かなりプーチン氏の話を引き出してくれています。
昨年行われた、タッカー・カールソンとプーチン氏のインタビューも、プーチン氏の考え方がよくわかると思いますが、こちらは、2014年に起こったマイダン革命に対して、プーチン氏がどのように見ているのか、分析しているのかがわかるものとなっています。
この本を読んで驚くのは、プーチン氏の記憶力の良さ、そして知識量です。
例えるなら、トヨタぐらいの大企業の株主総会で、全部の部署、車種、地域戦略など、すべての質問に対して、質問者を納得させるレベルで応えているぐらいに、全部わかってる、というような、そんな印象を持ちました。
YouTubeで、プーチン氏を批判している動画は結構見かけますが、
「ロシア人だし、何考えてるかわからん」とか、
「ウクライナにいきなり攻めるなんて、頭が狂ったんだ」
みたいな感じの動画が散見されますが、ちょっとそういうことを言ってる人は、この本を読むか、せめて、タッカー・カールソンとのインタビュー動画を見るぐらいは、したほうがいいんじゃないかなと思います。
じゃないと、今後の世界を読み誤ることになると思います。
②プーチン重要論説集

二冊目が、プーチン重要論説集です。
こちらは、2000年から2022年までの、プーチン氏の主な演説をそのまま翻訳したものです。
解説と、編集を山形浩生さんという方がされていますが、かなりプーチン氏に対して、批判的なコメントが加えられているので、一見すると、プーチン=酷い奴、みたいな頭の人なのかなと思ってしまいますが、そもそも、ここまで20年以上の演説を翻訳して出すこと自体、テレビや新聞では絶対に出てこない内容なので、読む価値は大いにあります。
この本が出たのは、2023年なので、まだ日本国内でも、ロシア=悪玉説は、今よりも根強かったと思いますので、こういう批判している体で出すことで、批判をかわす狙いがあったのではないかなと思います。個人的には、いい仕事をされていると思いました。
③ネオ・ユーラシア主義

そして、三冊目が、ネオ・ユーラシア主義です。
こちらは、浜由樹子先生という、都立大の教授の方で、国際政治、特にロシア研究をされている方です。
ロシア人が、ロシアのことをどのように捉えているのか?ということを解説してくれています。
これを読むと、ロシア人の歴史観や、これからロシアはどう世界と関わるべきか?ということのイメージが掴めると思います。
④タッカー・カールソンとのインタビュー記事

それと、タッカー・カールソンとプーチン氏とのインタビューの書き起こし記事のリンクも載せておくので、本を買うほどではないけど、プーチン氏の頭の良さを知っておきたいという方は、こちらを読んでみることをお勧めします。
それでは、ここからが本題です。
2、プーチン氏の基本認識

まず最初に、2022年2月にロシアがウクライナに侵攻する直前の、ロシア国民に対する演説内容から、プーチン氏の基本的な認識について整理しておきましょう。
(1)ウクライナ政権について
1つ目は、現在のウクライナ政権についての見方です。
プーチン氏は、ゼレンスキー大統領以前の、具体的には、2014年のマイダン革命以降のウクライナ政府は、日本の戦前の陸軍や、ナチスのような軍事政権だと見ています。

ウクライナの人口構成は、ウクライナ人が約8割、ロシア人が2割弱、それ以外にも、モルドバ人、ベラルーシ人、タタール人など、さまざまな人たちがいます。
しかし、現在のウクライナ政権は、ウクライナ人以外は、人権なしみたいな、酷い扱いをしているのです。

実際、ウクライナ東部の州において、2014年のイロヴァイスク、そして2015年のデヴァルツェボという都市に対して、ウクライナ軍は激しい空爆や軍の投入を行いました。
これらの地域は、ウクライナ東部の、ロシア語を母国語とするロシア人たちです。
これによって、東部に住んでいた人たちのうち、200万人が難民となったそうです。
例えるなら、東京で軍事政権ができたことで、関西がそんな政府は認められないと、大阪都をつくって、東京から独立しようとしたら、自衛隊を使って戦車や戦闘機で、大阪に攻め込んできた、みたいなイメージでしょう。
なので、ロシア侵攻の目的として、非ナチ化という言葉を使っていますが、これは、政権の中の一部の人たち、みたいなものではなくて、数千人とか、一万人単位の官僚や軍人、政治家の公職追放や、戦争責任の追求が含まれていると考えられます。
(2)アメリカそしてNATOについて
2つ目が、アメリカそしてNATOに対する見方です。
ウクライナがこんな狂犬のような政権になった原因は、ソ連時代の共産党にも責任があると認めていますが、それを焚き付けて、育ててきたのは、アメリカでありNATOだと、プーチン氏は考えています。

昨年のタッカー・カールソンとのインタビューでプーチン氏は、このように話しています。
ここからが引用です。
「アメリカの政治指導部は、ロシアを削り続け、分割を試み、この地域に複数の準国家を創設し、それらを完全に統制して、将来の中国との闘争に、それらの潜在力を活用する必要があると確信しました。
これは誤りであり、ソ連との対立に尽力した人々の過剰な潜在力も、その例外ではありません。これを一掃する必要があります。」
以上です。
過剰な潜在力とは、ワシントンのたくさんある妄想じみた計画をあれこれ考えるシンクタンクのことです。
つまり、現在のNATO拡大は、アメリカの頭でっかちなシンクタンクが、机上で考えた空論であり、地図を見ながら、ゲーム感覚で戦争をやるような奴らは一掃されるべきだと答えているのです。
さらに、ロシアはアメリカにとって、ただのステップに過ぎず、本命は中国だというのです。
プーチン氏は、習近平氏とも仲が良く、ウクライナ戦争以降、中国はロシアをしっかりバックアップしていますが、これは、ロシアがやられたら次は中国だと考えているからこそなんですね。
(3)ディープステートについて
そして、3つ目は、ディープステートに対する見方です。
トランプ氏は、選挙戦の頃から、ディープステートを倒すと言ってましたが、プーチン氏も同じように、ディープステートが、ロシアが潰さなければいけない存在だと見ていると思われます。

では、ディープステートとは何か?というと、それは官僚です。
もともと、プーチン氏は、クリントン政権の頃に、クリントン氏にロシアもNATOに入れてくれないか?と提案したところ、「うちのチームの奴らがダメだっていうから、無理だわ」と断られたそうです。
チームとは、官僚のことですから、プーチン氏は、アメリカの官僚が政治家を捻じ曲げていると見ていたのです。
プーチン氏も、元々はKGBというスパイ組織から上がってきた人であり、ソ連の腐敗して機能しない官僚制と、その崩壊の様を見ていましたので、アメリカの官僚の思考様式を把握していたようです。
それを一言で言い表すと、「アメリカが一番だから、みんな俺たちに従わせなければいけない」というものです。
官僚は、政治家のように選挙で責任を取る必要もありませんし、組織の文化や、価値観が変わることはほとんどありませんので、一度こうだと決まってしまうと、社会がどんどん変化していっても、対応することができず、ずっとロシア敵視を変えないままのようなんですね。
そのため、アメリカもウクライナも、国家のあり方を変えるためには、官僚も入れ替えるぐらいでなければいけないと考えていると思われます。
以上のことから、今回のロシアのウクライナ侵攻の目的は、
・ウクライナ政府の中にいる、ロシア人を無茶苦茶にしても、何とも思わないやべえ官僚たちを全員一掃する
・ウクライナを焚き付けて、ロシアを無茶苦茶にしようとする、アメリカやNATOに、2度とちょっかいを出してこないようにさせる
の2点だと考えられます。
トランプ氏は、昨年の選挙戦の頃から、ディープステートをぶっ潰すと話してきました。
なので、プーチン氏の考えと共鳴するところは多そうです。

就任早々、USAIDや、CIA、FBIなどを掌握して、海外でアメリカが戦争を焚き付けるようなことは少なくなったように思いますが、それでも政権が変われば、スタッフもゴソッと入れ替わるのがアメリカです。
なので、もしプーチン氏がウクライナ戦争を終わらせるのであれば、ウクライナ政府の非ナチ化だけでなく、アメリカが2度とロシアにちょっかいを出さないこと、つまり、NATOからの事実上の脱退をトランプ氏に求めるはずです。
もしこれをやらなければ、2014年、15年の戦闘後に結ばれたミンスク合意のように、また、簡単に破棄されて、ウクライナが再軍事化させられてしまいますからね。
アメリカはNATOから撤退する?
そのような目で見た場合、6月24~25日にかけて、オランダのハーグで行われたNATOサミットは、その動きの一つと見られます。

このサミットでは、NATO加盟国が、2035年までにGDPの5%にまで引き上げることを約束しました。これによって、ロシアの驚異から欧州を守ることが確認されたのです。
そして、それと同時に、アメリカ軍の撤退についても、話し合われたようです。
マシュー・ウィテカーNATO米国大使は、このサミットが始まる前に、国防総省が夏の終わりから秋の初め、つまり、トランプ氏が中国へ行く頃には、欧州の米軍の駐留についての今後の計画が決まると発言していました。
現在、欧州にアメリカ軍は8万人駐留しており、どの程度削減するのかは分かりませんが、欧州が自立すると宣言したわけですから、たくさん駐留する必要もありません。
そのため、おそらく、今後の欧州やロシアに対するアメリカの関与は、基地や兵士の削減を通じて、目に見える形で減っていくものと予想されます。
3、ロシア勝利後の世界秩序
では、仮にプーチン氏の目的が達成されたとして、その先に、プーチン氏はどのような世界観を持っているのでしょうか?
この点について、おそらくですが、ユーラシアニズムという考え方が、ポイントとなってくると考えられます。

ユーラシア主義というのは、プーチン氏以前の、それこそソ連時代から、いろいろな人たちが考えてきたもの、ロシア独自の思想です。
それは、いろいろな種類があるようですが、共通するのは、3つあって、
・冷戦では負けたけど、だからと言って、リベラルデモクラシーと新自由主義的な経済が唯一の正解だとは考えない
・ロシアは欧米とは異なる条件と歴史を持っているのだから、欧米諸国の一員としてではなく、ユーラシアという別のカテゴリーに位置付けるべきだ。特に、多民族国家のロシアは、民族ごとの自立を目指すと碌なことがないので、ロシアという国家を基礎に置くべきだし、他の国もそうすべきだ
・そして、このユーラシアというカテゴリーは、多極化世界になった時に、欧米とは別の極として、独自の道を歩むぐらいのポテンシャルがあるし、それを目指すべきだ
というものです。
ソ連崩壊後、ソ連に入っていた国々は、経済的に大きな混乱に巻き込まれ、思いっきり貧乏になりましたから、豊かな欧米世界に憧れてたロシア人は多かったと言います。
ですが、クリントン政権の時にNATO加盟を断られて以降、ロシアは、アメリカ、NATOにとっての仮想敵国として、欧米の仲間に入れてもらえず、しかも、民主化のどさくさに紛れて、アメリカと繋がっていたオリガルヒが、国営企業を乗っ取ってしまい、貧富の格差もとんでもなく開いて、散々な目に遭ってきました。

そのため、ロシアの世論調査では、「ロシアはヨーロッパの国ではない」と答える人の割合は、2008年には36%いたのに対して、ウクライナ戦争前の2021年時点でも、すでに64%にまで上昇していました。
なので、欧米とは違う文明圏の人間として、自分たちを捉えようという動きは、さらに広がっていると思われます。
しかし、面白いのは、プーチン氏は、民族主義的なナショナリズムも否定しています。
実際、現在ウクライナに攻め込んでいるのは、ウクライナがウクライナ人だけのナショナリズムに狂って、国内にいるロシア系住民に戦争を仕掛けたことが原因だからです。

日本と違って、多くの国では、多民族国家であることが普通なので、特定の民族をアイデンティティとして政治が盛り上がると、他民族の排斥につながってしまいます。
そのため、宗教や民族ではなく、歴史とか地理的な環境とか、そういうものからロシアという国家への愛国心がつながるようにしようとしているように思います。
なので、プーチン氏の演説を見ると、ロシア正教がロシアのアイデンティティなどとは言いません。イスラム教の人も2割ぐらいいますからね。
また、プーチン氏の考え方を見ると、国家としての自立と、国益に基づいた対等な関係を作っていくことが、安全保障にもつながるし、経済成長にもつながるということをアメリカのような建前ではなく、本気でやっているように思います。
例えば、昨年のBRICSサミットでは、貴金属や穀物の取引所の開設を発表しましたが、これは、欧米の投資資金で滅茶苦茶にされないようにするための、ドル以外の通貨で決済を行う、独自市場として作られる予定です。
また、貧困から抜け出せないアフリカ諸国に対して、技術供与を通じて、肥料の製造や、貴金属の採掘、精錬など、付加価値の高い産業を育てる支援なども行なっています。
これまで、欧米の企業は、アフリカに進出しても、低賃金で肉体労働させるだけで、美味しいところは全部持って行かれていたということで、アフリカ諸国も植民地時代と変わらないじゃないかと怒っていたところでしたので、ロシアの提案は渡りに船だったのでしょう。
このように、お互いが豊かになれるような対等な関係を目指すことで、国家間の結びつきを強め、弱いものいじめが趣味の欧米の資本主義から、国家を守っていこうというのが、BRICSや、大ユーラシア・パートナーシップ構想などの、地域ごとの経済共同体の進む方向性ではないかなと思いますね。
というわけで、ロシアが勝ちそうな雰囲気なことと、今後の世界秩序について、考察して見ました。
今後の注目点は、9月のプーチン氏とトランプ氏の訪中でしょう。
終戦記念式典ということなので、ウクライナ戦争の終戦と掛け合わせれば、とてつもない偉業を成し遂げたような演出になるので、派手好きなトランプ氏としては、ここで決めておきたいと思うような気がします。
あと1ヶ月と少しですから、また改めて、この結果と今後について、考察していきたいと思います。







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