この記事では、「勝った勝った詐欺のトランプ。実現不可能な契約を散りばめて、相互関税で勝利宣言の理由」ということで、やっていきたいと思います。
1、はじめに
7月31日に、トランプ政権は、各国との相互関税率について発表しました。以前は8月1日から開始するという予定でしたが、8月7日まで延期されることになりました。
日本は以前から伝えられている通り、15%ということでしたが、その後EUや韓国、台湾、インドなどの国々も、関税交渉が終了して、今回の税率に反映された形となっています。

今回のトランプ関税の目的は、アメリカに製造業を戻すために、貿易赤字の多い国からの輸出を減らすこと、そして、アメリカ国内に工場を作ってもらうことなどがあるわけですが、貿易赤字上位10カ国の、関税率などを整理したのがこちらです。

ご覧の通り、EU、日本、韓国は、上位10カ国の中でも、関税率は15%と、最も低くなっていますが、対米投資や、液化天然ガスの購入などで、何十兆円単位ものお金を使わされることを約束しています。
ところが、それ以外の国は、ほとんど何もないのです。
例えば、中国やメキシコは、25%以上とも言われてますが、関税交渉はさらに90日間延長され、11月までは10%のままです。
また、カナダは35%を適用されましたが、以前からの貿易協定で決められた品目については、無税のままということなので、輸出品のうち、75%から90%ぐらいは無税となっています。
さらに、台湾やベトナムは、20%となっていますが、日韓EUのような、何十兆円ものアメリカへの貢物もありません。
日本は80兆円もの対米投資を約束してますが、ベトナムと5%しか関税率が違わないのだったら、20%で対米投資をしないという方向で交渉した方が良かったのではないでしょうか?
また、その一方で、日本や韓国、EUが、アメリカと決めた交渉内容も、かなり怪しいことが判明してきました。
トランプ氏は、日本からの投資のうち、儲けの9割はアメリカに、1割は日本に、という話をしてましたが、それは全体の投資のごくごく一部にしかすぎず、1~2%、つまり1兆円程度の投資分についてだ、というのが、赤澤経済再生担当省の発言です。

さらに、EUや韓国の液化天然ガスの購入も、実現不可能と考えられています。
日本は、昨年2024年に、液化天然ガスを年間6500万t、金額にして約6.2兆円購入しました。

一方で、アメリカの2023年の輸出量は、約9000万tです。
推定9~10兆円程度の輸出額なのです。
ところが、今回のEUと韓国の契約は、年間約2800億ドル、42兆円もの購入契約となっています。2023年の4倍ぐらいに、輸出量を増やして、しかも全量を韓国とEUに割り当てて、やっと達成できるという水準なのです。
アメリカ政府の昨年の予想では、2028年には24年比で倍増できるとしていますので、3年後でようやく倍なのです。
それでも、EUと韓国の年間2800億ドルの購入枠のうち、半分ぐらいしか満たせない計算となります。2倍の価格で買い取ってもらうなら話は別ですが、それは流石にないでしょう。
また、EUは、これに加えて、大量の兵器をアメリカから購入するという話になっていますが、具体的な話は全くないようで、専門家からは意味不明と言われています。

つまり、今回の日本、韓国、EUの大量購入、大量投資という話は、真っ赤な嘘か、話を2倍とか5倍とか、そういうレベルで盛りに盛っている可能性があるのです。
ではいったい何のために、トランプ政権はこんなことをしているのでしょうか?
この記事では、この謎について考察していきます。
それでは、参りましょう。
2、なぜトランプ氏は、こんなことをやってるのか?
相互関税で盛りに盛っている理由、それは、私が思うに、大きくは3つあります。
(1)嘘と本当で、煙に巻く

1つ目は、嘘と本当を混ぜることで、経済への影響を見えにくくするということです。
4/2の相互関税発表後、マーケットは大きく下落しましたが、その1週間後には、90日間の延長を宣言し、さらに8/1まで延長し、そこから、さらに8/7からと伸ばしに伸ばしてきました。
しかも、対米貿易黒字が1位の中国と2位のメキシコは、さらに3ヶ月延長されています。
こんなにコロコロ言うことを変えるので、「トランプはいつも逃げる」と言う意味の英語、Trump Always Chicken Out を略して TACO とまで、言われるようにまでなってしまいました。
しかし、これによって、これから景気がどうなるのか?企業業績がどうなるのか?が、全く予想がつかなくなっています。
例えるなら、忍者が煙幕を使って、戦っているようなものです。
そうなると、マーケットは下がりそうなものですが、中東に行って300兆円のディールを勝ち取ったとか、今回の相互関税でも、日韓EUから200兆円以上の対米投資を勝ち取ったとか、そういう景気のいい話が飛び出せば、よくわからんけど、景気はこれから良くなりそうな気になってきますよね。

その証拠として、昨日8/1に、雇用統計の結果が発表されたのですが、予想以上に悪く、しかも、過去2ヶ月分の実績も大きく下方修正されたことで、マーケットは下落し、ドル円も150円台から一気に147円台にまで、3円円高になりました。
この結果を受けて、トランプ氏は、「不正操作だ!」とブチギレて、雇用統計の作成責任者である、労働統計局長を解任しました。
せっかく国民を煙に巻いて、いい話を散りばめて、いい気分にさせてきたのに、正気に戻ってしまうじゃないか!と言うわけですね。
(2)やべえことをゴリゴリ進めたい

2つ目は、このように煙に巻きながら、いい話を散りばめている間に、やべえことをゴリゴリ進めたいからです。
それは、イスラエルによるガザ地区とヨルダン川西岸の併合です。
イスラエルは、先月、議会でヨルダン川西岸の併合を可決しました。
また、ガザ地区においても、各国からの食糧支援を妨害することで、住民が飢餓状態になっていると言うことが報道されています。
これに対して、トランプ氏は、一貫してイスラエルを支持しています。
流石に、アメリカ国内のトランプ支持者でも、よほどのイスラエル支持者でなければ、トランプ氏のやってることは酷いと思っているでしょう。
ですが、普通の人にとっては、よその国のことです。
トランプ氏がいかにやべえイスラエルの肩を持っているとはいえ、目の前の経済を良くしてくれるのであれば、あまり文句は言わないでしょう。
逆を言えば、景気が悪くなってる中で、人道犯罪にも手を貸していると言うことになれば、トランプ支持者でも、反対する人が増えていくと思われます。
だからこそ、今は景気がいいんだと言うことを演出しなければいけないのではないでしょうか?
なぜイスラエルに、ここまで肩入れするのか?
では、なぜトランプ氏は、これほどまでに、イスラエルに肩入れをしているのか?
表向きの理由は、トランプ政権に対して、イスラエルロビーの影響力が大きいからでしょう。

アメリカ議会の中で、ユダヤ・イスラエルロビーからの献金を受けている政治家の割合は7割以上にもなり、イスラエル支持を明確に表明している政治家の割合も4割になります。
そのため、イスラエルからパレスチナ人を追い出して、ユダヤ人だけの国家として統一させようというお金持ちが多いのでしょう。なので、トランプ氏も、その圧力には逆らえないということではないでしょうか。
裏の理由が見えてきた
しかし、ここに来て、裏の理由が見えてきました。
それが、国際社会におけるアメリカの信用の失墜です。

2023年10月のハマスによるテロ以降、ガザ地区を中心に、イスラエルの報復攻撃が続いていますが、すでに6万人近いガザ住民が犠牲となっていますが、この2ヶ月ぐらいの間で、オランダ、フランス、イギリス、そして最近はカナダまで、承認をすると表明しているのです。
これまで、パレスチナを国家として承認する国々は、年々増えていましたが、先進国はアメリカに遠慮して、承認してませんでした。日本もしてません。
なのに、今になって、これらの国が相次いでパレスチナを国家承認するというのは、明らかに不自然です。
ヨーロッパを中心に、トランプ包囲網を結成しているという可能性は、もちろんありますが、もし、ここで日本や韓国もパレスチナの国家承認を表明してくれば、これは間違いなくアメリカの仕業だと考えられます。
では、なぜアメリカがそんなことをするのか?というと、これによって、国際社会の中におけるアメリカの信頼が失墜するからです。
トランプ政権は、世界中に散らばりすぎた米軍基地の撤退をしたいので、イスラエルと同類の極悪非道な国として見られるようになれば、アメリカは出て行けという動きが世界的に、少なくとも中東諸国の間では、起こる可能性が増えますからね。

このまま行くと、9月20日の国連総会で、先進国も含めた世界の大多数の国々が、パレスチナの国家承認をすることになります。
もし、アメリカがこれを狙っているのであれば、おそらく、日本や韓国にも、パレスチナの国家承認をさせるように圧力をかけるでしょう。
そうすることで、「アメリカとイスラエル 対 その他世界中の国々」という図式を作り、アメリカをイスラエルとともに悪役側に就かせることができるわけです。
(3)中国との弱腰外交を国民に気付かれたくない
そして、3つ目は、中国に対する弱腰外交に、注目されたくないからです。
東アジアにおいては、台湾有事が以前から騒がれており、国防総省の参謀役でNo3のエルブリッジ・コルビー氏は、「アメリカは欧州や中東から手を引いて、東アジアに注力すべきだ、だから、日本は防衛費をGDPの3.5%まで上げるべきだ、台湾は10%まで上げるべきだ」といった主張をしてきました。

そのため、日本や韓国、台湾、フィリピンなどの、アメリカと仲がいい国の政府は、これから軍事費を上げて行かなければと、準備をしていたと思います。
ところが、先月、フィリピンのマルコス大統領が、トランプ氏と会談した際に、「うちは中国じゃなく、アメリカに着きますから、なんでもやりますよ」とトランプ氏に言ったところ、「いやいや、俺たちは中国と仲良くやろうとしてるんだから、お前らも中国を敵視するのやめろよ」と言われて、肩透かしを喰らってしまったのです。

これはフィリピンだけでなく、台湾もそうでした。
台湾の頼総統が、中南米を訪問するついでに、アメリカにも寄らせてくれと、アメリカ政府に打診したところ、「今中国との交渉中だから、アメリカにはくるな」と断られてしまいました。

そのため、頼総統は、中南米への訪問も全部キャンセルしてしまいました。
また、今回の相互関税交渉でも、「中国とはうまく行ってる」とベッセント長官は発言してますが、蓋を開けてみれば3ヶ月の延期です。
全然うまく行ってないのです。

つまり、今のアメリカは、中国に対して完全に弱腰なのです。
「お前らアメリカから武器を買って、一緒に中国に対抗しようぜ!」みたいな方針だったはずが、「中国を刺激するなよ、俺まで困っちゃうじゃないか」みたいな状況になっているのです。
これに先ほどのイスラエルの件を加えると、アメリカはこれから、
・イスラエルと同じレベルの極悪非道国家
・しかも、中国には弱腰の、頼りにならない国家
という評価に変わってくる可能性があるのです。
こうなれば、日本を含めた、東アジアの国々も、
「アメリカがここまでヘタレになったのなら、中国を挑発してはいかんな。むしろ、中国と友好関係を結んで、米軍の基地を撤退してもらわなければいけないのではないか?」
ぐらいの話に、持っていこうとしているのではないでしょうか?
最近、トランプ氏は、ロシアとの関係も悪化してきているので、中国との関係悪化と、そして、弱腰外交はこれからが本番だと予想しています。







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