この記事では、「孫正義が再度、闇堕ちする可能性。DeepSeekショックで、ソフトバンクの破綻リスクを検証」ということで、考察していきたいと思います。
なお、この記事は、こちらの動画が元になります。動画の方が見やすい方は、こちらからどうぞ。
また、記事内の画像は、動画内で使用している画像をそのまま利用しています。
1、はじめに
1月21日、トランプ大統領が就任した翌日に、ソフトバンクの孫さんと、オープンAIのサム・サルトマン氏、そしてオラクルのラリー・エリソン氏の3名が、トランプ氏と会談し、今後数年間で5,000億ドル、日本円で約80兆円のAIインフラ投資を行うと発表しました。
10万人以上の雇用が増えるとも言われており、トランプ氏の実績の一つとしてアピールできるという期待もあってか、就任翌日のビッグニュースとして、扱われました。
ところが、これに水を差したのが、トランプ政権で政府効率化省のトップを担当している、イーロン・マスク氏です。
マスク氏は、この発表を受けて、X上で、「孫さんには、100億ドルぐらいしか、お金ないよ。マジな話。」と投稿をしたのです。
これは、日本のメディアでも取り上げられています。
その真相について、深く分析している記事はなく、むしろ、せっかくの景気のいい計画に水を差すなんて、サム・アルトマンと仲が悪いからじゃね?という感じで捉えられています。
ですが、本当にそんな子供の喧嘩のような話なのでしょうか?
この記事では、名前はみんな知っているけれども、実は最近の実態はあまり知られていない、ソフトバンクに金があるのか?問題についての検証と、ディープシークショックが、ソフトバンクだけでなく、日本全体に広がるかもしれないリスクについて、考察していきたいと思います。
それでは、参りましょう。
参考にしたWEBサイト
本題に入る前に、今回の記事を作成するにあたり、参考にしたWEBサイトをご紹介します。
それが、こちらのJUSTDARIO.com(ジャストダリオ.com)です。
このブログの著者は、シナックスという会社の最高執行責任者、ということで、経営者の方のようですね。
以前に増田悦佐先生の「米国株崩壊前夜」という書籍を紹介しましたが、この本の中の引用元として、こちらのブログがありました。
それで、いろいろな記事を読んでいたのですが、「ソフトバンクグループがやばい」という内容の記事をいくつも出していたんですね。そういう記事を追っかけていくことで、今回の動画の参考とさせてもらっています。
いろいろな角度から、バランスシートに対する解釈を行っていて、いかにソフトバンクグループがやばいのか?を論証していて、とても面白いです。
英語のブログで、私はさっぱり英語ができませんが、今はChromeの自動翻訳機能が優秀なので、簡単に読めますので、興味のある方は、チェックしてみてください。
2、ソフトバンク・グループとは?
まず、最初に現在のソフトバンクグループの関係について、整理しておきます。
普通の人が知っているソフトバンクは、携帯のキャリアですよね。ドコモとAU、そしてソフトバンクの3社が、大手キャリアと呼ばれますが、この携帯キャリアとしてのソフトバンクは、グループの子会社となっています。
今回の話題の中心は、この親会社のソフトバンクグループのことを指します。
では、この親会社は、どんなことをしているのかというと、携帯キャリアのソフトバンクやYahooモバイル、ペイペイなどの関連会社全体を管理するだけでなく、投資事業も行っています。
以前ですと、中国のアリババや、ウィワークという不動産テックで大損をこいたものまで、世界中のテック関連の企業に投資をして、上場させたり、上がったところで売却したりすることで、儲けている会社になっています。
なので、1月21日のスターゲート計画を発表して、参加しているのは、親会社のソフトバンクグループになります。
では、最近のソフトバンクグループの業績はどうなっているのでしょうか?
それが、こちらのグラフです。
2013~18年までは、順調に利益を上げていましたが、2019年度に赤字となり、コロナがあった2020年度は5兆円近い利益を上げています。
しかし、その後は3年連続赤字となっており、2024年の4-9月の決算では黒字に回復したという状況ですね。
なので、コロナ以降に関して言えば、それほど状況は良くなかった、と言えるかもしれません。
また、この利益額については、保有銘柄の値上がり分の含み益も入っています。
赤字になったから即やばいというわけではないですが、常に投資先の評価額が上がり続けないと、黒字が続かないような体質となっています。
多くの個人投資家は、孫さんのプレゼンで把握していると思う
今回初めて、ソフトバンクグループの決算資料に目を通してみたのですが、投資事業の部分の記載が、かなり複雑になっていました。
デリバティブなどの複雑な取引が絡み合っていて、ここの科目では損失として計上してるけど、別の科目では利益として計上してる、みたいな感じで、普通の個人投資家であれば、ほとんどお手上げなのではないかと思います。
そうすると、孫さんの決算発表のプレゼンを見てどうなのかを判断することになると思うのですが、孫さんはプレゼンが上手いですし、失敗したら失敗したと、けっこうハッキリ言いますから、
そういう話を聞くと、「今までもいい時もあったし、悪い時もあったけど、最終的には株価も上がってるし、これからも頑張ってね」みたいな感じで、そのまま持ち続けている人が多いのではないかと思います。
実際、私がずっと昔に証券営業をやってた時でも、そういうお客さんは結構いましたからね。
3、ソフトバンクGの3つのヤバいポイント
ただ、ソフトバンクグループは、総資産で40兆円を超える大企業となってしまったため、日本の経済メディアの記事を見てても、あまり批判的なことが言われていません。
ヨイショしているのか、忖度しているのかわかりませんが、結構今はやばい状況に来ていると思うので、気になるポイントを3つご紹介します。
(1)アーム株への依存度が高すぎる
1つ目は、アーム株への依存度が高すぎるということです。
つい数年前までのソフトバンクグループは、アリババの株をたくさん持っていて、その含み益がすごいということで、安泰なイメージがありましたが、現在の資産の構成比を見ると、その半分がアームという会社の株式で占められています。
このアームという会社は、パソコンやスマホ、サーバーなどで使われるCPUという、人間で言えば脳みそにあたる部分の設計図を作っている会社です。
2016年にソフトバンクグループが3兆円で買収し、2023年に再度上場しました。
現在の時価総額は、約26兆円にもなっており、親会社のソフトバンクグループよりも時価総額が高い会社となっています。
しかし、このアームという会社の株式の9割以上をソフトバンクグループが保有しています。つまり、1割しか、流通していないのです。
そのため、市場に出回る株式の数が少ないため、ちょっと買い手が増えると、上がりやすく、逆に売り手が増えると、下がりやすい銘柄となっているのです。
さらに、現在の株価収益率、PERもかなり高くなっています。
現在の予想PERは、263倍と、S&P500の平均PER22倍の10倍以上になっています。
確かに、業績は好調で、売り上げも伸びてはいますが、一般的な会社の10倍以上の評価を受けているのは、さすがに流通している株式の数が少ないためではないかと思われます。
実際、ソフトバンクグループは、保有しているアームの株式の8割以上を銀行借り入れの担保に入れていますが、85億ドルしか借りられていません。
時価評価にして、1200億ドル以上の価値のある株式を担保に入れているのに、1割ぐらいしか借りられていないのです。
融資している銀行の方でも、担保に預かっているアームの株式を現金化しようとしたら、値段が大きく下落してしまうことを想定しているのだと思われます。
(2)資金繰りは大丈夫なのか?
2つ目は、現金が足りなくなる可能性があるということです。
ソフトバンクの2024年度の決算資料を追いかけてみると、現金などが4.4兆円ありますが、1年以内に返済しなければいけない借金が9兆円近くあるのです。
*現金等:現金及び現金同等物
*1年以内の借金:有利子負債(流動負債のみ)
これまでも、現金などよりも、1年以内の返済が必要な借金の方が多い状況が続いていましたが、ここ1~2年で、その差が急激に広がっており、過去最高水準となっているのです。
また、現在の保有株の半分が、ソフトバンクが9割も保有しているアームなのです。
以前であれば、アリババ株が半分以上を占めていたため、いざとなれば、値下げすることなく現金化できていたかもしれませんが、9割近く保有しているアームを現金化すれば、値下がりする可能性は高いでしょう。
しかも、その8割以上を借り入れの担保にいれているため、株価が下がれば担保価値が下がって、さらに返済を求められる可能性もあります。
なので、昨年9月に、ソフトバンクグループは、29億ドルのタームローンという、別の銀行融資を受けています。
決算説明会資料では、3.8兆円の手元流動性があるというグラフが出ていて、問題ないような印象を受けますが、それならば、新たな銀行融資を受ける必要はないはずです。
イーロン・マスク氏が、スターゲート計画に対して、「ソフトバンクは金がないと思うよ」と投稿したのは、このような事情を見てのことではないかと思われます。
(3)DeepSeekショックの影響
そして、3つ目が、今回のDeepSeekショックです。
中国のAI企業であるDeepSeekがR1というモデルを出し、しかもオープンソースで公開しました。
これによって、これまで生成AI業界を囲い込んでいたアメリカのビッグテックを介さずに、AI開発ができるような環境になりそうです。
しかも、現在アメリカ政府は、DeepSeekがアメリカが中国への輸出を禁止しているエヌビディアの半導体を裏ルートから手に入れたのではないか?ということで、シンガポールを調査しに行っています。
実は、NVIDIAの売り上げの構成比を見ると、アメリカが45%で、シンガポールが19%となっています。
エヌビディアの決算資料を見ると、シンガポールの売り上げは、請求先のある住所のものであり、実際には、違う場所で使われている可能性もあると表記されています。
これって、もうエヌビディア自身が、中国に横流し目的で、シンガポールの企業に売ってたってことですよね?
そのため、エヌビディアは、今回のDeepSeek騒動で、中国に戦略商品として規制していた半導体を横流しできるように、わざとシンガポールへの輸出を増やしたのではないか?ということで、司法捜査を受けたり、起訴される可能性すらあります。
仮に起訴されなかったとしても、バイデン政権の任期終了直前の1月13日に、中国やロシアなどへのAI半導体の輸出規制の厳格化を発表しており、今後は、シンガポールを通じての販売が難しくなっていきます。
そうなると、エヌビディアの株価の崩壊が始まるでしょう。
アームはどうなるのか?
そうすると、アームの売り上げはどうなるでしょうか?
現在、世界の半導体市場は、生成AI向けだけが堅調で、それ以外は勢いがなくなっています。
生成AI用のサーバーの売り上げも止まってくれば、アームの売上に直結するCPUの売り上げの減少も起こります。
繰り返しますが、現在のアームの予想PERは260倍と、S&P500の平均PERが22倍ですから、平均の10倍以上の割高な株価評価になっています。
それなのに、売り上げと利益が横ばい、または減少してしまうならば、これほど高い株価を維持することは難しくなってきます。
その時に、銀行がさらにソフトバンクを支援できるのか?手元の現金がない中で、1年以内に来る大量の返済を裁くことができるのか?正念場に入ってくると考えられます。
4、孫正義が、再度、闇堕ちする可能性
前回、こちらの動画で解説したのですが、確かに、AIの技術は日進月歩で進んでいるとは思いますが、だからと言って、
「5年以上、累計で7兆円ぐらいは赤字を垂れ流すけど、いずれは黒字化します。」
なんて無茶苦茶な計画に、何兆円もお金を突っ込もうというのは、正気の沙汰ではありません。
その裏には、生成AIブームを作って、大量の参加者が入ってくる中で、なんとか儲けようとする動きがあったのだと思います。
今回の孫さんが大風呂敷を広げたスターゲート計画も、そのような大きな流れを作ることで、アームの売り上げをさらに伸ばし、S&P500の指数に入れてもらうなどして、現金化していこうという計画ではないかと思われます。
しかし、このような大風呂敷に、世界中の投資家が、これからどれだけ着いてきてくれるのでしょうか?
ソフトバンク・ヴィジョンファンドの1号は儲かってますが、2号は大損こいてますし、世界の投資家から見た評価は、あまり高くないのではないかと思いますし、ソフトバンクグループには、おそらくですがお金がありません。
また、生成AIがオープンソース化されることで、金の力で計算力を上げて生成AIを進化させるフェーズから、世界中の研究者が参加できるように、ソースを公開することで、それぞれが工夫を凝らして切磋琢磨していくフェーズへと移ってきています。
これ以上、大量に半導体を購入する必要がなくなってくる可能性があるのです。
なので、イーロン・マスク氏が、スターゲートは実現しないのでは?と疑問に思うのも無理はないと思います。
こんな感じで、現在のソフトバンクグループは、かなり追い詰められてきているように思います。
これまでも何度も修羅場を潜り抜けてきた孫さんなので、今回もウルトラC的な方法を考えついて切り抜けるのかもしれませんが、外から眺めてるぐらいの方が、気楽に楽しめるのかなと思いますね。
2020年の孫さんはヤバかった
なお、2020年のコロナショック以降の孫さんは、明らかにヤバいモードに入っていました。
ナスダック市場で、ギャンギャンオプション取引をやりまくって、「ナスダックのクジラ」と、ファイナンシャルタイムズに批判されるぐらいに、マーケットを荒らしまわっていたのです。
一歩間違えれば、会社が吹き飛ぶような、ヤバい博打に手を染めていた時期が、つい数年前にあったんですね。あれは、ダークサイドに落ちた孫正義、つまり闇正義モードに入っていたと思います。
今回の生成AIバブルが崩壊した場合には、また闇正義モードに入って、なりふり構わない孫さんを見ることになるかもしれません。その時には、改めて動画を作って、追いかけていきたいと思います。
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