この記事では、「自民党を潰しに来たトランプ。なぜ関税を30%以上に引き上げるのか?」ということで、やっていきたいと思います。
1、はじめに
1月20日のトランプ大統領就任から、もうすぐ半年が経とうとしています。
この間、世界は目まぐるしく変化しました。各地域ごとにざっくり変わった内容を挙げていくと、
ヨーロッパでは、NATO加盟国がGDPの5%にまで軍事費を引き上げることを決めました。これによって、国にもよりますが、今よりも倍以上のお金を軍事予算に注ぎ込むことになりますし、アメリカが欧州から撤退する道筋ができたと思います。
韓国もユン元大統領の謎の戒厳令失敗から、現在の李在明大統領へと変わったことで、議会と大統領の両方が、北朝鮮に融和的な「共に民主党」陣営となりました。
これによって、南北朝鮮の終戦交渉も本格化し、在韓米軍の撤退の道筋ができたと思います。
中東は、先月6月にイスラエルがイランに攻撃を仕掛け、アメリカもイランの核施設を空爆しましたが、トランプ氏はこれでイランとの決着はついた、ということで、一転して和平モードへ動き出しています。
イスラエルがどう出るかわかりませんが、もしかしたら、これで中東情勢も手打ちになってくるかもしれません。
そして、中国とは、4月の相互関税発表から、報復関税合戦が始まってエスカレートしていますが、一応、中国は10%、アメリカは55%という関税率で決着がつきそうです。
また、中国は、4月以降に、アフリカや東南アジアなどとの関係を深めており、脱アメリカを進め、BRICS経済圏を拡大させているような印象です。
このように、トランプ政権と世界中の国々は、厳しい交渉やゴタゴタはありつつも、トランプ氏が望むような方向で進んでいるように、個人的には思っているのですが、不思議なのは日本の扱いです。
昨年12月に、安倍元首相の昭恵さんとトランプ氏が面会を行いました。
トランプ氏も安倍元首相も不自然な銃撃事件に巻き込まれて、一方はなくなり、一方は一命を取り止めたような関係です。
表向きの犯人は捕まっていますが、あまりに警備体制が杜撰すぎたことがわかっており、この深層が明るみになれば、日米ともに、ひっくり返るようなスキャンダルに発展する可能性を秘めている案件です。
そのような共通点のあるお二人が、昨年12月に会っているわけですから、トランプ氏が昭恵さんと何の約束もしていないわけがない。そう思いませんか?
ところが、ここまでご紹介した通り、欧州や韓国、中東などでは、政治的に大きく変化しているのに、日本だけがトランプ氏の影響を受けずに、まるで無風状態なのことに、逆に怖さと感じるのは私だけでしょうか?
しかし、ここに来て、いよいよトランプ氏も日本に対して仕掛けてきたのではないか?
その手始めとして、今回、相互関税を30~35%へ引き上げたのではないか?
というのが、今回の動画の考察テーマになります。
それでは、参りましょう。
2、実はアメリカは中国にすでに負けている?
まず最初に押さえておきたいポイントがあります。
それは、トランプ政権がおそらく持っている認識として「アメリカは中国より弱い。または、勝てるかは相当怪しい」ということがあります。
なぜこう言えるのか?というと、アメリカのシンクタンクが、中国とアメリカとの比較をして、そう結論づけているものが、結構あるからです。
例えば、こちらはアメリカン・エンタープライズ研究所が出した、2023年のレポートなのですが、題名が「国家安全保障において、米国が中国に遅れをとる10の理由」です。
じゃあ、具体的にどんな分野で負けているのか?というと、
(1)国防予算
中国の軍事予算の中には、宇宙活動、研究開発費の大部分、建設、準軍事部隊の費用などの、米国の予算ではカバーされている範囲のものが含まれていない。そのため、アメリカと中国の軍事予算は、米国の方が2割程度多いぐらい。
しかも、これは名目GDPでの比較であり、購買力平価という、りんご1個が同じ値段で買えるように、ならして計算すると、中国とアメリカは、ほぼ同じかそれ以上の軍事予算を使っている
(2)極超音速ミサイル
(参考:国防総省)
今回のイスラエルに対するイランのミサイル攻撃で話題となったミサイル。アイアンドームを破ってイスラエル国内に大きな被害をもたらした。
このミサイルの開発は、アメリカよりも中国の方が進んでいて、射程距離は1600キロ以上あるため、台湾や南沙諸島などへの攻撃も可能。
また、ミサイルの種類、在庫ともに世界最大となっている。
(3)艦隊の規模と戦力
中国の艦隊数は340隻で、アメリカの297隻を大きく上回る。
さらに2030年ごろには、中国が440隻、アメリカは300隻とさらに格差が広がる。
中国の商船製造のシェアは44%と世界最大で、自前で作れるが、アメリカではディーゼルエンジンの製造できる会社は、以前は6社あったが現在は1社にまで減っていて、各種部品を各国から調達しなければいけない状況。
(4)製造業と製造基盤
世界最大の防衛企業15社のうち、7社が中国の国有企業。
また、中国の製造業は、世界の総生産量の25%を占め、そのうち約半分が、軍事でも民間でも利用できるようになっている。
また、44の重要技術のうち、37の分野で世界をリードしており、その中には、極超音速ミサイルや、ドローン、先進ロボット工学などの、軍事用途も含まれている。
(5)鉱物と希土類
防衛産業に関する37種類の鉱物のうち、オーストラリア、カナダ、米国に集中しているのはわずか5種類で、18種類は中国に集中しており、残り14種類は、中国と強い外交的・経済的関係を維持している国に集中している。
また、採掘したものから、実際に必要な資源を抽出する精錬におけるシェアを見ると、ジェットエンジンに使われるコバルトは73%、弾薬や電子機器に使われる銅は40%、バッテリーに使われるリチウムは59%を精錬している。
レアアースに関しては、採掘生産量の60&、処理能力の85%、レアアースの永久磁石の90%の製造が中国で行われている。
(6)宇宙領域
軌道衛星の打ち上げ回数を2018年から21年までは、中国の方がアメリカよりも上回っていました。
しかし、2022年にイーロンマスクのスペースXが、再使用型の打ち上げ機を開発したことで、中国の数分の1のコストで打ち上げが可能になり、2022年は米国が上回っている。
しかし、ここ8年のデータを見ると、ほぼ拮抗しており、宇宙開発はアメリカが優位みたいなイメージは正しくない。
(7)AI
AIは、アメリカの方が優位というイメージがあると思いますが、国家戦略にAIを入れたのは、中国の方が早く、2017年からと、アメリカよりも2年早く始めています。
2021年は、世界のAI関連出版物の27.6%を占め、米国を上回るシェアを獲得している。
日本では、アメリカ製のオープンAIやGoogleのジェミニなどが馴染みがあるが、DeepSeekショックで株式市場が大きく動揺したように、中国のAIがアメリカを追い抜くのは時間の問題
などです。
これ以外の項目で何がアメリカが秀でているのかわかりませんが、素人の目で見ても、AIとか、兵器や戦艦の製造能力とか、けっこう致命的な分野で遅れをとっているような気がしますね。
戦闘機などの性能は、まだアメリカの方が強そうですが、資源を押さえていますので、大量に製造することは難しそうですし、現在進行形で、ウクライナ戦争に支援中で浪費をしているので、アメリカは兵器弾薬の在庫があるのかも怪しい状況です。
これに加えて、先ほどチラッとご紹介した通り、購買力平価ベースでのGDPでは、アメリカよりも1.3倍近く大きいので、物の動きで見ると、アメリカよりもはるかに大きな経済となっています。
細マッチョ出来杉から逃げるジャイアン
このような認識になってみると、現在のトランプ政権が、世界中の米軍基地を撤退させようとしている意味も、ちょっと変わってくるように思います。
例えるなら、今までやりたい放題やってきたジャイアントが、スネ夫やのび太と映画版ドラえもんに出て、目立って、いい思いをしてきている間に、映画に出れなかった出来杉くんが黙って家で筋トレやっていたようなものです。
腕っぷしでならクラスで1番だと思っていたジャイアンが、映画に出れずに筋トレしていたおかげで、いつの間にか細マッチョになっていた出来杉くんにビビっているのです。
しかし、負けを認めてしまったら、 いじめられっ子から復讐されたり、子分たちが出来杉くんの方に流れてしまう可能性もあります。
だからこそ、今まで通り乱暴者のフリをしながら、徐々に自分の家、つまりアメリカ大陸へと引き篭もる準備をしているのではないでしょうか。
ヨーロッパのNATO諸国にGDPの5%を呑ませて、撤退モードに入っているのも、韓国と北朝鮮との終戦交渉へと進もうとしているのも、中東でもデカい戦争にせずにイランとさっさと手打ちにしてしまったのも、米軍基地を撤退させて、さっさとアメリカ本土に逃げる準備をしていると考えれば、辻褄が合うような気がします。
また、台湾にはGDPの10%まで軍事費を引き上げるべきだと、国防総省のNo3のコルビー氏は発言していますが、ここまで上げてしまうと、税収全部を軍事費に使わせることになります。
さすがにそんなことはあり得ませんので、無理難題を要求することで、「だったら中国と仲良くした方がよくね?」と中国との統合へ、台湾国民を持っていこうとしていると考えられます。
そして、最後の仕上げが日本というわけです。
3、日本から撤退する2つのシナリオ
では、どうやって在日米軍を撤退させようとしているのでしょうか?
おそらく、2つのシナリオを同時に走らせていると思います。
(1)軍事費の過度な値上げ圧力
1つ目は、軍事費の過度な値上げ圧力で、アメリカ離れを起こさせるという戦略ですね。
2月の日米首脳会談では、アメリカから日本に対して、防衛費をさらに上げろという要求はなく、以前から要求されていたGDPの2%に向けて、進めているという話でトランプ氏に納得してもらっていました。
ところが、その後、GDPの3%にまで上げるべきだと発言していたコルビー氏が、4月に国防次官に就任し、さらなる防衛費増額の圧力の可能性が高まっていました。
そして、6月にさらにトランプ氏自ら、さらに3.5%に上げろと要求してきて、日本はアメリカとの協議を延期しました。参院選前に、この話を呑んでしまったら、自民党は増税をせざるを得なくなりますからね。
2025年度の防衛予算は9兆円弱で、現在のGDPは600兆円ぐらいなので、1.5%ぐらいです。3.5%だと、21兆円になりますので、消費税に換算すれば、5~6%分の増税となります。
これからさらに少子高齢化が進んで、社会保障費の負担も上がりそうなのに、防衛費でさらに増税となれば、「だったら、中国と仲良くした方が良くね?」と思う国民はさらに増えるでしょう。
そうすると、アメリカとしては、「そんなに日本人が軍事費を上げるつもりがないなら、日本に居座り続ける義理もない」という名目が立ちますから、在日米軍の撤退を行いやすくなるというわけです。
(2)自民党を負けさせ、グダグダ連立政権へ
そして2つ目が、自民党を参院選で負けさせることで、3党以上のグダグダ連立政権を作らせて、日本を見限る、というシナリオです。
今回、トランプ氏は日本の関税30-35%に引き上げるという発言を行いました。
日本はこれまで、赤澤経済再生担当大臣が窓口となり、なんと7回もアメリカと交渉を行ってきました。
交渉を行った回数はおそらく、他の国と比べてもダントツで多かったと考えられます。
ところが、今回、トランプ氏は日本との交渉はうまくいっていない、コメも解放しない酷い。だから、関税を30-35%にしようと思う、と、4/2の発表時の24%よりもさらに上げる意向を見せました。
日米のメディア記事を見ると、日本が自動車関税の引き下げを譲らないからだ、と解説されていますが、これは違うと思います。
この点を譲らないで、7回も交渉ができるはずがないからです。「ああ、また同じ話か」
で拒否されておしまいです。
おそらく、自動車関税はいう通りにしますとか、円買い介入もしますとか、いろいろとアメリカの条件を呑んだと思われます。
それでもさすがに、拒否しなければいけない案件が出てきました。それが軍事費の増額です。GDPの3.5%なんて認めたら、消費税がさらに5、6%上げなければいけなくなりますので、大変です。
おそらく、今回の関税協議の条件に、このことも入れてきたのだろうと思います。それで、トランプ氏は拒否されたので、ブチギレているのでしょう。
そもそも、2月の首脳会談でのトランプ氏の対応が、大人しすぎました。
軍事費は2%に上げていきます、対米直接投資も1兆ドルに増やしていきます、といった日本からの提案は、すでに以前から進められていたことで、追加の負担になるような話は、ほとんどありませんでした。
ですが、ここにきて、相互関税で各国との貿易交渉で、日本は1番つらく当たられています。
ベトナムなどの他の交渉国とは、だいたい決着がついているのに、日本だけがトランプ氏の怒りを買っている、という構図になっています。
詳しい協議内容が出てこない中で、日本だけがうまく進んでおらず、しかも4月に発表された24%よりもさらに高くなって、30~35%に引き上げるなんて言われたら、絶対に「石破が、無能でダメな奴だからだ」とみんな思うに決まっています。
そして、その評価はそのまま、今月の参院選へとつながり、自民党をさらに弱体化させていくわけです。
これでいくらか、安倍元首相の仇を取れるでしょうし、自民党の弱体化が進むと、3党か4党の連立政権になっていきますので、日本の政治はさらに機能不全になっていきます。
そうなれば「あたふたばかりして、アメリカからの要求に応えるつもりがない国に、米軍を置く義理はない」ということで、グアムへ撤退する名目も立ちます。
自民党の支持率は低下傾向で、負け観測
7月3日現在の内閣支持率は、34%で6月の39%から5%も下がっていますし、自民党の支持率も27%と、6月から4.6%下落しています。
今回の参院選で、与党は66議席が改選で、50隻以上を取らないと過半数割れとなりますので、一応目標を50議席としているようです。
物価高騰も長く続いて、生活が苦しくなっていく中で、一部の大企業だけが過去最高益、税収も5年連続過去最高を更新と、増税と大企業優遇を続けてきた、利権屋の巣窟である自民党の化けの皮が剥がれてきたことを自覚しているのでしょう。
トランプ氏の今回の発言は、自民党にとどめを刺し、不安定な連立政権へと日本を進めていくことになるでしょう。
トランプ氏の演技の可能性は?
最後に、今回のトランプ氏の発言が、いつもの交渉のための演技で、最終的には24%とか、20%ぐらいに落ち着くという可能性について考えてみましょう。
この場合は日本がかなりの譲歩をしていなければ難しいので、確実に円買い介入を行うことになるでしょう。
しかし、円買い介入で円高になったとしても、物価が下がってくるまでには、時間がかかるので、これで自民党の評価が上がる可能性は低いと思います。
となると、トランプ政権としては、ドル安が進んで、しかも自民党を弱体化させられるということで、どちらの目的も達成できるので、このシナリオは十分にありそうな気がします。
一方で、関税を30~35%に引き上げるというシナリオでは、日米の交渉が決裂ということになるので、円買い介入は行われないでしょう。そうすると、自民党がさらに負けるだけで7月は終わりそうですね。
いずれにしても、相互関税の再会は7月9日と、1週間を切りましたので、そのあたりで為替の動きについての動画を上げていきたいと思います。
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