今回の動画では、「ロシアの次はインド。トランプに脱ドル化させられるBRICS諸国」ということで、やっていきたいと思います。
1、はじめに
8月15日に、トランプ大統領とロシアのプーチン大統領は、アラスカのアンカレッジで、首脳会談を行いました。

この時、トランプ氏は、プーチン氏をレッドカーペットで出迎えたことで、それまで欧米諸国では、戦争犯罪者で、聞く耳を持つ必要はないと見なされていたプーチン氏をアメリカの友好国の大統領というメッセージを世界中に発信しました。
ウクライナ戦争の停戦について、具体的な進展もありませんでしたが、トランプ氏は以前から何度もプーチン氏に電話していたと言いますし、閣僚レベルの会談は、2月のサウジアラビアでの会合などでも行われており、
トランプ政権とロシアとの関係は、比較的良好な印象を持っている人が多いのではないでしょうか?

ところが、それから約2週間後の8月27日に、トランプ政権はインドに追加関税を含めて、50%の関税を課しました。
追加関税の理由は、ロシア産の原油を購入しているから、というものです。
あれ?アメリカって、ロシアと仲良くなったんじゃなかったでしたっけ?
それに、ロシア産の原油は、EUだって購入してますし、なぜインドだけをこのような理由で制裁したのでしょうか?理屈にはあっていませんよね。

さらに、トランプ政権は、9月21日から、H-1Bビザと呼ばれる、熟練労働者向けのビザの申請費用をこれまでの1500ドルから、約60倍の10万ドルに引き上げると発表しました。
10万ドルということは、約1,500万円ですから、企業がインドから一人呼び寄せるのに、かなりの大金が必要になるということになります。
このビザは、もともとインド人の割合が7割程度とかなり高く、約30万人のインド人がこのビザでアメリカで働いているようです。ビザの更新費用は対象外のようですが、今後のインドからのアメリカへの出稼ぎは、かなり厳しくなっていくことが予想されます。
また、トランプ政権は、移民よりも米国民の雇用を守りたいわけですから、現在は更新時は対象外となっていますが、今後さらに範囲を拡大していく可能性もあります。
そうなると、インドは年間1400億ドル、約21兆円のお金がアメリカから送金されていて、GDPの3%強にもなりますので、結構な影響が出てくると予想されます。
このように、トランプ政権のインドへの対応は、かなりあからさまな感じになってきているように思います。
では、インドはこれからどうなっていくのでしょうか?
最近、石破首相は、インドと50万人の人材交流をしていくと発表していましたが、この点も絡めて、考察していきたいと思います。
それでは、参りましょう。
2、トランプ関税の無茶苦茶さ
まず、そもそも、トランプ政権の関税政策に関する物言いは、無茶苦茶だということについて、押さえておきましょう。

トランプ政権が、相互関税を課した理由は、世界中の国々がドルを欲しがる状況のため、自国の産業が衰退していることを何とか食い止めるためでした。
つまり、「お前らに、もうドルは渡さないぞ」ということが、相互関税の狙いだったと言えます。
ところが、ドルが使えないなら、他の通貨で取引しなければいけなくなるわけですが、それもダメだと言ってるわけです。
特にBRICS諸国に対しては、ドル以外の通貨で取引するなら、10%とか、100%とか、その時々の気分で、追加関税をかけるからなと脅してきました。
つまり、「ドルはやらないけど、ドルを使え」と言ってるのです。
意味がわかりませんよね?
もちろん、トランプ政権の方でも、この要求が無茶苦茶なことはわかっているはずです。

しかし、このように言わなければいけないのは、おそらく、基軸通貨の地位から降りるというのは、横綱が負けを認めるようなものです。
イギリスだって、ナチスドイツに空爆でロンドンをやられて、ボロボロになったために、米ドルに基軸通貨の地位を明け渡したわけですし、よほどのことがなければ、「俺たちは、基軸通貨の地位を降りる」なんて言えないのだと思います。
しかし、本音は降りたいわけですから、やれることは、他の国に米ドルを使わせないようにするしかありません。
そのため、米ドルがなくても、やっていける経済圏を作りつつある、BRICS諸国に対して、米ドルを使うことを諦めるように、あれこれやっているのだと思われます。
3、強気なBRICS諸国
日本や韓国などの、アメリカとの同盟国では、アメリカとの貿易がなくなるなんて、想像もできないと思いますが、BRICS諸国は、かなり強気です。

例えば、インドのモディ首相は、今回の関税交渉の中で、トランプ氏からの電話に出るのを4回も断っていたそうです。
どうせ電話に出ても、中国やロシアと貿易をやめろというような、無茶苦茶な要求がくるのが目に見えていたため、無視したのでしょう。

また、ブラジルも結構攻めてます。
ブラジルも、今回の関税交渉で、インドと同じ50%というペナルティ的な関税をかけられました。
その理由は、2022年のブラジルの大統領選挙は不正選挙で、前大統領のボルソナロ氏を
不当に扱ったためだというものでした。
2023年1月8日に、選挙で負けたボルソナロ氏の支持者が国会議事堂に集まって、暴動をしたということで、クーデーター未遂罪で裁判にかけられていたのです。
裁判所の判決は、海外の政府からの影響を受けてはならないとは思いますが、これによって、ブラジルとアメリカの貿易関係がさらに深刻になることは確実です。
しかし、ブラジルの最高裁判所は、そんなことはお構いなしで、ボルソナロ氏に有罪判決を下し、27年の懲役を命令しました。
これによって、今後さらにアメリカから挑発的な追加関税をかけられる可能性もあるわけですが、そもそも、「ボルソナロ氏を有罪にしたから、関税25%追加な」なんて無茶苦茶なことを言ってくる国と、まともな貿易関係を結べるとは思っていないのでしょう。
おそらくですが、ブラジルも、BRICS圏を中心にした取引へと、本格的に舵を切る腹を決めたのだと思われます。
BRICS諸国が強気な理由
そして、これらの国がこれほど強気になれているのは、ロシアがウクライナ戦争以降、欧米諸国による経済制裁によって、米ドルが使えなくなっても、普通に経済が回っているからでしょう。

SWIFTというドル決済の仕組みから仲間外れにされて、ロシアから欧米企業が撤退した2022年はマイナス成長になりましたが、その後はプラス成長を維持しており、「あれ、これって、ドルなしでもやってるんじゃね?」と思った国が、続出しているのだと思います。
例えば、BRICSは、昨年10月のロシアのカザンで行われたサミットで、5カ国から9カ国に拡大し、今年インドネシアも入って、10カ国に拡大しています。
おそらく、ロシアが1年も2年も、ドルなしで経済を回していっているのを見て、参加しようと思った国が増えているのだと思われます。

また、9月2日に天津市で行われた、上海協力機構のサミットでは、習近平氏とプーチン氏、そしてモディ氏の大国の三人のトップが仲良く談話をしている姿が広く報道されました。
上海協力機構は、こちらの地図の青色の部分が参加国となっており、ロシア、中国、インド、そしてイランなどのユーラシアの大国とその周辺国がほとんど加盟しています。

これらの国々は、国を跨いだ鉄道の建設も結構進んでおり、例えば、今年5月には、イランから中国までの鉄道網が開通して、太陽光パネルなどの輸送が行われています。
それと、今回のサミットで、これまで欧州に送られていたロシアの天然ガスが、中国に振り向けられることも決まり、中国、ロシア、インドの3大国は、欧米外しを積極的に進めているような状況なのです。
4、これからトランプはどうするつもりなのか?

では、これからトランプ氏は、インドやブラジルなどのBRICS諸国をどのようにしようとしているのでしょうか?
基本的には、貿易を制限し、移民を制限するという方向性は変わらないでしょう。
ですが、それに加えて、ロシアのように、米ドルなしでも経済が回る国としての実績を作らせるように仕向けるのではないでしょうか?
そうすれば、米ドルを必要としない国が、アメリカにすがってくることも減りますからね。

例えば、アップルのようなグローバル企業は、中国でiPhoneを作ってましたが、今はベトナムとかインドに移して作って、アメリカで売ろうとしていますが、インドやベトナムが、米ドルを必要としない経済となれば、アップルもアメリカで作るしかなくなります。
なので、今回の50%関税や、H-1Bビザの値上げなど、少しずつハードルを上げていって、これらの国が、経済が破綻しない程度に、徐々に締め上げていくのではないかと思われます。
5、日本は、移民政策を交渉材料に使ってる?
それで、8月末に行われた、日本とインドとの首脳会談では、今後5年間で50万人の人材交流を行うという話が出て、移民が大量にくるのではないか?という心配がされました。

実際には、5万人ぐらいの受け入れということなので、年間1万人ぐらいの受け入れになりそうです。
特に条件を緩和するということでもないということですし、ここ2、3年の移民の受け入れは、35万人規模なので、それほど大きな影響はなさそうです。
アメリカがどんどん不安定になってきている
私はこれから、アメリカが日本を米ドル圏に入れておくのか、BRICS諸国のように突き放すのか、微妙なラインに来ていると思っています。

というのも、今回のインドへの50%の関税や、移民の制限などによって、トランプ政権はインドとの貿易関係をかなり減らして、BRICS経済圏を作らせようと仕向けているように見えますので、おそらく、インドと日本、オーストラリア、米国の4カ国による中国包囲網の軍事協定クアッドは、立ち消えになったと考えられます。
最近のアメリカは、国防総省の国防計画が、中国の脅威への対応よりも、アメリカ本国を優先するという方向へ変えてきているとリークされていますし、オーストラリアとイギリス、アメリカの3カ国によるAUKUSという仕組みも、検討し直すという話です。

トランプ政権発足前は、中国の周辺国が軍事力を高めることで、中国包囲網を作るという構想が予想されていましたが、ここにきて、全くその気配がなくなってしまったのです。
このような状況で、さらに日本や韓国が、米ドル圏から追い出されたら、今のままでは完全にアウトです。
総裁選で高市氏が勝つのか、進次郎氏が勝つのか、わかりませんが、ロシアとも国交を断絶している今、もしアメリカから見捨てられた時に、BRICS経済圏に入れてもらうには、中国だけでなく、インドとの友好関係を密にしておいた方がいいはずです。
アフリカのホームタウンは、あり得ない計画だと思いますが、こちらのインドからの移民受け入れは、そういう狙いがありそうなので、移民受け入れも是々非々で見なければいけないような気がしますね。
アメリカと、それ以外の世界の2択を突きつけられる
というわけで、今回はトランプ政権がインドを米ドル経済圏から追い出そうとしているという動きについて見てきました。
今回のロシアの原油を買うなとインドが反対したことで、インドが高関税をかけられている件は、実は他人事ではなくて、日本も同じように経済制裁しろと、アメリカからの圧力がかけられています。

また、国連総会では、パレスチナの国家承認をイギリス主導で行っていますが、日本や韓国は国家承認を見送っており、ギリギリ、アメリカの矛先が向かないようにしています。
このようなアメリカに従わなければ、何が起こるかわからない綱渡りの状況は、日本も他人事ではないので、今後の動き次第で、どうにでも変わっていく危うさがあります。
この点については、今後の韓国、台湾、日本に対する、アメリカの対応で、見えてくると思うので、改めて動画にしたいと思います。







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