なぜアメリカはイランに爆撃したのか? | イエ&ライフ

なぜアメリカはイランに爆撃したのか?

youtube原稿

この記事では、「古い戦争の終わり。トランプがイランを爆撃をした理由」ということで、やっていきたいと思います。

 

1、はじめに

6月21日土曜日、アメリカはイランの核施設3ヶ所に爆撃を行いました。

場所は、首都テヘランから南側にある山中にある施設で、バンカーバスターという、地下60mまでの施設を破壊できる爆弾を使ったとのことです。

 

(参考:NPR)

 

このフォルドという核施設が、この攻撃で破壊されたのかはわかりません。

ですが、イラン国営放送に出演した、ハッサン・アベディに副政治部長の話によると、イラン政府は、しばらく前にこれら3つの核施設から撤退したので、大きな打撃になっていないと述べています。

 

すでに、イスラエルによる核施設の攻撃が始まって1週間以上経ちますので、標的となる場所から避難している可能性は高いと思われます。

そもそも、今回の戦争は、6月13日にイスラエルからの奇襲作戦で始まったわけですが、

その理由は「イランが核兵器の開発をやめないからだ」ということになっています。

 

ですが、なぜイランが核兵器を持つことが、それほど問題なのでしょうか?

現在、常任理事国の5カ国以外で、核兵器を持っていると言われている国は、インド、パキスタン、イスラエル、そして北朝鮮です。

 

これらの国は、さほど問題となっていない理由は、何なのでしょうか?

また、イランが核兵器を開発しているという疑惑については、3月にトゥルシー・ギャバード国家情報長官が否定しており、CIAなどの情報機関も、否定しているという記事がいくつも出ています。

 

(参考:AP news)

 

6月12日に、IAEA、原子力監視機関において、イランが核兵器開発をしている可能性が高いということで、協定違反の決議が、賛成多数で採択されました。

しかし、その投票内容を見ると、賛成国はアメリカ以下、フランス、イギリス、ドイツなどの欧米諸国が並ぶ一方で、反対国にはロシア、中国が入っています。

 

もうこの時点で、欧米とBRICS諸国との対立になっていることがわかりますよね。

これらのことを考えると、

「イスラエルに敵対するヒズボラや、イエメンのフーシ派などを支援する国がイランだから、それを止めさせたいのだ」

ということがわかります。

 

 

しかし、おそらく、多くの人にとって、意外だったのは、「トランプまで戦争に参加してきた」ということでしょう。

しかも、アメリカが参戦するかどうかは、2週間以内に決める、と言って、交渉の余地があるかのように見せての、2、3日後の参戦、爆撃だったので、騙し討ちもいいところです。

 

(参考:Truth Social)

 

アメリカは事前に通告したとは言ってますが、一方的な「爆撃しますから」という通告ですから、イランはさっさと逃げる以外に選択肢はありません。これをフェアだと考える人は、おそらくいないでしょう。

前回のイスラエル・イラン戦争に関する動画を出した時点でも、トランプのやっていることがおかしいと感じる人が増えていましたが、今回の問答無用の爆撃で、世界からのトランプに対する信頼は失墜したと言えるでしょう。

 

ではなぜ、トランプ政権は、今回このような暴挙に出たのでしょうか?

そして、これからどうなるのでしょうか?

以前の記事でも、4つのシナリオを考えましたが、今回のトランプの過激な戦争突入によって、さらにやばいシナリオが出てきたように思いますので、この記事では、その考察をしていきたいと思います。

それでは、参りましょう。

 

2、トランプの狙い

最初に結論を言ってしまうと、トランプが気狂いモードで戦争に参加したのは、アメリカの古い兵器産業を道連れにして潰し、中東から米軍を撤退させるためだと考えています。

そう考えた理由は、大きく3つあります。

 

(1)アメリカとイスラエルの蜜月が終わりそう

1つ目は、アメリカとイスラエルの蜜月の関係が、もう直ぐ終わると思うからです。

これまでアメリカは、イスラエルに対して、多額の軍事支援をしてきました。ここ最近ですと、年間38億ドル、5,000億円以上の資金が、イスラエルの軍事費として使われてきました。

 

(参考:Al Jazeera)

 

これは何も、アメリカのお金持ちにユダヤ人が多くて、多額の献金をしてくれるから、というだけではありません。

イスラエルは、国連などの人権や戦争に関する各種協定に入っておらず、周辺国やガザ、ヨルダン川西岸のパレスチナ人を虐殺してきたりして、やりたい放題やってきました。

 

普通の国がこんなことをすれば、国際社会から猛批判を喰らって、各国からの経済制裁を受けて、経済が崩壊してしまいますが、アメリカがイスラエルを守ってきたので、なんのお咎めもなしでした。

しかし、その代わりに、ガザのパレスチナ人や、シリア、レバノンのイスラム過激派とドンパチやってきたため、武器の開発と、実戦でのテスト役を任されてきたのです。

こうやって、イスラエルが開発した武器をアメリカやインドなどの国々が買ってきたのです。

 

(参考:Wikipedia)

 

例えば、今回のイランによる報復で、アイアンドームと呼ばれる、ミサイルの迎撃システムが活躍していますが、これには、アメリカが何千億円ものお金を支援して開発し、アメリカでも導入しようとしています。

インドやアゼルバイジャンなどには、すでに販売されているようです。

 

それ以外ですと、無人ドローンの開発も、イスラエルが最初のようですね。

このように、アメリカはイスラエルに金を与え、何をやっても文句を言わせないようにすることで、兵器産業を儲けさせ、兵器の開発を進めてきました。

 

(参考:パレスチナ子どものキャンペーン)

 

一方で、イスラエルは、ガザやヨルダン川西岸で好き放題やれてきたおかげで、パレスチナ人の居住区を削り取って、もうすぐ、イスラエル全域がイスラエル領土になりそうです。

このようなWIN-WINの関係にあった、アメリカとイスラエルですが、イスラエルの方が、あと少しでパレスチナ人を全員、国外へ移住できる可能性が出てきました。

 

(参考:EU News)

 

2月のトランプとネタニヤフの首脳会談で、ガザをアメリカが買取、リゾート地として開発するという計画を発表したのです。

この計画は、現在も進められているようで、5月には、リビアに100万人分の移住エリアを交渉しているという報道も出ています。

 

 

今回のイスラエルによる攻撃は、以前から計画されていたものであり、そもそも、核開発をやめろという抗議自体が、証拠もない中での無理筋だった可能性が高いので、トランプのイランに対する攻撃も、結論ありきで、かなり以前から計画されていたのではないかと思います。

つまり、移住計画と爆撃計画は、同時並行で進められている可能性が高いのです。

 

そのため、パレスチナ人が他の国に移住したら、もう新しく武器を試す実験台となる人たちがいなくなりますし、イスラエル国内も1つになるので、国民も「もういいよ」という気分になるのではないでしょうか?

特に、今回は、イランによる報復で、イスラエル国内でも結構な被害が出ているようなので、やりたい放題が当然と思っている勘違いしてきた人たちも、減ると予想されます。

 

(2)ピーター・ティールという黒幕

2つ目は、トランプ政権の黒幕的な存在である、ピーター・ティールの存在です。

ピーター・ティールとは、PayPalの創業者で、フェイスブックの投資で1,000億円以上儲けるなど、起業家、投資家、どちらにおいても、すごい実績を出している人です。

 

 

それで、このティール氏が、経営している会社のスタッフや、仲良くしている政治家などが、なんと16名もトランプ政権に参加しています。

 

 

1番やばいのが、副大統領のヴァンス氏です。

彼は、2022年に上院議員に初当選したのですが、ティール氏が選挙資金を出して当選させ、議員として1期目なのに、副大統領になっています。

 

これも、ティール氏が、トランプに推薦したからだと考えられます。

それ以外の人も、国務省、国防総省、陸軍、そして、イーロン・マスクが率いていた政府効率化省など、今回のトランプ政権の中枢に入っているのです。

各省庁の3番手、4番手ぐらいのポジションに、結構食い込んでいます。

 

このように、今期のトランプ政権において、ティール氏の影響力は、かなりでかいと予想されるのですが、このティール氏が経営している企業が、トランプ政権から、多額の契約をもらっているのです。

 

(参考:NPR)

 

それが、パランティアとアンドリルという軍事会社です。

パランティアは、データ分析企業で、AIを使って、敵兵や攻撃目標を見つけ出したりしています。

2024年の売り上げは、約30億ドルとのことで、政府との契約が6~7割を占めています。今回トランプ政権になったことで、株価が10倍以上になっていることからも、トランプ政権になったことで恩恵を受けている企業の1つと言えるでしょう。

 

(参考:Forbes)

 

もう1つのアンドリルは、ドローンや国境での見張り用の監視カメラなどを手掛ける企業で、こちらも10~15億ドルほどの売り上げで、政府契約が80%ほどと言われています。

 

ティールの思想とは?

ピーター・ティールの思想を簡単に説明すると、

「同じことを繰り返してる奴らって、バカじゃね?」

ということです。

 

 

アメリカは、ベトナム戦争、イラク戦争、アフガニスタンなどなど、戦後だけでも、数多くの戦争を仕掛けたり、介入し、そして撤退してきました。

その理由は、その時でいろいろと叫ばれますが、結局は、兵器産業を儲けさせることでした。

 

しかし、アメリカがいくら戦争を起こして、そして失敗しても、これらの兵器産業が責任を取らされることはありませんでした。

これらの企業は、ロビー活動や天下りのポストを用意はしますが、実際にやるのは、政治家や官僚だからです。

だからこそ、同じことをなん度も繰り返して、浪費して、世界中に迷惑をかけることができたんですね。

 

アメリカの製造業は、絶賛衰退中

ところが、そうやって調子に乗りすぎた結果、兵器の開発力、製造能力が落ちてきて、アメリカの製造業全体が、どんどん衰退してきています。

例えば、アメリカでは、商船の製造が事実上止まっていて、戦艦を作るためのディーゼルエンジンを作れる会社が、6社から1社にまで減っています。

 

(参考:Forbes)

 

ドルが基軸通貨としてあるから、輸入すれば大丈夫なんて言っておきながら、ものを輸入するための船が作れない国になっているのです。今後、世界中がアメリカからそっぽを向いたら、何もできないポンコツの国になりつつある訳です。

 

ティール氏は、こんなアメリカの現状にムカついていて、

「もうこんな古臭え軍備や産業構造じゃなくて、AIとかドローンとか、もっとテクノロジーをガンガン使って、軍事力を高めた方が、いいんじゃね?」

という主張をしているのです。

 

これが今回のトランプ政権の黒幕なんですね。

なので、もしティール氏が、現在のアメリカ軍を変えたいと考えているのであれば、これまで通りの金がかかる戦闘機や空母で、ミサイルをバンバン撃ちまくる作戦が、いかに意味がないことなのかを証明させるはずです。

 

(参考:Politico)

 

例えば、2023年からイエメンのフーシ派が、イスラエルのガザ虐殺に抗議するために、バブエルマンデブ海峡を通るイスラエルや米国籍の商船を攻撃していますが、これを撃退するために、アメリカはたびたびイエメンを空爆しています。

しかし、全く成果が上がっておらず、今年3月から始めた空爆も、5月に停戦協定を結びやめています。

 

フーシ派は、ゲリラ戦的に軍用ドローンを使って、商戦や軍艦を攻撃していますが、このドローンは2000ドルから2万ドル、日本円で30万から300万円ぐらいの価格になります。

それに対して、アメリカはこのドローンを迎撃するために、1発200万ドルのミサイルを使っています。そのため、2023年から24年にかけて、米軍がフーシハトの軍事作戦で使った費用は、1500億円以上にもなると言われています。

それで、全く成果が上がっていないわけですから、アメリカ軍の無能ぶりが露呈していますよね。

 

では、成果が上がっている軍事作戦とは、どのようなものでしょうか?

それは、ドローンによる攻撃や、極超音速ミサイル、そしてアイアンドームなどの、最先端の技術を活用した作戦です。

 

(参考:BBC)

 

6月1日にウクライナがロシアの各地の空軍基地に対して、ドローン攻撃を仕掛け、13機の長距離爆撃機を破壊しました。

木製のコンテナがロシアに運び込まれ、トラックで標的となる地点まで輸送を行い、衛星通信を使って遠隔操作を行い、そこからドローンを飛ばして爆撃をしたのです。

 

また、イスラエルによるイランへの奇襲も、イランの首都テヘラン近郊にまで、ドローンを持ってきて設置し、対空システムを無力化した上での爆撃を行い、成功しています。

一方で、イランでは、極超音速ミサイルと呼ばれる高性能のミサイルでイスラエルに報復をしており、ミサイル防空システムのアイアンドームを突き抜けて、イスラエル領土内で多くの被害を出しているようです。

 

こんな感じで、金のかかる戦闘機や空母ではなく、安価なドローンや衛星通信、最先端のミサイル技術が、戦況に影響を与えているように見えます。

このような認識がさらに広がってくれば、これまでアメリカの軍事を独占してきた軍需産業の受注を減らし、衰退させていくことが可能になるでしょう。

 

トランプも以前から、軍需産業を含めたDSを潰すと言ってましたので、今回は喜んで気狂いのふりをしているのではないかと思います。

これがうまくいくと、金儲けのために戦争を起こる体質が変わるのではないでしょうか?

 

(3)トランプはモンロー主義者

そして、3つ目が、トランプは、もともと、モンロー主義者だということです。

これは、「俺たちは、アメリカ大陸の中だけで、うまくやっていくから、それ以外の国のゴタゴタに俺たちを巻き込むな」という考え方です。

 

(参考:NY Post)

 

トランプ以前のアメリカは、世界の警察官として、全世界に何百という基地をつくり、米兵を駐留させてきました。

トランプは第1期の頃から、NATOや在韓米軍、在日米軍を撤退させたいと言ってきましたので、中東からも撤退させたいはずです。

 

しかし、軍事産業のロビー活動で、金をもらっている政治家や官僚もいるでしょうし、自分から撤退したいと言っても、いろいろと理由をつけて、反対されてしまうでしょう。

なので、これをなくすには、よほどのスキャンダルや抗議活動がなければ、難しいですよね。

 

そこで、今回のトランプによる暴挙とも言える、軍事作戦です。

国際法上で言えば、明らかにアメリカに非がありますし、日本が同じ目にあったら、絶対にアメリカはひでえ国だと思うでしょう。

 

(参考:Al Jazeera)

 

私は、以前の動画でも解説しましたが、そもそも、イスラエルがイランを敵視する理由は、核開発ではなく、レバノンのヒズボラやイエメンのフーシ派などの、イスラエルに敵対する勢力への支援を続けているからだと考えています。

なので、今回のトランプによる爆撃は、効果がなかっただけでなく、イスラエルにとっても、支援を止めるという目的にとって意味がないので、最終的には、イランの政権を転覆するか、それに近いことが行われなければ、終わることはないと考えています。

 

もし、この見立てが正しいとすると、今回のアメリカの戦争参加は、長期戦になる可能性があります。

というのも、一方的に爆撃を受けているイラン国民が、アメリカを応援することはないと思われるからです。

 

冒頭でご紹介したIAEAによる、イランへの核開発違反の決議は、欧米は賛成、中露は反対してますので、アメリカのやってることを正義だと認めるBRICS諸国、中東諸国は皆無だと思います。

 

イランはホルムズ海峡を封鎖する

今回のイラン空爆によって、イラン議会は、ホルムズ海峡の封鎖を可決しました。

最高指導者のハメネイ氏の承認待ちということですが、おそらく、封鎖は行われるでしょう。

 

(参考:産経新聞)

 

そうすると、世界経済にも大きな影響が出てきます。

日本は中東からの原油に9割以上依存していますので、国内の経済が止まる可能性すらあります。中国やインド、韓国など、ほとんどの国が迷惑するはずです。

そのため、アメリカは、戦争を長期化させることによって、「俺たちを守ってくれる存在」ではなく、俺たちに迷惑をかけるだけの存在として、嫌われていくはずです。

 

その先には、米軍基地を撤退させろとか、もう中東にはアメリカは必要ないとか、そういう話に発展していくでしょう。

トランプとしてみれば、イスラエルからパレスチナ人を全員移住させられれば、イスラエルへの義理は果たせたと思うはずなので、中国へ一点集中すべきだという、当初の戦略へ戻すことができて一石二鳥だと考えているのではないでしょうか?

 

ということで、ここまでの考察をまとめると、

 

・アメリカとイスラエルの軍事同盟は、イスラエルの領土統一で時代遅れになりつつある

・トランプ政権のバックにいるピーター・ティールは、現在の軍産複合体を時代遅れと考えていて、これからはテクノロジー開発できる、新興企業が軍需産業を担うべきだと考えている

・そのため、今回のイラン戦争では、これまでの古い戦い方が時代遅れで、意味がないことを証明しなければならない

・戦争が終わるには、

 ①パレスチナ人の移住先が決まること

 ②米軍の無能さが暴露されること

の2つの条件を満たす必要があるので、数ヶ月単位で長引く可能性がある

・その間は、ホルムズ海峡の封鎖もあり得るので、原油価格の上昇、株価、不動産の下落は覚悟したほうがよさそう

 

と言えるでしょう。

 

我ながら、随分と大風呂敷を広げた感じがしますが、これが最も極端なシナリオだと考えています。

これよりもっとおとなしめの予想は、前回の記事で話しているので、そちらをご参考ください。

この記事を書いた人
ゴトウ

証券会社で12年間勤務。営業と店舗マーケティングに従事後、2018年から当サイト「イエ&ライフ」を運営しています。

不動産価格の動きの理解や今後の予想は、金融マーケットの知識があると理解しやすいため、読者のお役に立てるのではないかと、サイトを運営しています。

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